飲食店を開業しよう!第2回 これがなければ始まらない!「事業計画書」の作り方

飲食店を創業することは、経営者になるということ。給与を「もらう」立場から、人に給与を与えるだけの「売上を生み出す」立場になるということ。そのためにまず必要なことは、「どんな店にしたいのか」という夢を文字にして、それを具体的な計画書に落とし込むことです。夢を支える「理念」についても、改めて確認しておきましょう。(監修:TOMAコンサルタンツグループ株式会社)

37歳。会社員の夫(40歳)、娘(10歳)、息子(7歳)の4人家族。父母の暮らす実家から徒歩5分の場所に暮らす。外食チェーン店で事務仕事、レストラン店長経験あり。

公認会計士事務所所属。飲食店経営の企業支援、会計相談に詳しい。

富士先生、前回の最後にお話いただいたのは、創業にあたって必要なものが「理念」っていうことでしたよね?

そうです。まずは経営理念を持ってください。飲食店に理念?思うかもしれませんね。でも経営者になるのですから、自分自身が従業員とともに「こういう理念を持って私は仕事に取り組むのだ」という決意が必要なんですよ。

「何のためにこの仕事をするのか。誰の役に立つのか」っていう部分ですよね。

その通りです。事業を発展させていくため、人を率いていくためには、理念は絶対に必要です。では、八百井さんがなぜご自分の店を開きたいのか、教えてもらえますか?

はい。私は大学を出てからずっと、外食産業に関わってきました。だけど、現代人の食事には「野菜が足りていない」っていう危機感があるんです。 外食=贅沢、という昔の感覚では、肉や魚が入った「ごちそう」でないとお金をもらえない、と考えてしまいます。 でも今や、外食は特別なことではありません。一人暮らしを含めて、自炊ができない家庭が増えているんです。 だから、「日常的に食べるべきものを扱う飲食店」を作ろうと考えました。

勝算を感じているんですよね?

はい。特に、働く女性をターゲットにしています。「おなか一杯食べても太らない。体調がよくなって肌がキレイになる。なのに、予算は他の店と同じ」 となれば、お客はつくと考えています。野菜や果物、お弁当の販売や、講師を招いて料理教室のイベントもしたい。 首都圏近くの農家と提携して、若手就農者を応援したいと思っています。 ですから、理念としてまとめると「安全な野菜で健やかな体を作る。生産者と消費者を野菜でつなぐ」になるでしょうか…。

いいですね!私が創業する人へ贈る言葉は「夢は大きく、足場は手堅く」。 その経営理念をきちんと「事業計画書」に落とし込み、キャッシュフローについて考えていきましょう。 夢を形にするためには、数字を把握する経営者の視点が不可欠ですからね!

足場を手堅くするために必要なのが「事業計画書」なんですね。実際にはどういうものを作ることになるんでしょう?

まず「日本政策金融公庫」が無料で提供している創業計画書の例をみてみましょう。 これは、融資を受ける際に、どんな店を創業するつもりか、いわば「設計図」に該当します。作成にあたって、まずは 「1 創業の動機・事業の経験」で、取扱商品やセールスポイントを、簡潔な言葉に落とし込んでいきます。

えーと、私の場合は「ちょうどいいテナント」はまだ見つかっていません。 「2 取扱商品・サービス」の内容は検討中。単価も厳密には考えていませんし。 「3 取引先・取引条件等」もこれからですね。どこから考えていけばいいんでしょうか…?

「理念」に基づいて考えれば、難しくありませんよ。 安全な野菜を主に働く女性へ提供する、ならば、まずメニューが決まってきますよね。 テナントの場所もターゲットに合わせて考えればいいわけです。従業員についてはどう考えていますか?

小さな店舗ですが、私以外にフルタイム勤務を1人、パートタイムを1~2人と考えています。 料理は私が作るにしても、ホール担当が必要ですから。私1人ですべては回せませんので…。

ご自身の人件費もきちんと忘れずに考えておいてください。 1人で開業する人の場合は「軌道に乗るまでは自分の月給は20万」と決めているケースもあります。

なるほど。ただ最初は私の給料を少なくしてでも、人件費をしっかり確保しようと思っています。

ではさらに「4 必要な資金と調達の方法」を見てみましょう。八百井さんの場合は、店舗の内外装や厨房機器などの見積もりはこれからですよね。 なので、今は「家賃20万円」の物件で開業するこの例を参考にして解説しましょう。

ありがとうございます。具体的な数字があったほうがイメージしやすいです。

まず、表の左側を見てください。開業にあたって必要な資金が挙げられています。 一つは設備資金。これは店舗に設置する机やイス、厨房機器などが該当しますね。 さらにもう一つ。これとは別に商品の仕入などに用いる運転資金も必要です。 次にこうした必要資金をどのようにまかなうのかを記載しているのが表の右側です。 ここは大きく自己資金と借入に分けられます。この例では自己資金のほかに、親族と金融機関から借りようとしていることがわかりますね。

きちんと見積をとって、実際の数字を記入する必要があるんですね。

続けて、「5 事業の見通し(月平均)」の説明をしましょう。これは一定期間(例では1か月)の売上とそのためにかかった原価を1つにまとめたものです。 要は会社が儲かったか儲かってないかを知るためのものですね。設立当初から儲けを出すのは難しいかもしれませんが、 軌道に乗ったあとは絶対に儲けが出ないとダメですから、2つ書く欄が用意されているんですね。

こちらが、前回教えて頂いた「三大経費の黄金比」「必要売上高(損益分岐点)」にかかわってくる部分ですね?

そうです。私はいつも、この部分の計画を2種類作ってもらうことにしています。ひとつは「堅実型」。 この場合でも、売上が20%増減するケースを考えてもらいます。次が「理想型」。売上が30%増えるケースと、10%減るケースを考えます。 想定よりも売上があがるとすれば、どんな準備が必要か? 忙しくなれば必要な人の数も変わってきますよね。そして反対に、 売上を楽観視しない、シビアな内容も考えておくわけです。

なんだか気持ちが引き締まってきました。単にメニューを思い描いているだけではとてもじゃないけど、開業はできませんね。

もちろんメニューを思い描くことも大事ですよ。とはいえ、計画にムリがある場合には、 「創業しない」という選択を勧めることもあるんです。なにしろ、未経験者は3年以内に9割近くがつぶれる、という飲食業界ですから。 大きな借り入れをして始めるというのに、返せないままつぶれるのはつらいですよね。最初から向いていない場合や、無理な計画ならば、あえて挑戦しない、という勇気も必要なんです。