PAPカンファレンスセミナー報告

会計業界「勝ち抜き戦略セミナー2011」

毎年好評を得ている、会計業界「勝ち抜き戦略セミナー2011」を、7/20(東京)、7/22(大阪)にて開催いたしました。本年は、独自の料金体系をインターネット上でPRし、新規顧問先獲得に成功されている、税理士法人FIS(東京都中央区)代表の古尾谷裕昭氏と、三輪厚二税理士事務所(大阪市中央区)代表の三輪厚二氏を招き、厳しさを増す会計事務所業界のなかで、勝ち抜くための戦略として、両事務所の取り組みについてご講演いただきました。
  • 税理士法人FIS 代表 古尾谷 裕昭氏(左)と三輪厚二税理士事務所 代表 三輪 厚二氏(右)
    税理士法人FIS 代表 古尾谷 裕昭氏(左)と
    三輪厚二税理士事務所 代表 三輪 厚二氏(右)
  • セミナーの様子
    セミナーの様子
税理士法人FIS
代表 古尾谷 裕昭 設立 平成18年 職員数 約30名
顧問先数 約400件 所在地 東京都中央区
三輪厚二税理士事務所
代表 三輪 厚二 設立 平成5年 職員数 約20名
顧問先数 約300件 所在地 大阪市中央区
(H23.8現在)

税理士法人FIS・9600円からの税務顧問料の戦略と成果

税務顧問料の戦略と成果を語る古尾谷氏 税務顧問料の戦略と成果を語る古尾谷氏
税理士法人FISは、平成18年6月の開業から5年で約400件にもおよぶ顧問先を獲得している。
毎月、全国から150件を超える問い合わせがあり、事務所で対応しきれなく、現在では、古尾谷代表が中心となって会計事務所のネットワーク化をすすめている。グループ全体では1,000社を超える顧問先を獲得している。「最大のポイントは9,600円という具体的な数字を出しているインパクトの強さです。しかし、ただ数字を出すだけではなく、インターネット検索で上位に表示させるためのSEO対策や、リスティング広告、ターゲッティング広告、リマーケティング広告など、インターネットを利用した集客マーケティングも積極的に展開しています」。
古尾谷代表は、会計事務所勤務時代の担当顧問先に対するコンサルティングやアドバイスをしてきた経験から、会計事務所にも、企業としての特徴アピールや販売の仕組みを作るといった戦略と技術は活用できると考えていた。開業当初は経験や資金力がない状態だったことから、独力でホームページを開設。開業1ヶ月目で3件の顧問先を獲得できた。「ただ、素人デザインのホームページでは見栄えが悪いですし、SEO対策も方法がわかりませんでしたから、少し経ってWebデザインのプロに依頼しました。その結果、開業1年目で法人クライアント40件を獲得することができました。当時はホームページを持つ会計事務所も少なかったですから、そういう状況もあって効果が速く出たと分析しています」。
講演の様子 講演の様子
同事務所では、9,600円からのターゲットを年商5,000万円未満の法人に限定している。このランクの顧問先は徹底的に料金を押さえたいニーズがあることから、顧問先自らが事務所へ来所する「来所型事務所」とし、コミニュケーションは、メール・電話で、申告は電子申告という体制を構築している。
「弊所に限らず、格安の顧問料をアピールする会計事務所は増えています。誤解される方も多いいかもしれませんが、税理士法人FISはそれだけでやっているわけではありません。月3万円からの料金体系で、きちんと訪問や管理面をトータルサポートするサービスは提供しています。これが基本にないと会計事務所としての利益は出ないでしょうし、安かろう悪かろうでは長続きしません。年商5,000万円未満の顧問先を主に売上でABCの3ランクに区分し、さらにお客様のご要望にあわせ、5つの決算プランをきめ細かく設定しご案内しています。顧問先が求めるものだけを選択できるようにしています。」
B to Bの関係はWin-Winの関係が基本だとよく言われるが、会計事務所と顧問先の関係においては、「従来の会計事務所は、どちらかと言うと会計事務所はWinでも顧問先は不満を抱いていることが多かったのではないでしょうか?」
会社法の改正により、アイデアを持つ人が気軽に起業できるようになっている一方で、会計事務所に求めるサービスは決算・申告のみになることも多くなってきている。しかし同事務所では、起業まもない顧問先には、年間の税務会計の流れを把握する必要があるため、最初は決算申告プランへ誘導せず、節税やキャッシュフローのアドバイスといったきめ細かいサービスを提供するようにしている。「今求められているのは低価格高品質です。その実現のため、例えば記帳代行はアルバイトに、経営者への説明やアドバイスなど付加価値の高い仕事は正社員と役割分担を明確にしています。さらにインセンティブ制を採用するなど合理化とモチベーション向上につながる体制を整備し、売上増と利益率の向上を図っています。
最後に古尾谷代表は、「今日ご来場された皆様は、得意分野や独自のビジョンを何かしらお持ちだと思います。そこをしっかり表現するだけで、魅力的な会計事務所を作る事ができると信じています」とエールを送った。

三輪厚二税理士事務所・顧問料不要@システムのきっかけと戦略

講演の様子 講演の様子
三輪厚二税理士事務所は設立当初から平成17年頃まで資産税を中心にした事務所経営で、顧問先は20件ほどであった。しかし、記帳代行業務の導入と顧問料不要をインターネットで打ち出した頃から、顧問先が急激に増加し、法人顧問先が約270件、個人顧問先が約100件にもなっている。「私はこの業界について、不思議だなと思うことが二つありました。一つは報酬規定がいいかげんなこと。もう一つは広告をしてはいけないということです。平成14年の税理士法改正でこの点はクリアになりましたが、それでも報酬に関しては明確になったと言えませんでした。そんなとき、友人が開業しまして、顧問料はもらわず決算時に手助けだけしていました。通常は2-3万円くらいの顧問料になると話したところ、顧問料2-3万円?それって一体何?と問われて、うまい回答ができませんでした。そのことがきっかけで顧問料という報酬を全面廃止するとともに、報酬規定のすべてを見直しました。」
三輪代表は、大学卒業後、大手アパレルメーカーの経理として社会人をスタートし、仕事の延長として税理士試験を受けた経歴を持つ。「一般企業の感覚からすると、明確に説明をできないものを請求することはありえません。顧問料は何もしなくても報酬を約束される会計事務所にとって都合のよいものですが、私が経営者だったら払いたくありません。毎月の顧問料の中に含まれているサービスだと思っていたら、別料金を取られたという話しもよく耳にしていました」。もともと疑問を持っていた顧問料を廃止しようと決めた三輪代表は、料金体系を明確にするため、会計事務所の業務について原価計算をするところからスタートした。「顧問先のニーズの洗い出しをして、それにともなう業務を1つ1つ見直しました。例えば、仕訳をするのにどれくらいの時間がかかり、パートさんにやってもらうとどれくらいの原価になるかといった具合です。基本的に弥生会計を使った自計化を勧めていますが、それでも仕訳をチェックする必要があります。」
顧問料不要@システムのきっかけと戦略を語る三輪氏 顧問料不要@システムのきっかけと戦略を語る三輪氏
仕事の洗い出し・ニーズの洗い出し、原価計算をすることによって、同事務所は平成16年に顧問料不要の「@(エー)システム」を開始した。「当初はかなり安く、月々3,000円でした。しかしいくらやっても利益が出ず、原価計算が間違えていることが分かったので見直しました。現在では一番低いコースの料金を5,775円に設定していますが、これが限界だろうと思います」。同事務所では、顧問先データの作成と登録をするコストとして契約報酬を最初に請求し、月々の報酬は記帳チェック基本料、記帳チェック加算料、データ管理料、通信諸雑費、税務相談料としてメニュー化されており、発生した業務への対価であることが明確になっている。「最小の月額料金は5,775円になります。これは顧問料と見る事もできますが、何もしない料金ではなく中身がはっきりしています。経営者が必要だと考えれば20あるコースからオプションを選んで頂くことができます。記帳代行だけを依頼する顧問先は低料金になりますが、月次報告をしっかりやってほしいという顧問先には充実したサービスを提供しています。また、会計事務所だけしか提供できないサービスとして、決算報告・決算診断に力を入れております。1ケ月お試しサービスやコンビニエンスストア向けなど、常に新しい商品開発にも取組んでいます。会計事務所はサービス業といっておきながら、料金は不明確であったり、商品を持っていない会計事務所が多いと感じています。」
同事務所の広報戦略はホームページとダイレクトメールを基本にしている。ホームページは税理士報酬、大阪の会計事務所、相続税など、どの分野でもインターネット検索すると1ページ目に表示されるよう工夫されている。また、ダイレクトメールは税務ニュースのリーダァスクラブを、土日祝日以外毎日送っている。「インターネットによる効果は大きく、「@システム」の開始から毎年100社ほどのペースで顧問先が増えました。平成21年は、増加する顧問先への対応として、内部体制を見直し、2ヶ月間営業を停止していたほどです。また、イメージ戦略として、働いている人間の顔が見える方が良いと考えて、事務所を1階にしていますし、社員を増やして良い教育をする必要がありますから、求人サイトも作り込んでいます」。
三輪代表は会計事務所の将来について、「顧客である多くの経営者は、記帳業務に対する価値観が低く、ここで利益を上げるのは困難です。弊所は顧問料不要を打ち出していますが、それだけでなく、新たな商品を開発をすることにより、新しい強みを創造でき、それが明確な将来の展開に繋がっています」。強みを持ち、違いを明らかにし、どうアピールするかが重要だと強調した。