飲食店を開業しよう!第3回 法人と個人事業主?何が違う?どっちがいい?

飲食店を創業する際には、どんな形態があるでしょう?個人事業主なら、申告スタイルは白色申告か青色申告?それとも、最初から法人(株式会社)にするほうが有利なのか?それぞれのメリット、デメリットを確認してみましょう。また、合わせて開業時に必要な手続きを説明していきます。(監修:TOMAコンサルタンツグループ株式会社)

37歳。会社員の夫(40歳)、娘(10歳)、息子(7歳)の4人家族。父母の暮らす実家から徒歩5分の場所に暮らす。外食チェーン店で事務仕事、レストラン店長経験あり。

公認会計士事務所所属。飲食店経営の企業支援、会計相談に詳しい。

富士先生、飲食店を開業するにあたり、独立するとなると、会社を作るってことになりますか?会社を辞めてフリーライターになった友人は、個人事業主として活動していると聞きました。

八百井さんのように飲食店を始める場合、「個人事業主」「法人」の両方のスタイルから選べますね。まずは、次の表を見てください。

個人事業主(白)個人事業主(青)法人
自分が受け取る報酬事業所得(事業主貸)事業所得(事業主貸)給与(全額経費)
家族を従業員にした場合の報酬事業専従者給与(経費の上限が配偶者85万円、配偶者以外1人50万円)事業専従者給与(全額経費)(ただし税務署に届け出が必要)給与(全額経費)/役員報酬(高額な設定も可能)
事業に対する責任無限責任無限責任有限責任
創業の手続き(費用)開業届など(0円)開業届など(0円) 登記手続き代行(約30万円)(資本金1,000万円未満の場合)
本人の健康保険国民健康保険国民健康保険全国健康保険協会の健康保険
従業員向けの健康保険/年金従業員5人未満は設定不要(各自が国保/国民年金)従業員5人未満は設定不要(各自が国保/国民年金)社会保険への加入、厚生年金への強制加入
記帳義務・決算書なし・収支内訳書を作成(前々年または前年の事業所得が300万円を超えない場合)有・決算書作成有・決算書作成
対外的信用度
メリット帳簿付け不要。簡単。ただし、前年の事業所得が300万円を超えた場合は帳簿付けが必要。複式簿記で記帳すると青色申告特別控除65万円。会計による事業分析が可能。取引先との契約、従業員雇用の際に有利。決算日を自由に設定できる。事業が好調な場合、個人利益とは別に会社の資産として投資が可能。
デメリット対外的信用度が低い。経営が甘くなりがち。税務調査が入った時に不利。対外的信用度は高くない。従業員の雇用面で不利。法人税、法人事業税、法人住民税が発生。
おすすめポイントおすすめしない。 個人事業主で始めるならば、必ず青色申告で。登記手続き代行料が用意できるなら、法人化がおすすめ。

個人事業主には、白と青があるんですよね。ライターの友人は「帳簿が面倒だからずーっと白色申告よ。収入も多くないし」って。でも、飲食店の場合は帳簿なしのどんぶり勘定ではちょっと心配ですよね?

そうです!白色申告は選択肢に入れないでほしいんです。 たしかに現在は、所得(儲け)が300万円以下の場合は、記帳義務は免除となっています。しかし、ゆくゆくは記帳を義務化する動きもありますし、それよりなにより「帳簿の免除は経理面で逆効果」なんです。 もし、税務調査が入ったとしますよね。帳簿という証拠がなければ、勝手に「立地、席数から計算して1日の売上は×万円」と評価されて、 本来より多い税金を納めざるを得ない、というケースもあるんです。

儲かっていない場合はまさに最悪のシナリオですね! 証明できないから税金が多くなるなんて、泣きっ面に蜂じゃないですか。

税金のマイナスだけじゃありません。 お店を大きくしたい、成功させたいと考えるなら、「経営状態の管理」という意味で帳簿を活用して欲しいんです。

最初に教えてもらった、 「三大経費の黄金比」「必要売上高(損益分岐点)」も、 帳簿というデータがあってこそ分析できるんですね。標語をつけるなら、白色スタートは「ダメ・絶対!竏柱o営者になりますか?それとも起業辞めますか?」って感じかしら(笑)。

せっかく理念を掲げて創業するんですから、 個人事業主で始めるなら、ぜひ「青色申告」にしてください。 もちろん、いくつかの「節税措置」が用意されていることも忘れてはなりません。

給与所得者の頃と比べてプラスになる面があるってことですか?

給与所得控除(65万円)の代わりに、青色申告特別控除(65万円)があります。 個人事業の青色申告では、接待交際費が青天井という特徴もあります。 さらに年間300万円までの物品を消耗品(経費)として扱って良い、という特例もあります。 赤字を3年間繰り越せるので、初期投資のダメージを和らげるのにもプラスですね。 また、生計を一にする家族を従業員とした場合、その給与が全額経費にできます。 八百井さんは、ご主人が会社員、ご両親は別居ですから、残念ながら「青色事業専従者給与」は該当しませんが(参考リンク:青色申告ってどれだけオトク?確定申告税額かんたんシミュレーション)。

個人事業主(青色申告)でなければ、法人(株式会社)ということになりますか?

はい。実は、法人は初期投資が大きい飲食店に有利なんですよ。 八百井さんは、免税事業者、という言葉をご存じですか?事業所得(課税対象となる売上高)が1,000万円以下の場合は、 消費税を納める必要がない「免税事業者」なんです。反対に、課税対象となる売上高が1,000万円を超えたら「課税事業者」となり、 消費税5%を税務署に納める義務が発生するんです。

ある程度儲かっている店には、消費税を納める義務が発生する、ってことですね。

その通り! 給与所得者だった頃と比べて1桁大きいお金を扱うのですから、課税業者になる日は近いのです。 といっても、創業した年と翌年は、課税事業者にならずに済みますが。

どうして最初の2年間は免除なんですか?

資本金が1,000万円未満の法人は、法人化してから2年間は免税扱いされるんです。 課税売上1,000万円に対して消費税は50万円。2年分の免除額は100万円という計算ですね。 個人事業主で始めた場合でも、課税所得が1,000万円を超えたら、法人への切り替え時期といえます。

※個人事業主の場合は、課税売上が1,000万円を超えた年から2年後以降から課税事業者になる

法人にするときの覚悟って何でしょう?

ずばり、予算ですね。今は資本金が1円でも株式会社が作れます(平成18年5月より)。 登記の手続代行に必要な予算が約30万円。これは代行を頼まず自分で行ってもある程度経費がかかる手続きなので、一括して頼んでしまうことをおすすめします。 また、経理指導として、会計事務所との契約を考えた方がいいですね。その予算として年間30万円ほどでしょうか。

法人にした場合、登記代行料に見合うだけのメリットがありますか?

法人のメリットは大きくわけて3つあります。1つは社会的な信用が得られるということ。たとえば、優秀な従業員を雇いたいと思うなら、信頼感のある株式会社であること、さらに社会保険・厚生年金の仕組みを持っていることはとても重要です。あと取引先から見た信用度も高くなります。仕入を掛け(ツケ)で買えれば、手元のお金(キャッシュ)の面でも経営にプラスです。

2つめが節税です。事業所得が800万円を超えると法人化による節税メリットが出てきます。節税額がどの程度になるかは税理士に相談するようにしましょう。そして最後の3つめが有限責任であるということ(株式会社の場合)。株式会社であれば、経営者は出資の範囲内でしか責任を負う必要がありません。

法人化にもいろいろなメリットがあるんですね。どちらにするか悩むな。でも、富士先生がついていてくれれば、私にも「社長」がつとまりそうな気がしてきました。