2021/04/01更新 会社設立のメリット・デメリット

起業の際に最初に悩むのが起業形態。つまり、会社(法人)を設立するのか、個人事業主として開業するのかという選択です。まずは個人事業主でスタートして走り出したとしても、今度はそれをどのタイミングで法人設立へと踏み切るべきかを悩むことになります。
ここでは起業準備の段階で会社設立と個人事業主、それぞれのメリット、デメリットをしっかりと知り、今選択すべき形態、また将来的にはどうするのかという点まで、念頭に置いて選択しましょう。
会社設立と個人事業主ではこれだけ違う
両者の違いを整理しました。
法人 | 個人事業主 | |
---|---|---|
起業までの時間 | 定款認証、登記などの手続きに費用がかかる | 基本的に税務署に届け出を出す以外、登記などの必要がないため費用がかからない |
事業の縛り | 登記した事業目的の範囲のみでしかビジネスができない | 制約はなく自由に商売ができる。 |
社会的信用 | 会社組織であれば、社会的信用が比較的に高い。 大手企業と直接取引口座を開きたいケース、消費者をターゲットとして広く通信販売をするケース、金融機関から資金調達をするケースなどで会社の方が信用を得やすくなることが多い |
社会的信用は会社に比べ低い。 |
税率 | 法人税は基本的に税率が一定。 ある程度の所得が見込める場合には会社を設立したほうが、低い税率が適用され節税できる可能性が高い |
所得が増えるほど、所得税の税率が上がる。そのため、利益が多くなると、会社よりも税金が高くなる可能性がある |
税務申告 | 法人税、住民税、事業税の申告など、個人事業主と比較して複雑な手続きが必要となる | 所得税の申告だけで問題ない。計算も簡単 |
節税 | 節税策が豊富にある。 例えば、会社の場合は、役員の住居を会社名義で借りて住宅としたり、役員の生命保険に加入したりすることで節税することも可能 |
節税策が会社に比べ少ない。 例えば、事業主の給料が経費扱いされない、家族の給料を計上するのに制限があるなど、会社に比べて必要経費の計上に制限がある |
受給できる年金 (老齢) |
基礎年金のほか厚生年金も上乗せされる(老後に受け取る年金額が比較的多い) | 基礎年金のみ(老後に受け取れる年金額が比較的に少ない) |
銀行口座 | 審査が比較的厳しい | 審査が比較的易しい(ただし屋号をつける場合は審査が厳しくなる) |
事業主(株主)の責任 | 有限責任
|
無限責任 |
社会保険 | 健康保険に加入 | 国民健康保険に加入 |
メリット・デメリットを踏まえ、総合的な判断を
最も異なるのは信用面、税金面での違いです。つまり、会社設立を選ぶと、手続きに費用がかかり、事業にも縛りが出てくる分、社会的信用は高くなり、また税金の面でも優遇されます。個人事業主だと、社会的な信用度は低く節税策も限られてくる分、自由に、そして簡単にビジネスをはじめることができます。ちなみに、共同起業だと会社形態を選択したほうが、報酬の配分など管理をしやすいでしょう。
それぞれ一長一短ありますが、大切なのは、方向性を決めた上で選択する、創業メンバーの構成や、事業内容、将来的な事業構想などを総合的に判断して形態を決めることです。メリットを最大限に生かしつつ、デメリットに対処していく。そのことを念頭において、会社設立か個人事業主かを選択しましょう。
中野 裕哲(なかの ひろあき)
起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。
年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で7年連続相談数日本一。
著書・監修書に「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』 」、「図解 知識ゼロからはじめる起業の本
」がある。
URL:http://v-spirits.com/