交通費は課税される?通勤手当の課税・非課税ルールまとめ

2021/03/31更新

この記事の執筆者柳原つつじ

従業員は給与支給時に、会社に通勤するための交通費を支給されるケースが一般的です。いわゆる「通勤手当」です。この通勤手当が、実は税金と密接にかかわっていることは、あまり知られていません。今回は、通勤費と税金の関係についてお話ししたいと思います。

POINT

  • 通勤費には所得税がかからないが、非課税限度額がある
  • 通勤費は、労働保険料や社会保険料にも影響を与える
  • 通勤費は、雇用側にとっては損金や必要経費にできるので、節税につながる

通勤手当は限度額までは非課税

原則として、通勤費には税金が課せられません。ただし、限度額はあります。その限度額以内ならば「非課税通勤費」となり、それ以上については「課税通勤費」となります。

とはいえ、課税となるケースはかなりレアであると言えそうです。交通手段別に、限度額を見ていきましょう。

まず、一般的な「電車やバス」について。1カ月あたりの非課税限度額は15万円です。ただし、「もっとも合理的かつ経済的な経路で通勤した場合」という条件がついています。グリーン車などの料金は含まれないので、注意しましょう。

次に、自転車や自動車で通勤している場合の非課税限度額は、片道2km未満であれば、0円となります。2km~10km未満では4,200円、10km~15km未満 では7,100円という具合に、距離によって定められています。

あまりないケースだとは思いますが電車と自動車の両方を乗り継いでいる場合は、「もっとも合理的かつ経済的な経路で通勤した場合」の公共機関利用運賃と、車の通勤手当の額(片道の距離による非課税限度額を超える場合はその限度額)の合計が15万円までであれば、非課税となることになっています。(平成28年10月現在)。

参考

雇用保険と労災保険と通勤手当

ただし、非課税となるのは所得税だけです。労働保険料や社会保険料については、通勤手当も保険料の対象賃金となってきます。

労働保険とは、雇用保険と労災保険の総称で、パートタイマー、アルバイト含めて、一人でも労働者を雇用すれば、事業者は加入手続きを行い、労働保険料を納付しなければなりません。

労働保険料は「賃金総額」をもとに計算されます。賃金総額とは、事業者が労働者に労働の対価として支払うすべてのもの。基本賃金、賞与はもちろん、扶養手当、超過勤務手当なども含まれます。

その「賃金総額」には、通勤費も含まれることになります。つまり、通勤費が高いほど、賃金総額が増えて、労働保険料も高くなるということになります。

同じことが、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料についても言えます。社会保険料は、毎年4月から6月の報酬をもとに決定した「標準報酬月額」に応じて求められます。その標準報酬月額にも、通勤費は含まれます。例えば、引っ越しによって通勤費が以前より上がって区分が変われば、その分だけ、社会保険料は高くなるということになります。

損金と通勤手当について

通勤費がそんな影響を及ぼしているとは、多くの会社員は知らないのではないでしょうか。私もそうでした。知人の編集プロダクションが、通勤手当を社員に支払っていないと聞いて「なんというケチな……」と驚いたことあるのですが、単純に月額の支給額だけではない、会社の保険料負担を考えてのことだったと、今ではわかります。

ただし、雇用側にとってのメリットもあります。それは、税法上、従業員に対する通勤手当の支払いは損金(経費)として認められるということです。もちろん、非課税の限度額以内のものです。経営全体からみれば、微々たるものかもしれませんが、コツコツした節税にはつながります。

身近なものでありながら、税への影響はさほど考慮されていない「通勤費」。経営者目線で考えると、新たな気づきにつながります。知識のひとつとして持っておくとよいでしょう。

photo:Thinkstock / Getty Images

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この記事の執筆者柳原つつじ

出版社勤務を経て、フリーエディター、コラムニスト。歴史、伝記・評伝、経営、書評、ITなどを得意ジャンルとして、別名義で著作多数。ここでは、脱サラフリーランスならではの視点で、お役立ち情報をお届けしたいと思います。

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