事例紹介2 会計事務所に経営相談業務は可能か 資金調達支援業務を中心として 永田経営グループ 株式会社永田会計 代表取締役 永田 吉朗 氏

会計事務所に経営相談業務は可能か
資金調達支援業務を中心として

はじめに

事務所のある長崎県には、医療法人に特化している事務所や、行政と太いパイプをもっている有力な競合がいます。経営戦略上、それらに当たらないように差別化を図りました。
普通の会計事務所が何をやってきたか、これから何をやるかという部分が、皆様の今後の業務の参考になればと思います。

また、今後の方針を考えるうえで、テクノロジーの進化を前提にして考えていかなければなりません。
人工知能の進化により、こちらから動作を教えなくてもソフトウェア自体が学習し機能を身につけていく、こういった技術が会計税務の世界に入ってこようとしています。
このような状況をふまえ我々の業務をどう組み立てていくか、お話しできればと思います。

事例報告

資金調達支援について

もともとの資金調達支援を始めるきっかけは、顧問税理士が日本政策金融公庫の融資を紹介したことに対して、顧問先から感謝された話を聞いたことからです。当時、財務諸表を出せばいいと考えていた私にとって顧問先の資金繰りに他の税理士が関心を持っていたことに衝撃を受け、その認識を反省しました。
ここから資金調達支援が始まっています。

まずは、認定支援機関(※中小企業が経営相談等を受けられるように、専門知識や、実務経験が一定レベル以上の者に対し、国が認定する公的な支援機関)としての活動です。
1980年代当時リスケもサービサーの制度もなく、銀行と税理士が協調して中小企業を助けるということもありませんでした。今はこの認定支援機関制度ができ、中小企業に対して金融機関などと支援事業を行います。
これは事務所経営の直接的な効果ではなく、業務の幅が広がるメリットがあります。
もう一つが、銀行との交渉です。
日本政策金融公庫資本制ローン調達支援、モニタリング、返済借入等の支援を行っており、お客様に喜んでいただいています。

銀行との連携

その他私の事務所で取り組んでいることに銀行との連携が挙げられます。

具体的には銀行の融資担当の方や営業担当の方と勉強会を実施しております。
財務分析からスタートして、課題の把握、お客様へ具体的に何を提案できるかなどを意見交換しています。お互いの視点の違いを認識するだけでなく、銀行の方と事務所職員との親交を深めることもできます。それにより、お客様の融資の際には銀行側の担当者と顔見知りということで話がスムーズに進んだり、銀行からお客様を紹介してもらえたりします。

そのほか、国民生活事業との1日公庫を実施しています。
銀行の審査に必要な資料を事前収集することは大変ですが、面接の当日に結果が出るので、お客様へのメリットが非常に大きいです。

やはり銀行との連携では、人と人との付き合いという部分が最も効果が高いと考えます。

経営相談業務

経営支援として真っ先に思いつくのは経営計画の立案です。
2001年ごろは「経営計画を含めた未来会計をやっています」、「予算実績対比で経営改善の手伝いをしています」ということを標榜していました。
ですが経営計画について、販促コンサルタントからは
「一番重要な売上目標の具体的達成方法が書かれていないため、これは経営計画とは言えない。」
銀行の融資担当者からは
「経営状況の原因究明がなく、経営環境や競合対応の分析も不足している。」
さらにお客様から、
「財務数字が理解できないし、行動計画も多すぎて実行できない。また、融資がおりたのでその後は経営計画を使っていない。」
という反応が返ってきました。
では我々が目指す経営相談業務とは何かを改めて考えました。
お客様の声から、通常の会計事務所でやる経営相談は税務会計に強みがあることがわかり、これを中心として会社の運営面への助言や資金繰りや戦略指導、銀行対応、税務対応などの周辺業務を強化していくことが重要であると考えました。会計事務所の強みを活かして、経営者の味方であることをアピールすることから経営相談につながっていくのではないでしょうか。

今後の方針にかかわる環境の変化

テクノロジーの進化により自計化ではなく自動化が始まります。
一昔前に比べおおきな合理化をもたらします。
これは弥生からPAP会員、中小企業へと短期間で広まっていくでしょう。
その反面、業務領域の縮小により低価格化を招くことが考えられます。
お客様のメリットとして自動化を勧めていくこともあると思いますが、これからは経営者の味方として仕事に取り組んでいくことも良いのではないでしょうか。

ここ最近、業界では製販分離というキーワードが聞かれます。
製造部門ではテクノロジーの進化を推進し合理化を進めていくことが重要です。
問題は合理化した後の会計事務所の業務範囲です。
販売部門では、経理部門から経営幹部へ業務対象を移行し、経営相談ノウハウの構築、人材育成に取り組むことが重要になってきます。

経営相談は数字だけにとどまらず経営者の意思決定を引き出すところまでを手伝うことではないでしょうか。
具体的な意思決定を引き出すためには、具体的な提案をするためのノウハウの蓄積が必要です。
これをシステム化し、記録し、モニタリングまでつなげていく。大変なことですが、これに取り組むことで中小企業の支援に必ずつながると信じています。
日々中小企業の数は増減しています。動きがあるからこそ中小企業支援の余地、経営相談の市場はあると考えています。それができるのが我々税理士だと考えます。
中小企業のそばにいる税理士・会計事務所が支援をすることで社会的貢献度が上がると信じています。
業界の魅力が落ちているなか、もう一度意義のある魅力的な業界にするため、社会的にも中小企業経営にも役立てるような取り組みをしていきたいと思います。

「弥生フォーラム2016」レポートページへ戻る

弥生PAP活動報告トップ

弥生PAPトップ

弥生PAP
お問い合わせ:弥生株式会社 カスタマーセンター03-5207-8857

受付時間 9:30~12:00/13:00~17:30
(土・日・祝日、および弊社休業日を除きます。)