弥生プレゼンテーション 今後の会計業界と弥生の戦略 弥生株式会社 代表取締役社長 岡本 浩一郎

会計業界のこれから、その中で弥生が果たす役割

流行り(はやり)と流れの見極め

会計業界ではクラウド会計やFinTech、AIといったキーワードが溢れ、将来について不安視されるようになっています。経済や景気に循環サイクルがあるように、テクノロジーにおいても、循環サイクルが存在します。そして、会計事務所のビジネスモデルにも循環サイクルがあるのではないかと考えます。

1990年代半ばまでは記帳代行が当たり前で、帳簿を整理して提供すれば評価される時代でした。その後自計化が進んできましたが、今後はどの様な時代になっていくのでしょうか。考えるべきポイントは次の3つです。

1. 流れに逆らっては勝てない。何が本当の流れなのか、流行りとの見極めが重要。
2. 未来を予測することはできない。しかし、自ら行動し、正解を創ることはできる。
3. 本当に達成したいことは何か?手段と目的をはき違えてはいけない。

流行りと流れを見極めるのは難しいことです。流行りは、今まであったものが改善され良く見えますが、本質的には変わっていません。流れは、全く新しい価値が創造され、本質的に変わっています。

弥生自身は、流れであるクラウドを活用し、自ら進化し時代の流れを作っていきます。ただし、クラウドは手段に過ぎません。クラウド、PC、スマートデバイスを組み合わせ、本当に達成したいこと、すなわち、会計業務の究極の効率化を実現していきます。

弥生のクラウドへの取り組み

弥生は二通りのアプローチでクラウドを活用しています。

1. 既存のお客さまの為にデスクトップとクラウドを融合させ利便性を向上させる
2. クラウドアプリケーションを新たに開発し、新しいお客さま向けに提供する

デスクトップアプリケーションの強みは使い勝手です。使い勝手を犠牲にしてまで、クラウドを強要する意味はありません。一方で、デスクトップにクラウドのサービスを組み合わせることで新たな価値を提供することができると考えています。同時に、これから会計ソフトの市場をさらに広げていくために、より気軽に使っていただけるクラウドアプリケーションも必要だと考えています。

クラウドの会計ソフトで市場として成立してきているのは、個人事業主向けです。個人事業主で会計ソフトを使っている方は3割強。その中でクラウド会計を使っているのは1割弱。数で言えば、10万強の市場です。弥生はお蔭さまでその中で過半のシェアを得ていますが、シェア以前に、この小さい市場を拡大していくことが必要だと考えています。一方で、会場の皆さんも実感されている通り、法人向けのクラウド会計はまだ市場としては成立していません。小さ過ぎて市場規模の算出が難しいのですが、数としては1万未満だと推計しています。この市場を「弥生会計 オンライン」で変えるために、皆さまのお力をお借りしたいと願っています。

弥生にはデスクトップアプリケーションもあります。ただ、弥生はデスクトップで完結しません。デスクトップに「弥生ドライブ」や「YAYOI SMART CONNECT」といったクラウドサービスを付加することによって、これまでにない価値を提供することができるようになっています。

弥生はお客さま、そして、会計事務所の皆さまに選択肢を提供します。安心と信頼のデスクトップ。会計事務所の皆さまにも評価をいただいており、圧倒的な実績を上げています。クラウドサービスと組み合わせることで、さらなる利便性も実現しています。一方で、クラウドアプリもあります。こちらはより簡単、気軽にご利用いただけるサービスで、特に新しい顧問先の方にご利用いただきたいと思っております。

業務を効率化する仕組みとして二点お話しさせて下さい。「YAYOI SMART CONNECT」は、デスクトップからもクラウドからもご利用いただくことができます。「YAYOI SMART CONNECT」を使えば、銀行明細の取引データを取り込み、自動で仕訳を生成することができるようになっています。さらには紙の領収書をスキャンして、それを自動で仕訳として取り込むことができます。先般の電子帳簿保存法の改正にも対応しており、一定の要件を満たしていれば領収書を廃棄することもできるので、面倒な証憑の整理・保管業務から解放されます。

二点目は、顧問先と会計事務所の間でのデータのやり取りです。まず、デスクトップ同士の場合は「弥生ドライブ」でデータのやり取りを実現しています。顧問先がクラウドの場合は、会計事務所もクラウドを利用いただくことでリアルタイムにデータを確認することができます。

さらに、間もなく顧問先のクラウドと会計事務所のデスクトップの連携を実現します。顧問先が入力した「弥生会計 オンライン」のデータを会計事務所の皆さまは「弥生会計 AE」で見ることができ、編集したデータを再び顧問先の「弥生会計 オンライン」に戻すことができる、この双方向連携機能を今年の秋にリリースいたします。これにより、会計事務所の業務のあり方が大きく変わってくると考えています。

弥生が目指す業務3.0

会計業務を振り返ると、当初の手書きの世界、いわば1.0の世界から、会計ソフトの登場により転記や集計といった後工程を中心に、業務が大幅に改善されました。しかしこの会計業務2.0の時代から長い間進化を遂げることができていませんでした。

今、まさにこの2.0の世界から会計業務3.0の世界に進化しようとしています。証憑をファイリングする必要もなくなり、全て電子化される。証憑は確認後、廃棄してもいい。そして、自動で仕訳され、結果が自動で転記・集計されていく。今はまだこの3.0の世界の入り口に立ったに過ぎませんが、これが1年後2年後3年後、益々進化していき、顧問先の業務も変わっていきます。会計事務所もこのような技術を使って業務を大きく効率化していくことができるようになります。

さらに、商取引3.0という、もう一つの3.0を実現したいと考えています。弥生は2016年2月に「Misoca」を子会社化しました。「Misoca」はクラウド上で請求書の発行、管理ができるサービスを提供しているベンチャーです。現在、ほとんどの中小事業者は、見積から、受注、納品、請求、入金までの業務を紙で行っており非効率です。「Misoca」を使うことで見積のデータが発注データになり、請求データになる。その請求データに基づいて支払い業務ができる。その間、一切紙が必要なくなり、大幅な業務効率化が実現できると考えています。

かつて、商取引は売り手も買い手も手書きで処理をしていました。2.0の世界では、業務ソフトの利用で売り手や買い手の内部での効率化が実現しました。これが3.0の世界では、売り手と買い手が電子的につながり、どちらかが入力したデータを双方がすぐに利用でき、再入力は必要なくなります。これにより双方の業務効率化を実現します。

こういった仕組みは全く新しい概念ではなく、EDIという名前で大企業では既に普及している仕組みです。ただ、中小企業はこの恩恵を受けることができませんでした。それを弥生とMisocaで実現し、中小事業者の業務、会計事務所の業務を大きく変えていきたいと思っています。

会計業界のこれから

冒頭の話に戻って、会計業界のこれからについてお話ししたいと思います。自動化が進むことで会計事務所の業務がなくなるのか。私は、そんなことはないと考えています。会計事務所の本質的な価値は「お客さまの事業が、今どんな状況にあるかを正確に、かつタイムリーに把握することを支援し、それによって、お客さまの事業の健全な運営と発展を実現する」ことと考えています。

本質的な価値はより一層重視され、本質的な価値がないモノはどんどん自動化されていきます。そういった中で、本質的な価値を提供できている税理士・会計事務所の将来はむしろ明るいと考えています。

今日、明日にすべてが自動化されるということではありません。しかし、5年後、10年後には確実に大きく変わっています。5年後、10年後に会計業界がどうなっているかを考え、自らの強みや特性にあった将来像を描いた上で、受け身ではなく能動的に戦略を組んで行動していくことが必要だと思います。

事業コンシェルジュとして

弥生は、ソフトの提供だけではなく、お客さまのありとあらゆるニーズにお応えしていける「事業コンシェルジュ」を目指しています。ただ、それはパートナーである会計事務所の皆さまなしには実現できません。

弥生は、お客さま、会計事務所の皆さまの業務を圧倒的に効率化するツールを提供します。それを是非皆さまに活用していただきたい。そして、お客さまに寄り添い、会計事務所の本質的な価値の提供を図っていただきたいと思っています。

弥生は、会計事務所の皆さまのパートナーとしてお力添えをしていきたいと考えています。会計事務所の皆さまと想いを共にするパートナーとして、我々にとってのお客さまであり会計事務所の皆さまにとっての顧問先の未来を「共創」したいと思っています。

ぜひ、今後ともお力添えをいただければ幸いです。

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