借換について知る

借換の公的制度について

2021/06/03

借換は毎月の返済額を削減することができるという絶大な効果を発揮します。事業者の中では意外に知られていないのが借換の「公的制度」です。本ページでは、「借換保証制度」及び「条件変更改善型借換保証」などの解説をいたします。

借換保証制度とは?

借換は、民間金融機関が直接行うプロパー融資ばかりでなく信用保証付き融資も可能となっています。信用保証協会には、「借換保証制度」という制度があります(平成15年2月創設)。当時、長引く不況やデフレの進行等により、既往借入金の返済の負担が事業者にとって重くなっており、資金繰りの悪化が懸念されていました。このような背景の下、創設された保証制度です。

借換保証制度における“借換え”とは、「信用保証協会の保証の付いた既往の借入金」を「新規保証の付いた借入金」で返済することを意味しています。本制度を利用すれば、保証付きの既存の借入金について、期間のより長い融資への借換えや複数の保証付き融資の債務一本化を行い、月々の返済負担を軽減することができるようになります。なお、借換えに併せて、10年の長期返済で、且つ新たな事業資金の借入をすることも仕組み上は可能となっています。

借換保証の制度概要

内容
対象者
  • 保証申込時点において、保証付きの既往借入金の残高がある方
  • セーフティネット保証による借換えを利用する場合は、セーフティネット保証の認定を受け、適切な事業計画を有している方
資金使途

運転資金・設備資金

  • 既往借入金の返済のほか、新規の運転資金・設備資金を含めることができる
保証限度額 2億8,000万円(中小企業組合は4億8,000万円)
保証期間 10年以内(据置1年以内)
貸付利率 金融機関所定利率
連帯保証人 原則法人代表者のみ(個人事業主の方は原則不要)
担保 必要に応じて
信用保証料率 利用する保証制度による
責任共有 利用する保証による

借換保証制度を実施しているのは、各都道府県の信用保証協会になります。よって、制度の詳細については、各都道府県の信用保証協会のホームページやパンフレットなどを参照してください。都道府県によって多少の違いがありますので、必ずご確認ください。

条件変更改善型借換保証について

事業者に事業改善の意欲があるにもかかわらず、信用保証付き融資を条件変更していると、どうしても新規融資を受けることが困難になります。「条件変更改善型借換保証」とは、条件変更を行ったことにより、前向きな金融支援を受けることが困難な事業者に対して、複数債権を一本化することにより毎月の返済負担を軽減し、新規事業資金の追加を可能とする全国統一の保証制度です。平成28年3月1日に創設されました。

金融機関および認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の支援を受けながら、経営改善の見込まれる事業計画を策定することが前提となっています。

条件変更改善型借換保証の概要

内容
対象者

信用保証協会の申込人資格要件のほか、次の1から3の要件を満たす中小企業者

  • 1.
    保証申込時点において、保証付既往借入金の残高があること
  • 2.
    1の既往借入金の全部または一部について返済条件の緩和を行っていること
  • 3.
    金融機関および認定経営革新等支援機関の支援を受けつつ、自ら事業計画の策定ならびに計画の実行および進捗の報告を行うこと
資金使途 保証付きの既往借入金の返済のほか、事業計画の内容に応じて、当該返済資金以外の事業資金(新規融資分)を含めることができる。
保証限度額 2億8,000万円(中小企業組合は4億8,000万円)
保証期間

15年以内(据置期間1年を含む)

  • 返済資金以外の事業資金(新規融資分)を含める場合は据置期間2年以内。
貸付利率 金融機関所定の利率
連帯保証人 原則法人代表者のみ(個人事業主の方は原則不要)
担保 必要に応じて
信用保証料率

弾力化による保証料率(9段階)を適用

<例>東京信用保証協会

  • 責任共有対象の一般保証料率(0.30%~1.90%)

条件変更改善型借換保証を実施しているのは、各都道府県の信用保証協会になります。よって、制度の詳細については、各都道府県の信用保証協会のホームページやパンフレットなどを参照してください。都道府県によって多少の違いがありますので、必ずご確認ください。

都道府県の借換保証制度(東京都)について

自治体によって、本制度に基づいて独自の借換保証制度を実施しているところもあります。是非、地元自治体のホームページなどで確認して見てください。ここでは、一例として、東京都の「特別借換制度」のご紹介をさせて頂きます。

東京都の「特別借換制度」の概要

内容
対象者

次の(1)から(4)までを全て満たすもの

  • (1)
    中小企業者又は組合であること。
  • (2)
    東京信用保証協会の定める対象の基本要件を満たすこと。
  • (3)
    保証協会の保証付融資を利用していること。
  • (4)
    事業計画を策定し、資金繰りの安定化や経営改善に取り組むこと。
資金使途

運転資金

  • 原則として既往の保証協会の保証付融資の全てが借り換えの対象となる。
保証限度額 今回借り換える保証協会の保証付融資の既往融資残高に、事業計画の実施に必要な資金及びこの融資に係る諸費用を加えた額の範囲内とする。
保証期間 10年以内(据置期間6か月以内を含む。)
貸付利率 金融機関所定利率
連帯保証人 原則として法人代表者(実質的な経営権を持っている者等を含む。)を除き連帯保証人は不要とする。
担保 必要に応じて
信用保証料率 保証協会の定めるところによる。なお、東京都が小規模企業者に対して信用保証料の2分の1を補助する。

なお、通常の「借換保証制度」と「自治体の制度」とどちらがよいのか?については、制度内容の違いを比較して選択するようにしてください。たとえば、東京都の場合は、「小規模企業者に対して信用保証料の2分の1を補助する」というメリットがあります。また、信用保証協会の対応も迅速かもしれません。

両制度の違いが分からない場合は、直接、自治体の窓口や信用保証協会の相談窓口などにお問い合わせください。なお、取引先の金融機関に真っ先に相談しないように注意してください。「業績が悪化しているのか?」など、色々と勘ぐられる可能性があります。まずは、金融機関の耳に入らないように、自治体窓口や信用保証協会に直接相談することをお勧めいたします。

日本政策金融公庫の借換について

日本政策金融公庫(国民生活事業)は具体的な借換「制度」は存在しません。しかし、借換をすることは可能です(「中小企業事業」には制度としてあります)。分かりやすい例としては、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」に関しては、「日本政策金融公庫の既往債務の借換も可能」となっています。

また、通常の融資において、既存の借入金についての借換も交渉可能です。しかしながら、どのようなケースでも借換が認められるわけではありません。なぜ、借換が必要なのか?今後どうなるのか?などについての明確な説明と事業計画、損益計画などが必要になります。

なお、「日本政策金融公庫の借換」については、「借り換えのパターンについて(2)」も参考にご覧ください。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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