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借換について知る

借り換えのパターン(2)

2021/06/03

事業資金の借換に関しては、様々なパターンがあります。今回は、「プロパー融資を公的融資に借換」「公的融資をプロパーに借換」「緊急事態における借換」について解説いたします。同時に、「借り換えのパターン(1)」も参考にご覧ください。

プロパー融資を公的融資に借換(旧債振替)

現在、民間金融機関から借りているプロパー融資を公的融資に借り換える際には、細心の注意が必要になります。プロパー融資とは民間金融機関(銀行、信金、信組など)の直接融資であって、原則金融機関の100%のリスク負担になります。これを信用保証付きの融資に借り換えると、民間金融機関としては、リスクを信用保証協会に転換することができるので、ある意味、とても有難いことなのです。

しかしながら、原則として、保証付き融資で民間金融機関のプロパー融資を借り手側の意に反して返済させることは禁止されています。これを旧債振替といいます。

旧債振替については、「借換における注意点」にて解説いたしますので、参考にご覧ください。

公的融資をプロパーに借換

現在、信用保証協会の信用保証付きで借りている融資をプロパー融資で借り換えることは、珍しくありません。その理由としては、主に2つあると思われます。

業績のよい事業者においては、現在借りている信用保証付き融資をプロパーに切り替えて、公的制度である信用保証協会の保証限度枠については、いざという時のために確保しておきたいと考えます。業績が苦しくなった時に利用したいために、出来る限りプロパー融資に借り換えておきたいということです。しかも、金利引き下げにもつながる可能性がありますので、好んでこのような借換をする事業者もいます。

一理ありますので適切な借換は問題ないと思いますが、一部の専門家などは、これを強く推奨しているようです。しかしながら、信用保証協会との取引をゼロにしたり、極端に利用比率を引き下げるようなことはあまり好ましくないと思われます。

なぜならば、信用保証協会との付き合いがゼロになったり、極端に利用比率が下がっている状態で、会社の業績が急速に悪化して、いざ信用保証協会に相談にいっても、その時の会社の業績・状況によっては、思うように保証を得ることができない可能性があるからです。

そのような潜在リスクもありますので、適切に信用保証協会との取引の維持をするように検討いただければと思います。

次に、民間金融機関側の視点では、業績のよい事業者に対して自行のプロパー融資で他行から借りている信用保証付き融資を借り換えてもらい、自行の残高を伸ばしたい、という思惑が働き、積極的に借換を提案するケースがあります。

たとえば、A銀行は優良企業であるZ社に融資残高を増やしたいと考えています。そこで、A銀行は、Z社がB銀行から借りている3000万円の信用保証付き融資を自行(A銀行)のプロパーに借り換えてもらうように提案などをするわけです。事業者としてはとても有難い提案でもありますので、素直に借換に応じてしまう場合もあるようです。しかしながらA銀行の立場としては、どうなのでしょうか。たとえば、A銀行は成長過程にあるZ社を長く支えてきた金融機関だとしたら、簡単に裏切ってしまうようにも思えます。

このように借換については、そのケースによって、メリット、デメリット、リスクなどについて考慮して判断することが重要になります。

緊急事態における借換(例.新型コロナ特別貸付)

「借換の公的制度について」の「日本政策金融公庫の借換について」でも説明しましたが、最も分かりやすい直近の例としては、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」に関しては、「日本政策金融公庫の既往債務の借換も可能」となっています。

コロナウイルス感染症が拡大する以前に既に日本政策金融公庫から融資を受けている事業者は、せっかく「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を利用しても、既往借入の返済のために手元資金が流出してしまいます。よって、借換を認めるという主旨です。

たとえば以下のような借り入れをした事業者がいるとしましょう。

〈例〉

コロナウイルス感染症拡大“以前”における日本政策金融公庫の借入残高

  • 状況:残高1000万円(一般貸付)、残り5年間にて返済、毎月返済17万円
    ※便宜上、金利は考慮していない。

「新型コロナウイルス感染症特別貸付」にて融資を受けたとしたら?

  • 条件:融資額1000万円、10年返済(据置期間3年)、実質無利子

上記のようなコロナ特別貸付にて借入をした場合、据置期間が3年あるために、この3年間は返済不要です。しかしながら、既往借入に関しては、毎月17万円が返済しなければならず、せっかく資金を借りても手元資金が流失していきます。そのために「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を利用して既往借入の借換にて一本化すれば、毎月17万円の流出を止めることができます。

また、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」については、民間金融機関の“つなぎ”融資の借換についても、一定の条件をクリアすれば可能としています。

さらに、2021年4月執筆時点では、新型コロナウイルス感染症特別貸付を1年の据置期間で融資を受けた事業者に対して、据置期間の終了前に借り換えることによって、2年、3年の据置期間の延長も交渉次第では可能となっています。今後、コロナ禍が終息したとしても、さらに何かしらの不測の緊急事態などが発生する可能性があります。その際には、今回と同様の処置がされるかもしれません。

なお、これまで説明してきたのは、主に小規模・中小事業者が利用している日本政策金融公庫の「国民生活事業」という窓口についてです。日本政策金融公庫には、ある程度の事業規模のある中小企業者を対象とした「中小企業事業」という窓口があります。こちらには「公庫融資借換特例制度」がありますので、参考のためにご案内いたします。

公庫融資借換特例制度

内容
対象者
  • セーフティネット貸付制度の経営環境変化対応資金および金融環境変化対応資金、東日本大震災復興特別貸付、令和元年台風第19号等特別貸付、令和2年7月豪雨特別貸付、企業再生貸付制度の企業再建資金(シンジケートローン特例を除く)、企業活力強化貸付制度の事業承継・集約・活性化支援資金、新型コロナウイルス感染症特別貸付または新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付による貸付けを受ける方。
  • 原則として、既往の公庫融資の借換のほか、新規融資をご利用いただく必要があります。
融資限度額 適用した特別貸付制度(経営環境変化対応資金、金融環境変化対応資金、東日本大震災復興特別貸付、令和元年台風第19号等特別貸付、令和2年7月豪雨特別貸付、企業再建資金、事業承継・集約・活性化支援資金、新型コロナウイルス感染症特別貸付または新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付)の貸付限度額
利率(年)
  • 適用した特別貸付制度に定める利率
  • ただし、借換部分のうち、次の要件に当てはまる場合は、それぞれに定める利率(新型コロナウイルス感染症特別貸付および新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付を除く。)
  • 借換対象の貸付口の加重平均金利(注)がご融資時の基準利率を上回る場合は、加重平均金利を適用します。
  • 一定の要件に該当する場合は、適用利率をもとに計算した加重平均金利、適用した特別貸付制度の上限金利や貸付利率の控除が適用されます。

(注)金銭消費貸借契約証書上の利率をもとに計算(平成23年4月1日以降は条件違反時利率)。

返済期間
  • 経営環境変化対応資金、金融環境変化対応資金
    8年以内(うち据置期間原則1ヶ月以内)
  • 東日本大震災復興特別貸付
    8年以内(うち据置期間原則1ヶ月以内)
    一定の要件に該当する場合は、15年以内(うち据置期間原則1ヶ月以内)
  • 令和元年台風第19号等特別貸付および令和2年7月豪雨特別貸付
    15年以内(うち据置期間原則1ヶ月以内)
  • 企業再建資金
    15年以内(一定の要件を満たす場合は20年以内)(うち据置期間原則1ヶ月以内)
  • 事業承継・集約・活性化支援資金
    8年以内(うち据置期間原則1ヶ月以内)
  • 新型コロナウイルス感染症特別貸付
    15年以内(うち据置期間5年以内)
  • 新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付
    20年、10年または5年1ヵ月(期限一括償還)
その他
  • 既往の融資については一部借換の対象にできないものもあります。
  • 借換部分に対する融資金額は、借換対象口ごとに10万円未満の端数を切り捨てた金額となります。
  • 新型コロナウイルス感染症特別貸付または新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付で借換のみを希望される方は、日本公庫中小企業事業の窓口にご相談ください。
  • 上記以外の貸付条件は、各特別貸付で定められています。
本(特例)制度のお申込み
  • 直接貸付
  • 日本公庫各支店の中小企業事業の窓口にお申し込みください。

日本政策金融公庫とは(1)」も参考にご覧ください。

今後、コロナウイルス感染症のようなパンデミックやその他、何かしら不測の緊急事態が発生する可能性はゼロではありません。よって、このような融資制度が実施される可能性があります。その際には、是非、今回のケースを参考にして、落ち着いて対応したいものです。

なお、借換などを検討される際は、顧問税理士や融資・資金調達に専門家などに相談されることをお勧めします。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。