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制度融資について知る

制度融資とは(2)

2021/02/19(2021/9/15更新)

ここでは制度融資のメリット・デメリット、制度の概要、また日本政策金融公庫との比較など、実務的な知識について説明いたします。

メリット、デメリットについて

1.メリットについて

制度融資の最大のメリットは何といっても「利子及び信用保証料の補助」といえるでしょう。「利子及び信用保証料の補助」は、主に、市区町村の制度融資において実施されている傾向があります。よって、財政的に裕福な自治体は、積極的に「利子及び信用保証料の補助」を実施していますが、財政的に豊かでない自治体は、実施できないところもあると思われます。

一例として、新宿区の制度融資を調べてみますと、以下の通りです。

〈参考〉新宿区制度融資の利子・保証料補助の例(一部)

金利本人負担 金利区負担 信用保証料補助
商工業緊急資金 なし 2.1%以下 全額補助
小規模企業特例資金 1.05%以下
(貸付金利の 1/2)
1.05%以下
(貸付金利の 1/2)
1/2補助(上限26万円)
創業資金 0.7%以下
(貸付金利の 1/3)
1.4%以下
(貸付金利の 2/3)
1/2補助(上限26万円)
環境保全資金 0.7%以下
(貸付金利の 1/3)
1.4%以下
(貸付金利の 2/3)
全額補助

このように制度によって、金利を区が「2/3」補助したり、信用保証料「全額」補助などが実施されています。これは本当に有難いです。

2.デメリットについて

市区町村の制度融資(あっせん融資)においては、相談員との面談があります。自治体によっては3回ほど面談をしなくてはいけません。創業計画書作成などのアドバイスなどをしてくれるのでありがたいことですが、3回の面談にはやはり膨大な時間を費やしてしまいます。

つまり、“時間がかかる”という意味では、「面談」はデメリットなのかもしれません。なお、この面談が終了したら「あっせん書」が交付されますが、これは融資や保証の審査とは別物です。あっせん書が発行されたからといって、融資を約束するものではありません。

都道府県の制度融資は、金融機関に直接申し込みをすることができます。また、原則として面談はありません(都道府県、制度によっては実施する場合もあります)。よって、融資実行までは市区町村と比較すると早いといえるでしょう。

利子や保証料補助を受けられるというメリットがありますが、制度によっては融資実行までに相当の時間を要するというデメリットもありますので、とても悩ましいと言えます。

どのような制度があるのか?

それでは、制度融資にはどのような制度があるのでしょうか。各自治体の制度融資を調べてみますと、実にバラエティに富んでいることが分かります。その地方独特の制度があり、とても興味深いものです。

ここでは、参考として「東京都」と「港区」「新宿区」の制度を取り上げて説明いたします。

1.東京都の例

東京都においては、一般的な「小規模事業融資」や「一般事業融資」「創業融資」などの他、「新型コロナウイルス感染症対策緊急融資」なども実施されています。また、稼ぐ力を創出するための融資制度である「イノベーション創出支援」「成長産業育成支」や社会課題を解決するための融資制度である「働き方改革支援」「ソーシャルビジネス・ソーシャルファーム支援」「ゼロエミッション支援」「BCP・サイバーセキュリティ対策支援」というような特徴的な融資制度も実施されています。

2.港区、新宿区の例

港区においては東京都と同様に一般的な「経営一般融資」「小規模企業特別融資」「緊急支援融資」「環境対策融資」「創業支援融資」などが実施されています。また、新宿区においても同様に、「一般融資」「創業等融資」「政策融資」「商店街融資」などが実施されています。

日本政策金融公庫の融資と制度融資の違いについて

それでは、「都道府県」「市区町村」の制度融資と「日本政策金融公庫の融資」はどういう点が異なるのでしょうか。以下、「日本政策金融公庫の融資」と「都道府県制度融資」と「市区町村制度融資」を比較してみましたのでご確認ください。

公的融資制度の比較・イメージ

日本政策金融公庫の融資 都道府県 市区町村
分かりやすさ 窓口が一つなので分かりやすい 窓口が「都道府県」「市区町村」「金融機関」「信用保証協会」など、複数あって分かりにくい
融資限度額 無担保・無保証人でなければ大きい 1,500万円
~3,500万円程度
都道府県と比較すると少額
利率 市区町村と比較すると高い場合が多い(確実ではない) 低い場合が多い
(確実ではない。補助がある場合も)
利子の補助 原則なし 原則なし(実施しているところもある) 自治体により実施している
信用保証料 必要ではない 必要 必要
保証料の補助 なし(実施しているところもある) 自治体により実施している
審査期間 市区町村と比較すると短い場合が多い 自治体や制度によって異なるが、公庫と比較すると時間を要する場合が多い
面談回数 少 ↔ 多
注意点 上記の判断については、筆者の経験則に基づいていますので、絶対的に正しいわけではありません。また、全国的に全て上記の通りではありませんので、何卒ご了承ください。

日本政策金融公庫も支店によっては多少の地域差はありますが、一つの組織ですので制度については全国共通です。しかしながら、制度融資においては、都道府県は47、市区町村は1,724あって(令和2年12月現在 e-Statによる)、それぞれ制度が異なります。これらを全て比較して把握することは困難です。事業者の方におかれましては、地元自治体の制度融資については是非とも理解して頂きたいものです。それぞれの自治体によって個性のある独自の制度などがあります。是非、調べてみてください。

いったいどこに融資の申請をしたらよいのか?

制度融資は「都道府県制度」及び「市区町村制度」の二つの申請窓口があります。また、同じ信用保証付き融資としては「協会制度」もあります。さらに、公的融資制度という広い範疇で捉えるのなら「日本政策金融公庫の融資」もあります。

事業者にとって、いったいどの窓口が最適なのでしょうか。絶対的な回答はありませんが、創業予定者や小規模・中小事業者において、“分かりやすさ”ですと、やはり「日本政策金融公庫の融資」になります。

信用保証付き融資については、取引先の金融機関に相談をしながら、利用しやすい窓口・制度を活用していく、というスタンスで良いと思います。しかしながら、金融機関(の担当者)によっては、制度融資に対する理解が浅いケースも少なからずあります。

事業規模や業績の状況によっては、プロパー融資の活用も可能になります。売上高規模や事業規模、業績向上などによって、融資の選択肢は増えていきます。

よって、事業者側が主導権を握りながら融資戦略を構築していくのなら、やはり融資・資金調達に詳しい税理士や専門家のアドバイスを受けながら検討するようにしてください。

税理士・会計事務所による支援

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。