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リスケジュール(3)

~リスケジュールの書類と書き方~

2021/01/29

ここではリスケジュールの際の書類の作成ポイントについて解説いたします。基本的には、条件変更依頼書など全5点の書類を作成して提出することをお勧めいたします。専門家によって意見は分かれますが、小規模・中小事業者の場合は、ひとまずこれで十分だと思われます。

リスケに必要な資料について

小規模・中小事業者がリスケジュールを依頼する際に必要な書類について説明いたします。一般的には以下のような資料を作成して提出する必要があります。

提出資料

  • 条件変更依頼書
  • 経営改善計画書(事業計画書)
  • 5カ年損益計画書
  • 資金繰り表(リスケジュール前、リスケジュール後)
  • 金融機関別取引明細書

まずは、「条件変更依頼書」を作成してリスケジュールの相談、交渉をします。また、金融機関によっては、同様の書類を用意しているところもあります。

金融庁としては「条件変更等を行う際に経営改善計画書等がなくても、最長1年以内に計画等を策定することができる見込みがあれば不良債権とはならない」という姿勢ではありますが、可能であるならば、これらすべての書類を揃えてから相談、交渉することが望ましいでしょう。

リスケジュールを承諾してもらったら、他の書類(経営改善計画書、5カ年損益計画書、資金繰り表、金融機関別取引明細書)を作成します。これらの資料を自力で作成するのは困難かもしれませんので、顧問税理士や資金調達、事業再生の専門家に相談することをお勧めいたします。

条件変更依頼書の作成方法について

条件変更依頼書には特に全金融機関共通の雛形などありませんが、一般的には以下のような内容、イメージになります。

〈サンプル〉

具体的には、上記のように、「条件変更期間」「現在の返済状況」「変更後」について記載してください。特に体裁などは上記サンプル通りでなくても問題ありません。なお、原則として、条件変更依頼書にはあまり細かい内容を記載せずに、条件変更の希望内容についてのみをA4一枚サイズにて記載するようにしてください。

経営改善計画書(事業計画書)について

経営改善計画書については、これも特に共通した雛形などはありませんが、小規模・中小事業者については、およそ以下のような内容について記載してください。

〈例〉経営改善計画書の記載項目

  • 当社を取り巻く現状について
  • 今後の動向、見通しについて
  • リストラ計画(経費削減策)について
  • 今後の売上改善策について
  • 今後の財務体質改善について
  • 条件変更の具体的な内容について

当社を取り巻く現状について

業界を取り巻く環境や資金繰りの悪化要因などについて書いてください。「取引先の金融機関なのだから、これくらいのこと分かっているのでは?!」と思われるかもしれませんが、金融機関担当者が融資先一社一社の業界や状況について詳細に把握することは困難です。よって、事業者側からの説明が必要になります。

今後の見通しについて

「今後どうなるのか?どう改善するのか?」について説明しなければなりません。ここでは俯瞰的に大きな視点で説明するようにしましょう。詳細については、次の「リストラ計画」「売上改善策」「財務体質改善」に繋げるようにします。

リストラ計画(経費削減策)について

リストラというと解雇を想像される事業者の方が多いと思われますが、役員報酬や給与のカットや経費削減策など、自ら身を切る対応策の実施が必要になります。事業者によって異なりますが、必要に応じてリストラも必要になってくるでしょう。また、当然ですが、その他の経費・コスト削減策についても説明してください。コスト削減の専門家などに相談するのも一案です。

今後の売上改善策について

損益計画書や資金繰り表は単なる数値でしかありません。その数値の根拠について説明しなければなりません。気持ちや感情に訴えるのではなく、具体的なマーケティング計画や販売・販促計画など、数字を使って説明するようにしてください。

今後の財務体質改善について

損益計画書ばかりでなく、見積もり貸借対照表を作成する事業者などにおいては、自己資本比率などの財務改善目標の数値などを設定してもよいと思われます。「現状の数値」と「目標数値」、そしてどうやって改善していくのかについては、「今後の売上改善策について」と整合されるように注意してください。

条件変更の具体的な内容について

条件変更依頼書を作成していますが、念のため経営改善計画書にも記載しても問題ありません。

なお、総ページ数については、零細・中小事業者の状況にもよりますが、ひとまずは5枚~10枚ほどで十分だと思われます。さらに必要な情報については、金融機関から指示があれば、その都度、資料を追加作成、提出するようにしてください。

さらに詳細な「経営改善計画書」は必要なのか?

参考となる資料として、、中小企業基盤整備機構のホームページに「支援機関向けガイドブック・マニュアル」(経営改善・事業再生研修【基礎編】と経営改善・事業再生研修【実践力向上編】)が掲載されています。

前者は経営改善・事業再生に関する基礎を網羅した「認定支援機関向け経営改善・事業再生研修【基礎編】」の関連テキスト及び講義動画です。後者は、経営改善計画や事業再生計画を実際に作り込むケーススタディを通して実践的な知識と応用力を高めるための研修テキストです。

〈参考〉中小機構 支援機関向けガイドブック・マニュアル

これらの知識は専門家(認定支援機関)向けですので、事業者がこれで勉強するのは少し難しいかもしれません。また、事業者の皆さんがこの膨大なテキストを読んで勉強する余裕などないはずです。よって、特に小規模・中小事業者の場合なら、ひとまずはここで解説したシンプルな経営改善計画書(事業計画書)を作成するようにして下さい。この内容でも金融機関を説得することはできます。

5カ年損益計画書、資金繰り表、金融機関別取引明細書について

これらの書類については、「融資申請時の提出書類/プロパー融資申請書類の書き方」を参考にしてください。ここでは特にリスケジュールの際のポイントについて触れておきます。

「5カ年損益計画書」についてですが、以下のようなイメージになります。

〈サンプル〉5カ年損益計画書

事業者の状況によっては10年分を作成する場合もあります。事業者の中には「5年、10年先のことなど分からない」と主張される方もいらっしゃいます。確かに5年後、10年後のことなど分からないでしょう。しかしながら、金融機関を説得するためには、“計画”を示すことが必要です。「5年~10年以内に債務超過を脱却できて、通常の返済の戻せる」という卒業基準を満たすことがポイントになります。

また、売上高・利益計画については、「80%達成できる」イメージで作成して下さい。80%達成基準や8割基準などと呼ばれています。金融機関にもよりますが、「計画書の数値の80%くらい達成していれば、計画通りに推移している」と判断する場合が多いのです。

次に「資金繰り表」についてですが、以下のようなイメージになります。

〈サンプル〉資金繰り表

ポイントとしては、「リスケジュールしない場合」と「リスケジュールをした場合」の2パターンを作成しておくことです。つまり、リスケジュールを承諾してくれない場合は、「資金ショートして(倒産して)しまうので、今後、借入金の返済などはできない」という状況を見せます。しかしながら、リスケジュールに応じてくれたら「このように業績が改善して、いずれ借入金の返済をすることができる」という状況を見せるのです。

また、「経常収支」がプラスになる資金繰り計画にしてください。翌月繰越がマイナス表示にならないのは当然のことですが、経常収支がマイナスですと、金融機関としては「リスケジュール支援をしても本業がダメなのだから支援しても無駄だ」と判断せざるを得ないかもしれません。十分に注意してください。

次に「金融機関別取引明細書」についてですが、以下のようなイメージになります。

〈サンプル〉金融機関別取引明細書

リスケジュールをする場合、この書類は必ず必要になります。この資料によって詳細な取引状況が分かります。また、「種類(プロパー、保証付き等)」「担保(個人保証、不動産担保、根抵当等)」などを記載しておくとさらに分かりやすくなります。

この書類があれば、メインバンクも、自行がメインだとあらためて把握することもできます。リスケジュールは同一条件で依頼するのが基本的な考え方ですので、「どの金融機関にも同様の条件でリスケジュールを依頼します」という姿勢を示すためにも、金融機関別取引明細書を作成して説明する必要があります。

以上、リスケジュールの必要な書類の書き方について説明いたしましたが、実際に、事業者の皆さんが自力で作成してみると相当大変だと思います。また事業規模によっては、作成する資料も多くなる場合もあります。今回、説明した書類については、あくまでも小規模・中小規模の事業者向けになります。

資料作成に不安を感じるのであれば、是非とも顧問税理士や資金調達、事業再生の専門家に相談することをお勧めいたします。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。