補助金・助成金のメリット・デメリット

2019/11/19(2021/11/16更新)

補助金・助成金のメリットとは

返済不要のお金がもらえる

補助金・助成金をもらうことの直接的なメリットは、やはり「返済不要のお金がもらえる」ということでしょう。(厳密には返す場合もあります)

たとえば、3,000万円規模の新規事業を始めようとして、自己資金(自分のお金)だけでは足りない場合は、一般的には銀行や信用金庫といった金融機関からお金を借りる、つまり融資を受けるということになります。しかし、どれだけ金利が低くなったとはいえ、「借りたお金は返す」のが当たり前。しかも、事業用ローンは住宅ローンとは違い5年~7年という短い期間で返済するのが一般的です。

そんなときにかかる費用の1/2や1/3を助けてくれるというのは事業者にとって大変ありがたいことです。

事業価値がアップする

間接的なメリットとして、「事業価値のアップ」を挙げることができます。

事業者向け補助金・助成金の多くは、書類を書けば助成金がもらえますというわけにはいきません。書類審査や面接審査など、その申請事業に対する審査を受けた結果、採択される(お金がもらえる)ものです。

つまり、補助金・助成金の審査に通ったということで、その事業価値がアップし、ひいては企業の信用度もアップするということがいえます。

事業計画をブラッシュアップできる

さらに、補助金・助成金の申請書作成という作業を通じて、その事業計画を客観的に見ることができます。補助金・助成金の申請書というのは、「審査員」という第三者に自分たちの事業について決められた書式に則って説明するものです。その申請書作成という過程で、事業計画の優位な点、不備な点を発見することができます。つまり、申請書の質問にきちんと答えられていない場合には、その内容や表現について再検討してみることが効果的です。

社内体制を整備できる

雇用関連の助成金などでは、就業規則や出勤簿、労使協定書など多くの書類を準備する必要があります。それらの書類を準備する過程において、必然的に社内体制を整えることにもなります。

補助金・助成金にはデメリットもあることを知っておこう

補助金・助成金は事業者にとってメリットのあるものといえますが、「そもそも、どんな助成金があるのかわからない」「条件が厳しい」「手続きが面倒である」といった理由から、あまり利用されていないものも多い実態があります。

情報収集が難しい

補助金や助成金の情報がマスメディアで紹介される機会は大変少ないので、事業者としては、まず情報を集めることから始めなければなりません。以前は役所などの窓口へ相談に行ったりしなければ情報を得ることができませんでした。さらに言えば、縦割り行政の影響や窓口の担当者の知識によるところもあり、自分たちの探しているものが見つかるとは限りませんでした。今では、インターネットでかなりの情報を収集することができますが、それでも、自分たちの事業にぴったりの情報を得るのは難しいかもしれません。

誰でももらえるわけではない

補助金・助成金にはそれぞれ目的や対象となるための条件が細かく定められています。条件に合わなければ申請もできません。

手続きは楽ではない

補助金や助成金の申請に際しては、(必須ではないものも多いですが)説明会への参加、多くの書類作成、書類の提出や面接などで何度も足を運ぶ必要があるなど、決して簡単な手続きとはいえません。補助金・助成金がもらえることになったとしても、事務処理や事後報告などにも手間がかかります。手続きをきちんとできなければ補助金・助成金はもらえません。

前払いではない

補助金や助成金について、最も誤解されていることとして、「前払いではない」ことが挙げられます。公的制度であることを考えると納得せざるを得ないのですが、何かをする前に申請し、採択されてから行動を起こし、必要なお金はまず自分たちで立て替えておき、後日精算するという流れになるため、立て替える分のお金は融資を受けるなどで調達しなければならないということになります。

課税対象となる

補助金・助成金は「収入」とみなされ課税対象となります。(ただし対価を得て行う取引ではないため消費税は非課税となります。)

補助金助成金の分だけ収益が増え、納める税金が増えることで資金繰りを悪化させる恐れもあります。条件によっては、税金を繰り延べできる「圧縮記帳」を使うこともできます。適切な税務処理を行うためには税理士など専門家とよく相談するほうがよいでしょう。

デメリットを減らす工夫で企業の負担軽減も

申請までの時間や手間と、もらえる金額を天秤にかけた場合、特に人手のない中小企業としては、申請を断念する事業者の方も多いことでしょう。そのような中小・小規模事業者の負担を軽くするために、補助金・助成金事業を実施している機関でもいろいろな対策を講じています。

たとえば、公募要領などの説明書類や申請書の文字を大きくして見やすくしたり、申請書類の枚数や記入する項目を減らしたり、わかりやすい申請書作成見本をつけてみたりといった工夫がなされることも多くなりました。

電子申請が可能な制度も増えてきました。電子申請は紙の申請に比べて提出書類が少なくなり、数字の整合性や入力漏れのチェックができるので申請書作成ミスを少なくできます。

事業者を支援するサイト・機関が増えてきた

中小企業庁が運営する「中小企業向け補助金・支援ポータル『ミラサポ plus 新しいウィンドウで開く』」では、補助金の情報や活用事例を検索することができ、申請までのサービスをワンストップで提供します。

また従来、中小企業を支援する体制が国・都道府県・市区町村のレベルで中小企業支援センターが設置されており、補助金や助成金に関する相談もできる体制となっていましたが、それらに加え、「認定経営革新等支援機関」や「よろず支援拠点」といったさまざまな支援機関が数多く設立されています。

認定経営革新等支援機関(認定支援機関)は、中小企業・小規模事業者が安心して経営相談等が受けられるために、専門知識や実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等に対し、国が認定したものです。顧問税理士などがいらっしゃれば、登録しているか確認してみると良いでしょう。「よろず支援拠点」は中小企業や小規模事業者からの、経営上のあらゆる相談に対応するために国が全国に設置した経営相談所で、各都道府県に設置されています。また、弥生でも、「認定支援機関」を取得した税理士・会計事務所取得をはじめ、資金調達支援を行う専門家の紹介を無料で実施しています。

弥生が提供する本サイト「資金調達ナビ」でも、補助金・助成金等を検索することができます。「地域」と「事業形態」を入力するだけのかんたんなステップで全国の補助金・助成金に加え、全国の金融機関が提供する融資商品が一括で表示されます。さらに、業種や従業員数といった自社の状況や、資金使途、調達希望金額といった自社のニーズで絞り込むこともでき、あなたに合った資金調達手段を見つけることが可能です。

補助金・助成金を申請しやすい環境が徐々に作られてきたといえます。

著者:那須 藤生(中小企業診断士・一級販売士)

総合商社等で中国・アジアビジネス担当、現地法人設立、海外新規事業推進に携わる。1999年有限会社ピー・エムスリーを設立、代表取締役に就任後、補助金・助成金、公的融資等資金調達支援、組織・人材関連、医療福祉介護、流通業・飲食業関連コンサルティングの他、累計1000人以上の起業・創業を支援。東京都中小企業振興公社専門相談員、川崎市経済局金融課創業支援融資診断員、ダイヤモンド社公認インストラクター、金融財政事情研究会講師などとして活動。

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