確定申告を税理士に頼む費用はいくら?相場や価格の決まり方を解説
2023/01/19更新

この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

個人の所得税の確定申告は、税理士に依頼して代行してもらうことが可能です。個人事業主の確定申告には時間と手間がかかりますし、税務的な知識などわからないこともあるので、「税理士に依頼して、その分の時間を本業にあてたい」と考える方も多いでしょう。
そこで、確定申告を税理士に頼むときの費用の相場や、費用を決める要素について解説。併せて、税理士に頼むメリット・デメリットや税理士を選ぶポイントなどもご紹介します。税理士に依頼するか悩んでいる方は、本記事を参考にしてください。
確定申告を税理士に頼んだ場合の費用相場
個人事業主が所得税の確定申告を税理士に頼んだ場合、10万円前後から20万円程度の費用がかかります。同じ個人の所得税の確定申告でも、会社員が医療費控除やふるさと納税の申告だけを依頼する場合は数万円程度で依頼が可能ですが、個人事業主の所得税の確定申告では経費を帳簿につけたり決算書を作成したりしなければならないので、会社員の申告よりも作業が多いため、費用も高額になります。
費用を決める要素
確定申告を税理士などの専門家に依頼するときの費用は、さまざまな要素によって決まります。税理士事務所や税理士法人ごとにそれぞれの報酬体系が定められているため、Webサイトなどを確認するのが第一歩です。
一例として、費用が変動する要因になりやすいポイントをご紹介しましょう。
顧問契約か確定申告のみか
顧問契約とは、税理士に一定期間、月々の売上や経費をまとめてもらったり、税務相談にのってもらったりすることができる契約のことです。個人事業主でも、税理士と顧問契約を結んで経費や節税などに関する相談にのってもらうことができます。税理士に支払う費用の総額は多くなりますが、その分手厚いサービスが受けられるのです。
一方、確定申告のみをスポットで依頼するという契約もあります。このような単発の契約では、税理士費用の総額は安くなりますが、日常的な税務相談などはできません。あくまでも、所得税の確定申告書類の作成や申告代行のみを依頼します。
売上額
年間の売上が500万円以下か、500万円超1,000万円以下か、1,000万円超かといった段階ごとに、基本料金を定める税理士事務所も多くあります。一般的に売上が大きくなると取引量も多く、申告にかかる手間も増えるため、税理士報酬は売上額に比例して高額になりがちです。
記帳の量
取引件数が多いほど申告にも手間がかかるため、料金が高額になります。また、そもそも領収書をすべて預けて帳簿の作成から依頼するのか、自分で記帳して税理士にチェックしてもらうのかでも費用は変わります。税理士が指定する確定申告ソフトを利用すると料金が割引になることもあるので、気になる税理士が見つかったら確認しましょう。
青色申告か白色申告か
青色申告事業者は、白色申告事業者に比べて決算書の作成に手間がかかるため、その分料金が加算される場合があります。
消費税の申告の有無
消費税は、所得税とは異なった複雑な計算が必要になります。そのため、多くの場合、消費税の確定申告があると費用が上乗せされることが多いでしょう。
追加要素
所得税の確定申告が単なる事業の収入と経費の計算だけにとどまらない場合、一般的に税理士費用は追加料金が必要です。医療費控除や生命保険料控除、配当所得、ふるさと納税、住宅ローン控除など、申告時にやってもらうことの要素が増えれば、その分高額になります。
確定申告を税理士に頼むメリット
所得税の確定申告を税理士に頼むことで、手間と時間をかけずに正確で信頼性の高い申告ができます。申告を税の専門家に任せ、その分の時間で本来の仕事を行えば、生産性の向上につながるでしょう。
ここでは、確定申告を税理士に頼むことで得られる、5つのメリットをご紹介します。
手間が省ける
所得税の確定申告を税理士に依頼すれば、自分で申告書の作成をする必要がなくなります。帳簿作成や領収書や売掛金、買掛金などの入力まで対応してもらえば、経費処理にかかる手間を大幅に削減可能です。本業で忙しい個人事業主にとって、日々の業務の合間に経費処理や事務処理を行うのは簡単なことではありません。税理士に確定申告を任せることで、負担を軽減できます。
正確性が高く信頼される確定申告が可能
税理士は税金の専門家ですから、正確性が高く信頼される確定申告が可能です。申告納税制度を採用している所得税では、自己申告した内容をもとに税額が決まります。だからこそ、申告する側がみずから正しく税金を計算し、申告と納税をしなければいけません。専門家に任せることで抜けもれの心配なく確定申告書や決算書が作成できます。第三者で税務のプロである税理士の目が入ることで、正確な申告をしているとみなされやすくなるでしょう。
節税につながる制度を活用できる
個人事業主には、平均課税や貸倒引当金、消費税の簡易課税など、節税につながりうる制度が複数あります。知識が豊富な税理士に確定申告を任せれば、状況に応じて有利な方法を選択してもらえるでしょう。ただし、消費税の簡易課税制度の選択などは顧問契約をしていないと判断できないこともあります。さらに、契約内容によっては、節税対策の相談や情報提供などを受けることも可能です。
税務調査が入ったときに対応してもらえる場合がある
税理士に確定申告や記帳を依頼した場合、税務調査に入られた際に対応をお願いできます。それほど事業規模の大きくない個人事業主でも、状況によっては税務調査が入ることがあります。税務署の職員への対応などは、申告書を作成した税理士に対応してもられえれば安心でしょう。
ただし、多くの場合、税務調査の対応を依頼するには、別途費用がかかります。また、契約内容によっては対応してもらえないこともあるため、気になる方はあらかじめ確認しておくことが必要です。
税理士が確定申告書提出までやってくれる場合がある
所得税の確定申告書の作成だけでなく、税務署窓口やe-Taxでの提出まで税理士が担当してくれる場合もあります。提出も代行してもらえれば、確定申告にかかる業務負担をさらに軽減できるでしょう。自身がe-Taxができる環境になくても、税理士からe-Taxで確定申告書を提出してもらうことで、青色申告特別控除の65万円控除も利用できます。なお、確定申告書・決算書類の作成のみで、提出は納税者本人が行う場合もあるので、税理士に対応してもらえる範囲をあらかじめ確認しましょう。
確定申告を税理士に頼むデメリット
確定申告の代行を依頼することで、デメリットとなる部分もあります。税理士に頼む前に覚悟しておくべきポイントについて見ていきましょう。
費用がかかる
専門家に仕事を依頼すれば、それに見合った報酬を支払わなければいけません。これは、税理士に確定申告を依頼した場合も同様です。頼む税理士や申告内容によって金額は変わりますが、ある程度まとまった費用を支払うことになるので、それだけの効果が得られるかどうかは十分な検討が必要です。
例えば、確定申告に30時間を費やしていた方が、税理士に依頼することで10時間の作業で済むようになったとします。この方が、削減できた20時間で税理士報酬以上に働けるのであれば、依頼するメリットがあるでしょう。また、金銭に換算できないとしても、その20時間で仕事をがんばる英気を養えたり、安心感を得られたりすることで十分なメリットが得られると思うのであれば、税理士への依頼はおすすめです。
早めに依頼しておく必要がある
確定申告は、毎年1月1日~12月31日の間に発生した所得を、翌年3月15日(土日祝であればその翌平日)までに申告します。
自分で所得税の確定申告を行っている個人事業主の中には、3月に入ってから慌てて領収書などの取りまとめを始めるという方もいるでしょう。しかし、税理士に依頼する場合は、ある程度早めに契約を締結しなければいけません。そのうえで、確定申告に必要な情報や書類を税理士と共有することになります。
申告期限ギリギリになってから慌てて税理士を探そうとしても、対応できる税理士はなかなか見つかりません。たとえ対応可能な税理士がいたとしても、特別料金が上乗せされる可能性があります。
確定申告を税理士に依頼する際の流れ
確定申告を税理士に依頼する場合、確定申告書提出までに下記の5つのステップを踏むことになります。事前に流れを把握しておけば、依頼から申告までをスムースに進めやすくなるでしょう。
1. 見積もりを取って依頼する税理士を検討する
税理士事務所や会計事務所のWebサイトなどを確認して、いくつか見積もりを取ります。見積もり内容や担当者とのやりとりを通して、どこに依頼するか検討します。
2. 契約を締結する
依頼する税理士が決まったら、次は契約の締結です。契約書の雛形は税理士側が作成するため、内容を確認して署名等を行うことになります。
3. 必要書類をそろえて提供する
契約内容によっては、領収書や帳簿類などの必要書類を提供します。必要書類の内容は、契約時に税理士から案内があるはずです。そろえるのに時間がかかることもありますから、余裕を持って準備しましょう。
4. 出来上がった確定申告書を確認する
必要書類を提出したら、税理士が確定申告書を作成します。確定申告書が完成したら、内容を確認します。 たとえ税理士が作成した申告書でも、個人事業主本人の最終確認は必須です。専門家が作成した書類とはいえ、自分の税金として申告するものなので、しっかりチェックしてください。
5. 税理士に確定申告を行ってもらう
税理士がe-Taxなどを用いて、確定申告書を提出します。ただし、契約内容によっては自分で申告する場合もあります。その後、税金を納付すれば所得税の確定申告は完了です。なお、報酬から所得税が源泉徴収されている場合などは、追加の納付が不要であったり、還付を受けられたりすることもあります。
税理士の選び方
税理士は非常に数が多いため、どのような税理士から見積もりをもらえばいいか、誰に依頼すればいいかで悩む方も多いでしょう。続いては、税理士を選ぶ際に意識しておきたい指針を、4つご紹介します。
自分の事業・業種に詳しいか
税理士は税の専門家ではありますが、あらゆる業界に精通しているわけではありません。自分が営んでいる事業や業種に詳しい税理士でないと、業界特有の言葉や取引の慣習などがわからない可能性があります。いちいち説明をするのは手間ですから、なるべく自分の業界をよく知る税理士を選ぶのが大切です。
スムースにやりとりできるか
確定申告が完了するまでは、税理士や税理士事務所の担当者と頻繁にやりとりを重ねることになります。そのため、意思の疎通がスムースにできて、やりとりが負担にならない税理士を選ぶのがおすすめです。相性が合うかは人によって違うので、見積もり依頼などのやりとりを通して判断しましょう。
料金体系が合っているか
税理士の料金体系は、税理士法人や税理士事務所ごとに異なります。自分に合った料金体系の税理士を選んでください。例えば、年間売上が300万円の個人事業主が、売上1,000万円以下は一律料金という税理士に依頼すると、費用が割高になる可能性があります。
スケジュールや手間が費用と見合うか
確定申告に必要な書類の提出期限や、対応してもらえる業務の範囲についてもあらかじめ確認しておきましょう。希望に合う税理士でないと、期待したほどの効果が得られなかったと感じてしまう可能性があります。
確定申告を依頼する税理士は慎重に選ぼう
確定申告を誰に依頼するかによって、かかる費用や対応範囲、どの程度節税できるかなどが変わってきます。税理士を探すときは、基本料金だけをチェックするのではなく、最終的にかかる費用や相性、費用に見合う効果が得られるかなどを意識しましょう。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版』
