消費税申告とは?対象者や計算方法、必要書類や申告期限について解説

2023/07/13更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

消費税は、多くの人にとって非常に身近な税金です。しかし、消費者として買い物をするときに支払う消費税には慣れていても、事業者として受け取った消費税を納めるとなると、どうやって申告や納付をしたらよいのかわからないと戸惑う方も多いのではないでしょうか。

個人事業主や企業は、売上が一定の金額を超えると、消費税の申告・納付の義務がある「課税事業者」になります。課税事業者になると、所得税や法人税などの確定申告とは別に、消費税の申告を行わなければなりません。

ここでは、消費税の申告義務のある対象者や申告・納付する消費税の計算方法、申告時に必要な書類、申告期限など、消費税の確定申告について詳しく解説します。

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売上が一定の金額を超えた課税事業者が行う消費税申告

消費税は、主に商品やサービスを購入(消費)する際に発生する税金です。買い物をするとき、消費者は、10%または軽減税率で8%の消費税を商品代金に加算して支払っています。

しかし、その行為によって、消費者が消費税を申告・納付しているわけではありません。では、消費税申告とはどのようなことを指すのでしょうか。

消費税を受け取った人が支払った人の代わりに税務署へ申告する

消費税申告とは、事業者が納めるべき消費税を計算して確定申告書を作成し、税務署に申告することです。消費税は「間接税」といい、税金を負担する人(消費者)と納税者(事業者)が異なります。事業者は、商品やサービスを販売したときに消費者から預かった消費税を、消費者の代わりに税務署に申告する必要があるのです。

なお、消費税を受け取った事業者も、仕入れなどの際には消費税を支払います。そのため、実際に申告・納付する消費税は、消費者から預かった消費税から、事業活動の中で支払った消費税を差し引いた金額になるのです。

一定の要件を満たせば消費税の申告・納付が免除される

多くの場合、企業は事業年度ごとに消費税の申告・納付を行いますが、一定の要件を満たせば、消費税の納税義務が免除されることもあります。この場合の、消費税の申告義務のある事業者を「課税事業者」、申告義務のない事業者を「免税事業者」と呼びます。

2023年10月から開始されるインボイス制度への対応

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、売手が買手に正確な消費税額等を伝えるために、適用税率や税額の記載を義務付けたインボイス(適格請求書)を発行する制度のことです。

2019年10月の消費税増税で消費税率は10%になりましたが、食品や定期購読の新聞などには8%の軽減税率が適用されています。そのため、仕入れと販売でかかる税率に違いが生じるケースがあり、商品ごとの消費税率や消費税額を請求書内で明記するこの制度が採用されるようになりました。

インボイス制度が始まると、買手は仕入れにかかった消費税を控除するために、売手である取引相手が発行するインボイスが必要となります。一方、売手は買手である取引相手から求められたときに、インボイスを発行しなければなりません。

ただし、インボイスは納税地の税務署長に対して登録申請書を提出し、適格請求書発行事業者にならないと発行できないため、事前の登録が必要です。

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消費税の申告・納税義務のある「課税事業者」と免除される「免税事業者」の要件

消費税の確定申告は、すべての事業者が対象になるわけではありません。申告・納税義務が生じるかどうかは、個人事業主も法人も同様に、課税売上高の金額が関係します。申告・納税義務のある課税事業者と申告・納税義務が免除される免税事業者の要件を解説します。

基準期間または特定期間の課税売上高かつ給与等支払額が1,000万円を超えると課税事業者

消費税の申告・納付義務があるのは、基準期間または特定期間の課税売上高かつ給与等支払額が1,000万円を超えた、課税事業者です。課税売上高とは、消費税の課税対象になる日本国内での売上のこと。商品の販売や運送、広告など、対価を得て行う取引のほとんどは消費税の課税対象となります。

なお、消費税の申告義務にかかわる基準期間と特定期間は、個人事業主と法人とで異なります。これは、個人事業主の事業年度が1月1日~12月31日と一律で決まっているのに対して、法人は決算日を自由に設定できるからです。

基準期間と特定期間のいずれかに課税売上高かつ給与等支払額が1,000万円を超え、課税事業者に該当した場合は、消費税課税事業者届出書を速やかに管轄の税務署へ提出する必要があります。基準期間と特定期間は下記のとおりです。

個人事業主の基準期間と特定期間

  • 基準期間:前々年の1月1日~12月31日
  • 特定期間:前年の1月1日~6月30日

法人の基準期間と特定期間

  • 基準期間:前々年の事業年度
  • 特定期間:前年の事業年度開始の日以後6か月間

基準期間・特定期間の課税売上高かつ給与等支払額が1,000万円以内であれば免税事業者

基準期間または特定期間のいずれかの課税売上高かつ給与等支払額が1,000万円を超えていない事業者は、消費税を申告・納税する義務のない免税事業者となります。

また、企業を設立した1年目も、前々年や前年の売上が存在しないため課税事業者にはなりません。ただし、資本金が1,000万円以上の企業を設立した場合は、売上高にかかわらず設立年度から課税事業者とみなされるため注意が必要です。

消費税の計算方法

消費税の確定申告における計算方法には、原則(一般課税)と簡易な計算方法(簡易課税制度)の2種類があります。このうち簡易な計算方法は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者のみ選択できる計算方法です。

どちらの計算式を選ぶかによって消費税の納付額に違いが出る場合があるため、それぞれの内容をしっかり確認しておくことが大切です。

原則(一般課税)

消費税の計算方法の原則では、課税売上高にかかる消費税額から、事業者が仕入れや経費で支払った消費税額を差し引いて(仕入税額控除)求めます。原則の計算式は下記のとおりです。

原則の計算式

課税売上高にかかる消費税額-仕入れなどにかかる消費税額=納付する消費税額

課税売上高にかかる消費税額と、仕入れなどにかかった消費税額については、それぞれ10%と8%(軽減税率)の税率ごとに区分して計算します。

例えば、事業年度における課税売上高が500万円で、仕入れや経費の合計額が100万円、いずれの消費税率も10%の場合、上の計算式にあてはめると実際に支払う消費税額は40万円になります。

500万円×10%-100万円×10%=40万円

なお、取引の中に非課税取引がある場合は、それを除外して計算する必要があります。また、売上や仕入れの中に軽減税率が適用される商品があったり、インボイス制度導入後、インボイスが発行されず仕入税額控除を受けられなくなったりすると、計算がやや複雑になります。そのため、特に細かい取引が多い事業者の場合、次に紹介する簡易な計算方法に比べて負担が大きくなりがちです。

簡易な計算方法(簡易課税制度)

一般的に簡易課税制度と呼ばれる簡易な計算方法は、課税売上高にかかる消費税額に業種ごとに定められたみなし仕入率を掛け、その金額を仕入れなどにかかった消費税額として計算する方法です。簡易な計算方法の計算式は下記のとおりです。

簡易な計算方法の計算式

課税売上高にかかる消費税額-(課税売上高にかかる消費税額×みなし仕入率)=納付する消費税額

簡易な計算方法を選択することが認められているのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者のみです。なお、基準期間の課税売上高が5,000万円以下でも、事前に届出をしなければ簡易な計算方法を選ぶことはできないので注意しましょう。

簡易な計算方法で用いるみなし仕入率は、業種によって決まっています。

簡易な計算方法での事業区分
事業区分 みなし仕入率 該当する事業
第1種事業 90% 卸売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)をいいます。
第2種事業 80% 小売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第1種事業以外のもの)、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)をいいます。
第3種事業 70% 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含みます。)、電気業、ガス業、熱供給業および水道業をいい、第1種事業、第2種事業に該当するものおよび加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除きます。
第4種事業 60% 第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業などです。
なお、第3種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第4種事業となります。
第5種事業 50% 運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)をいい、第1種事業から第3種事業までの事業に該当する事業を除きます。
第6種事業 40% 不動産業

例えば、卸売業を営む事業者の課税売上高が4,000万円だった場合、みなし仕入率は90%となり、上の計算式にあてはめると次のようになります(課税売上高にかかる消費税に軽減税率の適用がない場合)。

4,000万円×10%-4,000万円×10%×90%=40万円

簡易な計算方法は非課税取引を分ける必要がないため、原則の計算方法に比べて手間がかかりません。ただし、実際に仕入れなどにかかった消費税額が大きかった場合でもみなし仕入率で計算するため、状況によっては仕入額控除をした消費税額(原則で計算した消費税額)よりも、実際に支払う消費税額が多くなってしまう可能性があります。

消費税の確定申告に必要な書類

消費税の確定申告に必要な書類は、原則と簡易な計算方法とで異なります。原則の場合は、「消費税及び地方消費税確定申告書(一般用)」と「付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表」が必要です。一方、簡易な計算方法では、「消費税及び地方消費税確定申告書(簡易用)」と「付表5 控除対象仕入税額の計算表」が必要になります。申告書に加えて、添付書類(付表)も違うものを使用するので注意してください。

なお、必要書類は国税庁のWebサイトや税務署窓口で入手できるほか、確定申告書等作成コーナーで作成することができます。

消費税申告の期限

消費税の確定申告期限は、法人の場合は事業年度終了の日の翌日から2か月以内、個人事業主の場合は翌年の3月31日までです。どちらも、申告書類の提出先は納税地を所轄する税務署です。個人事業の方は、所得税の確定申告の申告期限とは異なるため注意してください。

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消費税の確定申告を理解して正しく申告・納付を行おう

消費税は、税金を負担する人と納税者が異なる間接税です。基準期間または特定期間の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者となり、消費税の申告・納付の義務が生じます。消費税の申告が期限を過ぎると、延滞税などのペナルティが発生するため気をつけてください。

会計ソフトを使うと、消費税額の計算はもちろん、消費税の確定申告書もスムースに作成できます。2023年からはじまるインボイス制度に対応するためにも、課税事業者に該当した場合は、適切に消費税額を計算し、正しく申告・納付を行っていきましょう。

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よくあるご質問

消費税申告とは?

消費税申告とは、事業者が納めるべき消費税を計算して確定申告書を作成し、税務署に申告することです。事業者は、商品やサービスを販売したときに消費者から預かった消費税を、消費者の代わりに税務署に申告する必要があります。詳しくはこちらをご確認ください。

消費税の確定申告に必要な書類は?

消費税の確定申告に必要な書類は、原則と簡易な計算方法とで異なります。なお、必要書類は国税庁のWebサイトや税務署窓口で入手できるほか、確定申告書等作成コーナーで作成することができます。詳しくはこちらをご確認ください。

消費税申告の期限はいつまで?

消費税の確定申告期限は、法人の場合は事業年度終了の日の翌日から2か月以内、個人事業主の場合は翌年の3月31日までです。どちらも申告書類の提出先は納税地を所轄する税務署です。個人事業の方は所得税の確定申告の申告期限とは異なるため注意してください。詳しくはこちらをご確認ください。

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この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。

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