通勤交通費の計算方法は?非課税になる範囲や規程の作り方を解説

2022/12/09更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

通勤交通費の計算や管理は、経費処理業務の中でも複雑で処理数も多い業務になります。実費支給になる場合が多いことから、従業員ごとに個別に申請をしてもらって管理しなければいけなかったり、所得税や住民税の対象にならないなど、通常の給与とは異なる特徴を持っていたりします。

そこで本記事では、通勤交通費支給に関する手間をできるだけ減らすとともに、正しい給与計算を行うために知っておきたい基礎知識について解説します。

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会社が従業員に支払う交通費の区分

会社が従業員に支払う交通費には、出張交通費や営業交通費といった「業務上発生した移動にかかる交通費」と、通勤交通費の「通勤にかかる交通費」の2つの区分があります。まずは、それぞれの特徴について知っておきましょう。

出張交通費や営業交通費

従業員が出張や営業に行ったときの交通費は、給与とは別に実費で計算されるものです。遠方への出張などの場合は、あらかじめ一定金額を仮払金として従業員に渡し、出張後に実際にかかった金額と仮払金の差額を精算する方法もあります。

通勤交通費

通勤交通費は、従業員が通勤するための交通費です。電車・バス・新幹線代などの公共交通料金の他、車通勤時のガソリン代も含まれます。一般的に、通勤交通費を福利厚生の一環として、給与と同時に支給する場合が多いですが、通勤交通費の支給の有無や金額、支給方法は、それぞれの会社の賃金規程や就業規則で規定されています。また、同一労働同一賃金の観点から、雇用形態によって対応を変えることはできません。ただし、「月の所定労働日数の半分を超えて出社した従業員には定期代を支給し、半分以下の従業員は実費精算を行う」など、条件を設けて支給方法を変えるといった対応は可能です。

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通勤交通費の計算例

通勤交通費は、賃金規程や就業規則に沿って支給します。そのため、具体的な計算方法はそれぞれの会社によって異なります。

ここでは、通勤交通費の一般的な計算方法について、交通手段別に解説します。

公共交通機関を利用する場合の通勤交通費

電車やバスなどの公共交通機関を利用して通勤する場合の通勤交通費は、合理的なルートの定期代を支給する場合が多いです。合理的なルートとは、最も通勤時間が早いルートや、最も金額が安いルート、最も乗り換えが少ないルートなどのことです。 何を重視するかは会社が決定しますが、最も金額が安いルートが好ましいとする場合が一般的です。しかし、最も金額が安いルートにすると、最も通勤時間が早いルートより30分も余計に時間がかかってしまうという場合、従業員の負担につながるため柔軟な対応が求められます。

具体的な支給方法は、定期代相当額を毎月の給与と合わせて支給する場合が多いです。1か月分の定期代を上乗せするか、3か月定期や6か月定期の代金を3か月ごと、または6か月ごとに支給します。「試用期間中は3か月定期、その後は6か月定期」など、賃金規程で定めたうえでそれにもとづいて支給しましょう。

自家用車を利用する場合の通勤交通費

自家用車で通勤する場合の通勤交通費は、1kmあたりのガソリン代をあらかじめ給与規程に規定しておいて、それに距離を掛けて算出するケースが多いです。なお、ガソリン価格の変動に合わせて「ガソリン代が1円上がったから交通費も上げる」といった細かい調整は基本的に行いませんが、ガソリン代の設定基準や見直す時期を明示化することは可能です。

ガソリン代を1kmあたりいくらに設定するかは会社によりますが、10~15円程度が1つの目安です。

その他、自家用車と公共交通機関を併用していて、駅前に駐車場を借りる必要がある場合などには、駐車場代の支給を行うこともありますが、上限額や支給条件(家から最寄り駅までの距離など)を規定しておく必要があります。

テレワークが主な場合など、出社頻度が低い場合の通勤交通費

主にテレワークを行っている会社では、通勤交通費を定期代などとして支給するのは合理的ではありません。その場合の通勤交通費は、出社日数に応じて個別に精算するのがいいでしょう。

また、出社する機会が少なく、客先への直行直帰が多い場合などは、実費で通勤交通費を支給し、営業交通費として直行直帰の交通費を区分して精算するという方法を採用します。

通勤交通費と税金・社会保険料

通勤交通費のうち、非課税限度額までは所得税・住民税の課税対象とはなりません。上限を超えた部分については課税対象となります。また、社会保険料については、非課税の有無を問わず計算の対象となります。

公共交通機関を利用した場合

通勤交通費として公共交通機関を利用した場合の非課税限度額は、1か月あたり15万円です。ただし、会社規程上定められないルートは認められない場合があります。

自家用車を利用した場合

通勤交通費として自家用車を利用した場合の非課税限度額は、通勤距離によって全額課税から3万1,600円までの幅があります。

自家用車を利用した場合の1か月当たりの非課税限度額

片道2km未満 全額課税となり非課税の金額は0円
片道2km以上10km未満 4,200円
片道10km以上15km未満 7,100円
片道15km以上25km未満 1万2,900円
片道25km以上35km未満 1万8,700円
片道35km以上45km未満 2万4,400円
片道45km以上55km未満 2万8,000円
片道55km以上 3万1,600円

なお、駐車場代は特定の個人に専属利用させる場合は、非課税になりません。原則として全額が課税対象となります。

公共交通機関と自家用車を併用した場合

通勤に公共交通機関と自家用車を併用した場合は、両方の交通費の合計15万円までが非課税になります。ただし、会社が規定する条件のルートを通っている必要があります。

通勤交通費に関する賃金規程の作り方

通勤交通費の支給は、社内の賃金規程にもとづいて行わなければいけません。すべての従業員に公平に交通費を支給できるように、賃金規程を作っておきましょう。

続いては、通勤交通費に関する規定を作るときに必要な項目をご紹介します。

通勤交通費の支給条件

支給条件とは、「どういう場合に通勤交通費を支給するのか」ということです。

例えば、「自宅から歩いて10分の駅に行くのにバスを使いたい」という従業員がいたときに、規程 がないと、認めるか否かがその場その場の判断になってしまいます。あらかじめ「公共交通機関を使った通勤交通費の支給は移動距離が1.5kmを超えた場合に限る」などと定めておけば、判断基準が明確になります。

同様に「高速道路の料金は支給しない」「有料特急の料金は支給しない」「駐車場代金は個人負担とする」など、支給の際に考慮すべき条件も、賃金規程に加えて定めるのが望ましいです。

通勤交通費の支給金額の算出方法

どのように通勤交通費の金額を算出するかについても、定めておく必要があります。「原則として最も運賃の安いルートの交通費を支給するが、30分以上通勤時間が長くなる場合は2番目に安いルートを認める」など、支給金額の決め方について規定しておきましょう。

併せて、通勤交通費は1か月分の定期代を給与と同時に支給するのか、あるいは3か月や6か月ごとに、3か月定期の代金や6か月定期の代金を支給するのかといった支給方法についても決めておきます。

また、「月に2万円を上限とする」など、月ごとの支給額の上限を定める場合もあります。

通勤交通費の申請方法

新入社員や、引越しをした従業員などが通勤交通費の申請を行う際の手続き方法についても定めておくと安心です。通勤交通費申請書などを作成して、通勤ルートやかかる交通費の額を申請してもらいます。

その後、申請されたルートが合理的かどうかを確認したうえで、支給を決定します。

その他

定期代を支給している従業員が長期休暇に入った場合や、月の途中で引越しをした場合の精算方法、退職時の日割り計算の可否や計算方法などについても、あらかじめ規定しておくといいでしょう。

通勤交通費の支給に関する注意点

通勤交通費の支給に関しては、いくつかの注意点もあります。誤った計算や支給をしてしまわないように気を付けなければなりません。

社会保険料は通勤交通費を含めて計算する

通勤交通費は、一定の限度額まで非課税になります。しかし、社会保険料の計算をする際は、通勤交通費も含めて計算しなければいけません。

計算方法が違うため、混同しないように注意が必要です。

通勤交通費は原則的に現金で支給する

通勤交通費は賃金の一種とみなされるため、原則的に、現金で支給します。経理の合理化などで給与に合わせて支給することもできますが、定期代は高額である場合が多いため、本人が立て替える必要があることから従業員の負担を考慮すべきです。なお、従業員側との合意がとれている場合は、定期券などの現物支給が認められます。

通勤交通費の後払いは避ける

会社側が定期代を後払いにしてしまうと、その都度、従業員が一時的に立て替えなければならず、大きな負担がかかります。通常の給与は後払いが基本ですが、通勤交通費についてはなるべく先に支給しましょう。

通勤交通費が一律支給の場合は税金が課税される

通勤交通費として基準がなく「出社手当」のような意味合いで、従業員全員に一律の通勤交通費を支払う場合は、課税対象となります。

トラブルやミスのない通勤交通費の支給のためにできること

通勤交通費を正しく支給するためには、さまざまな状況に対応できる賃金規程が不可欠です。現状、規程を作っていない会社は、どのように通勤交通費を支給するのかを明文化しておきましょう。規程がある会社でも、支給条件の抜けや漏れがある可能性もあります。この機会に見直してみてください。

また、通勤交通費を支給する際の所得税計算や社会保険料計算には、給与計算ソフトの活用がおすすめです。複雑な計算を機械的に行えるようにすれば、給与計算にかかる手間を大幅に削減できるとともに、計算ミスも減らせるでしょう。

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この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

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