川村 和弘
Kazuhiro Kawamura
大阪府枚方市出身。
2つの会計事務所の勤務(11年)を経て、2006年2月に独立開業し、現在に至る。
趣味はゴルフとランニング。特にテレワークをしていた5月には過去最高の月間約200キロメートルを記録。
先進事務所はリモートで業務・会議・申告まで対応している!
証憑や税務関係資料はペーパーレス化し、DocuWorksで管理 ー 川村
新型コロナウイルスの緊急事態宣言下において川村会計事務所(大阪府堺市)は、いち早くテレワークを導入、顧問先とはWeb会議を実施するなど迅速に対応した。さまざまなツールを活用してテレワークを実施している川村和弘所長に、テレワークを成功させるコツやこれからの時代の事務所の運営方法、今後の課題について話を伺った。
会計事務所を開業した当初から、私だけでも在宅で仕事ができるよう、テレワークの環境整備を進めていました。職員全員がテレワークできる体制にしたのは、大阪府が4月7日に緊急事態宣言を発令し、在宅勤務が余儀なくされたからです。税理士会の指針などを参考に、テレワークを導入しました。ただし、すべての仕事をテレワークにできるわけではありませんので、日によっては何人かの職員が出勤する体制をとりました。
職員には、ノートパソコン1台とモニターを貸し出しました。モニターは、事務所と同じ環境になるよう、デュアルモニターにするためです。また、数字の入力作業が多いことから、外付けのテンキーも用意しました。このほか、職員の自宅から事務所のデスクトップパソコンにリモートアクセスできる環境を整えました。
職員が自宅でデータをコピーしたり印刷したりして情報漏えいしないように、セキュリティー対策も同時に行いました。
コロナ禍の前から勤怠・労務・業務管理ツールとして、クラウドサービス「MyKomon(マイコモン)」を使っています。画面をクリックするだけで出退勤を打刻し、労働時間や残業時間が自動集計されるほか、スケジュール管理や業務の進捗管理なども簡単にできます。テレワークの導入に際しても、職員は自宅のパソコンからでもMyKomonを利用できるので、出勤しているときと同じように活用できました。
また、離れていても職員全員の姿が見えるよう、カメラ映像をZoomのような一つの画面で共有しました。
職員にも仕事の段取りがありますから、出勤かテレワークかは各自に判断させました。後で職員に話を聞いたら、出勤かテレワークかを自分で選べたので働きやすかったと言っていました。
ツールとしては、Charwork、DocuWorks、Zoom、TeamViewer、Cheome リモート デスクトップなどです。
緊急事態宣言が出ていたときは、ほぼすべての顧問先との会議をZoomで行いました。パソコンにカメラが搭載されていない、また、外付けカメラを持っていない顧問先とは、スマートフォンでお互い顔が見えるようにし、パソコンで画面共有しながら会議をしました。
日ごろから、事務所の会計業務は『弥生会計』を中心に使っているため、顧問先の会計データの管理や顧問先とのデータのやり取りはすべて『弥生ドライブ』を活用しています。そのため、テレワークを導入しても、職員は特に出勤しているのと変わりなく仕事ができました。『弥生ドライブ』の機能は、顧問先からもとても好評です。
証憑や顧問先などの税務関係資料は、以前からほぼペーパーレス化し、DocuWorksで管理しています。そのため、テレワークを導入しても、ネットが繋がっていればDocuWorksにアクセスできるので特に支障はありませんでした。その他、必要な資料があれば、総務の担当者が事務所に行き、スキャナーで読み込み電子化し、その都度DocuWorksに保存してもらいました。 税法や税務の取り扱いなどの資料に関しては、DocuWorksで管理しているもの以外は、法律・例規・判例などの総合情報を提供している第一法規の「法情報総合データベース」や税務専門誌「税務通信」のデータベース、一般社団法人日税連税法データベースの「TAINS」などを活用しています。
自宅にネット回線がない職員がいたことです。今回のテレワークはスマートフォンを利用してインターネットに接続するテザリングで対応してもらったのですが、テレワークを事務所運営のスタンダードにしていくにあたって今後は事務所で数台ポケットWi-Fiを契約し、ネット環境がない社員に貸し出す予定です。また、携帯電話に関しても、顧問先とのやり取りが多い職員に関しては、事務所から貸し出すことを検討しなければいけないと思いました。
このほか、テレワークだと職員間のコミュニケーションが少なく孤独を感じる職員もいたようです。聞いた話では、1回だけ職員同士でオンライン飲み会を開催し、割と盛り上がったようです。今後はオンライン上でも朝礼や終礼をした方が良いと思っています。
リモートで自宅から事務所のパソコンにアクセスし、税務ソフトを操作すると、ソフトの動作が遅くなり、「申告書の作成時間が2倍になってしまった」という報告が職員からありました。通信速度の改善は今後の大きな課題だと思っています。
職員から「申告書ができました」と報告があれば、私がリモートで事務所のパソコンを操作し、申告書の中身を確認、電子申告を行いました。家からでも事務所からでも申告ができる環境になっていますので特に問題なくできました。
郵便については、事務所の近くに住んでいる総務の担当者が出勤してくれたので、なんとか対応できました。事務所にかかってくる電話の対応に関しては、今後の課題として残っています。
事務所の方が自宅より仕事がはかどるという職員もいますから、職員の意見も聞きながら緩やかにテレワークへ移行しています。年内に3~4割の仕事をテレワークにできればと考えています。事務所を発展させ、職員もさらに増やしていこうと思っていますが、職員が増えれば事務所のスペースも広くしていかなければなりません。テナントの賃貸料なども考えると、むやみやたらに事務所を広くすればよいものではありません。テレワークとの併用で、新たな事務所運営方法を考えていきたいと思っています。
以前は全員で集まった研修や会議を行っていましたが、職員の税務・会計知識や業務の経験値に差もありますし、全員で集まる必要がどこまであるのかと思うようになりました。現在は、Webの研修動画を用意して、勉強したい職員が活用できる環境を整えたり、新しい情報をChatworkで共有したりなど、工夫もしています。緊急事態宣言下のときに一度、全体のオンライン会議をしてみましたが、長時間になる場合は、1時間に1回程度休憩をとるなり、職員間のコミュニケーションを促すなど、もう少し工夫が必要だということがわかりました。
職員の採用については、一次面接を私がオンラインで行い、二次面接は管理職も同席し、対面で行っています。一次面接をオンラインで行うことで、応募者も移動の時間が削減できるのでメリットがあると思います。営業活動にもオンラインを活用してみましたが、通常の営業活動とあまり変わらずにできました。今では、顧問先との打ち合わせについてもオンラインにどんどん切り替えていこうと考えています。
慣れが肝要だと思います。それに、顧問先と全く対面で会わなくなるわけではないので、それほどコミュニケーションについて心配することはないと思います。かえってオンライン会議のほうが、直接会うより無駄話が少なくなる傾向があり、お互いに生産性向上につながるのではないでしょうか。それに当事務所は、基本的に顧問先に訪問するのではなく、来所してもらう、いわゆる来店型の経営をしているので、顧問先の時間節約のためにもオンラインの方が顧問先にとってはメリットがあると思います。
アフターコロナ対応という問題だけでなく、IT化時代の会計事務所経営を考えると、テレワークできる環境を整えておくことは必要だと思います。そのためには、まずペーパーレス化を推進することが重要ではないかと実感しています。そして、クラウドツールをうまく活用していけば、テレワークで生産性を高めることも可能だと感じています。
Kazuhiro Kawamura
大阪府枚方市出身。
2つの会計事務所の勤務(11年)を経て、2006年2月に独立開業し、現在に至る。
趣味はゴルフとランニング。特にテレワークをしていた5月には過去最高の月間約200キロメートルを記録。
代表社員:川村 和弘
設立:2006年2月
本店:大阪府堺市
従業員数:17人
弥生株式会社 カスタマーセンター
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受付時間 9:30~12:00/13:00~17:30(土・日・祝日、および弊社休業日を除きます。)