「好き」と「得意」を活かしたコーチング起業!「あなたから教えてほしい」と言われる差別化戦略の基本。

起業時の課題
集客、顧客獲得, 製品/サービス開発, マーケット・ニーズ調査

専業主婦から社会復帰し、会社員として勤めながら副業で始めたコーチング事業で独立された弓削春子さん。英語のコーチとしてSNSのフォロワーからも熱い支持を受けている弓削さんですが、事業を始めたころは思うように売上が上がらず悩んだ時期もあったのだとか。苦しい時期を乗り越え、「数字を見るのではなく、目の前の人を大切にすることで、売上も精神も安定してきた」と語る弓削さんに、起業するにあたっての大切な心構えを教えていただきました。

会社プロフィール

業種 教育・学習
事業継続年数(取材時) 4年
起業時の年齢 50代
起業地域 全国
起業時の従業員数 0人
起業時の課題 集客、顧客獲得, 製品/サービス開発, マーケット・ニーズ調査

話し手のプロフィール

弓削 春子
英活ドットコム 代表
長女の出産を機にそれまで勤務していた外資系企業を退職。長男が3歳になった時に自宅で英会話教室を開講。6年後、オーストラリア人が経営する英会話スクールで講師兼マネジャーとして10年間働き、生徒700人以上、5校の規模まで拡大させる。英語教育業界での16年の経験を経て、個人事業主として独立しオンライン完結型の講座とコーチングを提供している。
TOEICで欲しい未来を手に入れる「キャリアップ英語コーチング」や、3か月で100点以上アップする「TOEIC講座」をオンラインにて実施中。先生として起業したい方のサポートも行う。

目次

大好きな英語を仕事にしたい。キャリアウーマンが出産、育児を経て起業家になるまで。

事業概要について簡単にお聞かせください。

弓削さん:主にオンライン完結の英語コーチング事業を行なっています。特に、キャリアアップを目指して英語学習しているTOEIC初級者のサポートが中心です。TOEICの点数を上げるために、4か月〜半年ほど集中して伴走するコーチングを行い、同時に英語講座も提供しています。

これまでのキャリアについてお聞かせください。

弓削さん:子供のころから洋画が好きで、昔から外国文化や英語に興味があり、社会人になってからは石油会社やドイツの製薬会社、米GE(ゼネラル・エレクトリック)の日本法人などでの就業を経験してきました。

長女の出産を機に退職し、専業主婦として3人の子供を育てました。その後、3番目の子が3歳になったとき、もう一度社会復帰したいと思うようになっていったんですね。そして、子育てしながらでも働きやすい環境を探して、友人からの薦めで子供英会話教室のホームティーチャーを知り、自宅で始めることにしたんです。これが英語教育に関わるきっかけとなりました。

そこから5年ほどホームティーチャーとして活動していたのですが、近所で英会話スクールをしているオーストラリア人と仲良くなり、「日本人講師を探しているのでよかったら来てほしい」とご縁をいただきまして。その英会話スクールに入社することになり、10年ほど勤務しました。その後、英語コーチング事業で独立したという流れです。

会社に勤めながら副業で始めたコーチング。独立を後押ししたものは?

これまでさまざまな形で英語を仕事とされてきたと思うのですが、独立した直接的なきっかけは何でしたか?

弓削さん:独立する前に勤めていたスクールは、ネイティブの講師10人以上に私だけ日本人という国際的な環境で、社員の主体性をすごく重視してくれるところだったんです。ただその分結果を求められるので、私も講師として採用されたんですが、セールスやマーケティング、コピーライティングなどさまざまなことを必死で学び、スクール経営を実践的に身に付けていきました。そんな環境に長くいたので、「ちょっと自分でも事業をやってみようかな」という気持ちに自然になれたのかもしれません。入社当初は200人くらいだった生徒数も最終的には700人程度にまで拡大し、企業の成長を間近で見ながら、「最初から完璧でなくても、やりながら修正していけばいいんだ」とわかったのも大きかったですね。

また、小さいながら英会話教室を経営していた経験も活きていて、会社の看板がなくてもやっていける自信が付いてきたタイミングだったのだと思います。

ご経験をもとに、満を持しての独立だったのですね。ですが、それまで英会話スクールの運営に長く携わっていらっしゃっていたところ、なぜ英語のコーチングを始めようと思ったんですか?

弓削さん:当時は英語のコーチングが流行し始めていて、最初は私も興味本位で英語コーチ養成講座に通い、スクールに勤めながら英語コーチの副業を2年ほどやっていたんです。勤めていたスクールも副業OKだったんですよね。同僚たちも皆ビジネスをやったり不動産を持っていたりしていたので、そんな周囲の環境にも後押しされて、私も自己実現の1つとして起業してみようと思うようになり、自身で英語コーチング事業を始めました。

その副業が、のちに本業になったという流れです。

なるほど。副業から始めて本業にされたんですね。お話を聞いているととても良い環境の中お仕事をされていたのが伝わってきます。

弓削さん:本当に感謝しています。特にオーストラリア人の社長がすごく物事を公正に見る人で、例えば業務の中でも、「日本人は遠慮しすぎだ。ここは日本なんだから、日本人である君が一番偉い。何か言いたいことがあれば同僚にも日本語で言い返しなさい」などと教えられました。厳しくも温かい環境で、奇跡のような10年間だったと思います。自由にできる分、実績を出さなければならないので、毎日働き通しで家族には迷惑をかけていたなと思うんですけどね。

海外文化の中で働いていたことで、自分の主張を通したり、自信を持って自分の軸で判断することができそうですね。

集客の成功要因は「ターゲット層の絞り込み」?

副業を始めたとき、コーチングの顧客はどのように見つけたんですか。

弓削さん:最初は知り合いが多かったです。Facebookで「英語コーチング始めます」などと投稿して、興味のある方に試してもらっていました。また、マーケティング塾に通ってワードプレスでホームページを自作したり、アメーバブログ(アメブロ)などもやっていたので、そこからの問い合わせも少しありました。

知り合いに対しては直接会ってコーチングをしていましたが、ウェブから問い合わせをいただいたオンライン対応希望の方に対しては、当時からオンライン完結でコーチングしていました。Zoomもコロナ禍よりずっと前から使っています。Zoomは当時通っていた起業塾のメンバーから教えてもらったのですが、無料でブラウザから使えるのが便利で活用していましたね。

当時からオンラインも活用されていたんですね。ちなみに、TOEIC初級者向けにターゲットを絞っているのは、どういった狙いがあってのことでしょうか?

弓削さん:最初は、英検と英会話、TOEICと幅広く受け付けていました。また、TOEICに関しても、高得点を狙う人を想定してサービス作りをしていたんですね。ですが、実際に公式LINE登録者のアンケートを見てみると、TOEIC300〜400点くらいの人たちが多いことに気づいたんです。その段階の方は、中学生レベルの基礎的な英文法から始める必要がありますが、詳しく話を聞いてみると、他のスクールや教材のレベルが高すぎてマッチしていなかったようでした。試しにTOEIC初級者の方にコーチングをしてみると、その方のスコアがぐんと上がったんですよね。

実は、TOEIC初級者に基礎から英語を教えられる人ってそこまで多くはないんですよ。私自身は、初級者から上級者まであらゆるレベルの方に教えていた経験がありましたし、TOEIC学習者全体で見たら初級者の方が圧倒的に多いので、思い切ってTOEIC初級者向けにターゲットを絞ることにしました。そうしたら、口コミもさらに広がってうまく回るようになっていったんです。

起業家がサービスを作るとき、ターゲット層をなるべく広く取ろうとする人も多いと思います。状況に応じてターゲットを絞ることも大切なんですね。

弓削さん:手を広げすぎないことが大事、というのは、私も独立してからわかってきたことですね。

方向性を細かく修正していくのも重要ですね。ちなみに弓削さんは今までずっとお1人で事業をやっていらっしゃるのでしょうか。

弓削さん:今は家族が少し手伝ってくれたりすることもあります。あとは、必要に応じて一部の作業を外注に出したりするときがありますが、基本は1人ですね。

確定申告などはどうされていますか。

弓削さん:副業を始めたころは確定申告をするほどの収入にはなっていなかったのですが、本業に切り替えてからは、ずっと「やよいの青色申告 オンライン」を使って、自分で確定申告を行なっています。最初は確定申告の仕方もわからなかったので、知り合いの会計士さんの講習会に参加して基礎を学びました。その際に2種類会計ソフトを紹介されまして、弥生会計が操作性が良く使いやすかったのでそのまま今も使っています。わからないことがあってもサポートがしっかりしているので助かっています。

広告費ゼロで安定した売上を実現!起業家必見のInstagram活用術。

最初はお知り合いの方中心に集客していたとのことですが、今は完全にオンライン完結でやっていらっしゃるんですよね。

弓削さん:はい。コロナ禍を機に完全にオンライン完結型に変更しました。

現在の集客などはどのようにされているのでしょうか。

弓削さん:コロナ禍にあった補助金を活用してオンラインマーケティングをもっと極めようと思い、Instagramのコンサルを付けたりインフルエンサーの商材を買ってノウハウを学びました。

その成果もあり、最近はInstagramを中心としたSNSからの問い合わせでほとんど回るようになりました。InstagramやYouTube、ホームページなどからLINE公式アカウントかメルマガに登録していただいて、そこでマーケティングをします。いわゆる、リストマーケティングですね。

広告費をかけずにSNSからの問い合わせが集まるのは理想的ですね。ご自身で学び、やり切る姿勢が素晴らしいです。

弓削さん:最初は広告出稿してみたり、いろいろなSNSを更新したりしていたのですが、1人でやっているということもあり、どれも中途半端になってしまって検証しきれないまま終わってしまうなど、どうもうまくいかなかったんです。Instagramのマーケティングに集中して取り組むようになったら、少しずつ成果が出てきました。

Instagram運用について、具体的にどのようなことを意識してやっているのか、もう少し詳しく教えていただけますか。

弓削さん:フィードは商品棚というイメージで、役立つ情報をきれいに並べるように作っていますが、24時間で消えるストーリーズではあえてプライベートも見えるような投稿をしてフォロワーさんとの距離を縮めるよう意識しています。また、ストーリーズで毎朝英単語テストを投稿していて、これがすごく好評です。イベントなどの募集やセールスをかけるのも基本ストーリーズですね。

リール動画もアップしているのですが、動画を始めてからお客さまになってくれた人はよく「初めて会った気がしない」と言ってくれます。やっぱり、動画の力は強いですね。SNS運用に関しては相性もあるので、いろいろなタイプの方がいると思うんですが、私は顔を出した方がうまくいくタイプのようでした。最近は週に1回LIVE配信も始め、より人となりを知ってもらえるようにいろいろと試しています。

すごく細やかに運用されているんですね。勉強になります。これらは全てご自身でやっているんですか。

弓削さん:はい。私、コンテンツ作るのが好きなんですよね。なので、楽しくてやっている感じです。

SNS運用をされている方の中には、フォロワーが増えても売上に結びつけるのに苦労される方も多いと思います。弓削さんがSNSからコーチングの成約につなげるために意識しているところはありますか?

弓削さん:私の場合は、定期的にお茶会を開いて、そこから成約につなげています。お茶会は常時6名ほど申し込みがありますし、そうしたイベントをやると1人は契約してくださるイメージはありますね。ただ、私も投稿の閲覧率やコンバージョン率がすごく良いわけではないので、今も暗中模索しながらやっていますよ。年末年始には20名ほど来てくれたイベントもありましたが、あまり反応が良くない会もあって、難しいですよね。

発信の内容自体で意識しているのは、「他で頑張ったけどうまくできなかった人はおいで」などといった“痛み”への訴求ですね。実際に、独学での学習に限界を感じていた人や、他の先生のところでやったけどなかなか上達しなかった人が来てくれることが多いです。

発信内容もさることながら、弓削さんのお人柄に惹かれていらっしゃる方も多いと思います。

弓削さん:ありがとうございます。発信するときは、「私のところに来れば大丈夫ですよ」と安心していただくようにしています。私は初級者から上級者まで教えられますし、コーチングで生徒さんに伴走していくことで、実際に皆さん点数は上がりますから。

数字だけ見ていたころは売り上げもメンタルもつらかった。

お話を聞いていると、起業されてから順調に進んでこられた印象を受けますが、苦労された時期もやはりあったのでしょうか?

弓削さん:そうですね。副業を始めて起業塾などに通っていたときは、「儲ける」ことが成功だと思っていたんですよね。リストが何件、成約が何件、売上がいくら、と数字ばかりを追っていると、「全然お客さまが取れない!売上が上がる人は何が違うんだろう」と悩むことも多く、知り合いの経営者の方にもよく相談していました。そこで教えてもらったのは、「お金を追っていると、お金は儲からない」ということでした。「人の生活を変えられる人になれば、お金は自然と入ってくる。社会貢献が重要なんですよ」と言われて、そこからは「まずは目の前のお客さまのためにできることを」という意識でコツコツやることを大切にするようになりました。

やっぱり、感謝の心を持ってお客さまと接していると、お客さまも良い口コミをしてくれて、さらにお客さまがやってきてくれるのだと思います。数字ばかり追って矢印が常に自分に向かうのではなくて、結局は人のために何ができるのか考える「人間力」が大事なのかなと思います。足りないところばかりに意識が向いていたときと比べて、今は精神的にも売上も安定するようになりました。

数字ではなく、人を見る。普遍的ですがなかなかできないことだと思いますので、実体験として語れるのがすごいです。それでは最後に、今課題となっていることや今後のビジョンをお聞かせください。

弓削さん:私は、経営者としての成功も諦めていないですし、身軽で生きていきたい想いもあります。今は複数の収入源を持つ方もめずらしくありませんよね。私自身も、これまでの経験を見てくださる方からコーチングやSNS運用を教えてほしいというお声をいただいたりもするので、英語ビジネスだけではないさまざまな可能性を模索しながら、ご縁を大切にこれからも活動していきたいです。

取材協力:創業手帳
インタビュアー・ライター:樋口 正

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