1. 弥生株式会社
  2. 起業・開業ナビ
  3. 起業・開業お役立ち情報
  4. 個人開業の基礎
  5. 業務委託契約書とは?個人事業主が確認すべきポイントを解説

業務委託契約書とは?個人事業主が確認すべきポイントを解説

更新

個人事業主やフリーランスが、企業から仕事を受注する際に業務委託契約を結ぶことがあります。業務委託契約は、仕事を受託または委託する際の決まりごとを記したものです。口約束でも仕事はできますが、業務委託契約書を結んでおかないと、業務内容や契約期間、報酬などに食い違いが生じてトラブルになった際、場合によっては損害賠償請求を受けることもあります。トラブルに巻き込まれないよう、契約する前に業務委託契約書の確認すべきポイントを知っておきましょう。

ここでは、業務委託契約書で交わす契約の種類や締結しない場合のリスク、確認すべきポイントについて解説します。

起業・開業の情報をLINEで毎週配信中!こちらをクリックしてまずはお友だち登録を!新規タブで開く

業務委託契約書とは委託業務の依頼内容や取引条件を記した契約書

業務委託契約書の例

業務委託契約書とは、「業務内容」「報酬」「契約期間」「知的財産の取り扱い」などを定めた契約書です。業務の一部を外部の組織や個人に委託する際に、基本的には委託者が作成し、委託者(発注者)と受託者(受注者)の間で取り交わします。

例えば、Aという会社が商品のデザインを、Bという個人事業主に依頼する場合、Aが業務委託契約書を作成し、Bと契約を締結します。

なお、民法上には業務委託契約という定めはありません。民法においては、「請負契約」「委任契約(準委任契約)」「雇用契約」という契約形態となります。業務委託契約は「請負契約」または「委任契約(準委任契約)」にあたるため、以下のように業務内容に合わせて「請負契約」または「委任契約(準委任契約)」を結ぶようにしましょう。

主な契約の種類

  • 請負契約は成果物に対して報酬が支払われる契約
  • 委任契約(準委任契約)は業務の遂行に対して報酬が支払われる契約
  • 雇用契約は労働者(従業員)を雇用するときの契約

請負契約は成果物に対して報酬が支払われる契約

請負契約とは、受託者(受注者)が期日までに仕事を完成させ、委託者(発注者)が成果物に対して報酬を支払うことを定めた契約です。主に製造業や建築業、ライター、デザイナーなど目に見える成果物を納品する業種の他、警備や機械保守といった一部の無形サービスを提供する業種の契約形態となります。
例えば、ライターが原稿を作成して納品したり、デザイナーが制作物を納品したりすることなどが挙げられます。

なお、請負契約の業務委託契約書は、印紙税法上の課税文書(請負に関する契約書)に該当するため、契約金額に応じて収入印紙の貼付が必要です。印紙税法の定めに従い、収入印紙は業務委託契約書の作成側が負担します。

契約金額ごとの印紙税額は、国税庁のWebサイト「No.7102 請負に関する契約書新規タブで開く」によると以下の表のようになるため、契約金額にあった収入印紙が貼付されているか確認してください。

記載された契約金額 税額
1万円未満のもの 非課税
1万円以上100万円以下のもの 200円
100万円を超え200万円以下のもの 400円
200万円を超え300万円以下のもの 1,000円
300万円を超え500万円以下のもの 2,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの 1万円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの 2万円
5,000万円を超え1億円以下のもの 6万円
1億円を超え5億円以下のもの 10万円
5億円を超え10億円以下のもの 20万円
10億円を超え50億円以下のもの 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円
  • (注)印紙税は、契約書に記載された内容により取扱いが異なりますのでご注意ください。

委任契約(準委任契約)は業務の遂行に対して報酬が支払われる契約

委任契約(準委任契約)は、業務の遂行そのものに対して報酬が支払われる契約です。委託された業務をどのように遂行するかは、基本的に受託者の裁量に任されます。

委任契約と準委任契約の違いは、委託する業務が法律行為であるかどうかです。例えば、弁護士や税理士、司法書士などの士業に法律行為に関する業務を委託する場合は、委任契約となります。

一方、コンサルタントやエンジニアといった法律行為以外の業務を行う職種への委託は準委任契約です。なお、フリーランスのエンジニアの中でも、コンサルティング業務や管理業務、客先常駐などの場合は準委任契約に該当しますが、Webサイトやアプリケーションの開発といった成果物がある場合は請負契約にあたりますので注意しましょう。

業務委託の内容が委任契約(準委任契約)なら、業務委託契約書は非課税文書となるため収入印紙は不要です。

雇用契約は労働者(従業員)を雇用するときの契約

雇用契約は業務委託契約とは異なり、企業や組織などの雇用者が労働者(従業員)を雇用するときに結ぶ契約です。労働者は雇用者のもとで労働に従事し、労働の対価として賃金が支払われます。雇用契約では、雇用者と労働者の間には主従関係があり、労働者には労働基準法や労働契約法が適用されます。

一方、業務委託契約では委託者と受託者に主従関係はなく、個人や組織同士の契約です。また、仕事を請け負う受託者は労働者ではないため、労働基準法や労働契約法などは適用されません。

業務委託契約がない場合に想定されるリスク

業務委託契約がない場合、仕事を請け負う立場の個人事業主やフリーランスは、働いたにもかかわらず報酬を得られなかったり、損害賠償請求を受けたりすることがあります。自分を守れるよう、想定されるリスクも知っておきましょう。

業務委託契約書がない場合の主なリスク

  • 想定外の業務が発生する
  • 報酬金額が聞いていた話と異なる
  • 損害賠償請求を受けることがある

想定外の業務が発生する

業務委託契約書がないと、業務範囲や成果物の修正回数、納品時期があいまいになってしまい、想定外の業務が発生するリスクがあります。成果物を納品しても業務完了とみなされず、何度も修正依頼が入ってしまうことにもなりかねません。

逆に、契約を急に打ち切られることもあります。業務委託契約書では、業務範囲、成果物の修正回数、契約期間などを明確に定めて認識を一致させておきましょう。

報酬金額が聞いていた話と異なる

報酬金額に認識のずれが生じると、支払われるはずの報酬が入金されなかったり、事前に聞いていた金額よりも少なかったりするリスクがあります。

業務委託契約書は委託者と受託者の認識が一致している証拠となる書類です。係争に発展した場合、証拠となる業務委託契約書がなければ、裁判の費用が高くなったり、期間が長くなったりするだけでなく、裁判に勝ったとしても、売上が立つまでに時間がかかって事業継続が危ぶまれることもあります。業務委託契約書では、着手金の有無や報酬金額、支払い時期、支払い条件などについても記載しておきましょう。

損害賠償請求を受けることがある

業務委託契約がないリスクとして、請け負った業務においてなんらかの問題が生じた場合、損害賠償請求を受けることが挙げられます。例えば、自然災害やその他の不可抗力によって、契約解除せざるを得ない状況に陥ったとしても、受託者が一方的に契約を解除したととられ、損害賠償を請求される可能性があります。

また、禁止事項を理解していなかった場合、トラブルになることがあるかもしれません。例えば、委任契約や準委任契約では、業務委託契約書で双方の合意がある場合を除き、再委託は禁止されています。禁止されていると知らずに再委託してしまい、情報漏洩といったトラブルが起こった際、損害賠償を請求される可能性があります。契約解除に関する条件を双方が合意したうえで、業務委託契約を締結するようにしましょう。

業務委託契約の報酬の種類は業務内容に応じて異なる

業務委託契約で支払われる報酬は、主に「毎月定額型」「成果報酬型」「単発業務型」があります。それぞれの概要は以下の表のとおりです。

業務委託契約の主な報酬の種類

報酬の種類 概要
毎月定額型 継続的に委託される業務に対して、毎月一定額の金額が支払われる形式。主にコンサルティング業務や顧問契約、警備、機械保守、清掃などの委託業務に用いられている。
成果報酬型 委託された業務の成果によって報酬額が決まる形式。受注獲得件数によって報酬額が決まる営業代行業務、売上や利益に応じて報酬が決定される店舗運営業務などがある。
単発業務型 1回の業務に対して、あらかじめ定められた金額の報酬が支払われる形式。主に建築設計・監理業務やシステム開発、ライティング業務、デザイン業務に用いられている。

上記表の種類だけでなく、稼働時間に応じて報酬が発生する時給計算型、業務が成功した場合にのみ成功報酬が支払われる成功報酬型などもあります。また、毎月定額型に成功報酬が付随していたり、毎月定額型を基本に、単発業務が発生したときには単発業務型の報酬が加算されたりするケースもあるので、どの報酬の種類に当てはまるかは取引先と確認しておきましょう。

業務委託契約書を確認するポイント

業務委託契約について確認しないまま締結してしまうと、自分にとって不利な事態を招いたり、トラブルの原因になったりすることがあります。業務委託契約を締結する際には、特に以下のような点を確認してください。

業務委託契約書の例

業務委託契約書の確認ポイント

記載事項 主に確認するポイント
委託業務の内容
  • 委託者が受託者に業務委託する内容に漏れがないか
  • 意味を取り違えやすい表現はないか
  • 契約金額に応じた収入印紙がはられているか
委託料
  • 成果報酬型や成功報酬型の場合、報酬の算定方法についての定めはあるか
  • 材料費や交通費といった経費は報酬額に含まれるのか
  • 税込か税抜かが明記されているか
支払条件、支払時期
  • 納品や検収後といった支払いに関する条件や時期の記載があるか
  • 着手金はあるか
  • 支払い金融機関に条件はあるか
契約期間
  • 委託された業務の契約期間が正しいか
  • 契約更新や停止する際の期限、自動更新の有無の記載があるか
報告
  • 業務遂行状況の報告は必要か
禁止事項
  • 委託者と競合する同業他社との取引に制限があるか
  • 再委託が可能かどうか
知的財産権
  • システム開発やデザイン、ライティング、研究など業務委託による成果物が知的財産権を有する場合、権利の帰属先が明記されているか
秘密保持
  • 提供された情報についての秘密保持の条件や情報の取り扱い、処理方法の決まりはあるか
契約解除
  • 契約解除の条件が記載されているか
  • 契約解除した場合の業務や報酬、情報についての扱いが決まっているか
損害賠償
  • 契約解除や契約違反の場合の損害賠償責任の有無や補償額が定められているか
  • 訴訟の場合の裁判所の記載はあるか

業務委託契約書を確認する際は、上記の他にも、自分の業務を完成させて報酬を受け取るまでの流れに照らし合わせて、不備がないかを考えるのも1つの方法です。懸念点がある場合は、業務委託契約書を締結する前に、委託先と相談して記載内容を変更したり、追加したりするようにしてください。

また、自分では契約内容の精査に不安がある場合は、弁護士に相談する方法もあります。例えば、取引先から受け取った契約書の内容を確認してもらったり、自社でよく行う取引についての契約書のひな形を作成してもらったりするといいでしょう。

初回や単発の取引では覚書を交わすことがある

初回や単発の取引時にはまず覚書を交わし、取引の継続が決まってから、改めて業務委託契約書を締結することもあります。ただし、取引の継続が決まっても、取引先に業務委託契約書を締結したいと言い出しにくかったり、面倒そうな対応をされたのでお願いできなかったりするケースもあるかもしれません。

なんらかの事情によって業務委託契約書が交わせない場合は、契約書という形式にこだわらず、注文書や発注書、受注書などに業務内容や報酬、支払条件などを記載しておくのも1つの方法です。

いずれにしても、業務委託契約は取り交わしたからといって絶対に安心というものではありません。取引相手が信頼できるかどうかを見極め、双方の合意のもと各事項を定めるようにしましょう。

業務委託で得た所得も確定申告は必要

個人事業主やフリーランスが業務委託で仕事を請け負った場合、1月1日から12月31日までの1年間の売上から経費を引いた所得が48万円を超えたら、確定申告が必要になります。また、会社員などの給与所得者が副業で得た所得も、年間20万円を超えた場合は確定申告を行わなくてはなりません。

なお、確定申告には青色申告と白色申告の2種類があり、青色申告なら最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。ただし、青色申告を行うためには、所轄の税務署に所得税の青色申告承認申請書の提出が必要です。

個人事業主やフリーランスの所得は事業所得に該当するため、事前に青色申告承認申請書を提出していれば青色申告を選択できます。一方、副業の場合は雑所得とみなされると、青色申告を選択できない可能性があります。ただし、副業の中でも事業所得と認められるような継続性のある所得や、不動産所得は青色申告が選択可能です。青色申告を行うことができるかどうかわからない場合は税務署に確認してみましょう。

開業届や確定申告を手軽に行う方法

個人事業主やフリーランスとして事業を始めるには、開業から1か月以内に、開業届を納税地の税務署に提出する必要があります。また、確定申告で最大65万円の青色申告特別控除を受けられる青色申告を行うには、開業届を提出したうえで、事業開始から2か月以内に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。

個人事業主として開業する場合は、「弥生のかんたん開業届」を使えば、画面の案内に従って操作するだけで開業届を含む必要書類の作成ができます。

また、クラウド確定申告ソフト「やよいの青色申告 オンライン」を使えば、簿記や会計の知識がなくても、最大65万円の青色申告特別控除の要件を満たした青色申告の必要書類がかんたんに作成できます。
起業・開業後はお店の運営の他に、会計業務などお金の管理を自分で行うことが必要になるため、起業・開業のタイミングで会計ソフトや確定申告ソフトなどを導入しておくといいでしょう。

業務委託契約書を交わすときには懸念点を払拭しておこう

業務委託契約書を締結しておくと、依頼内容や報酬、支払条件などが記載されているため、認識の相違によるトラブルの回避に役立ちます。トラブルに発展すれば報酬を受け取れないだけでなく、損賠賠償請求を受けたり裁判で時間がとられたりするかもしれません。事業継続に影響がでないよう業務委託契約書の内容がわからない場合や懸念点がある場合は、委託者と話し合ってから契約を結ぶようにしましょう。

この記事の監修者森 健太郎(税理士)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

URL:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_mori/新規タブで開く

カテゴリ一覧

    人気ランキング

      初心者事業のお悩み解決

      日々の業務に役立つ弥生のオリジナルコンテンツや、事業を開始・継続するためのサポートツールを無料でお届けします。

      • お役立ち情報

        正しい基礎知識や法令改正の最新情報を専門家がわかりやすくご紹介します。

      • 無料のお役立ちツール

        会社設立や税理士紹介などを弥生が無料でサポートします。

      • 虎の巻

        個人事業主・法人の基本業務をまとめた、シンプルガイドです。

      事業のお悩み解決はこちら