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株券発行会社とは?株式譲渡をする際の株券発行会社の諸問題

執筆者:飛渡 貴之(弁護士)/椛島 慶祐(司法書士)

2024/05/02更新

株券発行会社とは

株式会社は、原則として株券を発行しませんが、定款に定めることで例外的に株券を発行することができます(会社法214条)。株式譲渡についても、会社法上は株券発行会社を例外とし、原則とは異なる制度を設けています。本稿では、株券発行会社における株式譲渡に関しての主要な制度と問題点を解説し、対策を示します。

株券発行会社と不発行会社の違い

株券発券会社は以下の対応が必要となります。

  • 定款への記載
  • 株券の発行
  • 株式譲渡時の株券の交付
  • 株券紛失時の対応

株券発行会社における諸制度

(1)株式譲渡の方法

通常の株式会社では、意思表示のみによって株式譲渡をすることができ、当該会社および第三者に株式譲渡を主張するには株主名簿の書換が必要とされています(130条1項)。
一方で、株券発行会社では、株式譲渡には意思表示のみならず株券の交付も必要とされている。なお、当該会社および第三者への対抗に株主名簿の書換が必要な点に変わりありません。

(2)善意取得

株券発行会社における株式譲渡は株券の交付が必要であるところ、株券を占有している者には、株式についての権利を適法に有するものとの推定が働きます(131条1項)。これにより、譲受人が無権利者であっても譲受人がそのことを知らず、かつ取引上必要な注意を著しく欠いていない限り、譲受人はその株式について権利を取得することができます。

(3)株券不所持制度

株券発行会社の株主は、当該会社に対して、株券の所持を希望しない旨を申し出ることができます(217条1項)。これは既に株券が発行されている場合であっても、当該株式が株券を提出した上で申し出ることができます(同条2項)。
これにより、株券の紛失やそれに次ぐ第三者による善意取得を防ぐことができます。

(4)単元未満株式の不発行

株式会社は一定の数の株式をもって1個の議決権を行使できる単元株式制度を定款で定めることができます(188条1項)。
このとき、株券発行会社において、単元未満株式については株券を発行しないことができる旨を定款で定めることができます(189条3項)。

(5)株券失効制度

株券は善意取得が可能ですが、権利者が紛失した際にこれを悪用されることを防ぐために、当該株券を無効とすることができます(221条以下)。具体的には会社に対し、株券喪失名簿への記載、記録を請求し、これが記載、記録されると、株式の名義書換えが停止されます。株主名簿上の株主が喪失登録をしていない場合には議決権の行使も停止されます。
株券抹消登録がされた後、1年を経過すると、当該株券は無効となり、会社は喪失登録をした者に対し、株券を再発行します。

株券発行会社における株式譲渡の問題点と対策

(1)株券の交付が必要か否かの判断

株券発行会社の株式譲渡では株券の交付が必要ですが、当該会社が株券発行会社か否かは定款を確認しなければわかりません。
当該会社が株券を発行していないことを前提として株式譲渡契約を締結したものの、当該会社が実は株券発行会社であったとすると、有効に株式を取得できないという可能性が生じます。
これに対しては、会社の登記簿から確認ができます。

(2)株式譲渡人が株券を持っていない場合

株券発行会社においても株主が株券を所持していない場合があります。例えば前述の株券不所持制度を利用している株主や単元未満株主等が挙げられます。
株券不所持制度を利用している株主が株式譲渡をする場合、当該株主は会社に対して、いつでも株券の発行を請求することができます。すなわち、株式譲渡に先立ち、この請求をして株券を所持したうえで、これを交付するということとなります。
単元未満株主の場合であっても当該会社に対して株券発行の請求をすることができます(会社法施行規則35条2項4号)。すなわち、ここでも株券の発行を請求し、これを所持したうえで交付することができます。
一方で、株主が会社に対し株券の発行を請求しても会社が対応しない場合が考えられます。この場合、原則に従えば株主は株式譲渡を有効にすることができないとも考えられます。しかし、会社が株券の発行を不当に遅滞し、信義則上譲渡の効力を否定するのを相当としない状況に立ち至った場合には、株券の交付なくとも有効に株式譲渡をすることができると判例上(最大判昭47.11.8)認められています。

(3)株券喪失制度との関係

株券の交付を受けたものの、当該株券が株券喪失登録されていたことが発覚した場合、名義書換えが停止されており、自身が新たな株主である旨を会社や第三者に主張することができないこととなってしまいます。
この場合、株券喪失登録から1年以内であれば、譲受人は株券喪失登録の抹消を会社に請求して、抹消されたうえで名義書換えを請求することで、会社および第三者に対して株式の取得を主張できるようになります。
しかし、株券喪失登録から1年が経過している場合には、株券が無効となるので、譲受人は抹消を請求することができず、株主であることを会社や第三者に主張することはできない。これを防ぐには、株式譲渡を受ける前に当該会社の株券喪失登録名簿を確認する必要がある。

(4)譲渡制限株式の場合

譲渡制限株式であっても、株券発行会社であれば、その譲渡には株券の交付が必要です。譲渡制限株式の譲渡には会社の承認が必要であるところ、譲渡を承認しない場合には会社に対して当該株式の買取りを請求することができます(138条2号ハ)。これにより、会社が買い取る旨の決定をした場合、承認を請求した者は、対象の株券を供託することとなります(141条3項)。
譲渡制限株式の場合には、株券にその旨が記載されています(216条3号)。株券発行会社の株式譲渡をする際には、必ず株券の記載を確認し、その後の手続きを予測した上で取引をすることが求められます。

この記事の執筆者飛渡 貴之(弁護士)

弁護士法人キャストグローバル代表弁護士。滋賀県生まれ、関西大学総合情報学部卒業後、パチプロをしていたことで、パチンコメーカーに就職し、新商品の企画開発に5年間携わる。
勤務中、土地家屋調査士の資格を取得し、独立を目指し司法書士の勉強を始め、退社後、合格。司法書士業務をするも、より質の高い法的サービスを提供したいとの思いから、弁護士を志す。
一般企業での会社員経験と定期的に国内外の優良企業を視察して得られた知識経験を生かしたコンサルタント色のある提案が多くの企業に喜ばれて、多数の企業を顧問に持つ。

この記事の執筆者椛島 慶祐(司法書士)

司法書士法人キャストグローバル在籍。福岡県生まれ。日本大学法学部法律学科卒業後、2014年司法書士試験合格。
2015年司法書士登録し、司法書士法人キャストグローバルに入社以来「企業法務、法務支援」に特化して創業者や中小事業、大企業の法務手続きを精力的に支援。これまでに500社以上の登記手続きやコンサルティングの実績がある、中小企業から大企業まで取引先は多岐に渡る。

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