合同会社から株式会社への変更は専門家に相談が必要?メリットや手続き方法を解説
監修者: 高崎 文秀(税理士)
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合同会社には、設立にかかる費用が抑えられることや、会社の所有者・経営者が同じであることから意思決定のスピードが早いというメリットがあります。そのため、会社設立時に合同会社を選択した方も多いでしょう。しかし、事業の規模が拡大するにつれて、合同会社から株式会社へ変更するべきか、迷っている方もいるのではないでしょうか。本記事では、合同会社から株式会社へ変更する際の手続きや費用、期間などを解説します。
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合同会社と株式会社の違い
合同会社は出資者(事業を行うために資金を提供する人のこと)が会社の経営者であり、この出資者が会社の決定権をもちます。また、合同会社では出資者のことを社員と呼びます。
株式会社は出資者(株主)と会社の経営者が切り離されており、定款により、第三者を会社の経営者である取締役に定めることが可能です。さらに株式会社は株式(事業資金を調達するために発行する証券のこと)を発行し、資金を集められるため、金融機関からの融資や補助金、助成金に頼る機会が減るでしょう。
下表に合同会社と株式会社の違いを簡単にまとめました。
合同会社 | 株式会社 | |
---|---|---|
意思決定の方法 | 社員総会 | 株主総会 |
会社の所有者 | 社員 | 株主 |
会社の経営者 | 業務執行社員 | 取締役 |
所有者・経営者の関係 | 同じ | 完全に分離 |
会社の代表者の名称 | 代表社員 | 代表取締役 |
定款の認証 | 必要がない | 必要がある |
株式の発行 | できない | できる |
合同会社と株式会社の違いについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
合同会社から株式会社へ変更するメリット
合同会社から株式会社へ変更するメリットは、以下の3点です。
- 社会的な信用が高くなる
- 株式発行による資金調達ができる
- 上場が可能になる
詳しくみていきましょう。
社会的な信用が高くなる
合同会社から株式会社へ変更すると、社会的な信用が高くなるでしょう。合同会社は比較的、新しい種類の会社です。そのため世間的な認知度は、株式会社よりも低いと言わざるを得ません。「どのような会社かわからない」という人も多いのです。一般的に、あまり耳にしない名称であるがゆえに、就職希望者が集まりにくい可能性もあります。
このようなデメリットを解消するために、株式会社へ変更することを検討してもよいかもしれません。
株式発行による資金調達ができる
合同会社から株式会社へ変更した場合、株式発行による資金調達が可能になります。
合同会社が資金調達をするには、金融機関から融資を受けたり、補助金や助成金を申請したりするなど、方法が限られます。しかし株式会社に変更すれば、株式発行による資金調達ができます。例えば、非上場株式を発行し、インターネットを介して投資家からお金を集める投資型クラウドファンディングを利用するなど、多様な方法で資金調達ができるようになるのです。
上場が可能になる
合同会社から株式会社へ変更すると、上場(株式を株式市場で売買できるようにすること)が可能になります。
上場するには、証券取引所の審査に合格しなければなりません。そのため上場できた暁には、知名度や信用度が向上したり、短期間で多額の資金を集めやすくなったりするなど、さまざまなメリットを享受できます。事業の拡大にともない、将来的に上場することを視野に入れている場合は、こうしたメリットがあることを覚えておきましょう。
合同会社から株式会社への変更手続き
合同会社から株式会社へ変更する際は、組織変更の手続きを行いましょう。具体的には、以下のステップを踏みます。
-
-
1.組織変更計画書を作成する
-
2.債権者保護手続きを進める
-
3.登記申請を出す
-
詳しくみていきましょう。
組織変更計画書を作成する
はじめに組織変更計画書を作成しましょう。組織変更計画書を作成する際は、同時に以下の書類も作成します。なお、組織変更計画書には効力発生日(株主としての権利や義務が生じる日)を記載しなければなりません。これには株式会社へ変更する日を記載しましょう。
- 合同会社の組織変更による設立登記申請書
- 組織変更計画書
- 定款
- 総社員の同意書(※効力発生日の前日までに同意を得る必要があります)
- 代表取締役の選定に関する書面代表取締役の選定に関する書面
- 取締役・代表取締役及び監査役の就任承諾書
- 会計参与又は会計監査人の就任を承諾したことを証する書面会計参与又は会計監査人の就任を承諾したことを証する書面
- 公告した官報
- 債権者への個別催告をしたことを証する書面
- 資本金の計上に関する証明書
- 代表取締役の印鑑届書・印鑑証明書
- 役員の本人確認証明書
- 合同会社の組織変更による解散登記申請書
以上の書類のテンプレートは、法務局の「商業・法人登記の申請書様式」ページからダウンロードできます。また、書き方がわからない場合は記載例(PDF)
もご覧ください。
債権者保護手続きを進める
組織変更計画書の作成と並行して、債権者保護手続きを進めます。債権者保護手続きとは、債権者に不利な影響を与えかねない経営判断が行われる場合、異議を述べる機会を設ける手続きのことです。なお、この場合の債権者とは、企業に対して売掛債権をもつ取引先や融資をしている金融機関、出資している個人や法人などを指します。
債権者保護手続きは原則として、債権者への個別催告と官報公告への掲載をもって行います。債権者への個別催告を行うには、普通郵便やハガキを送付することが一般的です。官報公告への掲載を行うには、はじめに各都道府県にある販売所に申し込みましょう。申し込み後1〜2週間程度で官報に掲載されます。
債権者への個別催告・官報公告への掲載後、一定の期間(1ヶ月以上間)を過ぎても異議申し立てがない場合は、債権者の承認を得られたものとみなします。
登記申請を出す
次に組織変更計画書に記載した効力発生日から2週間以内に、以下の申請を行いましょう。
- 合同会社の解散登記
- 株式会社の設立登記
申請先は、管轄の法務局です。管轄の法務局については、法務局の「管轄のご案内」ページで確認できます。もしも申請内容に不備があった場合は、後日呼び出されることがあります。その際は、会社実印を持参しましょう。
合同会社から株式会社への変更による税務上の引き継ぎ
合同会社から株式会社へ変更した場合、資産および負債は、会計帳簿に記載されている評価額で移転されます。譲渡損益(資産を売却した際に生じる損失や利益のこと)は発生せず、税金が生じることもありません。また欠損金がある場合は、それも引き継がれます。法人税の事業年度や消費税の課税期間なども継続されます。さらに、国税庁長官が指定する13桁の法人番号についても、税法上は社号変更として扱われるため、変更はありません。
合同会社から株式会社への変更についてよくある質問と回答
合同会社から株式会社への変更にかかる費用はいくら?
合同会社から株式会社へ変更する際は、主に以下の費用がかかります。
- 合同会社解散登記の登録免許税:3万円
- 株式会社設立登記の登録免許税:3万円〜(※3万円以上かかる可能性もあります)
- 官報公告:1行×3,263円〜
変更の手続きを自分で進めた場合は、以上の費用に諸々の費用を合計し、10万円前後かかると言われています。ただし、変更の手続きを司法書士へ依頼する場合は、別途10万円以上かかるでしょう。
合同会社から株式会社への変更にはどのくらい期間が必要?
合同会社から株式会社へ変更するには、債権者保護手続きも含め、通常2ヶ月以上の期間が必要です。また、登記申請についても、受理はその場でされますが、登記が完了するまでには1〜2週間程度かかります。このように合同会社から株式会社へ変更するには、想像よりも時間がかかるため、余裕をもって手続きを進めましょう。
合同会社から株式会社へ変更する場合は専門家に相談しよう
本記事では、合同会社から株式会社へ変更するメリットや手続き、かかる費用や期間などを解説しました。合同会社から株式会社へ変更するためには、組織変更計画書を含む種々の書類を作成したり、債権者保護手続きをしたりなど、さまざまなステップを踏まなければならないため、まずは税理士や司法書士といった専門家に相談することをおすすめします。専門家の協力を得ながら、工程を確実に進めていきましょう。
この記事の監修者高崎 文秀(税理士)
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役。早稲田大学理工学部応用化学科卒。
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業。現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行う。
