形態別・会社設立のメリット・デメリットとは? 株式会社ってどうなの?
2023/08/25更新

この記事の執筆者安田博勇

この記事の監修者中野 裕哲(起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士)

新規に設立できる会社には主に4つの形態があります。なかでももっともポピュラーなのが「株式会社」です。ここであらためて、株式会社設立のメリットやデメリットについてまとめておきます。
POINT
- 認知度や信用度が高く、金融機関からの融資が受けやすいというメリットがある
- 会社の利益を経営陣で勝手に分配できないというデメリットがある
- 個人事業主と比べると、節税できるというメリットがある
会社形態別で見るメリットとデメリットの比較
株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4形態について、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。その要点をまとめると、次の違いがあることがわかります。
有限責任と無限責任の違い
株式会社と合同会社の出資者は有限責任社員のため、万が一倒産したときにも出資した以上の金額を弁済する義務がありません。合資会社の無限責任社員と合名会社の出資者は無限責任社員のため、弁済義務が発生します。
株式会社と持分会社の違い
株式会社は、制度上、所有と経営が分離され、株主総会で意思決定がなされます。つまり、会社を所有するのは株主ですが、日常の会社経営は株主総会によって選任された取締役が行うことになります。
他の3形態は「持分会社」であり、所有と経営の一致が原則です。社員総会で意思決定がなされ、決算公告の義務もありません。また、持分会社の設立時には定款認証が不要で、設立にかかる公的手続きの費用を抑えられます。
設立に必要な人数の違い
株式会社・合同会社・合名会社は1名からでも設立が可能です。合資会社は有限責任社員、無限責任社員各1名ずつ(計2名)が必要となります。図にすると、以下のようになります。
株式会社 | 合同会社 | 合資会社 | 合名会社 | |
---|---|---|---|---|
出資者の最低人数 | 1人 | 1人 | 2人 | 1人 |
出資者の責任 | 有限責任 | 有限責任 | 有限責任 or 無現責任 |
無現責任 |
株式会社で会社を設立するメリット・デメリット
国税庁の「会社標本調査」結果(平成26年度)の組織形態別法人数をよると、株式会社(旧有限会社含む)は約248万社、合同会社は約4万社、次いで合資会社約2万社、合名会社4000社となっています。株式会社は法人格の9割以上を占め、2006年(平成18年)5月に施行された会社法以降、合同会社も増加中です※1。いずれにせよ、合同会社や合資会社、合名会社など他の3つの形態の会社と比較しても、設立後にも役員の任期に関する手続きや決算の公告義務などがある株式会社は、社会的な認知度・信用度が高い会社形態と言えるでしょう。こうした認知度・信用度が高いことで、金融機関などからの融資も受けやすくなります。
では、株式会社にデメリットはまったくないのでしょうか。
デメリットのひとつは会社を運営していくうえで、会計・税務申告に複雑な手続きが必要となり、税理士などの専門家の存在が不可欠になることです。また、会社が大きくなってきて、所有と経営が分離してくると、会社の利益を経営陣で勝手に分配することが困難になってくるかもしれません。また、合同会社などと比較して、設立するまでにある程度の手間・費用がかかることも挙げられます

個人事業主と比較! 株式会社を設立することでうまれる節税のメリットとは
個人事業では累進課税方式と呼ばれていますが、所得に応じて所得税の税率が異なります。しかし、株式会社の法人税はほぼ一定で、多額の所得が見込める場合には、大きな節税効果を発揮します。また株式会社は決算の時期を自由に決めることができます。自由に設定できるとはいえ、安易に3月決算と決めるのではなく、決算業務なども考え業務の落ち着く時期や資金のある時期など、自分の事業の実情に即して検討し、慎重に確定しましょう。
また会社がたとえ倒産しても、個人事業が無限責任なのに対し、株式会社の株主は有限責任で出資を超える弁済義務は発生しません。なお、事業規模が小さいうちは、株主としては有限責任であっても、会社債務に対して代表取締役個人としての保証を求められることがある(例:金融機関からの融資)点についてご注意ください。
加えて、法人格となることで、認められる経費の範囲が拡大します。例えば、会社名義で生命保険に加入すれば、その保険料の一部を経費として計上できます。そして厚生年金保険・健康保険に事業者自身も加入できるようになります。さらに、事業に従事してくれている家族や配偶者を役員や従業員にすれば給与を支払ったり、また退職金を支払ったりすることもできます。それらのお金は経費にすることも可能ですし、個人事業主と違って税務署に届出をする必要もありません。

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この記事の執筆者安田博勇
1977年生まれ。大学卒業後に就職した建設系企業で施工管理&建物管理に従事するも5年間勤めてから退職。出版・編集系の専門学校に通った後、2006年に都内の編集プロダクションに転職。以降いくつかのプロダクションに在籍しながら、企業系広報誌、雑誌、書籍等で、編集や執筆を担当する。現在、フリーランスとして活動中。

この記事の監修者中野 裕哲(起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士)
起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士、CFP®。起業コンサルV-Spirits/中野裕哲税理士・社会保険労務士・行政書士事務所代表。
起業コンサルV-Spiritsグループ
年間約300件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト「DREAM GATE」で10年連続相談数日本一。著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)、『オールカラー個人事業の始め方』(西東社)がある。
