法人カードと個人カードの違いは?メリット・デメリットも解説
監修者: 森 健太郎(税理士)
更新
経営者の中には、プライベートの買い物でクレジットカードを利用している方もいるでしょう。そのうち、法人カードは個人カードにはない、ビジネスで利用できるさまざまな特徴があります。
ここでは、法人カードと個人カードの違いや、法人カードを利用するメリット、法人カードを使うときの注意点などについて解説します。
【利用料0円】はじめてでもカンタン・安心な「会社設立」の書類作成はこちらをクリック
無料お役立ち資料【一人でも乗り越えられる会計業務のはじめかた】をダウンロードする
法人カードと個人カードの違い
法人カードは、法人や個人事業主に対して発行されるクレジットカードのことです。一方、個人がプライベートで使用するクレジットカードのことを、個人カードといいます。
法人カードと個人カードの主な違いを知って、どちらのカードの方が自身のニーズを満たせそうなのか把握しておきましょう。
法人カード | 個人カード | |
---|---|---|
発行対象 | 法人代表者 個人事業主 |
個人 |
審査対象 | 申込者および会社(事業所) | 申込者 |
使用目的 | 経費全般 | 支払い全般 |
利用限度額 | 10万~500万円程度 | 10万~100万円程度 |
引き落とし口座 | 法人口座 屋号名義口座(個人口座) |
個人口座 |
付帯サービス | ビジネス向けのサービスが充実 | プライベート向けのサービスが充実 |
追加カード | 従業員用 | 家族や同居人用 |
発行対象
法人カードと個人カードの違いは、発行対象です。
法人カードには「法人」という名前が付いていますが、法人に限らず個人事業主でも発行が可能です。個人カードの発行対象は個人のみで、法人は発行できません。
審査対象
法人カードと個人カードの違いには、審査対象も挙げられます。
クレジットカードを発行する際には必ずカード会社による審査が行われますが、法人カードと個人カードでは入会時の審査対象が異なります。
法人カードは経営者個人の信用情報に加え、会社の経営実績や財務状況も審査対象になります。支払い能力をチェックするため、決算書の提出を求められるケースも少なくありません。
対して、個人カードで審査されるのは、ローンの契約や借入・返済状況、クレジットカードの支払いなど、申込者本人の個人の信用を基に取引が行われた情報です。
ただ、会社員のように安定収入のない個人事業主だと、個人カードでも審査が通りにくい場合があります。脱サラして個人事業主になることを考えている方は、会社を退職する前にカードを作成しておいた方が良いでしょう。
使用目的
法人カードと個人カードの違いの1つに、使用目的もあります。
法人カードは事業用に使うことを目的としているのに対し、個人カードは用途を問わず支払い全般に利用できます。法人カードのプライベート利用や個人カードの事業用途での利用は、経費処理が煩雑になってしまうため避けるようにしましょう。
利用限度額
法人カードと個人カードの違いには、利用限度額もあります。
法人カードは事業で利用することを目的としているため、利用限度額が500万円まで設定されているカードもあります。一方、個人カードは利用目的が個人の支払い用であるため、カードのランクや利用状況によっても変わりますが、法人カードに比べて利用限度額が低く設定されている場合が多いでしょう。
引き落とし口座
法人カードと個人カードの違いとしては、利用代金の引き落とし口座も挙げられます。
法人カードの支払い口座は基本的に法人口座になりますが、カード会社によっては個人口座の指定ができる場合もあります(屋号名義口座)。個人事業主の場合は、屋号名義の口座を引き落とし口座にすることも可能です。
個人カードの引き落とし口座は、原則としてカード契約者の個人口座しか選べません。
付帯サービス
法人カードと個人カードの違いには、付帯サービスも当てはまります。
多くの法人カードには、ビジネスで使いやすいさまざまな機能やサービスが備えられています。
例えば、個人カードに比べて、利用限度額が高く設定されていたり、接待で利用するようなレストランの手配を依頼できるコンシェルジュサービスが利用できたりするといった特徴があります。
一方、個人カードの特徴は、プライベート利用に便利なサービスが付帯され、ポイント還元率も高めであることです。また、法人カードにはあまりないキャッシング機能も付いています。
追加カード
法人カードと個人カードの違いには、追加カードも挙げられます。
追加カードを発行できるのは、法人カードは従業員用ですが、個人カードのメインは家族や同居人用です。
なお、法人カードの追加カードを使用できるのは、名義人である従業員に限られます。1枚のカードを複数の従業員で共有することはできないので、注意しましょう。
個人カードでなく法人カードを持つメリット
事業向けに使用するのであれば、個人カードとは別に法人カードを作る方が良いといえます。法人カードを持つメリットには、主に、下記のような点が挙げられます。
法人カードを持つメリット
- 法人カードは個人カードよりも利用限度額が高い傾向にある
- 法人口座から引き落としが可能になる
- 従業員用の追加カードを発行できる
- 年会費を経費として計上できる
法人カードは個人カードよりも利用限度額が高い傾向にある
法人カードを持つメリットは、カード会社やカードのランクなどによっても異なりますが、一般的に個人カードよりも利用限度額が高めに設定されている点です。
これは、プライベートの支出に比べて、事業の経費が高額になりやすいためです。事業用の車両や什器の代金や購入費、出張にかかる経費などをクレジットカードで支払おうと思うと、個人カードでは利用限度額に達してしまうことがあります。利用限度額に余裕のある法人カードなら、高額の経費でもスムースに支払いができるでしょう。
法人口座から引き落としが可能になる
法人カードを持つメリットとして、引き落とし口座を法人口座にできることも挙げられます。
個人カードで経費の支払いをした場合、引き落とし先は個人口座になるため、「事業の経費を個人で立て替えた後、会社から払い戻しを受ける」という手続きが発生し、経理業務が煩雑になってしまいます。
法人カードを利用することによって、事業にかかわる引き落としを法人口座に一本化できれば、経費の管理もシンプルになって業務効率化にもつながるでしょう。法人カードの引き落とし先を個人名義の口座にする場合にも、個人カードの引き落とし口座と別にしておけば、仕事とプライベートの支出を区別しやすくなります。
従業員用の追加カードを発行できる
法人カードを持つメリットの1つには、従業員用の追加カードが発行できる点も挙げられます。
日々の業務の中で従業員が経費を立て替えると、精算のために現金をやりとりしたり、従業員の口座に振り込んだりといった事務作業が発生します。
しかし、例えば、経費を使う機会の多い従業員に追加カードを発行すれば、経費の立て替えが不要になり、事務作業の負担が軽減されるでしょう。法人カードなら利用履歴が残るので、経費の不正利用の防止にもつながります。
年会費を経費として計上できる
法人カードを持つメリットには、年会費を経費にできる点もあります。
法人カードは事業目的のクレジットカードなので、年会費を全額経費として計上できます。
個人カードの場合は、事業の経費を立て替えて支払うことがあったとしても、年会費は経費になりません。個人事業主は年会費の按分、つまり一部を経費として計上することが認められる可能性もありますが、どの費用をどの割合で経費にするのが公正妥当かといった判断が煩雑になるうえ、税務調査で差し戻される可能性もあるため、避けた方が良いでしょう。
経費計上ができると課税対象となる金額が抑えられるため、節税効果を考えるうえでも、個人カードと分けて法人カードを持つメリットは大きいといえます。
個人カードでなく法人カードを持つ際の注意点
メリットが多い法人カードですが、持つ前に考慮しておくべきこともあります。法人カードを利用するときには、次の点に気をつけましょう。
法人カードを持つ注意点
- カードの審査が厳しい場合がある
- キャッシング機能がなかったり、分割払いやリボ払いが使えなかったりする
- ポイントの還元率が低い
- 社内で不正利用されるリスクがある
カードの審査が厳しい場合がある
法人カードを持つ注意点の1つは、個人カードに比べて審査が厳しい可能性があることです。
個人カードの審査対象は個人の信用情報だけですが、法人カードの場合には経営者個人の信用情報に加えて、会社の経営実績や財務状況もチェックされます。そのため、法人カードを申し込む際には、登記事項証明書(登記簿謄本)や印鑑登録証明書、決算書などの提出が必要な場合が多いでしょう。
事業の継続年数が浅い法人は事業実績が少ないため、カードの審査に落ちてしまう可能性もあります。もし法人カードの審査に落ちてしまった場合には、審査不要の法人デビットカードの発行を検討するのも1つの方法です。
キャッシング機能がなかったり、分割払いやリボ払いが使えなかったりする
法人カードを持つ注意点は、支払い方法を選べないことも挙げられます。
法人カードは基本的に一括払いで、個人カードで利用できる分割払いやリボ払いには対応していません。また、キャッシング機能も、法人カードには付帯していないことがほとんどです。
なお、法人カードの中には、一括払い以外の支払い方法を選べるものもあります。「一括払いだけでは不安」という場合には、申し込み時に支払い方法を確認しておきましょう。
ポイントの還元率が低い
法人カードを持つ注意点には、ポイント還元率の低さも挙げられるでしょう。
法人カードは個人カードに比べてポイント還元率が低い傾向にあり、そもそもポイントプログラムが用意されていないこともあります。プライベートでポイント還元率の高い個人カードを利用している場合には、法人カードのポイント還元率の低さに物足りなさを感じることがあるかもしれません。
なお、弥生独自の起業支援パッケージ「起業・開業応援パック」では、ポイントが溜まりやすいお得な法人カードをご紹介しています。起業を考える方は、ぜひ利用を検討してみてください。
社内で不正利用されるリスクがある
法人カードを持つ注意点は、不正利用のリスクもあります。
特に、従業員用の追加カードを発行する場合には、不正利用や紛失などが起こらないよう十分注意が必要です。利用範囲を決めるといった法人カードの管理体制や、利用時のみ貸出するといったセキュリティ対策など、社内における運用ルールの整備は不可欠といえるでしょう。
法人カードをプライベートで使用してはいけない理由
法人カードを持つうえで考慮しておきたいポイントは、法人カードは事業に関わる費用を支払うためのクレジットカードであることです。経営者であっても、プライベートの支払いに利用してはいけません。法人カードをプライベートの支出に利用すると、次のような多くのリスクがあります。
税務署に指摘される可能性がある
法人カードの引き落とし口座は、原則として法人口座です。つまり、法人カードをプライベートで利用した場合には、「会社のお金を私的な目的で使っている」という状態になってしまいます。
法人カードをプライベートで利用しても、その後正しく精算すれば問題ないと考える方もいるかもしれません。しかし、法人カードを私的に利用する頻度が多いと、税務調査で「支出が公私混同されているのではないか」と指摘を受ける可能性があります。
さらに、もし精算処理を忘れた場合はプライベートの支出を経費として計上していることになり、脱税とみなされてしまうかもしれません。このようなリスクを防ぐためにも、法人カードのプライベート利用は避けるべきでしょう。
経費処理が複雑になる
法人カードをプライベートで利用すると、経費の処理が複雑になります。
法人カードで私物を購入した場合、事業用のお金を個人に貸している状態になり、帳簿に明記したうえでお金を精算しなければなりません。経費処理が煩雑になって手間がかかるうえ、経費の精算漏れも起こりやすくなります。
銀行の融資が受けにくくなる可能性がある
法人カードを役員がプライベート利用すると、金融機関から融資を受ける際に不利になるリスクがあります。
会社が役員に貸しているお金があると見られるため、金融機関側からすれば「まず貸しているお金を返してもらってから融資を申し込んでください」となるでしょう。
また、法人カードのプライベート利用がわかると、「きちんと経費を管理できていない」「会社の資金を私的に流出させている」と判断されてしまう可能性もあります。その結果、金融機関から融資を受けられなかったり、融資額が引き下げられたりするかもしれません。
法人カードに付与されたポイントを私的に利用すると横領になる可能性もある
法人カードの支払いは法人が行っているため、支払いによって獲得したポイントは法人のものです。ポイントを私的に利用してしまうと、「業務上横領罪」に問われる可能性もあるため注意しなければなりません。
従業員用に追加カードを作成している際は、あらかじめ貯まったポイントをどうするか決めておくことを検討してみてください。法人カードの利用によって付与されたポイントは、事業用の支払いに使うようにしましょう。
※法人カードについてはこちらの記事を併せてご覧ください
法人カードの作成とともに会社設立の手続きを手軽に行う方法
会社の設立に合わせて、法人カードを作ろうと考えている経営者は多いかもしれません。会社設立に必要な手続きを手軽に行いたい場合におすすめなのが、自分でかんたんに書類作成ができる「弥生のかんたん会社設立」と、起業に強い専門家に会社設立手続きを依頼できる「弥生の設立お任せサービス」です。
「弥生のかんたん会社設立」は、画面の案内に沿って必要事項を入力するだけで、定款をはじめとする会社設立時に必要な書類を自動生成できる無料のクラウドサービスです。各官公庁への提出もしっかりガイドしてくれるので、事前知識は不要。さらに、パソコンでもスマートフォンでも書類作成ができます。
また、「弥生の設立お任せサービス」は、弥生の提携先である起業に強い専門家に、会社設立手続きを丸ごと代行してもらえるサービスです。専門家を探す手間を省ける他、電子定款や設立登記書類の作成、公証役場への定款認証などの各種手続きを依頼でき、確実かつスピーディな会社設立が可能です。会社設立後、専門家とご相談のうえ会計事務所との税務顧問契約を結ぶと、割引が受けられ、サービス利用料金は実質0円になります。定款の認証手数料や登録免許税など行政機関への支払いは別途必要です。
法人カードと個人カードの違いを知って適切に使い分けよう
法人カードは、法人や個人事業主を対象とした事業目的のクレジットカードです。法人カードと個人カードには、審査対象や利用限度額、追加発行できるカードの用途など、多くの違いがあります。
法人カードを活用すると、経費処理の手間が軽減できるなど、さまざまなメリットがあります。一方で、法人カードを利用するときには、公私混同を避ける必要がありますし、不正利用のリスクも防がなければいけません。法人カードと個人カードの違いをしっかりと把握し、目的に応じて適切に使い分けましょう。
また、会社を設立する際には、法人カードの作成以外にも、さまざまな書類の提出や手続きが必要になります。スムースに会社の設立を進めるには、「弥生のかんたん会社設立」や「弥生の設立お任せサービス」の活用もご検討ください。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。