飲食店を起業・開業するのに必要な準備や開業資金について解説

2024/01/16更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

起業・開業を目指す方たちの中でも、飲食店は人気の業種の1つです。東京商工リサーチが2022年に発表した「2021年の新設法人数、苦境の飲食店が過去最多の不思議 新規タブで開く」によると、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって2020年の飲食店新設法人数は減ったものの、2021年の新設法人数は過去最多の7,810社でした。

飲食店は人気の業種で競合が多いため、起業・開業にあたって、メニューやターゲットだけでなく、提供方法、資金などについて入念に準備し、店舗を長く継続できるようにする必要があるでしょう。
ここでは、飲食店の起業・開業に向けたステップに加え、必要な資金や届出についても解説します。

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飲食店を起業・開業するまでのステップ

飲食店の起業・開業に向けた準備は、主に以下のステップに分けられます。開業に向けた流れを理解しておくことにより、手続きの漏れを防げるため、飲食店を起業・開業予定の方は参考にしてみてください。

飲食店の起業・開業のステップ

  1. STEP1.
    飲食店を起業・開業する目的や理由を考える
  2. STEP2.
    事業計画を立てる
  3. STEP3.
    資金を準備する
  4. STEP4.
    起業・開業の形態を決めて手続きを行う
  5. STEP5.
    物件を決め、店舗の内装工事や什器の設置を行う

STEP1. 飲食店を起業・開業する目的や理由を考える

飲食店を起業・開業する目的や理由が明確であれば、お店の方向性や悩んだ際の判断基準を持てたり、開業への思いを伝えやすくなったりします。例えば、パスタ屋を開業するのであれば、一人でも入りやすいお店を作るといった目的や、ランチなどでイタリアンを選びたくても一人では入りづらいからといった理由などが考えられます。この目的と理由であれば、カウンターだけの小さなお店で、ランチタイムににぎわうエリアで開業しようといった判断の基準になるでしょう。

起業・開業の目的や理由に正解はありません。自分自身がやりたいことを突き詰めていけば、第三者に開業への思いが伝わりやすくなり、STEP2で行う事業計画を立てる際にも役立ちます。そのため、飲食店の起業・開業をする前に、まず、自分がなぜ飲食店を開きたいのか、その目的や理由を考えることが大切です。

STEP2. 事業計画を立てる

起業・開業する目的や理由が定まったら、次に事業計画を立てます。事業計画は、起業・開業して事業をどのように行い、どのように収益を上げていくかを具体的にまとめた、経営指針のようなものです。事業計画を立てた後は、事業計画書を作成し、資金調達や営業開始後の目標確認の際などに使用します。

飲食店の場合、事業計画を立てる際には、食材の仕入れや調理方法、見込み客数、コストなどを踏まえ、実現可能な規模から始めることがポイントです。また、提供する料理やサービスの特徴や価格だけでなく、誰にどのように提供するのかを考えます。

例えば、店舗のコンセプトをはじめ、店内飲食やテイクアウト、デリバリーといった販売方法、顧客を得るための販路などを決め、いつまでにどれくらいの売上になりそうかという資金計画も立てておきましょう。

飲食店のコンセプトを決める際には、「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」という「5W1H」で考えるのもおすすめです。5W1Hの要素を1つずつ突き詰めていけば、メニューやターゲット、販売形態、価格設定、サービスを考える際に役立ちます。

また、初めて事業計画書を作成する際には、決めておくべき項目をつかみにくいので、事業計画書の作成ツールなどを活用するとスムースです。例えば、弥生の資金調達ナビの「創業計画をつくる 新規タブで開く」なら、Web上で質問に答えていくだけでかんたんに、創業融資の申請時に使える事業計画書を無料で作成できます。

※事業計画書の書き方については以下の記事を併せてご覧ください

STEP3. 資金を準備する

飲食店を起業・開業する際の初期費用では、物件の取得費用や内外装費の他、厨房や調理器具、冷蔵・冷凍、レジといった機器・設備費、広告費などがかかります。さらに、事業開始後には、材料の仕入れ代や店舗の家賃、光熱費、人件費といった毎月かかる運転資金も考えておかなければなりません。

後ほど解説しますが、飲食店の起業・開業にあたって必要な資金の目安は1,000万円といわれています。事業計画を立て、店舗運営にかかる費用の見通しが立ったら、資金を準備します。

起業・開業に必要な費用を自己資金だけでまかなうことが難しい場合だけでなく、営業開始後、事業計画どおりに売上が上がらない場合に備えて、自己資金に加え、外部から資金調達をして備えておくと安心です。主な資金調達の方法には、日本政策金融公庫の「新創業融資制度 新規タブで開く」、国や地方自治体による補助金・助成金などがあります。

※起業・開業時の資金調達方法については以下の記事を併せてご覧ください

STEP4. 起業・開業の形態を決めて、手続きや物件探しを行う

飲食店を開くには、法人として会社を立ち上げる方法と、個人事業主として開業する方法があり、どちらの形態で事業を始めるかを決めます。法人と個人事業主では、起業・開業の手続きや税金の仕組みなどが異なりますので、決める際には違いを知っておくことが大切です。

例えば、個人事業主なら、税務署に開業届を提出すれば、基本的に手続きは完了です。一方、法人として会社を立ち上げるなら、定款の作成や法務局での法人登記などが必要で、書類の作成も複数に渡るだけでなく、会社設立手続きの費用もかかります。

また、法人は赤字であっても必ず納付しなければいけない法人住民税の均等割という税金がありますが、利益がでれば節税しやすいという特徴もあります。事業規模や税金などさまざまな点から、自分にとってメリットがあるのはどちらかを考えて起業・開業の形態を決めることが重要です。

なお、個人事業主から始めて、年間の売上が1,000万円を超えるくらい事業規模が大きくなってから法人化する方法もあります。法人化するタイミングの他、法人と個人事業主のどちらにするか迷ったら、税務の専門家である税理士に相談するのがおすすめです。

税理士なら、法人や個人事業主の税金のシミュレーションの他、節税のポイント、資金繰りについてもアドバイスを受けられます。起業・開業に強い税理士を探したい場合は、弥生の「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」を使うと、無料で経験豊富な税理士を紹介してもらえます。

※法人と個人事業主の違いについては以下の記事を併せてご覧ください

STEP5. 物件を決め、店舗の内装工事、什器の設置を行う

物件を決めたら、店舗の内装工事や厨房機器・備品などの設置を行います。注意点として、飲食店の起業・開業にあたっては、保健所に営業許可を申請する必要があります。飲食店の営業許可の要件には、店舗に設置しなくてはいけない備品やサイズなどの規制がありますので、工事着工前に保健所に図面などで確認してもらうといいでしょう。

営業許可の要件を満たす内容で工事を進め、飲食店の起業・開業に必要な許認可の申請や届出を行います。許認可や届出を行った後は、開店日を決め、営業に伴う準備を整えれば完了です。

※許認可の申請については以下の記事を併せてご覧ください

まずは食品衛生責任者の資格を取得する

飲食店を起業・開業する際に必要な資格は、主に以下の2つです。資格の取得には時間がかかる場合がありますので、余裕を持って取得するようにしましょう。

食品衛生責任者

飲食店を起業・開業する場合は、店舗内の衛生管理や従業員の衛生管理指導など行う食品衛生責任者を施設ごとに1名以上置くことが義務付けられています。食品衛生責任者になるには、各都道府県の食品衛生協会が主催する養成講習会を受講する必要があり、その受講料は約1万円です。

講習会は、17歳以上(自治体によっては高校生以外)であれば受けることができます。また、講習会後にテストはありますが、講習会を聞いていれば答えられる内容ですので、事前の勉強も不要です。
食品衛生責任者の資格は全国共通のため、どの都道府県で取得しても、国内なら全国どこでも飲食店を開業できます。

なお、以下の資格をお持ちの方は養成講習会を受けなくても、食品衛生責任者になれます。

食品衛生責任者になれる資格

  • 栄養士、調理師、製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者、畜場法に規定する衛生管理責任者、作業衛生責任者、船舶料理士、食品衛生管理者の有資格者

防火管理者

店舗内の収容人数が30名以上の場合は、火災などの被害を防止するための防火責任者を置かなければなりません。防火責任者の資格を取得するには、各地域の講習会場で講習を受ける必要があります。また、防火責任者の資格は、防火対象物全体の収容人数や延べ面積によって、甲種防火管理者か乙種防火管理者に分けられ、講習会も異なります。

なお、講習会は、都道府県知事、市町村の消防長、一般財団法人日本防火・防災協会のいずれかが主催しており、各都道府県によって主催者が異なりますので、詳しくは、それぞれのWebサイトでご確認ください。受講料は約7,000~8,000円です。

起業・開業する際に必要な届出

飲食店を起業・開業するうえで忘れてはいけないのが、営業許可をはじめとする各種届出です。届出の中には、必ず申請しなければならないものと、条件に当てはまれば申請するものがあります。

例えば、レストランやラーメン店、弁当屋、バーといった飲食店を開くには営業許可が必要で、無許可で営業すると、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられますので、注意が必要です。営業許可を取るには、「食品衛生責任者を置く(1店舗ごと)」「施設の基準を満たす」といった所定の要件を満たしたうえで、保健所の検査に合格する必要があります。

また、飲食店の種類や取り扱う食品によって必要な許認可が異なり、飲食店の中でも、カフェなどお酒を扱わずに茶菓子を提供する飲食店は、喫茶店営業の許可となりますのであらかじめ自分のお店の形態を確認しておきましょう。

主な届出は以下のとおりです。なお、これらの手続きの他にも、従業員を雇用する場合は労災保険や雇用保険の加入手続きが必要になりますのでご注意ください。

飲食店の開店の際の主な届出や提出先
申請書類 提出先 条件
営業許可申請書 保健所 必ず開業前に許可が必要
防火管理者の選任(解任)届出書 消防署 30人以上収容できる店舗の場合
防火対象物使用開始届出書 消防署 建物や建物の一部をこれから使用しようとする場合
防火対象物工事等計画届 消防署 使用形態を変更して工事を行う場合(居抜きも含む)
火を使用する設備等の設置(変更)届出書 消防署 火を使用する設備等を設置する場合
深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書 警察署 深夜12時以降にお酒を提供する場合
風俗営業許可申請 警察署 従業員が接待しながら飲食を行う場合
個人事業の開業・廃業等届出書 税務署 個人で開業する場合
所得税の青色申告承認申請書 税務署 確定申告で最大65万円の青色申告特別控除を受けたい場合

飲食店の起業・開業時に必要な資金は平均1,000万円

飲食店の起業・開業時に必要な資金は、平均1,000万円だといわれています。ただし、立地や店舗の規模の他、内装工事の内容、提供するメニュー、従業員の有無などによってかかる費用は変動します。

例えば、店舗を契約するときには、敷金や礼金、仲介手数料、火災保険料に加えて、前払い家賃10か月分程度が必要です。また、内装工事にかかる費用は、カウンターのみの小さなお店でおよそ600万円以上、内装にこだわると1,500万円以上かかることもあります。

営業開始後しばらくは、思うように売上が上がらないことも少なくありません。そのため、初期費用に加えて、6か月分の運転資金を最低限確保しておきましょう。

※開業資金の相場については以下の記事を併せてご覧ください

初期費用を抑えるカギは物件取得費や内装工事費

飲食店の初期費用で大きな割合を占めるのが、物件取得費や内装工事費です。飲食店の初期費用を抑えるには、この2つの費用を抑えることが欠かせません。

設備や内装をそのまま使える居抜き物件にしたり、テーブルや椅子、棚などの家具は、リサイクル品やアウトレット品を活用したりするのも、費用を抑えるには効果的です。また、初めから大きな店を構えようとせず、10~15坪程度の小さな店舗にすれば、内装工事費や設備費を抑えられるだけでなく、月々にかかる家賃や光熱費、人件費も抑えることにつながります。

その他、店舗の装飾にこだわりすぎず、できるだけ自分で行えば、業者に内装工事を依頼するのに比べて費用を抑えることもできるでしょう。ただし、開店準備に時間をかけすぎると、収入に影響する可能性がありますので、節約するところと時間をかけるところのバランスを取ることも大切です。

起業・開業の手続きを手軽に行うには?

飲食店を行う際、法人と個人事業主では必要な手続きが異なります。いずれにしても書類の作成は必要になりますので、手軽に書類作成ができるクラウドサービスを活用するのがおすすめです。
ここでは、法人と個人事業主それぞれの手続きを手軽にするクラウドサービスをご紹介します。

法人として会社設立の手続きを行う場合

法人化して飲食店を行う場合は、会社設立の手続きが必要です。会社設立に必要な手続きを手軽にするには、起業に強い専門家に会社設立手続きを依頼できる「弥生の設立お任せサービス」と、自分でかんたんに書類作成ができる「弥生のかんたん会社設立」がおすすめです。2つとも、会社設立の手続きを手軽にするサービス利用料0円のクラウドサービスで、上手に活用することでスムースな手続きができます。

さらに、会社設立直後に必要なツールや環境が揃えられるパッケージ「起業・開業応援パック」も活用すれば、さらにスムースに事業を開始できるでしょう。

個人事業主として手続きを行う場合

個人事業主として開業する場合は、開業から1か月以内に、「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を納税地の税務署に提出する必要があります。また、確定申告で最大65万円の青色申告特別控除を受けられる青色申告を行うには、開業届を提出したうえで、事業開始から2か月以内に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。

個人事業主として開業する場合は、「弥生のかんたん開業届」を使えば、画面の案内に従って操作するだけで開業届などの必要書類の作成ができます。

また、クラウド確定申告ソフト「やよいの青色申告 オンライン」を使えば、簿記や会計の知識がなくても、最大65万円の青色申告特別控除の要件を満たした青色申告の必要書類がかんたんに作成できます。
起業・開業後はお店の運営の他に、会計業務などお金の管理を自分で行うことが必要になるため、起業・開業のタイミングで会計ソフトや確定申告ソフトなどを導入しておくといいでしょう。

※飲食店を個人事業主として開業した方の事例はこちらをご確認ください

飲食店の起業・開業はステップにあわせてスムースに行おう

飲食店を起業・開業するには、事業計画を立てたり、資金を準備したりするだけでなく、許認可の申請などやらなくてはいけないことがたくさんあります。いくら資金が十分にあっても、コンセプトがあいまいなままではすぐに行き詰まってしまうことにもなりかねません。

まずはしっかりした事業計画を立てる他、専門家に相談したり、クラウドサービスを上手に活用したりして、起業・開業をスムースに進めましょう。

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この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

URL:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_mori/新規タブで開く

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