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私が会社勤めをやめて起業した理由 〜32歳・SE・プログラマー 前田さん(仮名)の場合〜

執筆者:阿部桃子

2023/12/04更新

いつかは起業したい……でも、「食べて行けるだろうか?」「自分は経営者に向いているかわからない」などの不安がよぎり、最後の一歩が踏み出せない人もきっと多いことだろう。そんな不安を拭い去り、思い切って会社を立ち上げたり、独立・開業を果たした若手起業家たちをインタビュー。今回はシステム会社を経てSE・プログラマーとして独立し、法人化したばかりの前田さん(仮名・32歳)の本音に迫ります。

SE・プログラマー 前田さん(仮名・32歳)の場合

PROFILE

  • 職業:SE・プログラマー
  • 年齢:32歳
  • 経歴:システム開発会社など4社を経て→フリーランス→法人化
  • 年収:1,000万円超(見込み)
  • 家族構成:妻、子ども1人
SE・プログラマー 前田さん(仮名・32歳)

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「もっと早く辞めればよかった」

ここは都心のコワーキングオフィス。未来を想起させるオシャレな空間に、起業家やスタートアップの準備を進めるメンバーたちが集う。併設のカフェからは挽き立てのコーヒーの香りが漂い、多国籍なメンバーが英語で会話する声も聞こえてくる。

こちらを拠点のひとつとしているのが、SE・プログラマーの前田さん(仮名・32歳)。1年半前に会社を辞めてフリーランスとなり、1カ月前に会社を立ち上げ、法人化したばかりだ。

「ここ数年、ずっとITバブルのような状態が続いていますから。ほとんど営業をしなくても知人や友人からの紹介で仕事は次々とやってくるし、やりたい仕事だけを選んでも十分にやっていける状況です。いろいろとお仕事をいただけるのは、これまでの仕事の経験で得たきた信頼関係も大きいと思います。今期の年収は1,000万は超えそうな見込み。土日は3歳の子どもと遊ぶ時間も取れているし、ワークライフバランスもなかなかいい感じです」

「会社を辞めてよかった」どころか、「もっと早く辞めればよかった」と、後悔しているという。

そんな前田さん、以前はどんな会社に勤めていたのだろうか?

「もっと早く辞めればよかった」

社長のワンマン体質に悶々とする日々……「この会社に未来はない」と決意

「以前いたITベンチャー企業には、Unityというツールでゲーム開発ができるという理由で転職したのですが、就職して3カ月くらいでその案件が消滅することに。しかもその理由が、”社長が心変わりしたから”というものでした」

ただ、給与面などでエンジニアが優遇されている環境であったこと、新しいプロジェクトのメンバーに選ばれていて、初めてRubyのサーバーサイドのプログラムを勉強する機会であったことから、すぐ会社を辞めるという発想には至らなかった。

「何より社長から、このプロジェクトが終わったらゲームを作ってもいいよ、という話もありましたからね」

ただ、ワンマンな社長には相当に手を焼いたという。

「進行中のプロジェクトではスマホのマッチングアプリを開発していました。いわゆる出会い系のアプリなので、ユーザーのセンシティブな情報が登録される。それなのに、個人情報の扱いがかなり雑で。それはNGだと社長に指摘しても、『改善の必要ナシ』とあっさり却下されました。

あとはエンジニアたちの作業が楽になるためのツールを作ったのに、『裏で勝手なことをするな』『承認は取ったのか?』と言われたり。よかれと思ってやったことが社長に却下され、そこで社長を説得するために膨大な時間を費やす、という日々で心をすり減らしていました」

何よりITの世界はスピードが大事。同業他社が似たようなプロジェクトを動かしているなか、リリースが1~2カ月遅れただけでも完全に乗り遅れてしまうことは紛れもない事実だ。

「このスピード感で仕事をしているようでは、この会社に未来はないと思いました」

そんな状況にもかかわらずアプリを無事リリース。社長に「次はゲームを立ち上げさせてください」と言ったところ、けんもほろろに断られてしまう。どうやら社長は、あれこれ意見する前田さんの態度を内心では快く思っていなかったようなのだ。

「もうこの会社にいる理由は1つもないと思い、退職を決めてから2週間で会社を辞めました」

社長のワンマン体質に悶々とする日々......「この会社に未来はない」と決意

「この仕事を続けていたら、将来なにもできないオッサンになってしまう」

その後、フリーランスのSE・プログラマとしてすぐに仕事を始めた前田さんだが、実はこの会社に来る前に3回ほど転職を経験している。

「IT業界自体がひとつの会社のようなもので、SEやプログラマーはまるで部署異動をするように転職しますから。転職したら、以前の会社の人に会ったなんてこともよくあります。
もちろん大手は社会的地位も収入も高いから、簡単には辞めない人も多いとは思いますが、私はもともとニートのフリーターだったから、失うものは何もないので(笑)」

前田さんは20歳で九州から上京。その当時の所持金はたったの1万円だったという。上京後は1年半ほど友達の家に居候をして、日雇いバイトで食いつないでいた。

「倉庫での運搬作業、ケータイショップでの接客、スーパーでの試食販売など、手当たり次第に働いていました。そんななかで、地元出身の友達が大学を卒業して、一流企業に就職したことを耳にしたりすると焦りも出てきて。まずは人材派遣会社から紹介された企業に就職する方法を選びました」

就職先は、中古車の輸送を行う会社。まずは紹介予定派遣(正社員になる前提の派遣社員)として勤務し、車両の書類を作成したり、チェックしたりという事務作業を行っていた。

「書類はエクセルを使って入力するのですが、すべて手作業なのでミスが多く、ミスするたびにリカバリーのために仕事が増えるという悪循環を繰り返してしました。終電帰り、土日出勤は当たり前で、40日連勤なんてこともザラ。まさにブラック企業でした」

そんなとき、前田さんはエクセルVBAでプログラムを組み込めることを知り、独学でプログラムを書くことができるまでになっていた。今まで手作業で行っていたものを、プログラムで全部自動化する。すると、労働環境が大きく改善されて、終電帰りもほとんどなくなった。

「この仕事を続けていたら、将来なにもできないオッサンになってしまう」

「いま思えば素人に毛が生えた程度のプログラミングでした。でも、とにかく楽しくて、楽しくて。プログラマーになれば、1日中プログラムを書いてお金がもらえる、しかも業務改善など、直接誰かの役に立つことができるんだと思うようになったんです」

この会社に3年ほど勤務したのち、システム系の会社に転職を決めることになる。

「未経験での転職になっても、お金がもらえて、しかも勉強までできるのだから、専門学校に行くよりずっといいと思いました」

それにしても、以前は食べ物や寝る場所にさえ困る毎日だった前田さんである。正社員という安定した地位に未練はなかったのだろうか?

「それは絶対にないですね。その会社の仕事は、車の書類のチェックとか、その会社でしか使えないものでした。AIでなくなる仕事とか最近よく耳にしますけど、まさにそんなタイプの仕事だったと思います。何年もこの仕事を続けていたら、将来はなんのスキルもないオッサンになってしまうんじゃないか、という危機感のほうが勝っていました」

IT企業に転職。勤続2年。円満退社のはずが......

IT企業に転職。勤続2年。円満退社のはずが……

そして、社長と2人だけの小さな会社でプログラマーとしての人生を歩むことになる。

「ここでは、企業の業務系システム開発を手掛けることが主な仕事。クライアントにヒアリングをして、要件を出して設計、設計書に添ってプログラミングを行うという一連の作業を行っていました。つまり、SE、プログラマーの両方の仕事を同時に行っていた訳ですね。のちになって、実はSEは普通、プログラムまで書かないという話を聞いて、びっくりした記憶があります(笑)」

そもそも独学から一歩進んで、先輩エンジニアに学び、成長したいという思いがあった前田さん。

「でも社長に質問しても『どこかに書いてあるだろう、調べればわかるだろう』という回答が返ってくるばかり。エンジニアはそういう方が多いですけどね。結局自分で学ぶしかなくて。エンジニアの勉強会は渋谷や六本木で開かれることが多いのですが、会社が都心から遠く、時間もなくてなかなか参加もできませんでした」

そこから2年、SE・プログラマーとしての実力がついてきたこと、当時はスマホアプリや、AR/VRの開発が注目を集めていて、自分もそれらを手掛けたいと思ったことから、自然な流れで転職を決意することにする。

しかし社長からは意外な言葉が……。

「社長に辞表を出したあと『今後も仕事上のお付き合いをよろしくお願いします』と伝えたのですが、『そんな虫のいい話があるか!』と言われてしまいました。おそらく、『ようやく仕事を任せられるまで育ってきたと思ったその矢先に勝手に辞めるなんて』と思われたのでしょう。

不義理をして申し訳ないと思った反面、社長に遠慮していたら本当に自分がやりたいこともできませんから……。2年間頑張って働いたので許してください、と心のなかでつぶやきました」

「いつかは自分も起業できるかも」

「いつかは自分も起業できるかも」

次に転職したのは、IT企業の合同説明会で紹介されたシステム開発の会社。

「オフィスもオシャレで、ワークスタイルも自由。当時はとても新鮮でしたね。開発スタイルも新しく、技術力が高いエンジニアさんがたくさんいたので、教わることも多くて。自分がどんどん成長していくのが分かりました」

営業やバックオフィス担当がいない会社だったので、自分で営業に行ってクライアントに提案したり、見積もりや請求書を作ったり……。この会社でSE・プログラミング以外の業務もすべて経験することになった。

「いつかは自分も起業できるかも、というモチベーションが高まりました。とはいえ前述のとおり、1年ちょっとでやっぱりゲームが作りたくなって最後の会社に転職してしまうのですが……。ただ、退職すると告げても仲間たちが『いつでも帰って来ておいで』と言ってくれて。今でも一緒に仕事をすることがあります。本当に最高の会社でした」

その後、また別の1社への転職を経て、いよいよ前田さんは独立を決めることになる。

「ダメだったらフリーに戻ればいいし、転職してもいい」

「ダメだったらフリーに戻ればいいし、転職してもいい」

「何となく、いつかは起業したいという気持ちはありましたが、タイミング的にはSE・プログラマーとしてどこでも働いていけるという自信がついたことが大きいですかね。うまく行かなかったらフリーに戻ってもいいし、転職してもいいし。

最近は事務所もこういうコワーキングスペースがあるし、ネットを見れば独立のための便利なツールもいろいろあるし。借金して会社を作ったわけではないので、気楽ですよ」

とはいえ、前田さんは家庭持ちの身。転職を繰り返し、独立することで家族に心配をかけることはなかったのだろうか?

「嫁には転職のたびに『また転職?』と言われましたけど、それを言われることにも慣れました。最近法人化したことも、役所から郵送されてきた封筒を見てはじめて知ったようで。ただ、無職になったことはないし、収入は安定していたので、今のところ文句は言われてないですね。やっぱり実入りが重要みたいで(笑)」

法人化したのは、大手からの仕事が受けやすくなるという点が大きかったから。今は受注する仕事も多く、1人だけで仕事を回して行くには限界があるので、誰か人を雇って、事務所も借りて、以前勤めていた会社みたいに自由に出勤できて……と、もっと会社を大きく、魅力的なものにしたい、という野望も抱いているそう。

「そのためには、従業員が成長できる環境を整えたり、経営を安定させたりということを考えなければいけないですね。せっかく雇った社員にすぐ辞められないように」

高校を卒業してからは大学に進学せず、新聞配達をしながら実家でいわば「ニート生活」をしていた前田さん。3人兄弟の末っ子だが、国立大学に進学した優等生の兄姉へのコンプレックス、親からの暗黙のプレッシャーを感じながら、20歳で九州から逃げるように上京してきた。

当時はどこにも属してない、何者でもない自分が本当に嫌でたまらなかったそうだ。

あのときから12年……。

「ダメだったらフリーに戻ればいいし、転職してもいい」

「東京都心で夜空を眺めると、タワーマンションの夜景がキラキラ輝いていますよね。上京してきてからずっと、『なんで俺はあそこに住めないんだろう? あの住人と俺は何が違うんだろう?』って無性に腹を立てたりしていて。で、このままサラリーマンをやっていたら、あそこには一生住めないんじゃないかって、27~28歳くらいの時にふと思ったんですよ。でもこの1年で、あの夜景の住人に一歩くらいは近づいた気がしています」

Photo:塙 薫子

この記事の執筆者阿部桃子

早稲田大学卒業後、出版社、テレビ局勤務などを経てフリーランスに。専門分野は教育・育児支援、ビジネス、キャリア。『日経トレンディ』『AERA with Kids』『Bizmom』などで執筆。2児の母。活字好きの子どもを増やすべく、地域で読書ボランティア活動にも励んでいる。

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