起業の相談先はどこがいい?サポートしてくれる機関や無料窓口を解説
監修者:森 健太郎(税理士)
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起業する方に向けて、公的機関や専門家などでは相談窓口を設けています。起業にあたっては、事業内容や資金計画、販路の開拓、会社の形態などを決めなくてはならず、慣れない作業に時間がかかったり、判断に迷ったりすることがあります。こうした相談ができる窓口はいくつかありますが、相談できる内容や料金などが異なるため、自分の悩みに合った相談先を知っておきましょう。
ここでは、起業にあたって相談ができる公的機関や地域の支援機関、専門家などの一覧と特徴を紹介するとともに、起業相談の前にやっておいた方がいいことも解説します。
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起業相談する前に各窓口の特徴を理解しておく
公的機関や地域の支援機関では、起業に関する相談を無料で受け付けています。起業相談ができる主な機関とそれぞれの特徴は以下のとおりです。
無料相談ができる公的機関や地域の支援機関の一覧
- 日本政策金融公庫
- 各地の商工会議所・商工会
- 独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)
- よろず支援拠点
- ワンストップ相談窓口Plus One
- 税務署
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国が100%出資している政府系金融機関で、地域の起業・開業率を引き上げることで、雇用機会を創出し、国内総生産(GDP)の引き上げを目指しています。そのため、民間で融資を受けにくい中小企業や小規模事業者への融資を行ったり、創業前支援として起業相談を行ったりしています。
相談窓口は、東京、愛知、大阪の3か所にビジネスサポートプラザが設置されており、中小企業診断士などの専門の相談員に、来店して対面、またはオンラインのビデオ通話で、約1時間相談することが可能です。受付時間は場所によって異なりますが、平日と土曜日は9時から17時までで、東京と大阪は週1回夜間受付として17時から20時まで対応しています。
起業相談は事前に予約が必要で、予約方法は来店またはオンラインのいずれかで行います。ビジネスサポートプラザの住所や予約については、日本政策金融公庫のWebサイト「創業前支援」をご確認ください。
その他、創業計画書の立て方や融資申し込みの流れ、融資制度などの相談や疑問に答える創業サポートデスクも全国152の支店に設置しています。さらにWebサイト上では、美容業、飲食業、小売業といった業種別に特化した創業ポイント集も公開されていますので、情報収集にも活用してみましょう。
各地の商工会議所・商工会
商工会議所は、地域経済の活性化や中小企業を支援することを目的に活動する、特別認可法人の非営利団体です。市など一定地区内の商工業者によって構成されており、会員制になっています。地元企業の支援の一環として無料で起業相談にも対応する他、起業セミナーなども開催しています。
商工会議所の起業相談では、税理士や司法書士といった専門家に、会社設立手続き、事業計画の立て方、事業計画書の作成方法、資金調達方法、販路の開拓方法といった、起業にまつわる相談が可能です。
また、商工会議所が開催する起業セミナーに参加すると、起業家同士の交流ができるため、地域の起業家との人脈を広げられたり、情報収集を行ったりすることにも役立ちます。
商工会議所のように地域密着型の機関としては、他にも地方自治体や信用金庫などで創業支援が行われていることもあります。地元に特化した事業や地域活性化を活かした事業で起業しようとしている場合は特に、地域の創業支援窓口を調べてみるのもいいでしょう。ただし、商工会議所の会員になるためには地域ごとに条件があります。最寄りの商工会議所の窓口やWebサイトでご確認ください。
なお、商工会議所は市単位で設置されていますが、主に町村を設置基準にした商工会という組織でも起業相談を受け付けています。
独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)
独立行政法人 中小企業基盤整備機構は、自治体や支援機関、経済産業省や中小企業庁といった政府系機関と連携しながら、中小企業の成長段階に合わせて幅広い支援を行っています。
中小企業の経営に関する相談窓口では、オンライン、電話、対面、メールなどで課題に応じた専門家が無料で何度でも対応してくれます。また、AIを活用した対話型自動応答サービスの起業相談チャットボットでは、24時間365日起業に関する相談が可能です。
起業相談では、経営に関する相談だけでなく、課題に応じた専門家の派遣、ビジネスマッチング、起業や地域活性化に関するオンラインワークショップも行っています。また、SDGsや省エネ・カーボンニュートラルに関する相談、自動車部品サプライヤー事業転換支援事業や海外ビジネスに関する相談窓口も設けられています。
起業相談には事前に申し込みが必要です。中小企業基盤整備機構のWebサイト「経営に関する相談」から希望する相談方法でお申し込みください。
中小企業基盤整備機構は、後述するよろず支援拠点の全国本部としても、起業家や中小企業経営者のサポートを行っています。遠方などの理由で直接窓口に出向くのが難しい場合などは、近隣のよろず支援拠点で相談するといいでしょう。
よろず支援拠点
よろず支援拠点は、国が全国に設置している無料の経営相談所で、中小企業や小規模事業者を対象に、全国47都道府県にある支援拠点で経営相談に対応しています。
従業員5人以下の会社からの相談が7割以上を占めており、中小企業の経営者をフォローアップできるよう、何度でも無料で相談が可能です。
また、よろず支援拠点では、創業をはじめ、売上拡大、経営改善・事業再生、継承といった経営上の悩みに対して、さまざまな分野の専門家からのアドバイスが受けられます。また、相談内容に応じた適切な支援機関の紹介など、課題解決に向けてワンストップでの支援を展開しています。
経営相談は電話、メール、FAXで事前に申し込みが必要です。よろず支援拠点のWebサイト「支援拠点一覧」では、各地域の拠点とコーディネーターを確認できるだけでなく、支援の事例なども紹介されていますので、相談前に参考にしてみてください。
ワンストップ相談窓口Plus One
ワンストップ相談窓口Plus Oneは、政府系16機関が連携して創設した、スタートアップ支援に関するプラットフォーム「Plus」のワンストップ相談窓口です。参加機関には、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)をはじめ、前述した日本政策金融公庫や中小企業基盤整備機構、医療機器やエコシステム分野の国立研究開発法人などがあります。
起業に関する相談の他、技術開発、知財実用化といった相談にも対応しており、専門分野に特化した支援機関が連携することで、ワンストップで悩みを解決できるよう取り組んでいます。
ワンストップ相談窓口Plus Oneへの相談は、StarT!Ps from NEDOのWebサイト「Plus One」から申し込みが必要です。また、参加機関の支援メニューも併せて確認できます。
税務署
税務署では、起業・開業時の手続きや、税金の仕組み、確定申告の方法などの相談に対応しています。法人だけではなく、個人の税金についても相談可能です。
起業・開業にあたっては、法人設立届出書や開業届、青色申告承認申請書など、税務署へのさまざまな届出が必要になります。また、起業後は、法人であれば法人税や法人事業税などの税金を納めることになります。このような届出や税務に関する相談、記帳や帳簿の保存方法について不明点があるときは、納税地を所轄する税務署に相談するといいでしょう。
税務署窓口での相談には事前予約が必要ですが、国税に関する相談は国税局電話相談センターでも受け付けています。なお、確定申告の時期は税務署の窓口が混雑するため、対応が限られる可能性があります。
起業相談ができる専門家
起業する際の設立手続きは、専門家に相談することが可能です。専門家には、司法書士や税理士、行政書士、社会保険労務士といった士業が挙げられます。士業にはそれぞれ専門分野があり、依頼できる内容や費用などが異なりますので、相談したい内容や費用に合わせて、依頼する専門家を選ぶといいでしょう。
専門分野と費用の目安は以下のとおりです。
専門家 | 相談内容 | 費用の目安 |
---|---|---|
税理士 | 会社設立(設立手続き代行以外)、税金や会計の相談、税務手続き | 顧問契約を前提に設立時の相談が無料の場合もある。月額顧問料3万円程度 |
弁護士 | 契約書や著作権など法務 | 10万円程度 |
行政書士 | 定款の作成や認証、許認可申請 | 10万円程度 |
司法書士 | 定款の作成や認証、登記申請 | 5万~15万円程度 |
社会保険労務士 | 社会保険や雇用の手続き | 従業員30人未満で5万円程度 |
上記の表のように、士業の専門分野はそれぞれ異なるため、起業時の手続きを同じ士業にまとめて依頼することはできません。
例えば、法務局への法人登記申請を代行できるのは司法書士だけです。また、税務関係の手続きは、税理士しか代行することはできません。それぞれ専門領域が決まっていますので依頼する際に注意しましょう。
中でも、税理士は、起業後も会計処理や年末調整の対応などで長い付き合いになる士業です。役員報酬の金額や資金繰りの他、税金についても相談することができます。税理士に相談すると、会社設立後の顧問契約を前提に、司法書士や行政書士を紹介してくれたり、会社設立時の相談を無料で対応してくれたりすることもあります。専門家に相談するときには、士業同士の連携についても注目してみるといいかもしれません。
- ※会社設立の専門家については以下の記事を併せてご覧ください
起業家に相談する方法もある
公的機関や専門家だけではなく、既に起業している方に相談をするのも1つの方法です。同じ業種の先輩起業家であれば、経験にもとづいたリアルなアドバイスをもらえたり、業界についての情報を教えてくれたりします。
例えば、飲食店は起業するのに人気の業種ですが、店舗や設備代、仕入れや人件費など初期費用も毎月のコストも高い傾向があり、事業を長く継続していくには、安定した集客が欠かせません。どのように集客したり、コスト削減したりしているのかなどを聞いておくことで、起業前に事業的規模や集客方法を考えるきっかけにもつながります。
これから起業しようと考えている方は、既に起業している知人の他、起業にまつわる交流会や起業セミナーなどに参加して、自分がこれから起業する業界の起業家にも話を聞いてみるのも1つの方法です。
相談前にやっておくべきこと
相談内容が漠然としていると、アドバイスも曖昧なものになってしまいます。起業相談をするときには、明確な回答を得て、起業準備が進められるよう、以下のような準備を行い、何を知りたいかという目的や自分の悩みを具体的に伝えるようにしましょう。
事業計画や資金計画を立てる
起業相談では、事業内容や戦略、収益見込みなど、事業をどのように展開するかを具体的に伝えられるよう、事業計画を立てておきましょう。例えば、どのような商品やサービスを、誰にどのようなチャネルで販売し、どれくらいの収益を見込むのかなどを具体的に考えておきます。また、仕入れや人件費といったコスト、生産方法、集客方法なども踏まえ、資金計画も作成しておくと、事業的規模を専門家に伝えるのにも役立ちます。
創業直後は売上が安定しないことも多いため、開業資金に加えて運転資金の6か月分程度を用意しておくのが望ましいといわれていますが、想定している内容で正しいかを、専門家に確認してもらうのも1つの方法です。限られた時間で的確にアドバイスをもらえるよう、相談内容の具体化を意識しましょう。
- ※事業計画書の書き方については以下の記事も併せてご覧ください
起業の流れや必要な手続きを把握する
一口に起業といっても、株式会社と合同会社では設立に必要な手続きや設立費用などが異なります。それぞれの特徴を比較し、自社の事業に合う会社形態を考えたうえで、必要な手続きと手順を把握しておきましょう。
起業の流れを確認する中で生じた不明点や疑問点を整理しておけば、より具体的な相談が可能になります。起業前は事業や設立の準備、資金の調達などで時間に追われることがあります。起業までの限られた時間を有効に使って自分の理解度を深められるようにしましょう。
- ※株式会社や合同会社の設立の流れについては以下の記事も併せてご覧ください
会社設立手続きを手軽に行う方法
会社設立に必要な手続きを手軽に行いたい場合におすすめなのが、自分でかんたんに書類作成ができる「弥生のかんたん会社設立」と、起業に強い専門家に会社設立手続きを依頼できる「弥生の設立お任せサービス」です。
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起業相談で起業への不安を解消しよう
起業に関する疑問や悩みは、公的機関や地域の支援機関、専門家などに相談することができます。地域に密着した商工会議所やよろず支援拠点だけでなく、地域で起業サポートを行っている場合もありますので、事業を行う自治体のWebサイトなども確認してみてください。
また、起業の設立準備を進める際には「弥生のかんたん会社設立」や「弥生の設立お任せサービス」といったサービスを活用して、スムースな事業開始を目指しましょう。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。