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役員報酬を経費にして節税するには?損金算入の要件を解説

監修者:森 健太郎(税理士)

2024/06/10更新

役員報酬は、会社が支払った金額を無条件に経費(損金)にできるわけではありません。役員報酬を経費として損金算入(経費扱い)するには、いくつかの要件を満たす必要があります。

役員報酬を経費として扱うことができれば、課税対象となる所得が少なくなる分、法人税の税負担を軽減することができます。会社の節税対策のためにも、役員報酬を経費にする方法や、役員報酬の金額の決め方などは知っておきたい知識です。

ここでは、役員報酬を経費として計上するための支払い方法や判断基準などの要件や、注意点などについて解説します。

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役員報酬は要件を満たせば経費にできる

役員報酬は、要件を満たした支払い方法であれば経費とみなされ、損金算入が可能です。ただし、原則としては、役員報酬は従業員の給与のように会社の経費にすることはできず、損金不算入の費用となっています。

会社の所得とは、売上や売却によって得た益金の額から売上原価や販売費といった損金を差し引いた金額で、法人税の税額を算出するベースになるものです。つまり、役員報酬を損金算入できれば損金が増えることで所得が減り、節税につながります。

反対に、役員報酬を損金算入できなければ、実際には費用として支払っているにもかかわらず、経費として扱われずに税負担が増加してしまうため、注意しなければなりません。

損金算入とは税法上、経費として計上すること

損金算入とは税法上、経費として計上することを指します。
経費とは事業を行うために使った費用のことで、法人税を計算するにあたり、税法上の経費と認められるものを損金と呼びます。

会計上と税法上では、経費の扱いが異なります。
会計上は、事業のために支出したお金は基本的に経費です。しかし、税法上は実際に事業のために使っていたとしても、課税の公平性のために経費とはみなされないものがあります。

役員報酬も、会計上は費用でも、税法上は損金と認められないものの1つです。
もし役員報酬を無条件で損金算入できると、会社の業績に合わせて経営者が自分の役員報酬を操作し、法人税の税額を不当に低くすることが可能になってしまいます。そのため、役員報酬を損金算入できる要件は決められています。

損金算入できる役員報酬の支払い方法の種類

税法上、損金として認められる役員報酬には3種類あり、それぞれの支払い方法の要件を満たす場合のみ、損金算入が可能になります。具体的な支払い方法の要件は、下記のとおりです。

損金算入できる役員報酬の支払い方法の種類

  • 定期同額給与
  • 事前確定届出給与
  • 業績連動給与

定期同額給与

定期同額給与とは、1か月以下の一定期間ごとに同額で支払われる役員報酬のことで、役員の月収といえるものです。残業代や特別に支給する報酬は定期同額給与に含まれないため、従業員の基本給と同様に、月によって金額が変動することはなく月々の報酬額は固定です。
定期同額給与の金額を変更できるのは事業年度開始(期首)から3か月以内の時期だけなので、基本的には1年間、毎月同じ金額が支給されます。

なお、直接的な金銭の支給でなくても、例えば役員の自宅家賃を会社が負担する場合、役員に対して供与される金額が毎月おおむね一定であるものは定期同額給付に含まれ、損金算入が認められます。

事前確定届出給与

事前確定届出給与は、「既定の金額を指定した日に支払う」と、事前に税務署に届出を行ったうえで支払われる役員報酬です。決まった時期にまとめて支払われるため、役員の賞与(ボーナス)のようなものといえます。

事前確定届出給与を損金とするには、所定の期日までに所轄税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出し、届出どおりの支給日に記載したとおりの金額を支払う必要があります。届出と違う日や違う金額での支給になった場合には、全額が損金不算入となるため注意しましょう。

  • 事前確定届出給与ついては以下の記事を併せてご覧ください

業績連動給与

業績連動給与とは、会社の利益(業績)に応じて支払われる役員報酬のことです。2017年度の税制改正により「利益連動給与」から名称が変更されました。

業績連動給与を損金計上するには、「報酬の算定方法が所定の指標を基礎とした客観的なものである」「有価証券報告書に記載・開示している」「通常の同族会社以外である」という3つの条件を満たす必要があります。定期同額給与や事前確定届出給与とは異なり、あらかじめ金額を確定する必要はありません。

なお、業績連動給与を適用するには、所定の指標をもとに報酬額を算定し、有価証券報告書に記載する必要があるため、株式を公開していない非上場の会社は適用できません。所定の指標とは、「利益の状況を示す指標」「株式の市場価格の状況を示す指標」「売上高の状況を示す指標」になります。

  • 役員報酬については以下の記事を併せてご覧ください

経費(損金)算入できるかを判断される2つの基準

役員報酬は、株主総会の決議など定められた方法で決まったものであれば、金額に上限はありません。
ただし、税務調査で役員報酬が過大と判断された場合には、損金算入が認められない可能性があります。役員報酬が過大かどうかの判断基準になるのは、以下の2つです。

実質基準

実質基準とは、役員の職務内容や会社の状況などから見て、役員報酬として相当かどうかを判断する基準です。例えば、役員報酬が同業・同規模他社と比べて極端に高いと、不相当とされて損金不算入となることがあります。
実質基準では、主に以下の4点を比較して判断が行われます。

実質基準の判断材料

  • 職務の内容
  • 会社の収益
  • その会社での使用人に対する給与の支給状況
  • その会社と同種の事業を営み、事業規模が類似する他の会社の役員報酬の状況

形式基準

形式基準とは、定款の定めまたは株主総会の決議内容にもとづいて役員報酬額を判断する基準です。
例えば、定款や株主総会で役員報酬の総額を定めている場合に、実際の役員報酬の合計額がその金額を超えていると、超えた部分が過大と判断され損金不算入となります。

役員報酬が経費として扱われるために注意すべきこと

役員報酬を税法上の経費として計上するためには、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかに該当することが必要です。ただし、それらに該当する要件を満たしていても、損金算入できない場合があります。以下のような点に注意しなければなりません。

役員報酬を高額に設定しすぎないようにする

役員報酬があまりにも高額だった場合、税務調査で不相当と判断されることがあります
もし税務署からの指摘がなかったとしても、役員報酬が高すぎると役員個人の税負担が大きくなるうえ、会社の運営資金も少なくなって資金繰りが悪化してしまうかもしれません。

過大かどうかは実質基準や形式基準を参考にしながら、役員報酬の金額を決めるようにしましょう。

決定した役員報酬の支払い時期や金額を届出どおりにする

定期同額給与や事前確定届出給与は、既定のとおりに役員報酬を支給することが大切です。
例えば、事前確定届出給与は、税務署に届け出た支給日や支給金額を守らなかった場合、役員報酬の全額が損金不算入となってしまいます。

また、定期同額給与も、毎月同額の役員報酬を支給しなかった場合には、一部が損金不算入となります。期の途中で定期同額給与を増額すると、増額分の役員報酬は損金算入できません。反対に減額した場合は、それまでに支払った役員報酬も含めて、減額後の金額しか損金算入ができなくなります。

例えば、毎月50万円としていた定期同額給与を、期首から半年以内に30万円に減額したとします。この場合、期首から半年間は月額50万円を支払っていたとしても、その事業年度を通して損金算入できるのは減額後の月額30万円分のみです。

役員の地位や職務内容が変わった場合や経営状況が著しく悪化した場合は、例外として期の途中でも役員報酬の改定が認められますが、それ以外の理由で役員報酬の金額を変更すると経費として認められず、税負担が大きくなってしまいます。1年を通して変更しなくても済むように、役員報酬の金額を決めるときは慎重に検討することが重要です。

株主総会の議事録を作成し保管しておく

役員報酬を経費として損金計上するためには、株主総会の議事録の作成と保管が必要です。税務調査などで議事録の確認を求められることもあるため、作成と保管を忘れないようにしましょう。

会社法では、役員報酬は「定款または株主総会の決議によって定める」としています。そのため、定款を作成する際には、役員報酬について記載の有無を決める必要があります。

作成した定款には従わなくてはなりません。定款に役員報酬の支給日や支給金額を記載した場合にはそのとおりに支給する必要があり、株主総会の決議によって決めると記載した場合には役員報酬は株主総会での決議が必要です。

役員報酬の損金算入について相談したい場合

役員報酬を税法上の経費として計上するためには、さまざまなルールが定められています。役員報酬は法人税や役員個人の納税額などにも関わるため、金額の設定が不適当だったり、結果的に損金不算入になったりすると、会社の資金繰りにも影響を及ぼしかねません。役員報酬を適切に設定するには、税務の専門家である税理士に相談すると安心です。

法人税の計算は複雑なので、税務や会計の専門知識がないと、正しく行うのは難しいものです。法人税の確定申告でミスを防ぐためにも、税務の専門家である税理士に相談するといいでしょう。自力で税理士を探そうとすると、手間や時間がかかります。そのような場合は、弥生株式会社の「税理士紹介ナビ新規タブで開く」がおすすめです。

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役員報酬を経費にできる方法を正しく把握しておこう

役員報酬を損金算入するには、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかの要件を満たす必要があります。

また、役員報酬の金額は、会社の税金や資金繰りにも影響するものです。税負担を減らそうとして役員報酬を多くしすぎると、会社の利益を圧迫して資金繰りが苦しくなるかもしれません。一方、役員報酬が少なすぎると、役員個人の生活に悪影響を及ぼす可能性もあります。

効果的な節税対策にするためにも、役員報酬の金額を決める前に「税理士紹介ナビ新規タブで開く」などを利用して、専門家に相談する方法を検討しましょう。

この記事の監修者森 健太郎(税理士)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

URL:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_mori/新規タブで開く

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