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役員報酬にかかる税金の計算と手取りシミュレーション|税金対策のポイントも解説

役員報酬にかかる税金の計算と手取りシミュレーション|税金対策のポイントも解説

役員報酬の適正額は、会社の業績や規模によって異なります。税法上の経費算入ルールや税金・社会保険料とのバランスなど、さまざまな要素を考慮して計算しなければならず、設定を誤ると資金繰りの悪化や、税務署からの指摘に繋がる恐れもあります。

本記事では、会社に最適な役員報酬を計算するために、押さえておきたい重要なポイントをまとめました。

📖この記事でわかること

【役員報酬シミュレーション】
令和8年税制に基づく、年収300万~1,000万の税金と手取り額を試算しています。


【税金対策となる適正額】
法人と個人の税負担や社会保険料を考慮した、バランスのよい役員報酬の設定額を解説します。


【損金算入ルールと利益予測】
役員報酬は原則1年間固定のため、資金繰りを見据えた事前の利益予測が重要であることを解説します。

なお、本記事は、令和8年度税制改正での2026年(令和8年)12月1日施行の内容を前提に記載をしています。また、この改正は原則として、2026年(令和8年)分以後の所得税について適用されます。
ただし、2026年(令和8年)11月までの給与及び公的年金等の源泉徴収事務に変更は生じません。

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役員報酬にかかる税金・手取りのシミュレーション(300万~1,000万円)

役員報酬を決める際に税金や社会保険料を考慮するといっても、計算が簡単にできるものではありません。どれくらい税金や社会保険料がかかるのか目安のために、役員報酬300万~1,000万円で個人の税金と社会保険料、手取りの年間の金額をシミュレーションしました。まずは、年間の会社の利益を予測した後に、役員報酬を設定すると税金や社会保険料、手取りがいくらになるのかを表で照らし合わせてみてください。

なお、会社は資本金1億円以下の中小企業で利益が800万円以下、役員個人は東京都在住の40歳未満の単身者(扶養家族無し)とし、最低限の控除額で試算しています。

役員報酬300万~1,000万円までの税金・社会保険料・手取りのシミュレーション
役員報酬(額面) 所得税・住民税 社会保険料(個人負担分) 個人の年間手取り
300万円 約14万円 約44万円 約241万円
400万円 約23万円 約58万円 約319万円
500万円 約34万円 約70万円 約397万円
600万円 約46万円 約85万円 約469万円
700万円 約66万円 約100万円 約534万円
800万円 約89万円 約112万円 約598万円
900万円 約117万円 約117万円 約666万円
1,000万円 約146万円 約122万円 約733万円
  • 本シミュレーションの税金・社会保険料は、令和8年度の税制改正(2026年12月1日施行)および、令和8年4月納付分以降の社会保険料率(東京都・協会けんぽ・40歳未満)に基づき算出した概算です。
  • 令和8年11月までの給与等に係る源泉徴収事務に変更は生じません。
  • 令和8年分の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」が未公表のため、役員報酬にかかる給与所得は速算式を用いた概算額としています。
  • 表内の「社会保険料」は個人負担分の健康保険料、厚生年金保険料、子ども・子育て支援金の合計の目安です。会社負担分には別途、事業主のみが負担する「子ども・子育て拠出金」がかかるため、厳密には個人負担分より少し高くなります。
  • 実際の納付額や手取り額は、個人の控除状況(扶養の有無など)やお住まいの自治体によって異なります。正確な金額については、税理士等にご確認ください。

役員報酬の手取りは扶養家族の有無や障害の有無などによっても変わりますので上記の表はあくまで目安です。また、役員の年齢が40歳以上であれば、社会保険料に介護保険料が加わりますのでご注意ください。

まずは、会社の利益を予測してから税金や社会保険料、退職金とのバランスを考慮して役員報酬を決めます。例えば、起業したての場合は売上の予測が難しいため余裕をもって計算しておくといいでしょう。

また、役員報酬の計算に不安を感じた場合は税理士に相談するのも1つの方法です。法人にとって税理士は会計処理や決算、年末調整の計算を依頼するために顧問契約を結び、長い付き合いになることが多くあります。税理士には役員報酬の金額の他にも、資本金や資金繰りの相談も可能です。

会社設立前から税理士に相談することで慌てて税理士を探さずに、自社にとって適切な金額設定のアドバイスを受けることができるでしょう。

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役員報酬を計算する際に考慮するポイント

役員報酬を計算する際の考慮するポイントには、「損金にできる条件」「会社の利益」「会社と個人の税金」「会社と個人の社会保険料」「退職金の積み立て」が挙げられます。役員個人の手取りを増やしたり、会社の資金繰りへの影響を減らしたりするには、それぞれのバランスを取る必要があります。会社の規模や業績、役員の扶養状況によってバランスの取り方は異なるので、役員報酬を計算する際に以下のポイントを確認しましょう。

損金に計上できる条件を満たす

役員報酬を計算する際に考慮するポイントの1つとして、損金に計上できる条件を満たすことが挙げられます。損金に計上できる役員報酬の種類は「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」です。損金とは、会社の利益から経費として差し引けるお金のことです。損金を利益から差し引くことで、課税対象となる金額をおさえることができます。役員報酬は従業員の給与とは異なり、所定の要件を満たさなければ損金の計上ができません。損金の計上ができなければ、法人税の負担が大きくなるので要件を満たすように注意しましょう。

また、起業初期などで会社の利益が少ないうちは、あえて役員個人に税金がかからない範囲(基礎控除や給与所得控除の枠内など)で報酬を低めに設定し、会社に資金を残すというケースも見られます。

ただし、報酬を低くしすぎて個人の生活費が不足し、会社のお金を引き出してしまうと「役員貸付金」となり融資審査等で不利になります。また、報酬を極端に低く設定すると社会保険の報酬月額が低くなり、将来の年金が減るリスクもあるため、最低限の生活費は確保できる金額に設定することが重要です。

損金に計上できる役員報酬の種類と概要
種類 概要
定期同額給与 給与のように毎月同額で支払われる役員報酬のこと。事前の届出は不要
事前確定届出給与 ボーナスのように指定した日に決めた金額が支払われる役員報酬のこと。所轄の税務署に届出が必要
業績連動給与 会社の利益に応じて支払われる役員報酬のこと。所定の指標をもとに報酬額を算定し、有価証券報告書に記載する必要があるため非上場の会社は適用できない

役員報酬の計算をする場合、まず定期同額給与をいくらにするかを考える必要があります。また、役員報酬は、定款で定め方を決め、具体的な金額は株主総会の決議などによって定め、議事録を作成して残しておかなければなりません。議事録は税務調査で確認されることがありますので保管しておいてください。

役員報酬の決め方や損金に計上できる種類については以下の記事を併せてご覧ください。

会社の利益を予測する

役員報酬を計算する際に考慮するポイントの1つとして、会社の利益を予測することがあげられます。年間の会社の利益を予測して、資金繰りを悪化させない金額を設定する必要があるからです。損金として計上する定期同額給与は、事業年度開始(期首)から3か月以内なら金額の変更ができますが、原則として1年間固定の金額になります。

例えば、利益が予測と異なっても毎月固定の金額を支払わなくてはなりません。手取りを増やすために役員報酬の金額を高く設定してしまうと、会社の運転資金を圧迫し、資金繰りを悪化させる可能性があります。これから会社を設立する人は、売上実績がない上での予測になるので注意してください。

1年間の売上や仕入れの金額、家賃や人件費といった固定費を予測する際に、会社の利益が思うように上がらなかった場合でも資金繰りに影響しない金額となる役員報酬額を設定しておきましょう。

なお、思うように売上が立たないために、事業年度の途中で役員報酬の金額を減額すること自体は可能です。また、条件を満たせば事業年度の途中で役員報酬を下げても、引き続き損金として計上できる場合もあります。

役員報酬の金額の変更方法については以下の記事を併せてご覧ください。

会社と個人の税金のバランスを考える

役員報酬を計算する際に考慮するポイントの1つとして、会社と役員個人にかかる税金のバランスを考えることも挙げられます。会社の利益に応じて法人税等(法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税)の額が決まるため、損金に計上する役員報酬の金額が多いほど、会社の利益から差し引くことができ、法人税等の額は少なくなります。

その一方で役員報酬の金額が多いほど、役員個人にかかる所得税や住民税の金額が大きくなります。法人の法人税等と個人の所得税では税率が異なるため、役員報酬の金額にあわせて法人と役員個人にかかる税金をシミュレーションして税負担を軽減できる金額を探ってみるといいでしょう。

また、役員報酬と税金のバランスは、金融機関から融資を受ける際の注意すべきポイントにもなります。例えば、社長1人だけの会社で利益全てを役員報酬にして損金に計上できれば、法人住民税の均等割はかかりますが、それ以外の法人税等は利益がないのでかかりません。

しかし、この場合は赤字決算となるため、融資が必要になったときに返済能力が低いと金融機関からみなされて、融資審査において不利になる可能性があります。将来的に融資を希望するのであれば、利益と役員報酬のバランスの取り方を税理士に相談してみましょう。

会社と個人の社会保険料のバランスを考える

役員報酬を計算する際に考慮するポイントの1つとして、会社と個人が負担する社会保険料とのバランスを考えることも挙げられます。会社を設立すると、役員も社会保険への加入が必要です。社会保険には健康保険(および介護保険)、厚生年金保険を指す狭義の社会保険と、労働保険(労災保険、雇用保険)を加えた広義の社会保険があります。

役員は労働者ではないため、労災保険と雇用保険に加入することはできません。役員が加入するのは健康保険や厚生年金保険です。

健康保険と厚生年金保険の保険料は、毎月の給与や賞与を一定の幅で区分した標準報酬月額や標準賞与額に保険料率を掛けて計算され、会社と加入者本人が折半して負担します。保険料率は事業所のある都道府県によって異なり、例えば、令和8年度において標準報酬月額が30万円で東京都に事業所がある場合、会社と加入者本人が負担する厚生年金保険の保険料の月額はそれぞれ2万7,450円です。
なお、保険料率は毎年3月、標準報酬月額は毎年9月に改定されるので、全国健康保険協会のWebサイト「都道府県毎の保険料額表新規タブで開く」をご確認ください。

社会保険料の負担を抑えるには、役員報酬を高くしすぎないことがポイントになります。社会保険の保険料は役員報酬の金額によって変わるので、会社と個人の負担額をそれぞれシミュレーションしてみるといいでしょう。

社会保険については以下の記事を併せてご覧ください。

退職金の積み立てを検討する

役員報酬を計算する際に考慮するポイントの1つに、退職金の積み立ての有無も挙げられます。自分で会社を設立した場合、退職金を自分で積み立てていかなければなりません。

役員の退職金を積み立てる方法の1つに、法人が契約する生命保険があります。払い込んだ保険料の一部を積み立て、解約すると解約返戻金として払い戻される生命保険であれば、役員に万一のことがあった場合に備えることができ、退職金の積み立てとしても活用できます。保険料の支払いは毎月法人が行うため、役員報酬の金額を計算する際には退職金の積み立てを行う費用も考慮しておきましょう。

法人が契約する生命保険や損害保険については、以下の記事を併せてご覧ください。

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役員報酬の金額を相談したい場合

役員報酬の計算は、税務や会計の専門知識がないと難しく感じられるものです。自社にとって適正な役員報酬の金額を設定するには、税務の専門家である税理士に相談するといいでしょう。自力で税理士を探そうとすると、手間や時間がかかります。そのような場合は、弥生株式会社の「税理士紹介ナビ新規タブで開く」がおすすめです。

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役員報酬は税金や社会保険料とのバランスを考えて設定しよう

役員報酬の金額を決める際には、損金に計上できる条件を満たすだけでなく、会社の利益や税金、社会保険料とのバランスを取ることで、自社にとって適切な金額を設定できます。適切な役員報酬の金額に設定できなければ、税金を多く納めたり、融資審査に影響したりすることがありますので注意してください。

税理士に相談すると、自社の状況にあわせた役員報酬や資本金をシミュレーションしてもらえます。税理士は会社設立後も決算や年末調整でも依頼することが多いため、会社設立前から相談しておくといいでしょう。税理士を探す際には「税理士紹介ナビ新規タブで開く」をぜひご活用ください。

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よくあるご質問

役員報酬をいくらにすれば、個人の税金がかからないようにできますか?

扶養状況などにより異なりますが、年間119万円前後(月額10万円弱程度、2025年までは年間110万円前後)に設定すれば、住民税の均等割を含めて非課税枠内に収まるため、個人の所得税や住民税は原則かかりません。ただし、報酬を低くしすぎて生活費が足りなくなり、会社のお金を引き出してしまうと「役員貸付金」となり、銀行融資の審査等で不利になるリスクがあるため注意が必要です。詳しくは本記事中の「損金に計上できる条件を満たす」を参考にしてください。

会社の売上が急激に伸びた場合、年度の途中で役員報酬を増やすことはできますか?

原則として、事業年度開始から3か月を過ぎてからの自由な変更はできません。役員報酬を会社の経費(損金)にするためには、1年間固定の金額を支払う「定期同額給与」などのルールを守る必要があります。もし期中に報酬を増額した場合、増額した部分は損金として認められず、法人税の負担が増えてしまうため、事前の慎重な利益予測が重要になります。詳しくは本記事中の「会社の利益を予測する」を参考にしてください。

節税のために、会社の利益をすべて役員報酬にしてしまってもよいですか?

会社の利益をすべて役員報酬にして経費にすれば法人税は抑えられますが、その分、役員個人の所得税・住民税・社会保険料の負担が大きくなります。また、会社に利益が残らず赤字決算になってしまうと、金融機関から「返済能力が低い」とみなされ、将来の融資審査で不利になる可能性があります。会社に残すお金と個人の手取りのバランスを考えて設定することが大切です。詳しくは本記事中の「会社と個人の税金のバランスを考える」を参考にしてください。

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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

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