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飲食店買収のメリットや留意点は?飲食業界のM&Aの動向や事例も紹介

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飲食店のM&Aは、以前から飲食業界内で多く行われていましたが、コロナ禍を機に売却に踏み切る事業者が出るなど、さらに活発になりつつあります。
ここでは、飲食店を買収する際に知っておくべき飲食業界の特徴や課題の他、M&Aの動向、飲食店を買収するメリットや留意点について解説します。

飲食店の特徴

飲食店には、レストラン、居酒屋、カフェ、各種料理の専門店、テイクアウト専門店、デリバリー専門店など、さまざまな業態があります。業態ごとに多少違いはありますが、飲食店に共通する特徴は以下のとおりです。

初期投資や人件費が大きい

飲食店は、店舗や調理設備の他、許認可の取得、場合によっては従業員を雇う必要があるため初期投資が大きいことが特徴です。日本政策金融公庫の「2021年度新規開業実態調査 新規タブで開く」(2021年11月)によると、飲食店を含めた全業種の開業費用平均額は941万円です。飲食店の場合は、店舗の立地や広さ、設備などによってはさらに費用が必要になるかもしれません。なお、日本政策金融公庫の新創業融資制度などで資金調達を行うとしても、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要となりますので、注意が必要です。

立地条件が売上に影響しやすい

飲食店では、立地条件が売上に大きく影響することも特徴の1つです。立地条件がいいとそれだけ売上につながるため、立地条件が良ければ既に競合の店舗が出店していたり、買収額が高額になったりする傾向があります。

景気動向や世界情勢、流行の影響を受けやすい

飲食店は景気動向や世界情勢、流行などの影響を受けやすいことも特徴の1つです。例えば、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策による市場の停滞といった世界情勢や、円安による食材の仕入れ価格の高騰といった景気動向などの影響を受けやすいといえます。また、飲食店は流行の影響を受けやすいという特徴もあり、メディアやSNSで紹介されたり、ブームの食材を取り扱っていたりすると行列ができることもあります。

参入障壁は高くないが、属人的な要素は強い

飲食店は食品衛生責任者や防火管理者などの免許は必要ですが、開業費用など条件が揃えば、個人でも飲食店を開くことができます。そのため異業種参入や新規参入がしやすいことも特徴の1つです。また、オーナーが店を切り盛りしている場合、お客さんはオーナーの料理やオーナーとの会話を目当てに訪れていることも少なくありません。このように小規模の飲食店では属人的な要素が極めて強いことも特徴に挙げられます。

飲食店のM&A動向

一般社団法人日本フードサービス協会「令和2年 外食産業市場規模推計について 新規タブで開く」(2021年12月)によると、飲食店の推計市場規模は2019年時点で14兆5,776億円でした。新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年の推計市場規模は10兆9,780億円まで落ち込みましたが、2021年後半からは徐々に回復傾向にあります。こうしたコロナ禍の影響によって、倒産や廃業となった事業者もあるだけでなく、事業継続を困難とみて売却を決断する事業者も出てきており、コロナ禍において飲食店のM&Aの相談件数は増加傾向にあります。

飲食店のM&Aではオーナー兼シェフが1人で経営している個人店から、数十店舗を抱えるグループ企業の買収までさまざまです。買収金額も数十万円~数億円のものまであり、案件によってかなりの差があります。
なお、飲食店のM&Aの買手は同業者が多い一方、事業への参入障壁はそこまで高くないため、異業種が参入したり、個人が飲食業を始めるのにM&Aを利用したりするケースもあります。

飲食店の課題

近年はコロナ禍の影響が目立つ飲食店ですが、飲食店が抱える課題はコロナ禍の対応だけではありません。飲食店の課題としては、以下のようなものも挙げられます。

深刻な人手不足

株式会社帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査 新規タブで開く」(2022年4月)によると、業種別で見た非正社員の人手不足の割合は飲食店がトップの77.3%となっており、深刻な人手不足といえます。人手不足への対策としては、POSレジやタブレットオーダーシステム、予約管理システムなどの導入による業務効率化が必要です。

店主の高齢化や後継者不足

国内では、経営者の高齢化や後継者不足が課題となっており、飲食店も例外ではありません。小規模な飲食店の場合、オーナーの作る味やコミュニケーション力など属人的な要素が極めて強いので、後継者を立てにくいという課題もあります。対策としては、M&Aを活用した事業承継が挙げられますが、属人化の部分は丁寧に対応する必要があります。

食材価格や物流費コストの上昇

近年では、円安を原因とする食材の仕入れ価格の高騰、物流コストの上昇などが飲食店の利益を圧迫しています。対策としては、M&Aによってサプライチェーンを統合してコスト削減をする、スケールメリットを獲得するといったことが挙げられます。

飲食店を買収するメリット

M&Aによって飲食店を買収するにはいくつかメリットがあります。主に3つのメリットは以下のとおりです。

設備や従業員、ブランドを引き継いで営業できる

飲食店をM&Aで買収すると、既存店舗の設備はもちろん、ブランドや顧客、従業員、評判を引き継げることがメリットです。飲食店を始める際、M&A以外に居抜きで店舗を購入して始める方法もあります。しかし、居抜きの場合は店舗の設備などの費用は抑えられますが、ブランドや顧客、従業員、評判などを引き継ぐことはできません。
飲食店は、Web上の評価サイトやガイドブックなど、評価システムが整っており、評価が集客に直結する業界です。M&Aで飲食店を買収すれば、店舗の評価や専門性の高い人材、ノウハウなどもそのまま引き継ぐことができます。

店舗拡大を図りやすい

店舗拡大を行うには、エリア調査や店舗を任せる人材の育成など時間と手間がかかりますが、M&Aによって既存店舗を買収すれば、こうした手間を省き、スピーディーに店舗拡大を図れることもメリットの1つです。同業他社を買収して市場シェアを拡大する他、異なるジャンルやコロナ禍でも収益を上げやすいデリバリー業態の飲食店を買収して、事業の多角化を目指すことも考えられます。

事業と一緒に好条件の物件を確保できる可能性がある

駅前などの好条件の立地は、既に他の飲食店が営業していて、あとから獲得することは難しくなっています。M&Aであれば、事業と一緒に好立地の店舗を確保できることもメリットに挙げられます。

M&Aのメリットや買収を成功させるポイントについては別の記事で解説していますので、参考にしてください。

飲食店のM&Aの留意点

飲食店のM&Aでは、メリットがある一方、注意すべき点もあります。飲食店のM&Aで特に気を付けたいのは、以下の2つです。

飲食店の価値をしっかりと見極めること

飲食店に限らず、買収先を決める際は売手の価値をしっかり見極めることは必要ですが、特に飲食店の買収においては、店舗の立地やその店舗でのノウハウ、人材、ブランド価値などから、収益力を判断することが大切です。いくら店舗が整っていても、ノウハウや人材など何かが欠けてしまうとうまく回らなくなってしまいます。また、飲食店は収益化するまで時間がかかりやすい業種のため、既にある飲食店の価値を考慮したうえで、目的の効果が最大限得られそうかを判断する必要があります。

属人的な要素を考慮する

特に個人経営の飲食店は、オーナーの人柄や料理に惹かれて通っているお客さんが少なくありません。M&A後に味が変わると、固定のお客さんが離れてしまう可能性があるので、属人的な要素である味や業態などを考慮することが必要です。

飲食店のM&A事例

飲食店では、事業承継や経営不振を理由にM&Aを行うことがありますが、ここでは実際に行われたM&Aの事例2つをご紹介します。
1つは、ラーメン店の出店を考えていた個人事業主が、夫婦で長く営業していた個人経営のラーメン店を事業承継したケースです。買手は、修業を兼ねて売手の店で数年間勤務し、後継者になる形でM&Aが成立しました。売手は信用のある後継者を得ることができ、買手はこれまでの味を学んだうえで自分の店を出すことができました。

また、異業種参入の事例として、建設業を営む小規模な会社が、地域密着型の個人経営の居酒屋を買収したケースがあります。買手は衣食住を会社の軸としたいという方針のもと、自社の職人に馴染みのある居酒屋のM&Aを検討していました。買手に飲食業のノウハウはなかったことから、オーナーとスタッフが残ってそのまま営業を続けることを条件としたことで、売手はコロナ禍で経営が苦しいところに安定した基盤を得ることができ、買収が成功しました。
このように、飲食店ならではの属人的な要素である味やノウハウを守りつつ、売手の課題と買手のニーズがマッチすれば、買収しやくなります。

M&A案件を探す方法

M&Aでは、買手のニーズとマッチした売手を探すことや、交渉力に加えて財務、税務、会計、法務、労務などの専門的な知識が必要となります。すべての手続きを自力で進めるのは困難ですので、マッチングサービスをうまく活用していきましょう。これから事業を始めたい個人の方や、事業を拡大したい方、事業の多角化を目指したい方にもぴったりです。

まずは、専門家に相談してみよう

飲食店は、経営者の高齢化や経営不振によって売却ニーズは高まっており、M&Aの相談件数は増加傾向です。M&Aを行う際には、まずは「M&A・事業承継相談窓口 by BATONZ新規タブで開く」で相談してみましょう。

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