ものを所有しない時代の波にいち早く乗れたのは、1度目の起業で得た教訓があったから。

起業時の課題
資金調達, 人材確保、維持、育成, 集客、顧客獲得, 製品/サービス開発

家具・家電のサブスクリプションサービス「CLAS(クラス)」は、家具・家電を所有せずいつでもレンタルできるその手軽さが、SDGsを促進する時代のニーズともマッチし、多くのユーザーから支持されています。CLASを運営する株式会社クラス代表の久保 裕丈さんは、同社を創業する前に別の会社を起業し、売却した経験を持っています。2度の起業経験を経た久保さんだからこそ思う起業のポイントとは何なのでしょうか。今回のインタビューで、経験を交えてたっぷり語っていただきました。

会社プロフィール

業種 サービス業(その他)
事業継続年数(取材時) 4年
起業時の年齢 30代
起業地域 東京都
起業時の従業員数 3人
起業時の資本金 100,000円

話し手のプロフィール

会社名
株式会社クラス
代表
久保裕丈
株式会社クラス 代表取締役社長
1981年生まれ。東京都八王子市出身。2005年3月東京大学工学部卒業。2007年3月東京大学新領域創成科学研究科修士課程修了。2007年4月米系のコンサルティング会社A.T.Kearneyに入社し、商社・メーカー・金融機関などへの全社戦略策定や企業買収を手掛ける。2012年、ミューズコー株式会社を設立し、2015年に売却。その後、個人で数十社の企業顧問を務める。2017年、Amazonプライム・ビデオの人気恋愛リアリティ番組『バチェラー・ジャパン シーズン1』にて初代バチェラーに抜擢。2018年、「“暮らす”を自由に、軽やかに」をビジョンに、個人・法人向けに家具・家電のサブスクリプションサービス「CLAS(クラス)」を展開する株式会社クラスを設立。

目次

“暮らす”を自由に、軽やかに

現在の事業内容を教えていただけますか?

CLASはインテリアを中心とした消費耐久財のサブスクリプションサービスで、サーキュラーエコノミー型のビジネスであることが1つ目の特徴です。サーキュラーエコノミーとは、ものを捨てずに再利用して循環させるモデルの経済を指します。CLASは家具や家電を必要なときに貸し出す形を取っているので、サーキュラーエコノミーを推進する一翼を担えるのではないか、と考えています。

CLASのもう1つの特徴は、プラットフォーム型のビジネスであることです。プラットフォーム型のビジネスとは、Amazonやメルカリなどのように、他の事業者が参加することではじめて価値を持つタイプのビジネスです。市場を運営している運営元のようなイメージですね。

CLASの場合、家具メーカーさんなどに家具を提供してもらい、それらの家具を提供することではじめてお客さまに価値を提供できます。そういった意味で、CLASもプラットフォーム型のビジネスです。

社名の由来を教えてください。

株式会社クラスを起業する際には、サービス内容よりもまず「“暮らす”を自由に、軽やかに」というビジョンを最初に決めました。その日本語の「暮らす」に加えて、Change Lifestyle As a Subscription service.”(生活様式をサブスクリプションサービスで変える)という英語フレーズのそれぞれの英単語の頭文字を取ってCLASにした、という経緯です。

起業は2つの要素が揃うまで絶対やらない

久保さんは、株式会社クラスを創業する前にも一度起業・経営を経験されていますよね。まずは、1社目の創業の経緯について教えてください。

はい。経営コンサルティング会社を退職した後、会員制ファッションサイトを運営するミューズコー株式会社を創業しました。

2012年の3月31日に退職し、サービスのβ版を翌日の4月1日リリースしました。つまり、退職前にサービスを作り切っていたんです。有給休暇を取得していた1か月半でサービス開発から営業まですべてやり切りました。

すごいスピード感ですね。起業の準備をするにあたって重要なポイントはありますか?

そもそも私の場合、2つの要素が揃わないと起業しません。1つが起業の種となるアイデア、もう1つがスタートダッシュを切れるメンバーです。ですから、順番が逆ですね。メンバーが集まってきていたからこそ、起業に向けて動き出せた、ということです。

起業をすると決めてからメンバーを集めるのは難しいと思います。必ずしもキーパーソンが全員揃っている必要はないのですが、キーパーソンがいないことにはサービスが立ち上がらないのも事実です。キーパーソンがいれば、いざ動き出してからも負ける戦にはなりませんね。

ということは、メンバー集めは普段から意識していないといけないわけですね。

その通りです。私の場合、起業のアイデアが出たタイミングで周りの友人や経営者に「こんなアイデアがあるんだけど……」とアイデアをぶつけていきます。そこで「こんなおもしろい人がいるよ」と紹介してもらったりしつつ、ゆるくメンバー集めをしていきます。

自己資金には最後の最後まで手を付けない理由

今となっては2度目の事業も順調に伸ばされている久保さんですが、とはいえ、最初の起業は大変だったのではないでしょうか?

大変でしたね。一般的に、経営者が経験する大変なことはほとんど全部経験してきたと思います。すべては自分の未熟さゆえに起きたことなのですが。

組織崩壊とまではいかなくとも、重要なポジション含めて退職者が相次ぐ時期もありました。資金も常にカツカツで、売上も伸びない時期は夢でうなされたこともありました。

精神的にキツい時期もあったかと思います。どのように乗り越えられましたか?

事業でのストレスは結局事業でしか解決できません。壁にぶつかったときは、その問題の本質を考え、解決策を考えるしかないですね。

資金面でピンチになることは多くの起業家が経験するのではないかと思います。資金周りに関して、久保さんのポリシーは何かおありですか?

ミューズコー株式会社も、今の株式会社クラスもそうですが、私の場合は起業の際に投資してもらっています。シードの段階では自己資金は入れません。ギリギリまで自分のキャッシュを守っておき、本当に危ないタイミングで自己資金を会社に貸し付ける、などの形をとっています。

あくまで私の場合はですが、自分のお金を入れてしまうと、発想もすごく短期的なものになってしまいがちです。投資を受けるのは、間違った意思決定をしてしまうことを回避する意図があります。

ただ、実際は自己資金で事業を始める方も多いと思います。その場合、他者の資本が入っていない分自由に意思決定ができる利点もありますので、それぞれに合ったスタイルでスタートするのが良いと思います。

1度目で失敗して得た教訓を生かして2度目の起業。どこがポイントだったのか?

株式会社クラスを起業することになった経緯について教えてください。

ミューズコー株式会社を売却した後は、フリーの経営コンサルタントとして活動していました。それはそれで楽しかったのですが、次第にもう一度組織作りにチャレンジしたいという気持ちが湧き上がってきまして。

そのタイミングで、家具の会社を経営している友人と話していて、「家具ってもう、売り切りの時代じゃないんじゃないか。これからはレンタルじゃないか」という話が出たんですね。そこで「じゃあ自分でやってみよう」とメンバーを集め始めたのがきっかけです。

立ち上げメンバーやサービス構想も固まってきたので、次は資金調達です。ベンチャー・キャピタルに「こういうアイデアとメンバーでやろうと思うんだけど」と話しに行きました。快く出資を引き受けてくれ、その資金でWebサイトや在庫を準備してスムーズにスタートできました。

家具のレンタルサービスとなると、大型商品の在庫を抱えたりクリーニングが必要だったりと膨大なコストがかかるイメージですが、サービスを始める際、不安はありませんでしたか。

投資が大きく、安定して黒字になるまで少なくとも数十億の投資が必要となることは、事業をスタートする前の計画段階で分かっていました。怖さはありませんでしたね。必要ならば、とにかく頑張って集めるしかないという思いだけでした。

1度目の起業と比較し、どのような点に気をつけられましたか?

「守り」の部分ですね。給与テーブルや人事規則など、従業員との「約束事」はすべて最初から準備しました。もちろん、スタートアップにとっては売上が重要です。しかし同時に管理部門も重要です。1度目の起業では十分にできていなかったところでもあるので、株式会社クラスの創業の際にはまず管理部門の優秀な人材を比較的初期から雇用し、給与テーブルや人事評価制度、勤怠管理などをしっかりと作り上げました。

株式会社クラスの場合、最初に雇ったのはCS、物流、管理、MDのそれぞれの責任者でした。私自身はマーケティングが得意なので、創業初期には「攻め」の人材は雇いませんでした。創業メンバーは私含めて4名です。

特に、物が関わるビジネスの場合、物流・サプライチェーンの部分は最初から仕組みや人を固めておかないと、ビジネスが破綻します。「在庫が足りない」「お客さまに商品が届かなかった」など、1度でもそうした失敗が起きると、サービスとしての信用は地に落ちてしまい、取り返しが付かなくなってしまいます。だからこそ、「守り」にこだわらなければならないんですね。

企業を成長させるために気を付けるべき人材採用や集客のポイントは?

採用の際に気をつけていることはありますか?

主体性がある人材かどうか、は特に見ますね。

弊社のバリューの中には、「主体的であろう」という項目があります。ただ、「主体性を発揮しなさい」と言っているだけでは当然このバリューも実現できません。そのため、面接の際に私が毎回その点について確認したり、評価制度についてもその項目を盛り込んだりと、一気通貫して「主体的であろう」というバリューが重視される仕組みづくりをしています。

弊社で働くことで、その方の理想の人生像に近付く上でメリットがあるのかどうかについても見ます。そうでないと、会社も本人も、結局どちらも幸せになれないですから。

今では類似のサービスも複数ありますが、CLASの優位性や差別化のポイントはどこにあるとお考えでしょうか。

安定したシステムや管理体制、オペレーション体制は、他社にはなかなか真似できないものだと思います。そして、その強固な体制から、圧倒的に優れた顧客体験を生み出せていると考えています。

集客の点で気を付けていることがあれば教えてください。

具体的な顧客像と理想とする行動予測を分析し、それに従って活動しているだけです。広告もかけていますが、どんなに広告効率が良くても、自社のビジョンや企業文化に背いたり、イメージを損なうことはしないようにしています。

ちなみに、CLASのサービスローンチ後、売上は計画通りに推移していきましたか。

2019年度、2020年度が前年比3倍以上、2021年度は2倍と成長はし続けていますが、いつだって理想通りにはいきませんね。すべて計画通りかと言われると、なかなか難しい部分もあります。

起業成功のためには〇〇を読むのがおすすめ

現在、重点的に取り組まれていること、これから取り組んでいきたいことを教えてください。

サーキュラーエコノミー型のビジネスなので、耐久消費財の環境負荷をいかに減らすことができるか、という点は意識しています。「ウッドショック」とも言われているのですが、家具に利用する木材の供給量が不足してきています。当社サービスが、家具を循環させ、環境負荷を減らしていく一助になればと願っています。

テクノロジーを磨いていくことも課題です。そもそも私たちは、洋服を選ぶ以上に、家具を選べないのではないでしょうか。それも当然で、洋服を選ぶ体験の約10分の1程度しか家具を選ぶ機会がないからなんですね。そこで、我々のテクノロジーを使ってそれぞれのお客さまに最適な家具を提案できたらな、と考えています。提案の精度を上げていきたいですね。

起業の楽しさはどんな点にあるとお考えですか?

自分でも想像できないようなところまで、サービスが広がっていくところですね。CLASのサービスのクオリティがどこまで高まっていくのか、これからも楽しみです。非常に専門性が高いメンバーが集まってきてくれているので、期待しています。

最後に、これから起業する人にメッセージをお願いします。

まず、起業は自分のためのものではなく、社会や人のためにするものです。「起業したい」という思いがあるのであれば、まずは「他者や社会に対して、何を与えたいのか」ということをすごく突き詰めて考えることから始めてみてはいかがでしょうか。

私はスティーブン・R・コヴィー著の『7つの習慣』を思考の基本としていて、この本を読むのもおすすめですね。特に第5の習慣「まず理解に徹し、それから理解される」はいつも心に留めています。この本の通りに行動していれば、起業後も役に立つ場面が多いかもしれません。

取材協力:創業手帳
インタビュアー・ライター:樋口 正

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