「シェアボス」仕掛け人が語る、起業のリスクを減らして成功確率を高める方法。

起業時の課題
事業計画/収支計画の策定, 集客、顧客獲得, 製品/サービス開発

シェアリングエコノミーが発展し、あらゆるものがシェアできるようになってきた昨今、会社の「上司」をシェアする革新的なサービスが注目されています。「シェアボス」を運営するカーマンライン株式会社代表の岡村直人さんは、エンジニアやITコンサルタント、新規事業責任者としてキャリアを積み上げ、独立。フリーランスのコンサルタントや新規事業開発の講師として活動しながら「シェアボス」の事業運営もされています。

「うまくいっているように見えているだけで、その裏に多くの失敗があった」と語る岡村さん。フリーランスとして独立したい人や、リスクを少なくして起業の成功確率を上げたい人必読の、どんな分野での起業にも参考になるお話をお伺いしました。

会社プロフィール

業種 コンサルティング・リサーチ業、サービス業 (ソフトウェア開発・IT関連)
事業継続年数(取材時) 4年
起業時の年齢 30代
起業地域 東京都
起業時の従業員数 0人
起業時の資本金 200万円

話し手のプロフィール

会社名
株式会社シェアボス/カーマンライン
代表取締役
岡村 直人
エンジニア出身の事業開発コンサルタント。GREEではオウンドメディア、やIDOM (旧ガリバーインターナショナル)ではサブスクリプションサービスを事業責任者としてけん引。事業戦略、システム開発、マーケティング、組織マネジメントを統括。その後独立し、カーマンライン株式会社を設立。コンサルティング実績としてDeNA、トヨタコネクティッド、パーソルキャリア、富士通九州システムズ、ネクスコ東日本などで事業開発を支援した。デジタル系幹部のシェアリングサービス「シェアボス」を運営。iU情報経営イノベーション専門職大学 客員教授。

目次

上司のシェアリングサービス「シェアボス」。

「シェアボス」のサービス概要についてお聞かせください。

岡村さん:デジタル系の事業会社で役員や事業責任者を経験した人材を、コンサルタントとしてアサインできる人材シェアリングサービスです。

登録人材は現在250名ほどで、KADOKAWAの執行役員やメルカリのCIO、Amazonの広報本部長など、国内外の有名IT企業で役員クラスのポジションを経験された方々が多数登録されています。

依頼内容は、新規事業の立ち上げが多いです。依頼に応じて、顧問的な立ち回りもあれば、チームを組んでプロジェクトを実行するケースもあります。

また、中期経営計画を立てたり、採用面接に立ち会うこともあります。ITの経験がない会社の場合、良いIT人材を見極めるのが大変なんですよね。IT系の企業に在籍していたからいいというわけではなく、開発言語やマーケティングプランによっても適切な人材は変わってきます。そうした部分の「目利き」をさせていただきます。

競合サービスとの違いはどのような点にありますか?

岡村さん:コンサルティングファームとの違いは、現場の経験値です。コンサルティングファームは、戦略設計はうまいのですが、現場でプロジェクトを実行することがあまりありません。特に新規事業を立ち上げる際は、アプリ・システム開発や、マーケティング、カスタマーサクセスなどといった実務も重要です。実行段階で思わぬ課題にぶつかったときに乗り越える力や成功させるためのノウハウは、事業会社の方に溜まっていることが多いです。だからこそ、事業会社での経験やスキルを持った人材をシェアすることに優位性があると感じています。

企業顧問サービスとの違いは、人材の若さです。顧問サービスにはシニア人材の登録も多く、年齢層が高めです。これに対して、当社には30〜40代のデジタル人材が多く登録している点も特徴ですね。

「情緒的な理由」「合理的な理由」2つの側面からサービス領域を決定。

ご自身のこれまでのキャリアについても教えていただけますか。

岡村さん:私自身はエンジニア出身で、その後ITコンサル、新規事業責任者というキャリアを経てきました。ガリバーインターナショナルという中古車売買の会社で事業責任者を経験した後に独立し、会社を設立しています。2年ほどフリーのコンタルタントとして活動しながら、自分でも事業を作りたい思いがあり、「シェアボス」事業に至った、という経緯です。

「シェアボス」事業のアイデアはどのように生まれてきたのでしょうか。

岡村さん:事業分野の決定には、情緒的な理由と合理的な理由の2つの側面があります。情緒的な理由としては、まず、前職の中古車売買の会社で新規事業担当をしていたとき、「非ITの会社はこんなにデジタルが遅れているんだ」と目の当たりにしたんです。今後の日本経済の成長において企業のデジタル化は必須だと痛感し、ITを使って何かできないかと思ったのが1つです。また、意思決定する人間をアップデートしていきたい、という想いもあります。例えば、現場がITに詳しくても、トップの考えが古いと、過去の経験に基づいて意思決定されてしまい、せっかくうまくいく事業もダメになってしまうでしょう。私自身も経験したことなので、なるべくそうした悲劇が起こらないようにしたいんです。

合理的な理由としては、やるからにはなるべく有望な市場においてリスクを負わない形でビジネスをしたいと思い、自分の中で外せないポイントを選びました。まず、少ない資金で始められること。そして、なるべくなら在庫を仕入れないビジネスであること。人材ビジネスの場合、「人材」という在庫はあるものの、その価値は長期的に低下していくことはありませんから、この点もクリアしていました。

さらに、長期的に需要があるビジネスであること。テクノロジーの変化はITの専門家でも読みきれない部分がありますが、人口動態による社会の変化はほぼ確定しています。今後の長期トレンドとして、少子高齢化による労働力不足は進み、生産性を上げることが必須になっていく。そのためにITは避けて通れません。これは今後数十年変わらないトレンドだと思ったので、「デジタル×人材サービス」というところに立脚しました。

その領域であれば、私自身の経験も活かせますし、会社員時代からのつながりでできた5,000人近くの人的ネットワークが活用できるのも大きかったですね。

人材会社が嫌がる「情報開示」あえて積極的に行う理由とは。

では、事業構想が固まってからサービス開始に至るまでどのような流れで進めていきましたか。

岡村さん:いきなり事業を立ち上げるというよりは、先にメディアを立ち上げました。プレスリリースを出して反応を見ながら少しずつやってきたんですけれども、サービス開始時期の反響が結構大きくありまして。そこで世の中から求められているサービスだと確信が持てたため、メディアの立ち上げから1年後に有料化し、徐々に事業化してきました。

「シェアボス」のWebサイトを見ると、ボスたちの詳細なプロフィールが載っていますよね。人材サービスとしては珍しいように思いますが、この点は意識されているものなのでしょうか?

岡村さん:そうですね。他の人材企業ですと、人材の情報はオープンにしたがらないところがほとんどです。手数料を最大化したいのと、人材の流出を防ぐためという理由がありますが、逆に私たちはそのデメリットを享受しながら情報を公開しています。

なぜかというと、まず、検索に引っかかりやすくなりWebサイトへの訪問数が増えるからです。もう1つ、情報開示することで、人材の質が安定するメリットもあります。当社には、数は少ないけれど金額の高い案件が来るので、優秀な人材が集まりやすくなります。またエグゼクティブ人材が多くいるので、「私もこの人たちと一緒に掲載してほしい」と自然と人が集まってきます。他社が真似しづらいので差別化できるのも良いところです。

ハイクラスな人ほど登録したくなる仕組みで素晴らしいですね。

岡村さん:そもそも、フリーランスのキャリアパスって、よくわからないじゃないですか。フリーになると仲介会社経由で仕事を取ってくることもあると思いますが、その場合実績は開示できないことも多く、積み上がっていかないんですよね。だからいつまで経っても「○○出身の人」で止まったままなんです。

「シェアボス」では、実績についてもなるべくオープンにして、フリーランスの新たなキャリアパスを作っていきたいんです。

まったく結果が出なかった施策も。資金の少ない創業期に何度も挑戦できたのはなぜ?

案件獲得についてはどうされているんですか。

岡村さん:最初は知り合いからの紹介が多かったです。今はサイトからの問い合わせも結構ありますし、私自身が新規事業開発の講師をやっているので、講座を受講された方からお声がけいただくことも増えています。

オンライン・オフライン両方から依頼が来るのはとても理想的に感じます。

岡村さん:結果だけ見るとうまくいっているように見えるかもしれませんが、これまでさまざまな手段を試して、まったくうまくいかない施策もたくさんありました。例えば、AI自動マーケティングみたいなサービスに手を出して、お客さまからクレームが来てすぐ止めたり、テレアポ部隊を月数十万円で雇って、全然結果が出ないこともありました。

シェアボス導入企業のakippa株式会社 杉村大輔さん(写真左)と岡村直人さん(写真右)

いろいろ試行錯誤されてきたんですね。

岡村さん:そうですね。ただ、試行錯誤をするにもお金がかかりますから、まずは試行錯誤するためのお金を稼がなければいけません。何回試したら結果が出るのかわからない中、借入や出資に頼ると、そのお金が尽きてしまったらすぐに立ち行かなくなります。なので、ある程度安定的に稼げる収入源は自分のコンサルタントとしての報酬で持っておき、まだどうなるかわからないがこれから育てていきたい事業へ投資しながら少しずつ進めていました。同時に、なるべく固定費を上げないなどの基本的なお金の管理も常に意識していましたね。

創業期の会計処理。自分で記帳するのはコスト削減のためだけじゃない。

起業の実務についてもお聞かせください。最初はご自身のコンサルタント会社として法人設立されたとのことでしたが、登記の手続きなどは専門家に依頼されましたか?

岡村さん:いえ、少しでも登記費用を節約したかったので、自分で手続きをしました。丸2日ぐらいかかって大変でしたが、良い勉強になりました。

費用だけを考えると、合同会社という選択肢も考えられると思いますが、株式会社にした理由を教えてください。

岡村さん:合同会社として設立した方が、株式会社よりもコストがかからないことは知っていましたが、社会的な信頼性を考えると株式会社の方が良いかなと思いました。合同会社を選択する外資系企業もありますが、それは本国のルールに沿った経営がしやすい点があるからですよね。日本においては株式会社の方が社会的信用が高いと思いますので、あえて設立費用をかけました。

創業時の資本金はどうされましたか。

岡村さん:自分の貯蓄のみです。200万円で設立しました。

バックオフィス業務はどのように処理していますか?

岡村さん:日々の会計処理や請求書、債務支払いなどは今でも自分でやっています。会計の知識をつけたかったのと、会社の数字をなるべくリアルタイムで見たいという目的があります。会計士にお願いすると、どうしても報告が1〜2か月遅れてしまいますよね。でも、創業期の企業は自転車操業なので、一番知りたいのは「現在費用を使いすぎていないか、今銀行にいくらあるか」なんです。キャッシュフロー経営においては、経営者自身が記帳するなど、細かな数字の確認も大切だと思っています。

全員業務委託でもうまくいく。チームマネジメントで心がけていること。

組織体制についてもお伺いしたいのですが、現在従業員は何名いらっしゃるのでしょうか。

岡村さん:「シェアボス」は、学生インターンも含め、現在5名のチームで進めています。ただ正社員は雇用せず、チーム全員業務委託契約でやっています。コアメンバーは2名おり、営業を担当するCOOは長野県で町役場と兼業、マーケティングやプロジェクトマネジメントを担当するCMOは他に2〜3社掛け持ちでやっています。

ベンチャー企業は成長していくにつれて必要な機能も変わってきますので、変化に対応しやすい形で動いています。また、一度正社員を雇用してしまうと、解雇するハードルが一気に上がってしまいますよね。当社はまだ売上に波があるので、費用を流動化させて変動費にしたいんです。もう少し事業を成長させて、正規雇用もできるようにしていきたいですね。

創業期のチームをマネジメントするときのポイントを教えてください。

岡村さん:人材のパフォーマンスには、「戦略的パフォーマンス」と「適応的パフォーマンス」の2種類がある、と言われています。

「戦略的パフォーマンス」とは、決められたことを決められた期日までに仕上げるタイプの仕事です。大企業のようにビジネスプロセスができあがっている会社では、戦略的パフォーマンスだけで会社は回っていきます。決められたことを決められた通りにやれる人材に働いてもらうのは、コストも安く済むことが多いです。

一方で、「適応的パフォーマンス」とは、正解のわからない仕事を、紆余曲折しながらも、なんとか推し進めていくような仕事です。このタイプの仕事のモチベーションは、知的好奇心や楽しさから湧いてきます。

新規事業開発のような仕事は、「適応的パフォーマンス」が求められる仕事ですから、まずは知的好奇心や楽しさを持って仕事をしている人材かを見極めることと、なるべく本人が試行錯誤しやすい環境を作ることを心がけています。

会社員・フリーランス・事業経営者の考え方の違い。

新規事業立ち上げについてはこれまでも多くの経験がおありだと思いますが、実際に自分が事業を興すにあたって想定外だったことはありましたか。

岡村さん:事業の戦略設計を作ることは容易にできたものの、それを自分のお金で実行していくのはプレッシャーもありましたし、慣れるまで大変でした。プロジェクト予算が潤沢にある企業では、マーケティング予算が1,000万円でも「これじゃ何もできないですよ」と文句を言っていたりしましたが、自分の身銭でやるとなると50万円でも震えます。

たしかに自分のお金となるとプレッシャーが違いますね。

岡村さん:小さなトラブルも何度も経験してきました。例えば、初期のころは、信頼ベースでお仕事をお願いしていたんですが、紹介した人材が全然稼働していなかったこともありました。それが発覚した後は、月1回クライアントと人材の双方へのヒアリングを徹底したり、業務日報を提出してもらったりして管理体制を整えました。その他にもいろいろありますが、1個トラブルが起きたら、その都度プロセスを改善して再発防止できるので、その繰り返しでしかないと思っています。

そうして試行錯誤をしていく中で、「継続は力なり」という言葉の意味を身をもって知ることができました。1〜2年前と今では、やっていることは大きく変わらないんですけど、口コミで来てくれるお客さまが増えたり、自分自身も挑戦することに慣れて経営者マインドが身に付いてきたりと、事業としても個人としても成長を感じています。会社員時代は、四半期や1年などの短期目標をいかに達成するかを重要視されがちですが、長期的に継続しないと結果が見えてこないものの大切さを実感しますね。

フリーランスと事業会社の経営者では、考え方や行動に違いはありますか?

岡村さん:多くの違いを感じます。組織を作るとなると、相手の人生の一部を預かる重要性を鑑みて口説かないといけないですし、自分や自分の事業が魅力的に見られるようにしないといけない。スキルを見る目も養わなければならないし、事業を成長させるには「自分1人で結果を出す」ことから「チーム全体で結果を出す」ように変えていかないといけない。かけていくお金は全部自分のお金だし、リスクは大きいけれど、学びというリターンが非常に大きいと感じます。これらはフリーランスでは経験できないことだと思います。

コンサルタントとして経営判断のアドバイスをするときにも、本や人から聞いた知識だけでなく、自分ごととして意見を言えるようになったのも良かったことですね。

独立してよかったと思うことは何ですか?

岡村さん:会社員だとリスクを負わない分うまくいっても他人のおかげ、失敗しても他人のせいです。自分に返ってくることがないんですよね。一方、独立すれば良くも悪くも自分のせいです。独立して事業を始めると、責任も重いし、結果を出さなければならないサイクルも短いのでプレッシャーが大きいですが、自分の裁量でやることを取捨選択できる自由もあり、やりがいも感じます。

今後の展望をお聞かせください。

岡村さん:事業自体は、規模はまだまだ小さいものの現場のメンバーで回るようになってきたので、次のフェーズとして、資金調達なども含めて事業拡大に取り組んでいかなければならないと感じています。あとは若手の育成ですね。たくさんのことを経験させて学びを得てもらえるようにしたいです。

会社員時代は、自分がもっといい仕事ができればいいと思っていただけでしたが、今は自分の仕事を通じて社会貢献をしたいという気持ちも芽生えてきたんです。私の場合、もしITがなかったらここまで来れなかったと思うので、今度は恩返しというか、自分がお世話になったITを世の中に広げていく役割として還元して、次の世代により良い環境を残してあげられればと思っています。

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