3児の母が起業に踏み切ったのは、子育てでの成功体験があったから。モットーは失敗を恐れず「迷ったらGO」!
- 起業時の課題
- 人材確保、維持、育成, 集客、顧客獲得, バックオフィス業務
英語の絵本を使った「多読」指導で子どもたちの可能性を広げる「プロペラキッズ英語教室」。代表の管育子さんに、受講料300円から始めた教室の立ち上げ秘話から現在の多教室展開に至るまでの裏側を伺いました。
物件選びのポイントや初期費用の抑え方、スタッフの採用やコミュニケーション術、集客のためのSNS活用法など、これから起業を目指す人にとって参考になる情報が満載です。
さらに、業務効率化のためのAIツールの活用法や、起業家としての心構えについても語っていただきました。管さんの経験談は、これから起業を目指す人々の背中を押してくれることでしょう。
会社プロフィール
業種 | 教育・学習 |
---|---|
事業継続年数(取材時) | 4年 |
起業時の年齢 | 30代 |
起業地域 | 滋賀県 |
起業時の従業員数 | 1人 |
起業時の資本金 | 50万円 |
話し手のプロフィール
- 管育子
- 株式会社プロペラキッズ 代表取締役
- どうしても我が子は英語の話せる子にしたい!そんな強い想いで英語の多読(英語をたくさん読み聞かせる)を開始。3人の子供たちが成長するにつれ、子供たちの学び方に個体差があることに気づき、研究を始める。教室運営を開始し、それぞれ生徒さんの発達段階や、学び方の特性に合わせたオリジナルの多読教授法を確立。生徒さん1人1人に合う教え方を提供できるように日々スタッフと話し合いながら、「愛のある多読法」を伝えることを使命として教室作りをしている。
目次
- たった300円でレッスンを始めた理由とは?最初の不安を乗り越えられたわけ。
- 開業への第一歩。物件選びのポイントと初期費用を抑える工夫とは?
- 講師の「好き」を引き出し、モチベーションを保つための工夫。
- 同じ志を持つ起業家仲間との学びが、モチベーションアップのカギ。
- AIも活用!バックオフィス業務の効率化が、経営者の"考える時間"を生み出す。
- "主婦の小遣い稼ぎ"とは言わせない。法人化で得た社会的信用と新たなチャレンジ。
たった300円でレッスンを始めた理由とは?最初の不安を乗り越えられたわけ。
現在の事業内容について教えてください。
管さん:滋賀県守山市で「プロペラキッズ英語教室」を運営しています。0歳から小学6年生までのお子さんを対象に、英語絵本を使った「多読」指導を行っています。
「多読」とは、英語の絵本をたくさん読むことで、自然と英語力が身につくという教育法です。当教室では、レッスンで使用する絵本を生徒さんに毎月2冊ずつ提供しています。家でお母さんと一緒に読んでもらうことで、英語への親しみを深めてもらうんです。
なるほど。多読の英語教室はどういった経緯で始められたのですか?
管さん:もともと、自分の子供たちに英語を教えているうちに、絵本を使った指導の効果を実感したんです。3人の子供たちはそれぞれ性格も違うので、1人1人に合ったアプローチを考えました。試行錯誤の中で、絵本を読み聞かせすることが最も効果的だと気付いたんです。
「おうち英語」に悩んでいらっしゃる親御さんは少なくありません。せっかくYouTubeで英語動画を見せても、子供とのコミュニケーションに繋がらない。そこで私は、絵本を使った「おうち英語」のサポートをすることが自分の使命だと思ったんです。
最初は地元の公民館を借りて、受講料300円のレッスンから始めました。PowerPointを使って作ったチラシを自分の子供たちと一緒にポスティングして生徒さんを集め、徐々に口コミで広がっていきました。
レッスンを始めた当初は不安もあったのではないですか?
管さん:ありましたね。初めて人からお金をいただくのは勇気のいることでした。受講料を300円から上げるのにも2~3年かかり、公民館の利用料を支払うと赤字になっていたので「何のためにやっているんだろう」とむなしくなることもありましたよ。
その後生徒さんが増えるにつれ、保護者の方々からの信頼も高まり、値上げに踏み切れました。そして売上が一定の金額を超え、個人事業主として納税の義務が発生したため、開業届を提出して正式に独立しました。今では教室を2つ構え、オンライン講座にも力を入れています。
開業への第一歩。物件選びのポイントと初期費用を抑える工夫とは?
物件探しではどのようなポイントを重視されましたか?
管さん:まずは、生徒さんが通いやすい場所で保護者の方が送り迎えしやすい環境が大切だと考えました。特に駐車場の確保は必須条件でした。
もう1つは、小学校や幼稚園からの距離が近いこと。保護者の方が普段の生活動線の中で教室を目にする機会が多いと、自然と購買心理が上がりやすくなると考えていました。
現在の物件を見つけたときは「絶対ここがいい!」と直感するほど描いたイメージにぴったりでした。もともと美容室だったところなんですが、ガラス張りで室内が見えるので、オープンな雰囲気が良いなと。
実は、この物件は狙っていた場所で、空き物件になるまでずっと様子を見ていたんです。「ここ空かないかなぁ」なんて思いながら、毎日のように足を運んでいました。すると、半年ほどして本当に空いたので、すぐに連絡して契約したんです!諦めずに粘り強く通い続けて本当に良かったです。
内装などの準備も大変だったのではないですか?
管さん:最初の教室に関しては、夫にDIYで内装工事を手伝ってもらいつつ、低予算で工夫しました。開業資金は200万円ほどで済みましたね。ホワイトボードやマットを設置する程度のシンプルな作業しか必要なかったので、1か月ほどで開校できる状態に持っていけました。
2つ目の教室では、どのように資金を調達したのですか?
管さん:2校目は、もう少し本格的に内装を整えたかったので、500万円ほど必要でした。日本政策金融公庫から融資を受け、今も計画的に返済を続けています。
教室開業までのプロセスを振り返って、特に印象に残ったエピソードなどありますか?
管さん:そうですね。実は1つ目の教室に適した物件が見つかったのは、ママ友との何気ない会話がきっかけでした。日頃から、英語教室を開きたいという夢を周りの人に話していたら、その友人が「いい物件があるよ」と教えてくれたんです。
改めて、自分の思いを言葉にして伝えておくことの大切さを実感しましたね。計画はもちろん大事ですが、日頃のコミュニケーションも運を引き寄せるのかもしれません。
講師の「好き」を引き出し、モチベーションを保つための工夫。
スタッフの採用・教育における方針やこだわりがあれば教えてください。
管さん:私たちは「講師の“好き”を活かす」ことを大切にしています。例えば、英語が堪能でなくても、子供が大好きで情熱を持って指導してくれる人材は貴重です。また、ダンスが得意な講師がいれば「英語でダンス」のレッスンを任せるなど、1人1人の好きなことを活かせる場を用意するように意識しています。
採用の際に、特に重視しているポイントはありますか?
管さん:お子さんを相手にする仕事なので、何より重視するのは「その人自身が何をすることに喜びを感じるか」ですね。だから面接では必ず、「今、何をしている時が一番楽しいですか?」と聞くんです。その質問に対して、目を輝かせて答えてくれる人は、きっと生徒たちにも良い影響を与えてくれるはず。学歴や経歴などはほとんど重視しませんね。
子供向けの教室ならではの素敵な採用基準ですね。講師のモチベーションを保つために、どのような工夫をしていますか?
管さん:日頃から、講師とのコミュニケーションを大切にしています。レッスン後には、「今日は楽しかった?」「子供たちの反応はどうだった?」と声をかけ、ちょっとした会話を心がけているんです。中には、プライベートでも忙しい主婦の方もいらっしゃるので、そういった講師のペースに合わせて、柔軟にシフトを組むことも大切だと思います。
採用活動で苦労した経験などありますか?
管さん:そうですね。やはり人材集めは簡単ではありません。でも最近は、一般的な求人サイトやハローワークに加えて、学生向けの求人サイトも活用し始めたんです。すると、英語に興味を持つ意欲的な大学生が応募してくれるようになりました。
彼らの発想力とバイタリティーは、教室に新しい風を吹き込んでくれています。つい先日も、大学生のスタッフが「ネイティブ講師を囲んでバーベキュー大会をしたい」と提案してくれて、さっそく実現しました。ありがたい限りですね。
同じ志を持つ起業家仲間との学びが、モチベーションアップのカギ。
集客についてはどのような工夫をされたのでしょうか?
管さん:新規集客に関しては、開業当初からInstagramを活用してきました。最初は流行に乗った程度の認識だったんですが、投稿を通して英語教育への思いを発信していくうちに、フォロワーさんからの反応が増えてきたんです。実際にInstagramのDMから直接、体験レッスンの申し込みしていただけることも多いですね。
Instagramを活用するコツはありますか?
管さん:私は、英語教室としての方針や想いを、10枚ほどのスライドにまとめて発信するようにしています。そうすることで、見ている人に自然と私たちの考え方が伝わり、お客さまに私たちの活動や教育方針を知っていただけるようになりました。
あとは、SNSマーケティングのコンサルを受けたことも大きかったですね。同じ志を持った起業家仲間と一緒に学ぶことで、モチベーションも上がりましたし、今の自分より少し上のレベルの人と交流することで、新しい気付きを得られました。
ビジネスのための自己投資を重視されていたのですね。他にも自己投資した例はありますか?
管さん:コロナ禍で一時的に教室を閉鎖せざるを得ない状況になった際に、オンライン講座の開設に踏み切り、その際オンライン講座開設に向けたマーケティングのコンサルも受けました。講座の作り方からセールスの手法まで、プロに相談したんです。
もともと、子供向けの英語教室は対面でしか成立しないと思い込んでいたんですが、オンライン講座にも挑戦したことで海外の生徒さんも増えるなど、可能性が広がりました。生徒さん1人1人に合わせて、今日はこの絵本を読もう、といった課題を毎日提示して、4か月間みっちりサポート。今では親御さん向けの講座もできました。
AIも活用!バックオフィス業務の効率化が、経営者の"考える時間"を生み出す。
バックオフィス業務ではどのような効率化の工夫をしていましたか?
管さん:会計処理や請求管理、シフト管理など、バックオフィス関連の業務が多岐にわたるので、どうしても時間と手間がかかってしまうんですよね。でも、そこに時間を取られてしまうと、ビジネスについて考える時間がなくなってしまう。
そこで私は、できる限り業務の効率化を進めるためにさまざまなツールを活用しています。例えばInstagramの投稿では、骨組みを考えるところまでは私が行いますが、詳細な文章作成はAIに任せて、最後に私が推敲するという流れですね。
会計処理に関しては税理士の方と相談しながら、クラウド会計ソフトを導入しています。おかげさまで、個人事業主時代からずっと会計処理を効率化することができています。
他にも、請求管理やシフト管理など、業務効率化につながるシステムはAIツールを含め積極的に導入しています。最近はAIチャットのコンサルも受けています。
なかなかAIツールを活用するのは難しいと感じる方もいると思うのですが、どのような考えをお持ちですか?
管さん:確かに、AIを使いこなすのには少し勉強が必要かもしれません。でも、だからこそ自己投資は欠かせないんです。新しいことにチャレンジし、時には自分の居心地の良い殻を破る。そうやって学び続けることが、自分自身も事業も成長させるんだと思います。
"主婦の小遣い稼ぎ"とは言わせない。法人化で得た社会的信用と新たなチャレンジ。
教室名の「プロペラキッズ」にはどのような思いが込められているのでしょうか。
管さん:プロペラキッズという名前には、「子供たちに世界に羽ばたいてほしい」という思いが込められています。でも、いざ名前を考える段階になって、「子供たちに覚えてもらいやすい言葉って何だろう」と考えました。
ネットで調べていると、「パ行の言葉は子供たちにも覚えやすい」と出てきたので、「たしかにそうかもしれない」と。そこで色々な言葉を考えた結果、パ行の音が繰り返される「プロペラキッズ」を屋号に決めました。世界中を飛び回るイメージにもぴったりだなと思ったんです。
屋号に悩む方は少なくありませんので、とても参考になるエピソードだと思います。法人化のきっかけは何だったのでしょうか?
管さん:法人化の一番の理由は、事業規模が大きくなり、もう個人事業主のレベルではなくなってきたことです。でも、それ以上に、社会的信用を得たいという思いがありました。
個人事業主として女性が英語教室を運営していると、どうしても「主婦の小遣い稼ぎ」というイメージを持たれがちでした。でも、私にはもっと大きな夢があったんです。英語教育を通して、子供たちの可能性を広げたい。そのためには、法人としての信用が必要だと感じたんです。
法人化によって、何か変化はありましたか?
管さん:法人化したことで、周りの見る目が変わりましたね。生徒さんの保護者の方々はもちろん、地域の方々や金融機関の方など、いろいろな人たちが私たちのことを1つの企業として見てくれるようになりました。おかげさまで、事業の見通しが立てやすくなり、さらに新しいチャレンジにも挑戦しやすくなりました。
大きな目標を叶えるための手段として法人化を決断したのですね。ぜひ今後の展望について教えてください。
管さん:今は、洋書専門の図書館を作る計画を進めています。英語絵本の魅力をもっと多くの子供たちに知ってもらいたいんです。また、「多読」を指導できる講師の養成にも力を入れたいと考えています。将来的には、英語絵本を使った保育園も開きたいですね。
さらに、プロペラキッズの教育を海外の子供たちにも届けたい。現在でも、オンラインレッスンを通して海外の日本人の方々に教えていますが、今後はもっとグローバルに展開していきたいと考えています。
最後に、これから起業を目指す方々にメッセージをお願いします。
管さん:私の座右の銘は「迷ったらGO!」です。アイデアを思いついたら、まずは行動してみる。失敗を恐れずチャレンジし続けることが大切だと思います。
もちろん、準備が必要なこともあります。でも、完璧を目指して行動を先延ばしにしていては、チャンスを逃してしまう。今日の自分にできることから始める。たとえ小さな一歩でも、前に進んでいれば、必ず道は拓けるはずです。
私自身、英語教室を始めた当初は、うまくいかないこともたくさんありました。それでも、子供たちの笑顔を想像して、1日1日を大切に過ごしてきました。起業の道のりは決して平坦ではありませんが、つまずいた時こそ、自分の夢や思いを胸に、歩み続けてほしいと思います。
取材協力:創業手帳
インタビュアー・ライター:間宮 まさかず
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