未経験領域での独学起業。ニーズの本質を見極め、「好き」を活かした事業に挑戦。
- 起業時の課題
- 人材確保、維持、育成, 製品/サービス開発
ドッグトレーナーとして17年のキャリアを経て起業した古川雅子さん。愛犬との快適な暮らしをサポートするため、訪問型レッスンをメインに事業を展開しています。
最初は生活のために始めた事業ということでしたが、読書や勉強会を通じ熱心に学び、ドッグライフコンサルタントとしてお客さまから信頼される唯一無二の存在になっています。古川さんの起業ストーリーには、これから起業を目指す方にとって、起業家としてのあるべき姿勢や、リスクを最小限に抑えつつ事業を軌道に乗せるためのヒントが多く詰まっています。
会社プロフィール
業種 | サービス業 (ペット関連) |
---|---|
事業継続年数(取材時) | 3年 |
起業時の年齢 | 40代 |
起業地域 | 福岡県 |
起業時の従業員数 | 0人 |
起業時の資本金 | - |
話し手のプロフィール
- 古川雅子
- CORE-style代表
- ドッグライフコンサルタント
- キャリア20年のドッグトレーナー。それぞれの飼い主さまと犬たちの個性やライフスタイル、好みに合わせた訪問型のレッスンを中心にサービスを展開するCORE-styleを開業。丁寧にカウンセリングを行い、犬の行動学・行動分析学に基づいたトレーニングメニューを提案している。
目次
- 「これならできるかも」で踏み出した一歩が、気付けば自分の使命に。
- 想定外の失敗も。小さく事業を始めるヒントとは?
- ニーズの根本を解決するために、私が求め続けた学び。
- 想いを形にする力。事業の可能性を広げ、地域活性化にも挑戦。
- 起業はスモールスタートでも私が惜しまなかった、たった1つのこと。
「これならできるかも」で踏み出した一歩が、気付けば自分の使命に。
現在の事業内容について教えてください。
古川さん:福岡県北九州市で、犬や猫と共存していくうえでのお困りごとを解決するさまざまなサービスを提供しています。事業のメインは訪問レッスンで、ほかにもペットシッターやお散歩トレーニング、犬の保育園の運営や、ペット目線で住宅環境改善の提案なども行っています。
起業を志したきっかけは何だったのでしょうか?
古川さん:犬に関わる仕事はお散歩代行のフランチャイズ事業から始めました。当時は、シングルマザーになったことで、とにかく何かをしなきゃと必死で、子育てをしながらでも朝夕の空いた時間を活用して働ける仕事を探していたんです。犬が好きだったし、犬の方からもなぜか近寄られるような感じだったので、お散歩代行なら自分にもできると思って始めてみたのがきっかけでした。
すると2年目あたりから、飼い主さまからしつけの相談を受けるようになって。そこから独学でドッグトレーニングの勉強を始めました。飼い主さまの悩みの根本を解決するために、まずは犬の行動がどういう意味を持つのか理解しようと必死だったんですよね。
さまざまな本を読みあさり、図書館で借りた動物の行動学の本をノートに書き写したりもしていました。その後、CORE-styleを始める前までは業務委託で犬の保育園に9年勤めていたこともあり、学んだことを実践しながら知見を深めていきました。
また、多くの飼い主さまと接するうちに、犬のしつけに悩み殺処分まで検討するほど追い詰められている方がいることも知りました。そのような状況を見てきたからこそ、私に何かできることはないかと深く考えるようになりました。
このような経験から、犬と飼い主の穏やかな暮らしを実現するため、ストレスのない関係づくりをテーマにした起業を志すようになりました。
想定外の失敗も。小さく事業を始めるヒントとは?
事業の立ち上げ当初はどのようにスタートされたのでしょうか?
古川さん:今もメインとなっている訪問レッスンを中心に、最初は身ひとつで本当に小さく始めました。
ホームページも、過去のフランチャイズ事業での経験から自分で作れるようになっていたので、お金をかけずに自作したものを使っています。また、InstagramやFacebookなどSNSでの発信も自分で行っています。とはいえ、過去のお客さまとのつながりもあったので、特に集客に困ることはありませんでした。強いていえば、ホームページのSEO対策に力を入れたくらいでしょうか。
スムースな駆け出しだったんですね!
古川さん:そうですね。でも、これまでの失敗経験も活きています。昔、フランチャイズ事業立ち上げ当初に新聞広告を出したときは、3万円もかけて広告を出したのに、1件の問い合わせもなかったんです。でも、こういった失敗もやってみないとわかりませんからね。必要な経験だったと思っています。
過去の失敗も糧になったんですね。他に起業準備でやったことはありますか?
古川さん:経営に関してはわからないことだらけでしたので、福岡市にある起業支援会社の無料の個別相談を受けました。起業や経営に必要な準備、心構えを教えてもらえて、とても勉強になりましたね。
専門家のアドバイスを受けられたのは心強かったでしょうね。会計処理や確定申告はご自身で行っているんですか?
古川さん:はい。今のところは、会計ソフトは使わずに表計算アプリで収支を管理しています。自分で帳簿をつけて、目標達成のために必要な売上を計算したり、経費を把握したりしているんです。ただ、事業規模の拡大に合わせて、将来的には税理士に経理業務を依頼することも検討しています。
ところで、ペット事業開業に必要な認可や資格などはあるのでしょうか?
古川さん:ペット事業を始めるには、動物取扱業の登録が必要不可欠です。国家資格はありませんが、動物取扱業の登録には一定の条件を満たす必要があります。私の場合は、JKC(ジャパンケネルクラブ)の愛犬飼育管理士の資格を取得して、登録の条件を満たしました。
ほかにも資格は取得しましたが、私自身は資格取得をそれほど重視しているわけではありません。むしろ、資格よりも大切なのは、お客さまの悩みを解決できるかどうかだと考えています。資格はあくまでも自分の学びのために取得したもので、肩書きよりも実践的なスキルを磨くことを大切にしてきました。
ニーズの根本を解決するために、私が求め続けた学び。
先ほど独学でドッグトレーニングを学んだとおっしゃっていましたが、ペット事業を始めるうえで、どのような勉強をされたのでしょうか?
古川さん:ドッグトレーニングについて学び始めて数年は、飼い主と犬の主従関係によるしつけ方法しか知りませんでした。でも、内心ではその方法に矛盾を感じていて。というのも、トレーナーの命令で言うことを聞いてくれた犬達が、飼い主さまの言うことを聞かないことがよくありました。それでは意味がありません。かといって、飼い主さまにリーダーシップを発揮してもらおうにも、そう簡単にはいかないんですよね。
でも、勉強を重ねるうちに、犬の行動には必ず意味があると知りました。犬との信頼関係を築くには、犬の行動をよく観察し、何を考えているのかを理解することが大切だと学んだんです。
独学だけでなく、さらに学びを深めたいと考えていたとき、行動分析学に基づいたトレーニングをしているトレーナーさんと出会いました。
それをきっかけに私も行動分析学のオンラインレッスンを受講し始め、犬や人間の行動にも学習理論が当てはまることを知り、学びを深めました。そして、犬との暮らしをより快適にするためには、犬をどうしつけるかという考え方だけでなく、飼い主さまご自身の行動を見つめ直してもらうことも非常に重要であると気付きました。
行動分析学との出会いが、古川さんのしつけ方に対する考え方を大きく変えたんですね。
古川さん:そうなんです。ですが、理論で学んだことをいざ実践しようと思ったとき、最初は目の前の飼い主さまや犬の行動をどの理論に当てはめて分析すれば良いのか、正解がわからず手探りの連続でした。講師の方に個別に相談したり、さまざまなケースで実践を重ねていくうちに、次第に自信を持って犬やお客さまの行動分析を行い、お悩みに合わせたメニュー提案ができるようになっていったように思います。
行動分析学を学んでからは、それまで以上に犬や飼い主さまをよく観察しアドバイスをしたり、犬が成功体験を積みやすい環境を作ったりすることを大切にするようになりました。トイレの場所や家具の配置、床の滑りやすさなど、しつけ方法以外の改善提案も行っています。犬を叱って行動を制限するのではなく、犬と飼い主さまが抱えているストレスの本質を改善することで、犬との暮らしを総合的にサポートしていきたいんです。
お客さまの悩み解決に対する真摯な姿勢が伝わってきます。
想いを形にする力。事業の可能性を広げ、地域活性化にも挑戦。
現在は、訪問レッスンだけでなくさまざまなサービスを展開されていますが、サービスを拡大するときのアイデアはどこから来るのでしょうか。
古川さん:事業の幅を広げるアイデアは、いつもお客さまの悩みから生まれています。例えば、レッスン先のお宅を訪問した際、ペットとの暮らしにおける住空間の課題を感じたんです。ちょうど同時期に、私も犬と過ごしやすいようにと思って自宅用に中古物件を購入しリフォームをしていました。その際、業者に任せるのではなく床の材質ひとつから自分でこだわって調達し、庭には22mのドッグランスペースも作りました。
そういった自身の経験を通じて、お客さまの住環境のお悩みも解決できると確信し、ペットと共生するためのリフォームプランを提案し始めました。
お客さまのお悩みの本質にしっかり向き合ってこられたからこそ生まれたサービスですね。
古川さん:現在は、そこから派生し、地域の空き家問題にも取り組んでいます。ペットと暮らせるリフォームプランを提案し、空き家に「ペットと暮らしやすい」という付加価値をつけて販売を促進する取り組みです。ペット事業を通じて、少しずつ地域課題の解決にも貢献できたらと考えています。
また、地域のまちづくりプロジェクトにも参加しています。地域の企業とコラボレーションしていろいろなイベントを企画するなど、まちづくりに関わる機会が増えました。
ペット事業と地域活性化を結び付けた素晴らしいアイデアですね。
古川さん:将来的には、地域に根差したドッグカフェを自分でも開業したいという夢があります。単なるカフェではなく、飼い主さまがリラックスできて、犬のケアやしつけ相談もできるような、地域に必要とされる場所を作っていきたいですね。
ゆくゆくはペット業界全体の質の向上にも関わっていければと考えています。ペットショップでの犬の扱いや、殺処分問題など、まだまだ改善すべき点は多いんです。
例えば、ペットショップでは子犬同士を遊ばせすぎて、問題行動につながるケースもあります。最近のペットショップでは多頭が同じスペースに居るケースが増えてきていて他犬と仲良くできる子が増えてきてくれた反面、いざペットとして飼育しようと思ったときに限度を学ばずに元気良すぎる子になっていて、しつけがしづらい犬になってしまっているケースもあります。そういった課題解決のために、ペットショップへの監修やブリーダーへのアドバイスなども視野に入れています。地域に根差した活動を通じて、少しずつ理想を実現していきたいです。
起業はスモールスタートでも私が惜しまなかった、たった1つのこと。
最後に、起業を目指す人へのメッセージをいただけますでしょうか。
古川さん:自分の好きなことや得意なことを活かして、小さくても始めてみることが大切だと思います。ただ、事業は小さく始めても、自己投資は惜しまないことが重要ですね。私の場合、独学で知識を深めるために多くの本を読み、座学と実践を繰り返してきました。
また、お客さまの悩みに向き合うときは、表面的な問題だけでなく、その本質を追求することを大切にしています。解決策はそれぞれの家庭、それぞれの犬によって変わりますから。そういった積み重ねが、事業の核になっていくのだと思います。
起業の道のりは、決してうまくいくことばかりではありません。私自身、まだまだ学ぶことだらけです。でも、これからもさまざまなチャレンジを続けていきたいと思います。起業に少しでも興味がある方は、ぜひ小さなことから、何か1つ実践してみてください。応援しています!
取材協力:創業手帳
インタビュアー・ライター:間宮 まさかず
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