法人税の実効税率とは?表面税率との違いや計算方法も解説

2023/12/04更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

法人が事業によって得た所得には、法人税がかかります。法人税の税率には、「実効税率」と「表面税率」があります。

実効税率と表面税率の違いを正しく理解していないと、自分の会社が支払うべき法人税が想定よりも高くなり、支払うお金が足りなくなってしまうという事態にもなりかねません。

ここでは、法人税の実効税率について、表面税率との違いや計算方法、実効税率を計算する際の注意点などを解説します。

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法人税の実効税率は、法人事業税を損金算入した実際の納税額に近い税率

法人税の実効税率とは、「法定実効税率」とも呼ばれ、企業が実際の納税額を計算する際に用いる税率のことです。

法人に課せられる税金には、国税である法人税の他に、地方税である法人住民税と法人事業税もあり、これら3つをまとめて、一般的に「法人税等」といいます。これらの税金について、税法上定められた税率を合計したものは「表面税率」といわれています。

ただし、表面税率では、企業が実質的に負担する税金額を正しく導き出すことができません。前述した法人税等のうち、法人税と法人住民税は損金不算入ですが、法人事業税は損金への算入が可能です。法人事業税を損金算入すると、法人税の対象となる課税所得は減るため、実際の税率は表面税率と異なります。

このように、法人事業税を損金算入したうえで法人税を計算した税率のことを「実効税率」といいます。実効税率は、表面税率よりも下回り、実際の納付額に近いものです。

法人税の表面税率と実効税率の違い

法人税の表面税率と実効税率との違いは、税法上の税率か、それとも法人税等についての実質的な税率かという点です。

前述したように、表面税率は、税法上定められた法人税等の税率を単純に合計したものです。それに対して実効税率は、表面税率をもとに、より実態に即した納税額を求めるために使われます。

法人税の表面税率と実効税率は、使う場面や課税額、計算方法がそれぞれ異なります。具体的には以下のとおりです。

使う場面の違い

表面税率と実効税率の違いは、使う場面です。

表面税率は税金の申告や納税額を計算する場合に使う税率であるのに対し、実効税率は企業が実際に納税する税額に近い数値を求めるために使う税率です。

具体的には、法人税の確定申告の際には表面税率を使用し、法人事業税の損金算入を考慮して実質的な税負担額を求める場合は実効税率を使用する、というように使い分けされています。

課税額の違い

表面税率と実効税率の違いの1つは、課税額です。

法人事業税を損金算入すると、法人税の対象となる課税所得は減少します。しかし、表面税率では、法人事業税を翌期の損金として計上できることは考慮されません。そのため、どのような税率で計算しても、実効税率よりも表面税率の方が高い税率になるのです。

特に、事業的規模が大きくなるほど、実効税率と表面税率の課税額の差は大きくなります。それぞれの税率の目的を踏まえ、使用する場面を間違えないように注意しましょう。

計算方法の違い

表面税率と実効税率の違いには、計算方法も挙げられます。
表面税率と実効税率は損金に算入される税目が異なるため、計算方法にも違いがあります。

表面税率の計算方法

法人税率×(1+地方法人税率+法人住民税率)+法人事業税率+特別法人事業税率

実効税率の計算方法

((法人税率×(1+地方法人税率+法人住民税率)+法人事業税率+特別法人事業税率))÷(1+事業税率+特別法人事業税率)

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企業が負担する税金の種類

企業の所得には、法人税や法人住民税、法人事業税といった税金がかかります。それぞれどのような税金で、税率がどれくらいなのかを併せて確認しておきましょう。

企業が負担する税金の種類

  • 法人税
  • 地方法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 特別法人事業税

法人税:15%または23.20%(中小法人の場合)

法人税は、法人の所得に応じて課税される国税です。法人税の税率は、企業規模や所得によって変わります。
資本金1億円以下の中小法人の場合、所得が年800万円以下の部分については15%、年800万円超の部分については23.2%となります。赤字の場合は法人税がかかりません。

地方法人税:10.3%

地方法人税は、法人税と同様に法人の所得に対して課せられる税金で、税率は10.3%です。「地方」という言葉がついているため地方税と思われがちですが、実は国税です。地方法人税の税額は、法人税額に所定の税率を掛けて求めます。

法人住民税

法人住民税とは、事業所のある地方自治体に対して法人が納める地方税です。正確には都道府県民税と市町村民税があり、これらを合わせて法人住民税と呼びます。法人住民税は「法人税割」と「均等割」によって構成され、この2つの合計額によって税額が算出されます。

法人税割:法人税割7.0%(東京23区内に事業所がある中小法人の場合)

法人税割は、法人税の税額をベースにして算出・課税される住民税で、法人税額に定められた税率を掛けて算出します。そのため、法人税がかからない赤字の企業は、法人住民税の法人税割も課税されません。

法人税割の税率は、国によって「標準税率」が定められています。ただし、標準税率はあくまで国による目安であるため、自治体ごとの税率の設定は原則自由です。そのため、自治体によっては、標準税率とは別に、一定の基準を超えている法人には超過税率を適用しているケースもあります。

例えば、東京都の場合は超過税率を適用していますが、資本金の額が1億円以下かつ法人税額が年1,000万円以下の法人は標準税率となります。東京23区内に事務所がある場合、標準税率は7.0%、超過税率は10.4%です。

均等割:7万円(東京23区内に事業所がある従業員数50人以下の中小法人の場合)

均等割は、法人の資本金の金額や従業者数などに応じて算出・課税される住民税です。都道府県民税では法人の資本金等の額で、市町村民税では資本金などの額と従業者数で、納める税額が区分されます。

例えば、東京23区内に事務所があり、資本金が1,000万円以下かつ従業員数が50人以下の場合、法人住民税の均等割は7万円です。法人税割とは異なり、均等割は、赤字でも原則として納税しなければなりません。

法人事業税:3.5~7.0%(東京都の中小法人の場合)

法人事業税は、法人が行う事業そのものに課される地方税で、納めるのは事業所等が所在する都道府県です。法人事業税の税率は、事業区分や法人の種類、資本金の金額、所得額などによって変動します。税率は都道府県によって異なり、資本金額や所得に応じて、軽減税率、標準税率、超過税率のいずれかが適用されます。

例えば、東京都の資本金1億円以下の普通法人で、標準税率が適用されれば、所得が400万円以下の部分は3.5%、400万円超800万円以下の部分は5.3%、800万円を超える部分は7.0%です。

特別法人事業税:所得割額37%(資本金1億円以下の普通法人の場合)、収入割額30%

特別法人事業税は、2019年度の税制改正により、法人事業税の一部を分離する形で創設された税金です。特別法人事業税は国税ですが、法人事業税と併せて申告・納付します。税率は法人の種類によって異なり、基準法人所得割額または基準法人収入割額を納めます。資本金1億円以下の普通法人などの基準法人所得割額の税率は37%で、基準法人収入割額の税率は30%です。

  • 法人税について税理士へのご相談をお考えの方は、以下の記事を併せてご覧ください。

実効税率と表面税率では計算方法が異なる

同じ数値を用いて計算しても、実効税率と表面税率には違いが生じます。
実効税率と表面税率にズレが生じるのは、事業税が当該事業年度の課税所得算定上、損益に算入されることが原因です。
ここでは、具体的に計算する例として、東京23区に所在する資本金1億円以下の中小企業のケースを挙げます。

表面税率の計算式

前述の表面税率の計算方法に沿って、超過税率の場合と標準税率の場合に分けて計算してみます。
これまでご紹介してきた各税率の数値をあてはめると、下記のようになります。

超過税率の場合

超過税率の場合には、法人税率は23.20%、地方法人税率は10.30%、住民税率は10.40%、事業税率は7.48%、特別法人事業税率は2.59%で計算します。

表面税率=23.20%×(1+10.30%+10.40%)+7.48%+2.59%=38.30%

標準税率の場合

標準税率の場合には、超過税率の場合に比べ、住民税率と事業税率が異なります。
法人税率は23.20%、地方法人税率は10.30%、住民税率は7.00%、事業税率は7.00%、特別法人事業税率は2.59%で計算します。

表面税率=23.20%×(1+10.30%+7.00%)+7.00%+2.59%=36.80%

実効税率の計算式

続いて、実効税率も前述の計算方法に沿って、超過税率の場合と標準税率の場合に分けて計算してみます。
これまでご紹介してきた各税率の数値をあてはめると、下記のようになります。

超過税率の場合

超過税率の場合には、法人税率は23.20%、地方法人税率は10.30%、住民税率は10.40%、事業税率は7.48%、特別法人事業税率は2.59%で計算します。

実効税率=(23.20%×(1+10.30%+10.40%)+7.48%+2.59%)÷(1+7.48%+2.59%)=34.79%

標準税率の場合

標準税率の場合には、超過税率の場合に比べ、住民税率と事業税率が異なります。
法人税率は23.20%、地方法人税率は10.30%、住民税率は7.00%、事業税率は7.00%、特別法人事業税率は2.59%で計算します。

実効税率=(23.20%×(1+10.30%+7.00%)+7.00%+2.59%)÷(1+7.00%+2.59%)=33.56%

法人税の実効税率を計算する際の注意点

法人税の実効税率を計算する際には、注意しなければならない点があります。法人税の実効税率は会社のさまざまな条件によって変わってくるため、規模や所得などを確認しなければ正しく計算ができません。また、数種類の税金の税率を使うため、税率の改定についても注意しておく必要があります。

会社の規模や所得額などによって法人税率が異なる

法人税の税率は、会社の規模や所得額によって異なる点に注意が必要です。
資本金1億円以下の普通法人の場合は、所得額が年800万円以下の部分については法人税率が15%、年800万円超の部分は23.2%です。
例えば、年の所得が1,000万円だったとすると、800万円までが15%、それを超えた200万円分に23.2%の税率がかかるということです。

なお、資本金が1億円を超える普通法人は、所得額にかかわらず法人税率は23.2%となります。また、資本金1億円以下であっても、大法人による完全支配関係がある場合は、資本金1億円超の普通法人と同じ税率が適用されます。

事業所の所在地で設定されている税率を確認する

法人住民税や法人事業税といった地方税は、自治体によって適用される税率が異なる点も注意しなければなりません。
また、同じ自治体でも、資本金や所得の額などによって税率が変わることもあります。自社の事業所がある自治体の税率をよく確認しておきましょう。

税率が毎年同じとは限らない

国税、地方税共に、税率は随時改正されます。去年適用されていた税率が、今年も同じとは限らないことも注意する必要があります。
また、税制改正によって、税金の仕組みなどが変わることもあるでしょう。税率や税額を計算する際には、必ず最新の情報をチェックすることが大切です。

法人税について相談できる税理士を探す方法

法人税の計算は複雑なので、税務や会計の専門知識がないと、正しく行うのは難しいものです。法人税の確定申告でミスを防ぐためにも、税務の専門家である税理士に相談するといいでしょう。
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実効税率と表面税率の違いを知って、納める税金を正しく把握しよう

法人には、法人税や法人住民税、法人事業税といったさまざまな税金がかかります。この法人税等について、実質的な税額を計算するときに使用するのが、法人税の実効税率です。法人税の申告のときに使用する表面税率とは、目的や計算方法などが異なるため注意が必要です。

ただ、法人税の計算はとても複雑で、税額などを自力で正しく算出するのは非常に困難です。「税理士紹介ナビ新規タブで開く」なども活用して、法人税をはじめとする税金について、税の専門家である税理士を相談してみましょう。

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この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

URL:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_mori/新規タブで開く

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