会社設立後に最長2年間消費税が免除になる?要件や注意点を解説
監修者:森 健太郎(税理士)
2024/01/11更新
新たに会社を設立した場合は、原則として設立2期目まで消費税の納税義務が免除されます。また、個人事業主として開業して2年間消費税免除を受け、その後法人成りして2期目まで消費税の免除を受ければ、免除期間を最大4年間とすることが可能です。
ただし、一定の要件を満たした場合は、免除されません。要件を満たした場合は、会社設立1期目から消費税がかかるので注意しましょう。
ここでは、新たに設立された会社が消費税免除になる要件や、会社設立後に消費税の免除期間が最大となる場合の要件などについて解説します。併せて、消費税免除の要件を満たしていても、あえて課税事業者を選択した方がいい場合についてもご確認ください。
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会社設立時に消費税免除となる要件
設立した会社の資本金が1,000万円未満である場合には、1期目における消費税の納税義務が免除されます。
新規に設立された会社でも、設立時の資本金が1,000万円以上の場合は、設立1期目から消費税の納税義務が生じます。
資本金が1,000万円を超えそうでも、消費税が免除される場合がある
「資本準備金」を利用すると、資本金が1,000万円未満になる場合があります。
会社法では、出資金の2分の1を超えない金額について、資本金として計上せず、資本準備金として計上することが認められています。例えば、資金が1,500万円ある場合、全額を資本金にすると設立1期目から消費税の納税義務がかかりますが、750万円を資本金、750万円を資本準備金とすれば、資本金が1,000万円未満になり、納税が免除されます。
また、「役員借入金」の活用でも、資本金が1,000万円未満になる場合があります。
役員借入金とは、社長など役員が会社に貸付けるお金のことです。自己資金が1,000万円以上あったとしても、資本金は1,000万円未満とし、残りは会社に貸付ける役員借入金の形をとることで、消費税免除の要件を満たすことができます。
ただし、役員借入金は出資ではなく会社の債務となるため、いずれ返済の必要があります。
会社設立後も消費税が免除となる要件
法人は、以下の基準期間または特定期間の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の申告・納付義務を負わなければなりません。
法人の基準期間と特定期間
- 基準期間:前々事業年度
- 特定期間:前事業年度開始の日以後6か月の期間
新たに設立された法人は、設立2期目までは基準期間は売上が存在しないため、特定期間の課税売上高が1,000万円未満であれば、2期目まで消費税は免除されます。
なお、特定期間における条件は、給与等支払額の合計額によって判定することもできるため、たとえ特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、給与等支払額が1,000万円を超えていなければ、設立1期目に続き2期目も免税事業者となります。
設立3期目以降、課税事業者と免税事業者のどちらになるかは、基準期間もしくは特定期間の課税売上高によって異なります。基準期間または特定期間の課税売上高が1,000万円を超えれば、その期から課税事業者となります。
一方、1,000万円を超えなければ、基本的には免税事業者のままです。なお、この場合も、特定期間については、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額で判定することができます。
消費税の納税義務が免除されない場合とは?
会社を設立する場合、資本金1,000万円未満、かつ1期目の前半6か月の課税売上高(または給与支払額)が1,000万円以下であれば、設立2期目までは消費税が免除されます。
ただし、これらの条件を満たしていても、以下に該当する場合は消費税の納税義務が免除されず、設立時から課税事業者となります。
資本金が1,000万円未満でも、特定新規設立法人の場合
資本金が1,000万円未満の会社であっても、特定新規設立法人の場合は設立1期目から消費税の納税義務が生じます。
特定新規設立法人と判定される要件
- 他の者が株式等の50%超を直接または間接に保有しているなど、その新規設立法人が支配される一定の条件に該当する
- 上記の他の者および他の者と一定の特殊な関係にある法人(特殊関係法人)のどちらかが、新規に設立する法人の基準期間に相当する期間における課税売上高が5億円を超えている
自社が特定新規設立法人と判定されるかどうかは、まずが他の者に支配されている状態であるかを確認します。他の者に新しく設立した法人の株式など出資の50%超を直接または間接的に保有されていると、「支配されている」とみなされます。
新しく設立した法人が他の者に支配されている場合、他の者や他の者と特殊な関係にある法人の基準期間における課税売上高がそれぞれ5億円を超えているかも併せて確認が必要です。この際に、もし課税売上高が5億円を超えている法人がある場合、特定新規設立法人となります。
例えば、課税売上高が5億円を超える法人が50%以上の出資をして会社を設立した場合などは、特定新規設立法人になり、資本金が1,000万円未満でも消費税は免除されません。
消費税課税事業者選択届出書を提出している場合
消費税の納税義務が免除される免税事業者であっても、税務署に消費税課税事業者選択届出書を提出することで、自ら課税事業者になることができます。例えば、会社設立時に消費税課税事業者選択届出書を提出した場合は、資本金額や課税売上高にかかわらず、設立1期目から課税事業者です。
消費税の免除期間が長くなる要件
会社を設立して、消費税の免除期間が長くなる要件としては、資本金と課税売上高の2点がポイントになります。加えて、決算期の決め方にも関係があります。
消費税の免除期間が長くなる要件をなるべく延ばす方法
- 資本金が1,000万円未満である
- 特定期間の課税対象売上高が1,000万円以下であり、かつ、特定期間に支払う給与および賞与が1,000万円以下である
- 1期目をなるべく長く設定する
- 個人事業主の3期目に法人成りをする
資本金が1,000万円未満である
資本金は期首時点の金額で判断されるため、もし1期目の途中で増資をして資本金が1,000万円以上になると、2期目から消費税の納税義務が生じます。増資をしたい場合には、2期目に入ってから実施するようにすると、課税事業者になるタイミングが1年間延びるでしょう。
特定期間の課税対象売上高が1,000万円以下であり、かつ、特定期間に支払う給与および賞与が1,000万円以下である
特定期間の課税売上高が1,000万円以下であり、であり、かつ、特定期間に支払う給与および賞与が1,000万円以下であれば、設立2期目まで消費税が免除されます。特定期間とは、設立1期目の前半6か月間が該当します。
給与などを支払った総額には、月々の給与や役員報酬の他、賞与(ボーナス)も含まれます。例えば、経営者である自身への賞与の支給時期を下半期に設定すると、給与等支払額が1,000万円を超えないでしょう。
なお、役員への賞与を損金計上するには、事前確定届出給与として、あらかじめ税務署への届出が必要なので注意が必要です。
- ※役員報酬の損金算入については以下の記事を併せてご覧ください
1期目をなるべく長く設定する
1年を超えない範囲であれば、会社は事業年度を任意で決められるため、1期目を長く設定するほど消費税の免除期間が長くなります。
例えば、設立が5月1日で決算期を12月にした場合、設立から2期目まで消費税が免除されたとしても、免除期間は1年8か月です。しかし、設立日から1年後を決算期とした場合は、2年間は消費税の納税義務が免除されます。
個人事業主の3期目に法人成りをする
個人事業主として開業して2年間消費税免除を受け、その後法人成りして2期目まで消費税の免除を受ければ、免除期間を最大4年間とすることが可能です。
基準期間または特定期間の課税売上高が1,000万円以下なら免税事業者という要件は、法人も個人事業主も同じですが、消費税の課税・免税の判定においては、法人と個人事業主は別の事業者としてみなされるためです。
なお、個人事業主の事業年度は、一律で1月1日~12月31日と決まっているため、基準期間は前々年、特定期間は前年1月1日~6月30日となります。
消費税の課税事業者になる方が良い場合
会社を設立した場合、原則として設立2期目までは消費税の納税義務が免除されますが、消費税の還付を受けたい場合やインボイス制度に対応したい場合には、課税事業者になった方が良いといえます。
中でも注意したいのが、インボイス制度への対応です。例えば、顧客が一般消費者や免税事業者であれば、仕入税額控除の影響はないと考えられるため、課税事業者にならなくてもさほど問題はないはずです。
しかし、取引先が課税事業者である場合、自社が免税事業者であれば、適格請求書を求められても発行することができません。そうなると、取引先は仕入税額控除が受けられずに税負担が増えてしまうため、適格請求書を発行できる別の事業者と取引しようと考えるかもしれません。特に、新規取引先を開拓したい設立直後の時期においては、インボイス制度に対応できないことが不利に働く可能性があります。
免税事業者から課税事業者になった方がよいかどうかは、自社の業種や取引先の状況などによっても異なります。会社を設立するときには、消費税の免除を受けるか、課税事業者になることを選択するか、どちらが自社にとって有利かを十分検討したうえで決めるようにしましょう。
- ※インボイス制度については以下の記事を併せてご覧ください
起業に強い専門家に相談しながら会社設立を進める方法
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会社を設立するときは消費税免除の条件を知っておこう
会社を設立したときは、原則として設立2期目まで消費税の納税義務が免除されます。ただし、2期目まで消費税が免除されるのは、資本金が1,000万円未満、1期目の前半6か月の課税売上高が1,000万円以下、特定新規設立法人に該当しないなどの要件を満たした場合です。
例えば、資本金1,000万円以上の会社を設立した場合には、設立1期目から消費税の納税義務が発生するため注意しなければなりません。
また、会社設立後、免税事業者の要件に該当していたとしても、あえて課税事業者になった方が良い場合もあります。設立時から課税事業者になるかどうかは、自社や取引先の状況などをよく検討したうえで選択しましょう。判断に迷ったら、「弥生の設立お任せサービス」を利用し、税の専門家に相談するのも1つの方法です。会社設立にかかる手続きを手軽に行いたい場合は、「弥生のかんたん会社設立」の活用もご検討ください。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
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