会社設立にかかる登録免許税とは?計算方法や半額にする方法を解説
監修者:森 健太郎(税理士)
2024/01/11更新
会社を設立するときに必ずかかる費用の1つが、登録免許税です。会社を設立するには、法務局で法人登記の手続きを行いますが、登録免許税はこの登記申請にあたって必要になる税金です。
なお、会社設立にかかる登録免許税は会社形態や資本金の額によって変わり、制度を利用することで半額にすることも可能です。
ここでは、会社設立時に必要な登録免許税の金額や納付方法、納付時の注意点について説明します。また、登録免許税を半額にできる、特定創業支援等事業についても併せて解説します。
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登録免許税は会社を設立する際にかかる国税
登録免許税とは、会社の設立にあたって登記や登録、特許などを受けるときにかかる国税です。法人の登記する際にも、登録免許税が課税されます。
会社を設立するときには、株式会社や合同会社といった会社形態にかかわらず、必ず法務局に対して法人登記(会社設立登記)を行わなければなりません。また、会社設立後、事業内容の追加や事業所の移転などで登記事項に変更が生じた場合は、変更登記の手続きが必要となり、その際にも登録免許税がかかることを念頭に置いておきましょう。
登録免許税の計算方法
会社形態別の登録免許税の税額は、下記のとおりです。株式会社や合同会社の設立にかかる登録免許税の税額は、資本金の額が多いほど登録免許税は高くなります。
また、登録免許税の計算方法は、設立する法人の会社形態によっても異なります。例えば、合名会社や合資会社を設立する場合には、1件あたりの税額資本金額にかかわらず同じです。
設立する会社の種類 | 登録免許税の計算方法 |
---|---|
株式会社 | 資本金の額の0.7% (15万円に満たないときは、申請件数1件につき15万円) |
合同会社 | 資本金の額の0.7% (6万円に満たないときは、申請件数1件につき6万円) |
合名会社・合資会社 | 1件につき6万円 |
例えば、株式会社なら、資本金×0.7%が15万円を超えるのは、資本金が約2,143万円のときです。
一方、合同会社の場合は、資本金×0.7%が6万円以上になるのは資本金が約860万円のときなので、資本金の額がそれ以下なら、登録免許税は一律6万円となります。
登録免許税の納付方法
登録免許税の納付方法は、収入印紙納付・現金納付・電子納付の3種類ありますが、
そもそも登録免許税は、現金納付が原則とされています。ただし、会社設立にかかる登録免許税は、収入印紙による納付が一般的です。また、オンラインで登記申請をする場合は、インターネットバンキングなどでの電子納付も可能です。
収入印紙で納付する
登録免許税の金額に応じた収入印紙を購入して「登録免許税納付用台紙」に貼り付け、設立登記申請書などの申請書類と共に、管轄の法務局へ提出します。このとき、収入印紙への消印を押印してはいけません。
現金で納付する
金融機関の窓口で登録免許税納付用の納付書を用いることで、登録免許税の現金納付が可能です。あらかじめ法務局が指定する口座宛に必要金額を振り込み、領収書を設立登記申請書に貼付して法務局に提出します。登記申請時に、法務局の窓口で現金納付をするわけではないので注意しましょう。
インターネットバンキング・ATMで電子納付する
法人設立登記をオンラインで申請した場合には、インターネットバンキングやモバイルバンキング、電子納付対応のATMを利用して登録免許税を納付することができます。
ただし、インターネットバンキングなどを利用して登録免許税を納付する場合は、事前に各金融機関において必要な納付情報を確認するといった作業が必要です。また、ATMから納付する場合、利用できるのはPay-easy(ペイジー)マーク表示のあるATMのみです。電子納付が利用可能な金融機関は、「e-Gov電子納付」から確認できます。
なお、オンライン登記申請を行った場合でも、上記の収入印紙または現金による納付が可能です。
登録免許税を減免する特定創業支援等事業
特定創業支援事業とは、地域の創業促進や産業活性化を目的に、国の認定を受けた市町村が実施する創業を支援する取り組みです。市町村が、商工会議所や民間事業者などと連携して産業競争力強化法にもとづく創業支援等事業計画を策定し、国から認定を受けて実施されます。2023年6月時点で認定されているのは、1,320件(1,479市町村)です。
特定創業支援事業では創業にかかわるセミナーなどが開催されており、修了後は「特定創業支援等事業の支援を受けたことの証明書」が交付されます。この証明書を法務局に提出すると、会社設立にかかる登録免許税が、本来の課税額の半分に減免されます。
特定創業支援事業のセミナー等を受けると、登録免許税の他にも、融資や補助金、助成金において優遇措置を受けることが可能です。
ただし、特定創業支援事業を利用できるのは、その地域で創業予定、または創業後5年未満の事業者に限られます。既に会社を経営しており、2社目を設立する場合は対象外です。
また、特定創業支援事業の内容や優遇措置の条件などは、市町村によって異なります。会社を設立したい市町村が特定創業支援事業の認定を受けているかどうかも含めて、あらかじめ確認しておきましょう。
会社設立時の登録免許税減免後の税額
特定創業支援事業による優遇措置を受けると、会社設立時の登録免許税の額は、どの会社形態でも半額になります。減免後の税額は、以下の表のとおりです。
設立する会社の種類 | 登録免許税の計算方法 |
---|---|
株式会社 | 資本金の額の0.35% (7万5,000円に満たないときは、申請件数1件につき7万5,000円) |
合同会社 | 資本金の額の0.35% (3万円に満たないときは、申請件数1件につき3万円) |
合名会社・合資会社 | 1件につき3万円 |
なお、登録免許税についてはこちらの動画でも解説しております。また、「特定創業支援事業」を利用して登録免許税を半額にする方法も解説しているため、費用を抑えて会社設立をしたいと考えている人は参考にしてみてください。
登録免許税は経費に計上できる
法人に課される税金には経費になるものとならないものがありますが、登録免許税は会社設立にかかる開業費用として経費計上できるため、その分節税につながります。
創立費(開業費)は、会計処理により、数年間にわたって平均的に費用を計上することも可能です。収益と費用のバランスが保ちやすくなるので、覚えておくといいでしょう。
- ※会社設立の際経費にできるものついては以下の記事を併せてご覧ください
登録免許税を納付するときの注意点
登録免許税を納付するときには、いくつか注意点があります。登録免許税を正しく納めないと登記申請が受理されず、会社を設立することができません。納付方法などを間違えると再申請が必要になり、手間や費用が余計にかかってしまうため気をつけましょう。
登録免許税を納付するときの注意点
- 印紙は収入印紙を用意する
- 消印は不要
- 収入印紙を貼り直すと受理されないおそれも
印紙は収入印紙を用意する
登録免許税を納付するときの注意点として、台紙に貼付するのは収入印紙しか認められないことがあります。
国が発行する印紙には、収入印紙以外にも、特許印紙や登録印紙、自動車重量税印紙、雇用保険印紙、自動車検査登録印紙、健康保険印紙など、さまざまな種類があります。誤って他の印紙を貼付することのないように注意しましょう。
また、収入印紙と似た名前のものに、収入証紙があります。収入証紙は、国ではなく、都道府県が手数料や使用料の納付のために発行するものです。混同しないように気を付けましょう。
消印は不要
登録免許税を納付するときの注意点には、印紙で納付する際、収入印紙に印を押してはいけないことも挙げられます。
領収書や契約書などの課税文書に収入印紙を貼付する場合は、文書と印紙にまたがって印を押すか署名をします。収入印紙の再利用防止のために行うもので、消印といいます。
このような課税文書のイメージを持っている方も少なくないと思いますが、登録免許税の収入印紙に消印は不要です。登録免許税を印紙で納付する場合は、法務局において収入印紙を確認した後に消印処理が施されます。申請者が印紙に消印をしたり汚したりした場合には、その印紙は使用できなくなってしまうため十分注意しましょう。
押印が必要なのは、設立登記申請書です。また、申請書(収入印紙貼付台紙を含む)が2枚以上にわたるときは、各ページをまたいだ契印が必要です。契印とは複数枚にわたる契約書を締結する際に、左右のページの真ん中の見開き部分に押される印のことをいいます。
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※収入印紙は左上に貼るのが一般的
消印は全員が押さなくてもOK
収入印紙を貼り直すと受理されないおそれも
登録免許税を納付するときの注意点として、一度貼付した収入印紙や領収書をはがして再度貼ると、登記申請が却下されてしまう可能性があることも挙げられます。
そのため、たとえ収入印紙や領収書がうまく貼れなかったとしても、貼り直しは禁物です。もし、位置や角度がずれたとしても、貼り直しはせずそのまま提出しましょう。
会社設立を手軽に行う方法
会社を設立する際には、登録免許税の支払い以外にも、さまざまな手続きが必要になります。そういった会社設立に必要な手続きを手軽に行いたい場合におすすめなのが、自分でかんたんに書類作成ができる「弥生のかんたん会社設立」と、起業に強い専門家に会社設立手続きを依頼できる「弥生の設立お任せサービス」です。
「弥生のかんたん会社設立」は、画面の案内に沿って必要事項を入力するだけで、定款をはじめとする会社設立時に必要な書類を自動生成できる無料のクラウドサービスです。各官公庁への提出もしっかりガイドしますので、事前知識は不要。さらに、入力内容はクラウドに保存され、パソコンでもスマホでも自由に切り替えながら書類作成ができます。
上記で説明した、登録免許税の減免での支払いにも対応しています。
また、「弥生の設立お任せサービス」は、弥生の提携先である起業に強い専門家に、会社設立手続きを丸ごと代行してもらえるサービスです。専門家を探す手間を省ける他、電子定款や設立登記書類の作成、公証役場への定款認証などの各種手続きを依頼でき、確実かつスピーディな会社設立が可能です。会社設立後、専門家とご相談のうえ会計事務所との税務顧問契約を結ぶと、割引が受けられ、サービス利用料金は実質0円になります。定款の認証手数料や登録免許税など行政機関への支払いは別途必要です。
登録免許税は会社設立時に必ず納付しよう
登録免許税の額は資本金や会社形態によって異なりますが、どのような会社であっても、設立時には必ず登録免許税を納めなければなりません。
また、登記の申請にあたっては、登録免許税の納付以外にもさまざまな手続きが必要です。提出書類も多岐にわたるので、自分一人だけで全ての手続きを行おうとすると、かなり大変な作業になってしまうかもしれません。
「弥生のかんたん会社設立」などのクラウドサービスを活用したり、専門家の力を借りたりすれば事務的手続きの負担を低減でき、自分はその分事業の開始準備に時間をかけるなど、効率的に会社の設立を進められるでしょう。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。