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【起業志望者必読!】開業するときに経費にできるもの、できないもの

執筆者:村田栄樹

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「起業でもしちゃおうかな!」
そう思って、明日から即営業開始できる人……おそらく、あまりいないですよね。
多くの人は、起業しようと心に決めてから、実際の営業開始までに、ある程度の準備時間がかかるものです。かかるのは時間だけでなく、いろいろなコストもかかってきます。
売上がないのに、コストだけはかかる……。営業を開始する前でも、かかったコストは、なんとかして経費に落としたい!
その気持ち、よ~くわかります。
では、営業開始前にかかるさまざまなコストは経費にできるのか? 具体例を挙げながら、簡単に確認していきましょう。

POINT

  • 開業費の計算の仕方は大きく分けて「均等償却」と「任意償却」の2種類
  • 事務所や店舗を借りた際の礼金や敷金・保証金はどうなる?
  • パソコンや机、イス、車や機械装置など、長年使えるものは「固定資産」

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開業費って何だ?

実際の営業開始までにかかったコストのことを「開業費」といいます(ちなみに、法人の場合には、会社設立にかかったコストを「創立費」といって、「開業費」とは分けています)。
「営業開始までのコスト」と聞いて、みなさんはどんなものが頭に浮かんできますか?
ちょっと考えてみてください。どうですか?
たとえば、こんなものが考えられますよね。

  • 会社案内・パンフレットの作成費用
  • ホームページの作成費用(※「買い物カゴ」機能など、機能によっては固定資産になる場合があるので注意が必要です。下記の章「事務所や店舗の礼金・敷金も”特別に支出したもの”だけど……」も参照)
  • 名刺や印鑑の作成費用
  • 市場調査費
  • 人材募集の広告費
  • 通信環境の設定費用
  • 挨拶回りの交通費
  • 事業に関する書籍代
  • 開業セミナーなどの受講料

これ以外にも頭に浮かんできた方もいるかもしれませんが、共通していえるのは、「営業開始のために”特別に支出したもの”」ということです。

開業費は結局どうなる?

みなさんの希望は、営業を開始する前のコストである「開業費」を経費にしたい! ということでしたよね。
では、「開業費」は結局どうなるのでしょうか?

安心してください。経費になります!
ちょっとややこしいのは、経費の計算の仕方です。大きく分けて2つあります。

  • 5年(60カ月)で割って、月々経費で落とす(均等償却といいます)
  • 好きなときに、好きな金額を経費で落とす(任意償却といいます)

どちらかを選択して経費にしていきます。

①は計画的に、きちんと収支を把握したい人向けです。
「開業費」は開業したときだけのものではありません。「開業費」としてお金をかけたからこそ、事業継続ができるのです。ただし、「開業費」が何年間の事業継続に貢献したかは人によって違うので、便宜上5年(60カ月)で考えることになっています。

一方の②は、税金を考えています。税金は「利益」に対して課税されます。利益は「収益-費用」で計算されますが、「開業費」を経費で落とすということは、費用が増えるということです。費用が増えれば、そのぶん利益が圧縮されるので、税金が安くなるのです。つまり、「好きなとき=利益が出ているとき」に経費にすることで、節税ができるということです。

みなさんの考え方に合わせて、どちらかの方法を選んでくださいね。

事務所や店舗の礼金・敷金も”特別に支出したもの”だけど……

ところで、「開業費」は、営業開始のために”特別に支出したもの”でした。
ということは……事務所や店舗を借りた際の礼金や敷金・保証金といったものも「開業費」になるのでは? そんな疑問も浮かんでくると思います。確かにそうですね。
営業開始のために、”特別に支出したもの”に間違いないのですが、実はコレ、開業費にはできません。
礼金であれば、「開業費」ではなく、「長期前払費用」として、その契約期間で均等償却をしてきます(ただし、20万円未満であれば、一度に経費に落とすことができます)。
敷金・保証金であれば、移転したときに返ってくるものになるので、経費にはならずに、資産として会計処理をすることになります。

営業開始のためにパソコンも買ったけど……

今の時代、どんな業種・業態であったとしても、パソコンは必須ですね。
営業開始前にパソコンを買う、そんなことも多いと思います。では、このパソコンは、「開業費」になるのでしょうか? 実はコレ、パソコンの値段によって違います。
10万円以上するパソコンを買った場合には、「開業費」とはならず、「固定資産」として会計処理をすることになります。

パソコンに限らず、机やイス、車や機械装置など、長年使えるものは「固定資産」となります。「固定資産」に該当するものは、法律で定められた耐用年数によって、毎年少しずつ経費にしてかなければなりません(これを「減価償却」といいます)。

これには、意図的な利益調整を防ぐという意味合いがあります。
たとえば、営業開始前に、300万円の普通自動車を新車で買ったとします。これが「開業費」として認められているとしたら、上記②の任意償却を採用することで、一度に丸々300万円を経費にすることもできてしまうのです。税金の大前提である「課税の公平」という点から考えると、これは好ましくないので、普通自動車(新車)であれば、6年で少しずつ経費にすることが法律で決まっています。この年数はモノによって変わります。たとえば、新品のパソコンであれば4年です。「減価償却 法定耐用年数」などのキーワードで、ネット検索してみてください(ちなみに、青色申告をしていると、30万円未満のものであれば、一度に経費にできる特典があります)。

法人と個人事業で違う?

実は「開業費」の考え方は、法人と個人事業でちょっと違います。
復習ですが、「開業費」は、営業開始のために”特別に支出したもの”でした。この考え方は、法人と個人事業で変わらないのですが、個人事業の場合には、”特別に支出したもの”だけでなく、”通常かかるもの”も「開業費」に含めることができるのです。
“通常かかるもの”としては、次のようなものが考えらえます。

  • 事務所や店舗などの家賃
  • 水道光熱費
  • 電話・インターネットなどの通信費
  • 事務用消耗品費

などがあります。

なお、法人の場合は、営業開始までの、これら”通常かかるもの”については、設立初年度の経費となります。

準備期間ってどれぐらい?

営業開始までの準備期間……これは人それぞれだと思います。何年もかかる人もいれば、数カ月で済む人もいます。
準備期間に正解も不正解もありませんが、「開業費」にできる期間となると、あまりに長いものは税務調査(税務署の立ち入り調査)で否認される可能性があります。長くても1年ぐらいで考えた方がいいでしょう。

そのほかに注意したいものが、「資格業」です。
たとえば、税理士は、税理士資格がないと開業できないように、資格が必須の業種については、その資格取得のための授業料は、「開業費」になりません。資格があって、はじめて「開業」できるので、資格取得までのコストは経費にならないのです。これに対して、たとえば、フラワーアレンジメント教室を開業したい場合など、必ずしも資格取得が必要でない業種であれば、事業に必要な知識の習得として、授業料を「開業費」にできる可能性があります。

まとめ

最後になりますが、以下のことを頭に入れておくと、開業にまつわる経費に関しておおまかに把握できると思います。

  • 営業開始前であっても「開業費」として経費にできるものがある
  • ただし、原則として、固定資産は「開業費」にならない
  • 領収書や請求書、振込明細などは、捨てずにきちんと取っておくことが大切!

Photo:Getty Images

この記事の執筆者村田栄樹

昭和47年(1972年)6月14日生まれ。栃木県佐野市出身。
経営コンサルティングもできる、企業参謀型の税理士として、お客さまのビジネスに積極的にかかわる。創業したばかりの会社に対し、丁寧にわかりやすくアドバイスすることで、会計・税務についての不安をなくし、本業に集中できる環境作りを得意とする。

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