屋号なしでも開業できる?社名を付けたほうがいい個人事業主の業種

2024/01/16更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

個人事業主は、事業を行ううえで、法人の会社名にあたる「屋号」を付けることができます。屋号を付けるかどうかは任意のため、開業にあたって屋号を付けた方がいいか、屋号がないと何か不具合があるのかと疑問に思う方もいるかもしれません。

業種によっては屋号があると、事業運営を安定させるために役立つこともあるので、屋号をつけるといい業種や屋号を付けるポイントも知っておきましょう。

ここでは、個人事業主の中でも屋号があるといい業種や付けられない屋号、屋号ありの開業届や確定申告の記載方法を解説します。

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屋号なしでも開業できるが業種によっては付けたほうがいい

屋号は、個人事業主が事業を行ううえで使用する、商業上の名前のことですが、屋号なしで開業しても問題はありません。しかし、屋号なしの場合、事業内容が伝わりづらいことで集客に影響する可能性があります。

例えば、「〇〇美容室」「〇〇青果店」のような屋号を掲げていれば、どのような商品やサービスを提供しているのかがひと目でわかります。また、一般のお客様が商品代金やサービス代金を振り込みで行う場合、個人名よりも事業内容がわかる屋号付きの銀行口座の方がわかりやすいでしょう。

一方、特に屋号を必要としない業種もあります。例えば、税理士、コンサルタント、ライターなど、肩書によって事業内容がわかる場合だけでなく、特定の会社や個人事業主から仕事を請け負っている場合は、屋号なしでも集客への支障はないかもしれません。

また、屋号があると、屋号の名義、または屋号と個人名義で銀行口座を開設でき、取引先によっては、屋号での銀行口座でのやりとりの方がプライベートのお金と分けていることがわかり、信用を得やすい傾向があります。

屋号はお金の管理やブランディングに役立つ

屋号は、次のような場合に役立ちます。自分の事業にとってメリットがある場合は、屋号を付けることを検討してみてください。

屋号があると役立つこと

  • 公私のお金の管理がつきやすくなる
  • ブランディングしやすくなる
  • 法人化した際の商号にも使える

公私のお金の管理がつきやすくなる

屋号があると、屋号付きの銀行口座を開設でき、事業用の口座とプライベート用の口座を分けることで、公私を区別してお金を管理できることに役立ちます。屋号付きの銀行口座は、対外的な信用を得られるだけでなく、公私のお金を分けて管理することで、確定申告において、取引内容と金額を記載する仕訳作業の手間を少なくすることにもつながるでしょう。

ブランディングしやすくなる

屋号は、ブランディングにも役立ちます。例えば、看板やチラシ、ポスター、名刺などに使用する際に、屋号に合うロゴやアイコンなどを作ることで、デザインの幅が広がり、ブランディングしやすくなるでしょう。

また、クラウドソーシングサイトの中には、屋号を表示させられるサービスがあり、集客する際に個人名の中に屋号を表示できれば目立たせられるかもしれません。常に集客が必要な事業の場合、印象に残るようなブランディングのために屋号を活用してみるのも1つの方法です。

法人化した際の商号にも使える

屋号は、法人化した際の会社名(商号)にも使用可能です。個人事業主の屋号が取引先やお客様に認知されていれば、法人化する際に会社名にすることで、ブランディングを引き継ぐ際にも役立ちます。取引先に送る請求書や納品書、契約書、請求書などに屋号を記載することもできるため、はんこも活用できるでしょう。

屋号は開業後でも付けられる

法人の会社名(商号)は必ず付けなければいけませんが、個人事業主の屋号は、付けるかどうかだけでなく、付けるタイミングも決まりはありません。開業と同時に付けても、開業後に付けてもいいだけでなく、一度付けた屋号を後から変更することも可能です。

複数の事業を営んでいる個人事業主の場合、事業ごとに複数の屋号を付けることもできます。開業してから事業が増えた場合は、事業内容が伝わりやすいよう、事業ごとに屋号を付けるといいでしょう。

屋号を付けたら開業届や確定申告に記入する

開業と同時に屋号を付ける場合は、「個人事業の開業・廃業等届出書」(以下、開業届)の「屋号」欄に屋号を記載してから、税務署に提出します。開業届を提出するタイミングで屋号が決まっていない場合や屋号を付けない場合は、開業届の屋号欄は空欄のままでも問題ありません。

また、屋号を後から付ける場合は、屋号を付けた年の確定申告の際に、確定申告書類の「屋号」の欄に記載します。事業開始後に屋号を付けたからといって、改めて税務署に屋号を届け出る必要はありませんが、屋号付きの銀行口座を開設する際、銀行によっては、屋号の届出確認のために開業届の提出を求められることがあります。開業届に屋号を記載していない場合は、屋号を記載したうえで再提出が必要です。

なお、屋号を変更した場合は、確定申告書の際に新しい屋号を「変更後の屋号」に記入します。また、名刺やチラシ、Webサイトなど集客に使うツールの変更、取引先への連絡は屋号を付けたり、変えたりした場合は迅速に変更や連絡をしておくとよいでしょう。

屋号に商標や紛らわしい名前は付けられない

会社名には使用できる文字や符号などが決められていますが、屋号の付け方には基本的にルールはありません。漢字、ひらがな、カタカナの他、アルファベットや数字、記号なども使えます。ただし、「〇〇会社」「〇〇法人」など、法人だと誤解されるような屋号の他、「銀行」「生命保険」など、法律で定められた名称も使用できませんので気を付けてください。

また、付けた屋号が既に商標登録されていた場合、商標権の侵害にあたり、トラブルに発展する可能性があります。登録されている商標は、登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと新規タブで開く」や法務局の専用端末の他、独立行政法人工業所有権情報・研修館のWebサイト「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)新規タブで開く」で検索できます。

なお、法人化した際に屋号を会社名(商号)に使用したい方は、会社名(商号)に使用できる文字や符号といったルールを確認のうえ、屋号を決めるようにしましょう。

  • 会社名(商号)の決め方については以下の記事を併せてご覧ください

屋号を覚えてもらえるように工夫する

屋号を付けるときには、紛らわしい屋号は避け、第三者に事業内容を伝えやすく、覚えてもらえるよう、オリジナリティを出すことも意識してみてください。

例えば、覚えやすいような適度な長さにする、自分の名前と事業内容を組み合わせた造語を作ってオリジナリティを出す他、響きが強いように濁音を入れたり、やわらかな印象を入れるにはひらがな表記にしたりするなど、さまざまな角度から考えてみるといいでしょう。

屋号は自由に変更することができ、届出も特にありませんが、変更のたびに取引先や顧客に周知したり、銀行口座名義や名刺などを変更したりする手間が生じます。屋号を付けるなら、長く使えるよう、はやり廃りのないものを意識してみてください。

開業の手続きを手軽に行うには?

個人事業主が事業を始めるときには、開業から1か月以内に、開業届を納税地の税務署に提出する必要があります。また、確定申告で最大65万円の青色申告特別控除を受けられる青色申告を行うには、開業届を提出したうえで、事業開始から2か月以内に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。

個人事業主として開業する場合は、「弥生のかんたん開業届」を使えば、画面の案内に従って操作するだけで開業届などの必要書類の作成ができます。

また、クラウド確定申告ソフト「やよいの青色申告 オンライン」を使えば、簿記や会計の知識がなくても、最大65万円の青色申告特別控除の要件を満たした青色申告の必要書類がかんたんに作成できます。
起業・開業後はお店の運営の他に、会計業務などお金の管理を自分で行うことが必要になるため、起業・開業のタイミングで会計ソフトや確定申告ソフトなどを導入しておくといいでしょう。

事業に合わせて適切な屋号を付けよう

屋号を付けるか付けないかは、個人事業主の任意となっています。屋号なしで開業しても、問題はありませんが、屋号は事業をわかりやすく伝えられるだけでなく、取引先やお客様からの信用を得る際にも役立ちます。

また、屋号付きの銀行口座を開設して、事業とプライベートのお金を区別して管理することで、確定申告の際の仕訳作業の手間を省けるでしょう。法人の会社名とは異なり、屋号、開業届や確定申告書に記載するだけで登録が可能です。不特定多数に広く認知していくには、事業内容に合った屋号を考えてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

URL:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_mori/新規タブで開く

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