廃業かM&Aか?それぞれ注意点や悩んだときの対処法を解説

2024/01/04更新

近年では、経営者の高齢化が進んでいます。帝国データバンクの「全国企業『休廃業・解散』動向調査 新規タブで開く」(2021年)によると、休廃業・解散を行った代表者の年齢は2021年平均で70.3歳となり、初めて70歳を超えました。また、財務内容やキャッシュに余裕はあるものの自主的に休廃業や解散を行う「あきらめ休廃業」の割合は過去最高を記録しています。
さらに、2019年に日本政策金融公庫が行った調査では、60代の中小企業経営者の約57%が将来的に廃業予定と回答しており、廃業予定企業のうち約3割が後継者難を理由に挙げています。親族や従業員に後継者候補がいない場合、選択肢としては廃業かM&Aのどちらかです。
ここでは、廃業とM&Aそれぞれを比較した注意点やどちらを選ぶかで悩んだときの対処法について解説します。

事業の後継者がいない場合の選択肢

親族や従業員に後継者候補がいない場合、経営者にとっての選択肢は廃業かM&Aかのどちらかです。ここでは、それぞれどのような選択肢なのかを見ていきます。

休廃業・解散、倒産件数の推移 2013年度 休廃業・解散件数:34,800件 倒産件数:10,855件 2014年度 休廃業・解散件数:33,475件 倒産件数:9,731件 2015年度 休廃業・解散件数:37,548件 倒産件数:8,812件 2016年度 休廃業・解散件数:41,162件 倒産件数:8,446件 2017年度 休廃業・解散件数:40,909件 倒産件数:8,405件 2018年度 休廃業・解散件数:46,724件 倒産件数:8,235件 2019年度 休廃業・解散件数:43,348件 倒産件数:8,383件 2020年度 休廃業・解散件数:49,698件 倒産件数:7,773件

自分の意思で事業を終了させる「廃業」

廃業とは、経営者が自分の意思で事業を終了させることです。統計の取り方によって件数は異なりますが、東京商工リサーチの「2021年『休廃業・解散企業』動向調査」(2022年1月)によると、2021年に全国で休廃業・解散した会社は4万4,377件、前年比10.7%減でした。2020年よりも減少していますが、2000年の調査開始以来、過去3番目の高水準となっています。
廃業の理由はさまざまで、「経営者の高齢化や健康問題」「事業の先行きに対する不安」「主要な販売先との取引終了」「経営者の家族の問題」「さらなる経営悪化の回避」「後継者の見通しが立たない」といったことが挙げられます。

なお、廃業とは異なりますが、事業を終了させるという意味では、倒産もあります。倒産とは、会社が債務の支払い不能に陥ったり、事業の継続が困難になったりした状態です。東京商工リサーチの同調査では、2021年に全国で倒産した会社は6,030件で、57年振りに低水準となりました。これは、コロナ禍で政府や自治体、金融機関が行った資金繰り支援によって短期的には効果がでているといえます。

会社の合併・買収を意味する「M&A」

M&A(Mergers and Acquisitions)は、会社の合併・買収を意味する言葉です。会社や事業の全部または一部を移転させる取引で、会社あるいは経営権の取得を指します。

M&Aによる事業承継とは、事業を譲り受けたい第三者に会社を売却することです。中小企業のM&Aの件数は右肩上がりで増加傾向となっており、2021年4月に中小企業庁が取りまとめた「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ~中小M&A推進計画~」によると、中小企業のM&Aは2013年度では215件でしたが、2020年度では2,139件まで増えています。

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内訳を見ると、譲渡価格2,000万円以下のケースが半数以上です。また、買手側も大企業であるケースは少なく、中小企業同士の小規模なM&Aが多くなっています。

メリット デメリット
廃業
  • 買手探しや、交渉の手間、トラブルが回避できる
  • 引き継ぎの手間が省ける
  • 従業員を解雇しなければならない
  • 取引先に新たな仕入れ先を探す手間などの迷惑がかかる
  • 技術・ノウハウが消滅する

廃業は自分のタイミングで決断できる

親族や従業員に後継者候補がおらず、廃業を選択する場合は自分のタイミングで決断することができます。廃業するには株主の承認を得たり、さまざまな手続きを行ったりすることは必要ですが、廃業するかどうかは経営者自身が決められます。M&Aは買い取ってくれる相手先を見つけなくてはいけないため、好きなタイミングでできるとは限りません。
ただし、廃業することは決断できますが、廃業するにも手続きの時間や費用はかかります。例えば、解雇となる従業員の支援や解散登記、解散公告、決算書類の作成、債務整理などが必要です。費用は会社の規模によって変わる他、弁護士や司法書士などに依頼すると別途報酬も必要になります。

廃業の注意点

では、廃業の注意点にはどのようなことがあるのでしょうか。廃業の注意点を紹介します。

独自のノウハウやビジネスモデルが失われる

廃業の注意点としては、これまで培ってきた独自のノウハウやビジネスモデルが失われることが挙げられます。例えば、経営者の高齢化や後継者不足を理由に、駄菓子の製造元が廃業する事例もありました。廃業によって独自のノウハウやビジネスモデルが失われることは、それまで自社の商品やサービスを利用していた顧客にも影響を及ぼします。

取引先のサプライチェーンにも影響がでる

廃業の注意点として、自社の製品やサービスがなくなってしまい、取引先のサプライチェーンにも影響がでてしまうことが挙げられます。顧客や得意先は新しい取引先を見つける必要があり、代わりが見つからなければ、取引先が連鎖的に廃業する可能性もあります。

従業員が職を失う

廃業すると、これまで一緒に働いてきた従業員が職を失います。従業員の生活の基盤がなくなってしまうことで、その家族の生活にも大きな影響を及ぼしかねません。

従業員の退職金や事務所のリース解約料など廃業するにもお金がかかる

廃業の注意点としては、廃業する際にもお金がかかることが挙げられます。M&Aの場合は、事業を売却した対価として売手は譲渡金を受け取ることができます。一方、廃業する場合は、従業員への退職金や解雇予告手当事務所のリース解約料、在庫処分費用、税務処理の依頼費用などを支払う必要がありますが、入ってくるお金はありません。会社の総資産から負債と各種費用を支払っても資金が残った場合は株主で分配し、足りない場合は、廃業後に何らかの方法で負債を返済することになります。

M&Aは雇用が維持でき、個人保証からも開放される場合もある

M&Aを選んだ場合、従業員が職を失うことはなく、取引先にも迷惑をかけることはありません。会社独自のノウハウや技術も引き継がれ、製品やサービスと共に残すことができます。

また、M&Aでは個人保証から解放される場合もあります。中小企業の経営者は、会社の借り入れに対して保証人になっていたり、担保を差し入れていたりすることが珍しくありません。株式譲渡であれば、一般的に個人保証から解放されますが、自動的に保証人や担保提供が切り替わるのではなく、解除する手続きが必要です。
ただし、買手が買収資金を調達するために、会社の資産などを担保にして行う買収方法(LBO)の場合は買収した会社に借金が残る場合もあります。また、M&Aでは会社の価値に応じた譲渡金を受け取れますが、評価がつかない場合もあります。

M&Aの注意点

M&Aには注意点がいくつかあります。具体的にどのような注意点があるのか見ていきましょう。

時間がかかる

M&Aの注意点には時間がかかってしまうことが挙げられます。M&Aを行う場合、希望する条件や優先順位を考え、自社の強みと弱みを把握し、会社概要、決算書、財務諸表などの用意や相手先の選定など、多くの工程があり、完了するまでに1年以上の時間がかかることも珍しくありません。どんなに早くても半年はみておく必要はあります。

希望どおりの売却条件にならない可能性がある

M&Aの注意点として、希望どおりの売却条件にならない可能性がある点も挙げられます。M&Aは、売手と買手の双方が合意できる条件にならないと成立しません。折り合いがつかず交渉が長引いたり、譲渡価格やM&A後の従業員の待遇が希望どおりにはならなかったりすることもあります。
対策としては、何のためにM&Aを行うのかをはっきりさせ、条件に優先順位をつけておくことです。従業員の雇用を守ることが第一なら、多少売却価格を譲ってでも、従業員の待遇条件が良い会社に売却する方がいいこともあります。培ってきた技術やノウハウを残すことを優先させたいのであれば、技術やノウハウを高く買ってくれる会社を探すことになります。

廃業かM&Aで悩んだら専門家に相談しよう

廃業かM&Aのどちらを選択するかで悩んだ場合は、M&Aに詳しい専門家に相談することが大切です。例えば、税理士や公認会計士であれば、自社の状況を財務や税務、会計の観点からもアドバイスがもらえたりします。

廃業は、従業員や顧客、取引先に大きな影響を与えることは避けられません。また、会社が培ってきた技術やノウハウが失われてしまいます。経営者自身にとっても、廃業することで従業員の退職金や解雇予告手当などを支払ったり、財産の換価、分配、処分を行ったりすると、経営者の手元に多くの金銭は残らなくなるかもしれません。

しかし、廃業ではなくM&Aでの事業承継を行うなら、従業員や顧客、得意先にかかる迷惑を抑えられ、貴重な技術やノウハウ、製品、サービスが残ります。その会社でないと成り立たないこともたくさんあり、代わりがなければ取引先が連鎖倒産してしまうこともあるかもしれません。
M&Aで事業が継続できれば影響は最小限にとどめられ、経営者自身も譲渡金を得ることができます。契約によっては、個人保証から解放される可能性もあります。
廃業かM&Aかどちらを選ぶにしても、専門家の力を借りることが多いので、まずは相談してみることが大切です。

自分に合ったM&Aの相手先を探す方法

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廃業を決める前にM&Aも検討してみよう

1つの会社が廃業すると、従業員や顧客、取引先に深刻な影響があるばかりでなく、その会社の技術やノウハウ、製品、サービスが社会から失われてしまいます。しかし、M&Aによる事業承継を行えば、会社が存続することで従業員や顧客、取引先にかける迷惑を抑えられ、自社の技術やノウハウなどを残すことも可能です。経営者(株主)にとっても譲渡金を得らるなどのメリットもあります。
廃業を決める前に、「弥生のあんしんM&A 新規タブで開く」のようなM&A支援サービスを上手に活用して、M&Aを検討してみることもおすすめです。自分に合った専門家と相談してM&Aを検討してみましょう。

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