開業届を出すデメリット・出さないデメリットは?個人事業主や副業の注意点も解説
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個人事業主として事業を始める際に提出する書類の1つに、「個人事業の開業・廃業等届出書」(以下、開業届)があります。「開業届は必ず提出しなければいけないのか?」「開業届を出すことで何かデメリットがあるのでは?」などと気になっている方はいるかもしれません。
開業届を提出すれば控除を受けられるといったメリットがある一方で、条件によっては失業手当を受給できないというデメリットもあります。そのため、開業届を提出する前に自分は提出が必要なのか、どうやって提出するのかなどを確認しておくことが大切です。
本記事では、開業届の提出が必要なケースと提出期限、開業届を提出するメリット・デメリットについて解説します。
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開業届の提出は事業的規模や継続性で判断する
開業届とは、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、個人で事業を始めるときの他、不動産所得や山林所得が発生する事業を開始したときに、納税地を所轄する税務署に提出する届出書のことです。
開業届の提出が必要かどうかは、一般的に事業的規模や継続性などから判断します。例えば、FX取引の運用益は雑所得、株式投資の運用益は譲渡所得となり、営利目的や反復継続性があったとしも事業でなければ、開業届の提出は不要です。また、一時的に不用品やハンドメイド作品をフリマアプリなどで販売することも事業には該当しません。もし判断に迷ったら所轄の税務署に確認してみましょう。
開業届については、以下の記事でも詳しく解説しています。
開業届の提出期限
開業届の提出期限は、事業を開始した日の属する年分の所得税確定申告期限(期限が土日祝日の場合は、その翌日)です。なお、2025年(令和7年)12月31日までの開業については、開業等の事実のあった日から1か月以内が期限です。開業届は、提出をしなくても罰則はありませんが、提出するように定められていますので、もし「出していなかった」「うっかり出し忘れていた」という場合は、速やかに提出しましょう。
開業届を出したら確定申告が必要?
確定申告の有無は開業届の提出とは関係なく、年間の所得が104万円(2025年分は95万円、2024年分までは48万円)を超えた場合に確定申告を行います。(基礎控除以外に所得控除がない場合。以下同様。)また、会社員などの給与所得者で2か所以上から収入がある場合は、副業による所得が1月1日から12月31日までの1年間に20万円を超えたら確定申告が必要です。
このとき注意しなければならないのが、所得と収入の違いです。所得は収入から必要経費を差し引いた金額のことを指します。例えば、個人事業主なら「売上の合計」から「必要経費」を差し引いた金額になりますのでご注意ください。
確定申告が必要な所得の計算方法
所得=収入(売上高)-必要経費
- ※年間の所得が104万円(2025年分は95万円、2024年分までは48万円)を超えれば確定申告が必要
なお、会社員の副業が会社に見つかるのは、開業届の提出の有無ではなく、副業によって所得が増えることで住民税額が上がるからです。会社員の住民税は特別徴収といって会社が給与から天引きして納めているため、住民税額が上がっていれば副業をしていることが経理担当者に見つかる可能性があります。
ただし、住民税が上がる理由は副業以外にも自宅の売却などさまざまですので、その事実だけで副業の事実が会社に分かるということは実際には少ないでしょう。ただしいずれにしても会社は労務管理や情報漏洩などの観点から副業を禁止している場合がありますので、副業を行う際は就業規則を確認しておきましょう。
個人事業主が小規模企業共済に加入する際は確定申告書の控えを提示しますが、事業を始めたばかりで、まだ確定申告をしていない場合は、開業届の控えの提出が必要です。
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開業届を提出するデメリット
条件によっては、開業届を提出するとデメリットになることもあります。主なデメリットは以下の2つです。
開業届を提出するデメリット
- 健康保険の被扶養者から外れることがある
- 失業手当が受給できなくなることがある
健康保険の被扶養者から外れることがある
家族や配偶者が加入する健康保険の被扶養者になっている場合、開業届を出すと被扶養者から外れてしまう可能性があります。実際には開業すれば扶養から外れる可能性があるというのが正確ですが、その事実を証明することとして開業届の提出が挙げられます。
健康保険での被扶養者の認定基準は、けんぽ協会や健康保険組合によって異なり、「個人事業主は収入にかかわらず扶養には入れない」としている健康組合もあれば、「収入または所得が一定金額を超えると扶養から外れる」としている場合もあります。
健康保険の被扶養者から外れると、自分で健康保険料の脱退手続きや新たに加入の手続きなどを行う必要があります。被扶養者となっている場合は、家族や配偶者の勤務先が加入している健康保険組合などの規定を確認しておきましょう。
失業手当が受給できなくなることがある
会社を退職して、雇用保険の失業手当を受け取っている場合は、開業届を提出すると受給できなくなることがデメリットとして挙げられます。実際には開業すれば受給できなくなるというのが正確ですが、その事実を証明することとして開業届の提出が挙げられます。
失業手当を受けるには、「就職しようとする意思といつでも就職できる能力がある」という条件があります。開業届を提出して個人事業主になると、事業を開始したため再就職の意思がないとみなされ、失業給付を受けられない可能性があります。
ただし、給付日数が残っていれば再就職手当の形で受給できる場合もあるので、開業したら忘れずに再就職手当の受給可能性を確認しましょう。
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開業届を提出するメリット
開業届を提出することで次のようなメリットがあります。主に開業届を提出するメリットは以下のとおりです。
開業届を提出するメリット
- 青色申告で最大65万円(2027年分から最大75万円)の控除が受けられる
- 屋号の名義で銀行口座を開設できる
- 個人事業主としての証明になる
- 小規模企業共済に加入できる
青色申告で最大65万円(2027年分から最大75万円)の控除が受けられる
開業届の提出によって得られるメリットの1つに、確定申告で青色申告を選べることがあげられます。
青色申告で確定申告を行えば、複式簿記による記帳やe-Tax等による申請などの要件を満たす必要はありますが、最大65万円(2027年分から最大75万円)の特別控除が受けられます。また、家族に支払う給与を経費にできたり、赤字を3年間繰り越せたりするだけでなく、40万円(2026年3月31日までの取得資産は30万円)未満の備品などを一括で経費計上できる(減価償却の特例)などのメリットもあります。
青色申告を行うには、税務署に事業開始から2か月以内に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。開業1年目から青色申告を希望する場合は、開業届と共に所得税の青色申告承認申請書を提出しましょう。
なお、収入が少なかったり単発的だったりすると、開業届や青色申告承認申請書を出していたとしても事業所得ではなく雑所得とみなされ、青色申告ができない場合がありますのでご注意ください。
青色申告承認申請書については以下の記事を併せてご覧ください。
屋号の名義で銀行口座を開設できる
開業届に屋号を記載して提出すると、事業を行う際に屋号を使えます。事業実態の確認資料として請求書や契約書などを提出し審査に通れば、屋号で銀行口座の開設が可能です。屋号で銀行口座を開設できれば、プライベート用のお金と区別しやすく、確定申告や経費処理、資金繰りの管理なども行いやすくなるでしょう。また、屋号が付いていることで事業用の口座であることが明確になり、顧客や取引先からの信頼度が高まる可能性もあります。
個人事業主としての証明になる
開業届は、個人事業主として事業を営んでいることを証明する書類になります。例えば、店舗やオフィスを借りるときや、金融機関へ融資を申し込むときなどの提出書類として開業届の控えを求められることがあります。また、個人事業主が子供を保育園に入園させる際などの就労の証明としても、開業届の控えが必要です。
小規模企業共済に加入できる
開業届を提出するメリットの1つに、小規模企業共済に加入できることもあげられます。小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の経営者などが加入する、積み立てによる退職金制度です。個人事業主には、会社員のような退職金はありませんが、小規模企業共済に加入しておくと、退職後の生活に備えることができます。また、小規模企業共済の掛金が全額所得控除できるので、税の負担を抑えることにもつながるでしょう。
個人事業主が小規模企業共済に加入する際は確定申告書の控えを提示しますが、事業を始めたばかりで、まだ確定申告をしていない場合は、開業届の控えの提出が必要です。ただし、e-Taxではなく紙で提出した場合、税務署の収受印が廃止された関係で開業届以外の書類が必要となる点に注意が必要です。
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開業届の提出方法
開業届の申請書は、税務署の窓口での受け取り、または国税庁のWebサイト「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」でダウンロードできます。必要事項を記載し、事業開始日の属する年分の所得税確定申告期限まで(2025年12月31日までの開業については、開業等の事実のあった日から1か月以内)に所轄の税務署に提出しましょう。
また、開業届は、税務署の窓口での提出や郵送の他、国税電子申告・納税システム「e-Tax」で提出することもできます。
なお、所得税の青色申告承認申請書の提出期限を過ぎると、その年の確定申告を青色申告にすることができなくなるため、開業届と共に所得税の青色申告承認申請書も提出しておくのがおすすめです。
個人事業主として開業するための手続きや開業届の書き方については、以下の記事を併せてご覧ください
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開業届と確定申告の手続きを手軽にする方法
個人事業主として開業する場合は、「弥生のかんたん開業届」を使えば、画面の案内に従って操作するだけで開業届などの必要書類の作成ができます。
また、クラウド確定申告ソフト「やよいの青色申告 オンライン」を使えば、簿記や会計の知識がなくても、最大65万円の青色申告特別控除の要件を満たした青色申告の必要書類がかんたんに作成できます。
起業・開業後はお店の運営の他に、会計業務などお金の管理を自分で行うことが必要になるため、起業・開業のタイミングで会計ソフトや確定申告ソフトなどを導入しておくとよいでしょう。
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個人事業主として事業を始める際は開業届を提出しよう
個人事業主として事業を始める際や会社員が継続して副業をする際には、税務署に開業届を提出する必要があります。人によっては開業届を提出することでデメリットもありますが、青色申告を選択することで最大65万円の特別控除が受けられたり、屋号での銀行口座が作れたりするなどのメリットがあります。
開業届を作成する際は、「弥生のかんたん開業届」などのクラウドサービスを活用すると、必要書類の作成がスムーズに行えます。事業開始日の属する年分の所得税確定申告期限まで(2025年12月31日までの開業については、開業等の事実のあった日から1か月以内)に提出が必要ですので、提出を忘れないようにしましょう。
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よくあるご質問
開業届はいつまでに提出するべきですか?
事業を開始した日の属する年分の所得税確定申告期限までに提出する必要があります。なお、2025年(令和7年)12月31日までの開業については、開業等の事実のあった日から1か月以内が期限です。開業届を提出しなくても罰則はありませんが、提出する決まりとなっているため、もし出し忘れていた場合は速やかに手続きを行いましょう。
開業届を提出するメリットは何ですか?
最大のメリットは確定申告で青色申告を選び最大65万円(2027年分から最大75万円)の特別控除を受けられることです。さらに屋号で銀行口座を開設できるため事業とプライベートのお金を区別しやすくなります。店舗を借りる際などに個人事業主としての証明になることや、税負担を抑えつつ退職金代わりとなる小規模企業共済に加入できる利点もあります。
開業届を出すデメリットはありますか?
家族の健康保険の被扶養者から外れる可能性があることや、雇用保険の失業手当が受給できなくなることなどです。健康保険組合によっては個人事業主になると収入にかかわらず扶養から外れる規定があります。また失業手当を受給中の場合は再就職の意思がないとみなされて給付を受けられなくなるため提出のタイミングには注意が必要です。詳細はこちらをご確認ください。
会社員が開業届を出すと、会社に副業をしていることがバレますか?
開業届を出しただけで、勤務先に副業をしていることがばれることは基本的にありません。ただし、副業の所得が増えて住民税が上がり、その通知が会社にいくことで発覚する可能性があるため、住民税を「普通徴収(自分で納付)」にするなどの対策が必要です。詳しくは「副業が会社にバレない方法は?住民税の申告方法と確定申告を解説」も併せて参考にしてください。
専業主婦が開業届を出す際に注意することはありますか?
扶養から外れる可能性がある点に注意しましょう。所得税上の扶養(同一生計配偶者)は合計所得金額62万円(2025年分は58万円、2024年分までは48万円)以下かどうかで判定されるため、開業届の提出自体で外れることはありません。しかし、健康保険上の扶養については、組合によっては「個人事業主になった時点で収入に関わらず扶養から外れる」という規定を設けている場合があります。事前にご家族の加入する健康保険組合へ確認することをおすすめします。
実家や自宅の住所で開業届を出すデメリットはありますか?
開業届に記載した住所は原則非公開ですが、事業用のホームページや特商法表記などで住所を公開する場合、実家の住所が知られてしまうプライバシー上の懸念があります。気になる場合は、バーチャルオフィスの利用を検討するのも一つの方法です。詳しくは「自宅で開業する!おすすめ業種から準備、手続き、注意点を解説」も併せて参考にしてください。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版』