社会起業家とは?事業目的やソーシャルビジネスの企業事例も簡単に解説
監修者: 森 健太郎(税理士)
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社会的課題が山積する現代において、「社会起業家」という名前が聞かれるようになりました。一般的な起業家とは共通する部分もあるものの、事業を起ち上げるための目的が異なります。
起業するに当たり、「社会的課題を事業で解決したいが、どうやって起業すればよいのだろう」「社会に貢献できる仕事がしたいが、一般的な起業とどのように違うのかわからない」と、考えている方もいるかもしれません。
本記事では、社会起業家の定義や事例、必要とされる素質と共に、起業形態についても詳しく解説します。
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社会起業家とは社会的課題をビジネスの力で解決する人
社会起業家とは、社会的課題をビジネスによって解決しようとする人のことを指します。国際的には、「social(社会)」と「entrepreneur(起業家)」を掛け合わせた、「ソーシャルアントレプレナー」と呼ばれることもあります。
社会起業家は、少子高齢化や人口の都市集中、介護・福祉、環境保護といった、さまざまな社会的課題に対して事業として取り組むのが特徴です。
社会的課題の担い手としてよく知られる非営利組織のボランティアやNPO法人などと共に、社会起業家の存在も注目されています。
社会起業家と起業家の違い
社会起業家も一般的な起業家も事業を起ち上げるという点では共通するものの、起ち上げるための目的が異なります。
一般的な起業家は、主に利益の最大化や事業の成長を目的として起業します。
それに対して、社会起業家は、社会課題の解決が最優先の目的であり、ビジネスはその手段です。もちろん、事業として継続していくためには利益も必要ですが、利益は社会的課題解決のための手段であり、最終目的ではありません。
また、ビジネスにおける成功の指標についても違いがあります。
一般的な起業家は売上や利益、市場シェアなどの財務指標で成功を測ることが多いのに対し、社会起業家は社会に与えたインパクトや解決した課題の規模などで成功を評価することが多いでしょう。
社会起業家とボランティアの違い
社会起業家とボランティアは、どちらも社会的課題の解決に取り組むという点は同じですが、ビジネスであるか、無償で行う支援活動であるかの違いがあります。
ボランティアは基本的に無償で社会貢献活動を行うため、主に個人の善意や時間の提供に頼っています。それに対して、社会起業家は事業として収益を上げながら社会的課題の解決に取り組むため、持続可能性が高く、より大きなインパクトを生み出すことができます。
また、ボランティアは既存の枠組みや組織の中でのみ活動することが多いのに対し、社会起業家は起業家として新しいビジネスモデルや革新的なアプローチを創出し、社会的課題の根本的な解決を目指す点も異なります。
社会起業家が起ち上げるソーシャルビジネスの定義
社会起業家が起こす事業は、ソーシャルビジネスとも言われます。ソーシャルビジネスとは、ビジネスで社会的課題の解決を目指す事業活動のことです。
経済産業省では、ソーシャルビジネスを以下の3つの要件を満たす事業活動として定義しています。
ソーシャルビジネスを定義する3つのポイント
| ポイント | 概要 |
|---|---|
| 社会性 | 地域や市民などが抱える社会的課題を明確にして、解決を図る事業活動であること |
| 事業性 | 事業の発展・継続が可能で、経済的な利益を生み出せること |
| 革新性 | 社会的課題の解決に向けて、これまでにない新しい社会的価値を創造すること |
これらの要件を満たすことで、単なる慈善事業ではなくなり、持続可能で革新的な社会課題解決の仕組みを構築できるでしょう。
なお、国や自治体、日本金融政策公庫などが運営するソーシャルビジネスを対象とした補助金・助成金がありますが、それらの補助金・助成金に申請する際は、上記のポイントを満たした事業でなければならないとされています。
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社会起業家やソーシャルビジネスが注目される背景
近年、社会起業家やソーシャルビジネスが注目を集めている背景として、貧困や環境問題、少子高齢化などの社会的課題の深刻化があげられます。これらの社会的課題は複雑で多面的であり、従来の行政による対応だけでは限界があることも明らかになっています。
特に、ソーシャルビジネスにとって重要な転機となったのは、2015年に国内外で発生する社会的課題の解決に向け、「SDGs(持続可能な開発目標)」が国連サミットで採択されたことです。
SDGsとは、環境問題や貧困問題、人権、経済など幅広い課題を解決するための17の目標からなるもので、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標として設定されました。このSDGsの採択により、国内外で社会的課題に対する関心がより高まり、企業や個人レベルでの取り組みが活発化しています。
また、テクノロジーの発達により、従来では解決困難だった社会的課題に対して新しいアプローチが可能になったことも、ソーシャルビジネスの発展を後押しする効果があったと言えるでしょう。新しく登場したAIやIoT、ブロックチェーンなどの技術を活用することで、より効率的で効果的な社会的課題の解決手法が生まれています。
さらに、若い世代を中心に、単なる利益追求ではなく、社会的意義のある仕事への関心が高まっていることも背景の1つです。特に、ミレニアル世代やZ世代は、企業の社会的責任・環境への配慮を重視する傾向が強く、ソーシャルビジネスへの関心も高くなっています。
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社会起業家に必要とされる素質
社会起業家には、一般の起業家とは異なり、どのようなことが求められるのでしょうか。主に、以下のような素質が求められます。
社会起業家が持つべき素質
- 社会的課題の解決への強い想い
- 事業を運営するビジネススキル
社会的課題の解決への強い想い
社会起業家にとって最も重要なのは、社会的課題の解決への強い想いです。事業を起ち上げた後も、社会にはさまざまな困難や問題が山積しており、軌道に乗るのは簡単ではありません。それらの困難や問題に対してしっかりと向き合う姿勢や、どうしても社会的課題を解決したいという強い想いがあるかが重要になります。
この想いは、困難な状況に直面したときの原動力となり、事業を継続する上での精神的な支えとなります。また、チームメンバーや投資家、顧客に対しても、その熱意は伝わりやすく、共感を得やすくなるでしょう。
社会起業家の社会的課題への向き合い方として、単なる同情では事業が成り立ちません。課題の本質を理解し、当事者の立場に立って考える能力が求められます。また、長期的な視点を持ち、短期的な成果に一喜一憂せず、持続的に取り組んでいかなければなりません。
事業を運営するビジネススキル
社会起業家は、一般の起業家とは異なりますが、事業として起ち上げて利益を上げていくといった、共通するビジネススキルも必要です。どれだけ崇高な理念を持っていても、事業として成り立たなければ、継続的な社会的課題の解決は困難になってしまいます。
具体的には、以下のようなビジネススキルが求められます。
事業運営に必要なビジネススキル
- 戦略的思考:社会的課題を事業機会として捉え、持続可能なビジネスモデルを構築する能力
- マーケティング・セールス:自社のサービスや商品の価値・魅力を伝え、顧客を獲得する能力
- 財務管理:資金調達や予算管理、収支管理など、事業運営に必要な財務能力
- チームマネジメント:多様なバックグラウンドを持つメンバーをまとめ、共通の目標に向かって導く能力
- ネットワーキング:政府や自治体、企業、NPO法人、学術機関など、さまざまなステークホルダーとの関係構築能力
これらのスキルは、一般的な起業家に求められるものと共通しているところもあるものの、社会起業家の場合には、社会的インパクトの測定や多様なステークホルダーとの調整など、より複雑な要素も必要とされます。
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日本の社会起業家が起ち上げたソーシャルビジネスの事例
日本では多くの社会起業家がソーシャルビジネスを起ち上げており、その事例は政府機関や公的機関によって紹介されています。以下では、ソーシャルビジネスの事例を参照できる、主なWebページをご紹介します。
日本のソーシャルビジネス事例を参照できるWebページ
- 日本政策金融公庫「Design Your Mission
」
- 日本政策金融公庫「社会的企業・NPO向け ソーシャルビジネスお役立ち情報
」
- 総務省「ローカルスタートアップ支援制度 ローカル10,000プロジェクト
」
- 中小企業庁「地域課題解決事業推進(ゼブラ企業)
」
- 経済産業省「ソーシャルビジネス55選
」
日本政策金融公庫「Design Your Mission
」
日本政策金融公庫のWebページ「Design Your Mission」では、実際に資金面でサポートしたさまざまな分野でのソーシャルビジネス企業の事例が紹介されています。全国で高齢者支援、子育て支援、地域活性化、環境保護など、多岐にわたる社会課題に取り組む企業の具体的な取り組みや成果を知ることができます。
これらの事例では、各企業がどのような社会課題に着目し、どのようなビジネスモデルで解決に取り組んでいるかが詳しく紹介されており、社会起業家を目指す方にとって貴重な参考資料と言えるでしょう。
日本政策金融公庫「社会的企業・NPO向け ソーシャルビジネスお役立ち情報
」
日本政策金融公庫のWebページ「社会的企業・NPO向け ソーシャルビジネスお役立ち情報」では、ソーシャルビジネスに関する企業情報が網羅的に紹介されています。ソーシャルビジネスの企業事例だけでなく、資金調達の方法や事業計画の立て方など、実践的な情報も提供されており、社会起業家にとって有用なナレッジとなっています。
総務省「ローカルスタートアップ支援制度 ローカル10,000プロジェクト
」
総務省の「ローカルスタートアップ支援制度 ローカル10,000プロジェクト」とは、地域振興における民間投資を支援するため、自治体が金融機関の融資と協調して、企業の初期投資を助成する制度です。
この制度では地域の課題解決に取り組む企業への支援が行われ、Webページの中では、実際に支援が決定した企業事例も紹介されています。地方創生や地域活性化に関心のある社会起業家の方は、ぜひ参考にしてみてください。
中小企業庁「地域課題解決事業推進(ゼブラ企業)
」
中小企業庁のWebページ「地域課題解決事業推進(ゼブラ企業)」では、ビジネスの手法で地域課題の解決にポジティブに取り組み、社会的インパクト(事業活動や投資によって生み出される社会的・環境的変化)を生み出しながら、収益を確保する「ローカル・ゼブラ企業」の創出・育成を支援しています。
Webページではローカル・ゼブラ企業の事例も紹介されており、地域に根ざしたソーシャルビジネスのモデルケースを学ぶことができます。
なお、「ゼブラ企業」とは、未上場のベンチャー企業のうち、時価総額が10億ドル以上の企業を指す利益追求型の「ユニコーン企業」に対して生まれた概念で、ゼブラ企業は社会的課題の解決と経済的成長の両立を目指す企業のことです。
経済産業省「ソーシャルビジネス55選
」
経済産業省のWebページ「ソーシャルビジネス55選」では、さまざまな分野で活動する、全国の先進的なソーシャルビジネス55社の事例が紹介されています。
各事例では、取り組む社会課題、事業内容、成果などが詳しく説明されており、ソーシャルビジネスの多様性と可能性を理解できるでしょう。
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社会起業家として起業できる形態
社会起業家として、以下のような形態で起業できます。それぞれに特徴があるので、起業するソーシャルビジネスの目的や規模、運営方針によって最適な形態を選択しましょう。
株式会社や合同会社
株式会社や合同会社は、営利を目的とした法人格で、多くの起業家が選択する会社形態です。経済産業省の資料「ソーシャルビジネス研究会 報告書(案) 概要版」によると、ソーシャルビジネスを運営する事業者へのアンケートでは、約2割が株式会社や合同会社を含む営利法人で起ち上げています。
株式会社と合同会社には、以下のような違いがあります。
株式会社の特徴
- 信用度が高く、取引先や投資家からの信頼を得やすい
- 株式発行による資金調達が可能
- 所有と経営の分離が可能で、事業の拡大がしやすい
- 株式の上場を目指すことも可能
合同会社の特徴
- 設立費用が株式会社より安く、手続きも簡単
- 所有と経営が一致しているため、スピーディーに意思決定できる
- 経営の自由度が高く、利益配分も柔軟に設定可能
- 役員の任期がないため、重任登記の登録免許税が不要
株式会社も合同会社も利益を追求可能な会社形態であるため、持続可能なビジネスモデルを構築しやすく、成長資金の調達もしやすいといったメリットがあります。
NPO法人
NPO法人(特定非営利活動法人)とは、非営利で公益的な活動を行うことを目的とした法人格です。NPO法人には、以下のような特徴があります。
NPO法人の特徴
- 社会的信用度が高く、連携しやすく案件も得られやすい
- 収益事業にかかる所得以外は課税されない
- 法人税が免除されたり、寄附金が適用されたりする場合がある
- 設立費用を軽減できる
NPO法人は非営利組織のため、株主への配当はできませんが、職員への給与の支払いは可能です。社会的課題の解決に特化した組織として認知されやすく、課税時に優遇されるほか、行政や他のNPOとの連携もしやすくなるでしょう。
一般社団法人
一般社団法人は、営利を目的としない法人格ですが、収益事業を行うことができる法人格です。一般社団法人には、以下のような特徴があります。
一般社団法人の特徴
- 事業内容に制限がない
- 収益事業にかかる所得以外は課税されない
- 設立が比較的簡単で、理事1名以上で設立可能
一般社団法人はNPO法人ほど厳格な制約がなく、株式会社ほど営利追求に特化していないため、中間的な起業形態として社会起業家が選びやすく、起業時の選択肢の1つになると言えるでしょう。
事業協同組合や企業組合
事業協同組合や企業組合は、組合員が協同で事業を行う組織です。事業協同組合や企業組合には、以下のような特徴があります。
事業協同組合の特徴
- 同業者が4人以上集まって設立する
- 組合員の事業に必要な共同事業を行う
- 税制上の優遇措置がある場合もある
企業組合の特徴
- 個人が4人以上集まって設立する
- 組合員自身が組合で働くことが原則
- 組合員への給与支払いと利益配分の両方が可能
事業協同組合や企業組合は複数の個人や小規模事業者が協力して社会課題の解決に取り組む際に適している事業形態で、地域密着型のソーシャルビジネスでよく見受けられます。
株式会社や合同会社については以下の記事も併せてご覧ください。
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社会起業家としてソーシャルビジネスを起ち上げよう
社会起業家は、従来の行政やボランティアなどでは解決困難な社会的課題に対して、ビジネスの手法を用いて持続可能な解決策を提供する重要な存在です。国連サミットでのSDGsの採択により、社会的課題への関心が高まる中、社会起業家の役割はますます重要になっています。
社会起業家として成功するためには、社会課題解決への強い想いと共に、事業を継続するためのビジネススキルも必要です。また、事業に適切な法人格を選択し、効率的な設立手続きを行うことで、事業の起ち上げをスムーズに進めることができます。
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この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。