定款に記載する事業目的とは?書き方や記載例一覧を紹介
監修者: 森 健太郎(税理士)
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会社設立時の定款に記載しなければいけない項目の1つに、事業目的があります。事業目的を記載するうえで、書き方にルールがあるのか、具体的にどう書けばいいのかと戸惑ってしまう方もいるかもしれません。事業目的に記載していない事業は行えないので、適切な書き方を知っておきましょう。
ここでは、定款における事業目的の書き方、書く際の注意点を業種別の記載例一覧とともに紹介します。
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事業目的とは定款に記載が必要な事項
事業目的とは、定款への記載が義務付けられている絶対的記載事項のうちの1つで、どのような事業を行うのかを明示するものです。
会社は、定款に定めた事業目的以外の事業を行うことはできません。事業目的の記載は、絶対的記載事項に該当するので、記載がないと定款自体が認められなくなります。記載がもれていても罰則はありませんが、ビジネスに支障をきたす可能性があるため、過不足なく記載するようにしましょう。
また、事業目的は、取引先や金融機関が取引をするか、融資をするかを判断する際の材料にもなる重要な事項ですので、箇条書きにしたり、事業内容が伝わりやすいよう数を絞ったりすることも必要です。
事業目的の変更や追加をしたら変更登記を行う
定款の事業目的が変わったり、追加したりする場合は、株主総会での特別決議を行う必要があります。さらに、株主総会での議事録を法務局に提出し、変更登記の手続きも必要で、変更登記には登録免許税3万円がかかります。事業目的の変更や追加は手間も費用もかかるので、設立時に過不足なく記載するようにしましょう。
- ※定款の記載内容については以下の記事を併せてご覧ください
事業目的を書く際に確認しておくこと
事業目的を書く際には、満たすべきポイントがあります。このポイントを満たしていなければ、事業目的として認められないことがあるため、記載する際は以下を参考にしてみてください。
適法性、営利性、明確性を満たしておく
定款に記載する事業目的は、取引先や金融機関から自社への信用を得られるよう、適法性、営利性、明確性を満たしている必要があります。
適法性とは、事業目的が法律に違反する内容や公序良俗に反する内容でないことを指します。例えば、詐欺行為や違法な輸入などは認められません。また、法律によって特定の業種・資格者の独占業務とされているものを、他の業種が事業目的にすることもできません。
また、営利性として、事業目的が会社の利益を上げる内容になっている必要があります。例えば、ボランティアや寄附といった非営利活動は、事業目的にはなりません。
他にも、明確性として、誰が見てもわかるように事業目的を記載する必要があります。一般的に知られていない業界用語や専門用語、略語などは、明確性に欠けると判断される可能性があるので、避けるようにしましょう。
許認可の要件を満たしておく
業種によっては、事業を始めるにあたって許認可が必要な場合があります。許認可が必要な事業を行う際には、許認可の要件に適した事業目的を定款に記載しておかなければなりません。
例えば、以下のような記載例が挙げられます。
リサイクルショップ
リサイクルショップの他、古着店や古本屋といった中古品を取り扱う店を営む場合は、「古物商許可」が必要で、管轄の警察署で手続きを行います。事業目的には「古物営業法に基づく古物商」の他、扱う商品が決まっている場合は、「古本の売買」「中古家電の販売および買取」といった内容を記載します。
美容室
美容室を開業する際には、保健所へ「美容所開設届」を提出するだけでなく、サービスを提供するには美容師免許が必要です。事業目的には「美容室の経営」と記載し、ネイルサロンを併設する場合は「美容室およびネイルサロンの経営」、ヘアケア用品などを販売する予定があるなら「美容に関する商品の販売」なども記載します。
マッサージ店
マッサージ店を開くには、あん摩マッサージ指圧師の国家資格と、保健所へ「施術所開設届」の提出が必要です。事業目的には「マッサージ店経営」と記載します。なお、リラクゼーションサロンやカイロプラクティックサロンであれば、国家資格や届出は不要ですが、事業目的やWebサイト、広告などで、マッサージという言葉は使えないため注意しましょう。
- ※許認可が必要な業種については以下の記事も併せてご覧ください
同業他社の記載を参考にする
事業目的を記載する際には、同業他社の事業目的を確認しておくと、漏れがないかを気付くきっかけにもなります。例えば、これから起業する事業と近しい会社や業界の事業目的を見ることで、「小売だけではなく卸売も行う」「店内飲食の他、テイクアウトやデリバリーにも対応する」「店舗に設置した自動販売機で収益を得る」など、見落としがちなポイントにも気付けるかもしれません。
事業目的は、登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されるため、法務局で所定の手数料を支払えば、誰でも希望する会社の登記事項を閲覧することが可能です。また、会社によっては、Webサイトに事業目的を掲載している場合もありますので、併せて確認してみましょう。
なお、事業目的は業種ごとに汎用的な書き方があるため、以下のような記載例も参考にしてみてください。
業種 | 事業目的 |
---|---|
飲食業 | 飲食店の経営 酒類の販売 食料品および飲料品の小売業 食料品の加工、製造および販売 |
美容室、理容室 | 美容室、理容室の経営 美容室およびネイルサロンの運営 美容室に関する商品の販売 医薬部外品および美容器具等の製造販売 |
デザイナー | ホームページの企画、デザイン、制作、運営および保守 印刷物の企画、デザイン、制作 日用品雑貨の企画、制作、輸出入および販売 インテリアデザイン、グラフィックデザインなどの企画、制作 |
ネットショップ | インターネットを利用した通信販売 インターネット関連コンテンツの企画、開発および販売 インターネットによる動画映像配信 輸出入事業 |
事業目的の記載に関する注意点
定款に記載する事業目的を変更する際には、手続きが必要です。手間を減らしたり、取引先や金融機関からの見え方を考えたりすると、次のような点にも注意しておくといいでしょう。
将来的にやりたい事業も事業目的に記載する
事業目的には、起業後に行う事業の他、将来的に予定している事業を記載することも可能です。事業目的を増やしたり、変更したりする際には、変更登記の手続きが必要になります。
変更登記には、登録免許税が3万円かかりますので、手続きの手間や費用をかけないためにも、将来やりたいと考えている事業がある場合は、事業目的に記載しておくといいでしょう。
なお、定款に記載したからといって、必ずその事業を行わなければいけないわけでもありません。
記載数に制限はないが多くしすぎない
事業目的の記載数に制限はありませんが、あまりにも記載数が多すぎると、何がメインの事業なのか実態がよくわからなくなるため、取引先や金融機関から不信感を持たれるおそれがあります。
将来行う予定の事業目的を記載することもできますが、会社設立時の事業目的は、多くても10個までを目安にするといいでしょう。事業目的が多くなりそうな場合は、今後3~5年くらいで実現可能そうな事業に絞ってみるのも1つの方法です。
内容に幅を持たせておく
事業目的を作成するときは、記載事項の内容に幅を持たせておくと、記載漏れを防ぐことにもつながります。例えば、項目の最後に、「前各号に附帯または関連する一切の事業」と記載しておくことで、会社設立時に想定していなかった事業でも、もともとの事業目的に関連性があれば行うことが可能です。
例えば、商品の販売だけだったが、企画や製造も行うようになったときなどにも使えることがあります。将来の事業拡大を考えるうえでも、事業目的に関連した仕事もできるよう、記載内容に幅を持たせておくようにしましょう。
内容や項目に迷ったら専門家に相談する
自分1人で事業目的を考えていると、書き方や内容が正しいか不安になることがあるかもしれません。特に許認可が必要な業種や特殊な業種の場合は、事業目的の記載に注意が必要です。
事業目的の書き方に迷ったときは、税理士などの専門家に相談するといいでしょう。専門家に相談すれば、頭の中を整理できるだけでなく、同業他社の例や将来的な展望なども踏まえたアドバイスが受けられます。
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事業目的は重要な項目なので漏れなく記載しよう
事業目的には、自社が何の事業で利益を得る会社なのかを、対外的にわかりやすく示す役割があります。会社を設立するときに作成する定款には、事業目的を記載しなければならず、定款で定めた事業目的以外の事業を行うことはできません。
定款に記載する事業目的は、同業他社の記載例を参考にしたり、専門家のアドバイスを受けたりして、自社にとって最適な内容を漏れなく設定しましょう。また、定款の作成をはじめ、会社設立にかかる手続きを手軽に行いたい場合は、「弥生のかんたん会社設立」や「弥生の設立お任せサービス」の活用もご検討ください。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。