定款とは?会社(法人)設立時に必要な定款の書き方・作成方法
2023/08/02更新

この記事の監修中野 裕哲(なかの ひろあき)
会社を設立するときに、必ず作成しなければならないのが「定款(ていかん)」です。定款に記載する内容は法律であらかじめ決められていますが、初めて作成する場合、「何をどう記載すればいいかわからない」と戸惑うことがあるかもしれません。ここでは、主に株式会社の定款についての基本的な知識から記載する内容、作成時の注意点まで、詳しく解説します。
定款(ていかん)とは、会社を経営していくためのルールをまとめたもの
定款とは、会社を経営していくためのルールをまとめたもので、会社設立において重要な書類です。一言でいえば、会社の憲法のようなものであり、会社を設立する際には定款を作ることが義務付けられています。
また、定款に記載する内容は法律であらかじめ決められており、商号(社名)や事業目的、本店所在地などの基本情報をはじめ、発行される株式総数、決算月といった事項を記載します。記載事項の詳細は次の章で説明しますが、定款の作成は会社設立の流れの中でも時間がかかる作業になるため、余裕を持って準備を進めておくことが大切です。
なお、定款には決まった書式フォーマットはありませんが、紙か電子(PDF)かどちらかで作成する必要があります。
公証役場で定款の認証が必要
定款を作成後、公証役場で認証を受けるという手続きが必要です。定款の認証とは、正当な手続きによって定款が作成されたことを、公の機関である公証役場(公証人)に証明してもらうための手続きのことです。認証された定款は法的な効力を持ち、ただの書類ではなく、会社の根拠ともいえる存在になります。
株式会社の設立手続きについては、こちらの記事も併せてご覧ください
会社設立の流れとは?株式会社を設立するためにやることや必要書類を解説
定款は、登記申請の際に必要書類と共に提出する
認証された定款は、登記申請の際、必要な書類と共に法務局に提出します。
登記申請の手続き方法は、こちらの記事も併せてご覧ください
なお、定款についてはこちらの動画でも解説しているため、定款がどういうものかを知りたい人は参考にしてみてください。
定款に記載する内容
定款に記載すべき内容は、会社法という法律によって定められています。
記載項目には大きく分けて、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つがあります。それぞれについて、詳しい内容を見ていきましょう。
絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項です。下記の5項目が欠けていたり違法性があったりすると、定款そのものが無効になってしまいます。
商号
商号とは社名のことです。事業内容をイメージしやすい名前や会社の雰囲気を伝える名前、理念を込めた名前など、さまざまな決め方があります。個人事業主から法人化する場合は、屋号を引き継いでもかまいません。
ただし、銀行など他の法律で規制される名称を使うことはできません。また、有名企業の名前を連想させる社名を付けたりすると、不正競争防止法により損害賠償を求められることがありますので、注意が必要です。商号を考えるときには、類似する社名がないかをあらかじめ確認しておきましょう。類似商号は、法務省のWebサイト「オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について 」や本店所在地を管轄する法務局に行って、専用端末を利用して調べることができます。
事業目的
事業目的とは、その会社がどのような事業を行うのかを明示するものです。事業目的は取引先や金融機関が会社をチェックするときの判断材料になる項目ですので、この段階で、できるだけ明確で過不足のない内容を心掛けましょう。
後から事業目的を変更する際は、定款と登記の変更手続きが必要です。事業目的変更手続きの登記申請には、登録免許税3万円がかかりますのでご注意ください。会社設立時に、将来行う可能性がある事業を入れても問題ありませんが、あまりにも一貫性のない目的が並ぶと不自然に受け取られますので注意が必要です。
本店所在地
本店所在地とは、事業所の住所のことです。法律上の住所であるため、実際の事業活動地と異なっていてもかまいません。自宅を事務所とするケースや、レンタルオフィスやバーチャルオフィスの住所を登記する方法もあります。ただし、後で事務所を移転すると登記の変更手続きと登録免許税が必要になるため、長期的に業務を行う場所を所在地に定めましょう。
将来、同一区画内で移転する可能性を考慮し、所在地を最小行政区画(東京23区内なら区、郡なら町・村、それ以外は市)までの記載にすることも可能です。◯丁目◯番地まで記載する場合、ハイフン等で省略せず正式表記での記載が必要です。ただし、◯丁目◯番地まで記載していると、もし将来的に本店を移転するとき、同じ市区町村内でも定款変更の手続きが必要になります。
なお、同一住所に同一の商号がある場合は、登記ができません。レンタルオフィスやバーチャルオフィスの場合は、特に類似商号への注意が必要です。
設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
設立に際して出資される財産とは、会社設立後の資本金に相当するものです。「◯◯万円以上」と、最低額の記載にしておくことも可能です。
資本金をいくらにするかについては、売上が立つまでに必要な費用や、取引先に与える印象などを考慮して検討します。会社法では資本金の下限がないため、資本金1円でも会社設立は可能です。ただし、金融機関の融資制度を利用する際には、売上などと共に資本金もチェックされます。特に、会社の設立直後は決算書がないため、会社の運営資金の基である資本金は信用度に直結します。極端に資本金が少ない場合は、会社の資本体力がないと見なされて、融資が受けにくくなる可能性がありますので、適正な金額を設定しましょう。
発起人の氏名および住所
発起人とは、定款の作成や資本金の出資といった会社設立を行う人のことです。会社設立後は資本金の金額に応じて株式が発行され、株主となります。定款には、発起人に関する氏名や住所を必ず記載する必要があります。発起人が複数いる場合には、全員分の記載が必要です。
相対的記載事項
相対的記載事項は、必ずしも定款に記載しなくても問題はありませんが、記載がないとその事項について効力が生じない事項のことです。例えば、株式会社の場合、具体例として下記のような事項があります。自社に該当するなら記載しておく方がいいでしょう。
株式の譲渡制限に関する規定
株主総会における議決権を持つ株主が頻繁に変わると、安定した会社運営の妨げになることがあります。そのため株式会社は、「株式を譲渡するには株主総会の承認を受けなければならない」というような定めを定款に記載することができます。
株主総会の招集通知を出す期間の短縮
株主総会を招集するには、通常2週間前までに通知を出さなければなりませんが、定款によって短縮することができます。
役員の任期の伸長
役員にはそれぞれ任期があります。会社法では取締役の任期は2年、監査役は4年ですが、非公開会社であれば、定款に記載することによって最長10年まで伸長することが可能です。
株券発行の定め
株券とは、株式の保有を明らかにする有価証券です。会社法においては、定款に株券を発行する旨を明記しない限り、株券不発行会社(株券を発行しない会社)となります。
変態設立事項
相対的記載事項のうち、会社の財産に大きく影響する重要なものを変態設立事項といいます。変態設立事項には、次のようなものが挙げられます。
項目 | 内容 |
---|---|
現物出資 | 土地や債券、車など、お金以外の現物出資に関すること。 |
財産引受 | 発起人が株式引受人や第三者との間で、会社成立を条件に譲り受ける(買い受ける)特定の財産のこと。 |
発起人の報酬 | 会社設立後に、発起人が受け取る報酬。 |
設立費用 | 会社設立後に、発起人が会社に請求できる設立費用。 |
任意的記載事項
任意的記載事項は、定款に記載してもしなくてもいい事項です。法律や公序良俗に反しない限りは、会社が任意で決めた事項を定款に記載することができます。ただし、定款に記載した以上、その内容を変更したいときには定款変更の手続きが必要です。
なお、任意的記載事項については、定款に記載しなくても、社内規定などに明記すれば効力が認められます。
株式会社の場合、任意的記載事項の記載例としては、下記のような内容が挙げられます。
株主総会の開催規定
定時株主総会は、決算から一定時期のうちに開く必要があるため、その時期を記載します。
役員報酬に関する事項
役員報酬は、会社法によって「定款または株主総会の決議によって定める」となっています。ただし、定款に役員報酬に関する事項を記載する場合も、「株主総会の決議で決める」旨にとどめるケースがほとんどです。
事業年度
事業年度とは、会社が決算書を作成するために区切る年度のことです。事業年度を定めるには、決算月をいつにするかを決める必要があります。事業年度が1年を超えなければ、決算月は自由に決めることができます。そのため、会社の繁忙期を避けて設定するのが一般的です。
定款の作成方法と注意点
定款を作成する際には、下記2つの点に注意しましょう。
定款の作成方法は、紙と電子の2つがある
定款の作成方法には、紙と電子定款の2種類があります。紙の場合は一般的にパソコンで作成して印刷・製本し、4万円の収入印紙を貼ります。一方、電子定款はPDFにて作成し、電子署名を付与した定款のことです。電子定款であれば、紙の定款で必要になる収入印紙代がかからないため、最近は電子定款を選ぶケースが増えています。ただし、電子定款を作成するには、電子署名のためのソフトや機器などが必要になるため、1度の申請のためにこうした機器を揃えるのはハードルが高いと感じる方も多いようです。
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定款の認証方法
株式会社の場合は、定款の認証を受ける必要があります。定款の認証とは、定款の正当性を公証人に証明してもらうことで、公証役場で手続きを行います。
定款の認証に必要なものは下記のとおりです。
紙の定款の場合
- 定款3通
- 実質的支配者となるべき者の申告書
- 委任状(定款の認証手続きを代理いただく場合)
- 発起人全員の印鑑証明書
- 定款を受け取りに行く方の印鑑
- 定款を受け取りに行く方の身分証明書
- 収入印紙代(4万円)
- 認証手数料(約3万~5万円)
- その他、公証人から指示されたもの
電子定款の場合
- 電子定款
- 実質的支配者となるべき者の申告書
- 委任状(定款の認証手続きを代理いただく場合)
- 定款作成の委任状(電子定款の作成・署名を専門家に依頼した場合)
- 発起人全員の印鑑証明書
- 定款を受け取りに行く方の印鑑
- 定款を受け取りに行く方の身分証明書
- 空のデータ用CD-R(認証された定款受取用)
- 認証手数料(約3万~5万円)
- その他公証人から指示されたもの
会社設立手続きに必要な費用については別の記事で解説していますので、参考にしてください。
会社設立にかかる費用は?株式会社と合同会社の場合を比較して紹介
専門知識が必要な定款を手軽に作成する方法
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会社設立時に欠かせない定款は、手軽に作れる方法を選ぼう
定款は、会社を設立する際に必ず作成しなければならない重要な書類です。定款に記載する内容は法律によって定められており、法に準じていない定款は無効になってしまいます。また、近年一般的になりつつある電子定款は、電子署名に必要なソフトや機器がないと、ハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。
しかし、そんな場合でも、起業支援サービスの「弥生のかんたん会社設立」を利用すれば、手間や時間を省いて手軽に定款を作成することができます。
会社設立の第一歩ともいえる定款についてしっかりと把握し、スムースな事業開始を目指しましょう。
よくある質問
Q. 定款とは?
定款とは、会社を経営していくためのルールをまとめたもので、会社設立において重要な書類です。一言でいえば、会社の憲法のようなものであり、会社を設立する際には定款を作ることが義務付けられています。定款の作成は会社設立の流れの中でも時間がかかる作業になるため、余裕を持って準備を進めておくことが大切です。
詳しくはこちらをご確認ください。
Q. 定款に記載する内容は?
定款の記載項目には大きく分けて「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つがあります。「絶対的記載事項」とは、定款に必ず記載しなければならない事項です。「相対的記載事項」は、必ずしも定款に記載しなくても問題はありませんが、記載がないとその事項について効力が生じない事項です。「任意的記載事項」は、定款に記載してもしなくてもいい事項のことを指します。
詳しくはこちらをご確認ください。
Q. 定款の作成方法とは?
定款の作成方法には、紙と電子定款の2種類があります。紙の場合は一般的にパソコンで作成して印刷・製本し、4万円の収入印紙を貼ります。電子定款はPDFにて作成し、電子署名を付与した定款のことで、紙の定款で必要になる収入印紙代がかからないため、最近は電子定款を選ぶケースが増えています。一方で電子定款を作成するには、電子署名のためのソフトなどが必要になります。
詳しくはこちらをご確認ください。
この記事の監修中野 裕哲(なかの ひろあき)
起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。
年間約300件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト「DREAM GATE」で10年連続相談数日本一。
著書・監修書に「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」、「図解 知識ゼロからはじめる起業の本
」がある。
URL:https://v-spirits.com/