定款の記載例(サンプル)を紹介!各章に記載すべき項目とは?
監修者: 森 健太郎(税理士)
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会社を設立するときに、作成しなければいけない書類のひとつに「定款」(ていかん)があります。定款とは、会社の基本情報やルールをまとめたもので、事業を運営していくうえでも重要な役割を持つ書類です。会社設立手続きの中でも時間がかかる傾向がありますので、何を決めて、どう書くのかを知るために、定款の記載例を確認しておきましょう。
ここでは、株式会社の設立時に作成する定款の記載例(サンプル)をもとに、各章に記載すべき項目を解説します。
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株式会社の定款の記載例(サンプル)を章ごとに紹介
定款とは、会社の商号(社名)や本店所在地といった組織情報、経営に関する基本的なルールなどを定めた書類のことです。定款に記載する内容は法律であらかじめ決められており、定款に必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」、記載がないとその事項について効力が生じなくなる「相対的記載事項」、法律や公序良俗に反しない範囲で会社が自由に決めて定款に記載できる「任意的記載事項」に分けられます。
会社設立時には定款の作成が義務付けられており、法人登記の際にも定款は必要になります。定款はいわば会社の憲法のようなものですが、会社のルールを定めることによって社内や取引先、株主との金銭トラブルを防いだり、取引先や融資先に会社を知ってもらったりするのに役立ちます。絶対的記載事項は主に会社の基本情報として取引先が確認するポイントになるので、誰がどこで何を行う会社なのかが端的にわかるよう注意してみてください。
また、定款を作成するときは、一般的な雛型を参考にしながら、自社の状況に合わせて文言を修正していくと進めやすいでしょう。本記事では株式会社のうち、取締役会を設置しない1人会社の定款の記載例を紹介していきます。
なお、定款を作成するには、会社のルールを発起人が決めなくてはいけません。スムースな定款の作成ができるよう、作成前に記載内容を確認する必要があります。
では、定款の章ごとにそれぞれの記載例と記載すべき項目を見てみましょう。
定款の構成
- 第1章 総則
- 第2章 株式
- 第3章 株主総会
- 第4章 取締役及び代表取締役
- 第5章 計算
- 第6章 附則
第1章 総則のサンプル
定款の第1章は総則で、商号、目的、本店所在地、公告方法を記載します。このうちの商号と目的、本店所在地は、定款に必ず記載しなければいけない絶対的記載事項です。
注意点として、会社の基本情報のうち、ルールが定められているものがあります。例えば、商号(社名)なら、「株式会社○○」または「○○株式会社」と、前後どちらかに法人形態を入れなければなりません。商号(社名)はこのように、商号登記規則によって守らなければいけないルールがありますので、使える符号や文字を調べておきましょう。
目的の項目には事業目的を記載します。設立後にメインとする事業に加えて、将来行う予定の事業を記載しておくことも可能です。目的の最後に、「前号(目的が複数の場合は前各号)に附帯又は関連する一切の事業」という一文を入れておくと、事業内容に幅を持たせることができ、記載漏れを防ぐことにもつながります。
本店所在地は法律上の住所です。将来、同一区画内で移転する可能性を考慮し、所在地を最小行政区画(東京23区内なら区、郡なら町・村、それ以外は市)までの記載にすることも可能です。自宅やレンタルオフィス、バーチャルオフィスの住所も使用できますが、後で事務所を移転すると登記の変更手続きと登録免許税が必要になるため、長期的に業務を行う場所を所在地に定めておきましょう。
原則として本店所在地が納税地になるので、定款に記載した住所と実際の活動地が離れていると、手続きが煩雑になることがありますので注意してください。また、バーチャルオフィスを所在地としていると、金融機関から融資を受ける際に不利になる可能性もあります。この他、株式会社では利害関係者に向けて決算や決定事項を公開する公告が必要になりますので、公告方法の記載も必要です。
- ※商号(社名)や事業目的については以下の記事を併せてご覧ください
第2章 株式のサンプル
第2章には、発行可能株式総数や株券の発行有無、株式の譲渡制限などについて記載します。発行可能株式総数とは、会社が今後発行できる株式の上限のことです。
発行可能株式総数を超えて株式を発行する場合は、株主総会での決議後に、定款と登記を変更しなくてはなりません。将来、増資や株式分割によって株式数が増えることも考え、設立時の発行株式数よりも相当程度多い数を設定しましょう。「相当程度」は会社の規模によっても異なりますが300~1万程度が目安です。
また、株式の譲渡制限について、サンプルにあるような代表取締役の承認ではなく、株主総会の承認とすることも可能です。なお、「当会社の承認」と記載した場合は、株主総会が承認機関になります。株式は会社の所有権に関わるため、発行可能株式総数や株主総会を決める際には税理士など専門家に確認しておくと安心です。
第3章 株主総会のサンプル
第3章には、株主総会の開催時期や招集方法、決議などについての定めを記載します。定時株主総会は決算から一定時期のうちに開く必要があるため、定款にその開催時期を記載します。
なお、法人税の確定申告は、事業年度終了日(決算日)の翌日から2か月以内に行わなければならないと定められています。しかし、株主総会の決議を得て決算が確定しなければ、確定申告は行えません。株主総会の開催時期が決算から2か月を超える場合は、その旨を定款に定め、納税地の所轄税務署に事前に申請することで、申告期限の延長の特例の適用を受けることができます。
また、株主総会を招集するには、原則として通常2週間前までに通知を出さなければなりませんが、株式を証券取引所に上場していない非公開会社の場合は、株主総会の1週間前までの通知でも問題ありません。
なお、非公開会社で取締役会が設置されておらず、株主が1人しかいない場合や株主全員の同意がある場合といった一定の条件を満たせば、定款によって通知期間を短縮することができます。小規模な会社や親族と事業を行っている場合など、手間を省きたい場合はこうした条件も確認してみてください。
第4章 取締役及び代表取締役のサンプル
第4章には、会社の意思決定を行う、取締役および代表取締役に関する内容を記載します。株式会社を設立する際には取締役が最低1人必要です。取締役の任期は原則として2年ですが、非公開会社(株式譲渡制限会社)では、定款の定めによって最短1年から最長10年まで設定できます。
なお、取締役の任期が満了し、同じ方が再び選任されたときは、重任登記(任期満了した役員を引き続き就任させること)の手続きが必要です。最後の登記から12年間登記を行っていないと、強制的に解散手続きをされる「みなし解散」の対象となることがあるため、重任登記は忘れずに行いましょう。
- ※取締役の役割や任期については以下の記事も併せてご覧ください
第5章 計算のサンプル
第5章の計算では、事業年度を記載します。事業年度とは、会社が決算書を作成するために区切る期間のことで、事業年度の最後の月が決算月となります。会社設立から事業年度が1年を超えなければ、決算月を自由に決めることが可能です。とはいえ、特に1人会社の場合、設立手続きと決算手続きが続くと、事務作業の負担が大きくなってしまうため、決算月は会社設立の1年後にする傾向があります。
なお、資本金が1,000万円未満であれば、原則として設立1期目と2期目は消費税の納税義務が免除されます。ただし、1期目の事業年度開始の日から6か月間(特定期間)の課税売上が1,000万円を超えた場合は、2期目から消費税の納税義務が生じます。
例えば、8月1日設立で決算月を2月にするなど、1期目の事業年度が7か月以下になる場合は、特定期間はカウントされず、設立2期目まで消費税の納付が免除されます。設立後、半年で1,000万円以上の売上が見込まれ、消費税の免除期間をできるだけ延ばしたい場合などは、決算月を決める際に税理士に相談すると、こうした特例があるといったアドバイスをもらえることもあるでしょう。
また、インボイス制度開始に伴い、適格請求書発行事業者の登録を行うと消費税の課税事業者となります。課税事業者になると、前述した資本金や売上高といった条件にかかわらず1期目から消費税の申告・納税が必要です。課税事業者になることで取引への影響がないか、自社や取引先の状況を考慮して、課税事業者になるかどうかを検討してみてください。
第6章 附則のサンプル
第6章は附則として、資本金の金額や役員などを記載します。附則に記載する事項のうち、設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額と、発起人の氏名・住所は、絶対的記載事項です。
資本金は、会社の設立費用や事業を行うための費用など会社の体力となるお金です。安定的に事業を行ううえで重要なポイントになるため、資本金の金額は事業計画や資金計画を立てて、適正な金額を設定するようにしましょう。
なお、株式会社は資本金1円から設立することができますが、極端に資本金が少ないと会社の経営体力がないと見なされ、金融機関や取引先などからの信用度が低下するおそれがあります。ただし、設立にかかる費用が抑えられる業種等の場合は資本金を低く設定することも可能です。資本金の金額を後から変更することもできますが、手続きや変更にかかわる費用も必要になりますので、設立時に適正な金額を設定してみてください。
- ※資本金の平均額や決め方については以下の記事も併せてご覧ください
末尾のサンプル
定款の末尾には、日付とともに発起人が記名押印または電子署名を付与します。発起人に代わって代理人が定款を作成した場合は、代理人が記名押印または電子署名を行います。定款は紙と電子いずれかの方法で提出できますが、末尾の記載内容は提出方法によって以下のように異なるため、注意してください。
紙の定款の場合
以上、株式会社○○設立のため、この定款を作成し、発起人が次に記名押印する。
令和5年8月1日
発起人 弥生一郎 印
電子定款の場合
以上、株式会社○○設立のため、発起人弥生一郎の定款作成代理人弥生太郎は、電磁的記録であるこの定款を作成し、これに電子署名をする。
令和5年8月1日
発起人 弥生一郎
上記発起人の定款作成代理人
住 所
弥生太郎 電子署名
定款のテンプレートは日本公証人連合会でダウンロードできる
定款の記載内容は、法人形態や会社の規模によっても異なります。例えば、株式会社と合同会社では、定款に必ず記載しなければならない絶対的記載事項にも違いがあります。また、合同会社には株式の概念がないため、株式会社のような株主構成や株式譲渡制限などの記載はありません。
「日本公証人連合会」のWebサイトでは、会社の規模にあわせた定款のテンプレートと記載例が確認できますので、自社の法人形態や事業規模に合わせて参考にしてみてください。
- ※定款の作成方法や合同会社の定款については以下の記事も併せてご覧ください
定款の作成や認証手続きは司法書士や行政書士に依頼できる
定款の作成や認証手続きは、発起人が行いますが、司法書士や行政書士に依頼することも可能です。それぞれ専門とする領域が異なるため、依頼したい内容や報酬に応じて検討してみてください。なお、依頼する報酬については、会社の規模や業種によって変動しますので、事前に見積もりを取って確認しておきましょう。
司法書士
司法書士は登記の専門家で、会社設立時には定款の作成や公証役場での認証手続きの他、法務局での法人登記申請も依頼することができます。特に、法人登記は司法書士の独占業務となるため、司法書士以外は代行することができませんのでご注意ください。
なお、司法書士に定款の作成や法人登記申請の代行を依頼する場合の費用相場は、5万~15万円程度です。
行政書士
行政書士は、行政への提出書類作成の専門家で、定款や申請書など会社設立に関わる書類の作成や定款の認証手続きの代行を依頼できます。また、許認可が必要な業種の場合は、許認可申請の代行を依頼することも可能です。
会社設立に関わる手続きの代行を行政書士に依頼する場合の費用相場は、10万円程度です。
- ※法人化の相談ができる士業や依頼費用については以下の記事も併せてご覧ください
定款の作成を手軽に行う方法
定款の作成といった、会社設立に必要な手続きを手軽に行いたい場合におすすめなのが、自分でかんたんに書類作成ができる「弥生のかんたん会社設立」と、起業に強い専門家に会社設立手続きを依頼できる「弥生の設立お任せサービス」です。
「弥生のかんたん会社設立」は、画面の案内に沿って必要事項を入力するだけで、定款をはじめとする会社設立時に必要な書類を自動生成できる無料のクラウドサービスです。各官公庁への提出もしっかりガイドしますので、事前知識は不要。さらに、パソコンでもスマートフォンでも書類作成ができます。
また、「弥生の設立お任せサービス」は、弥生の提携先である起業に強い専門家に、会社設立手続きを丸ごと代行してもらえるサービスです。専門家を探す手間を省ける他、電子定款や設立登記書類の作成、公証役場への定款認証などの各種手続きを依頼でき、確実かつスピーディな会社設立が可能です。会社設立後、専門家とご相談のうえ会計事務所との税務顧問契約を結ぶと、割引が受けられ、サービス利用料金は実質0円になります。定款の認証手数料や登録免許税など行政機関への支払いは別途必要です。
定款の記載例(サンプル)を参考に作成を進めよう
定款には、記載しなければいけない絶対的記載事項の他、記載しなければ効力が生じない相対的記載事項、会社が任意で記載できる任意的記載事項があります。定款の記載例(サンプル)を参考に、必要に応じて自社に合わせて修正を加えながら、漏れやミスのないように定款の作成を進めましょう。
自分だけで定款を作成するのが不安な場合は、手軽に定款の作成ができる「弥生のかんたん会社設立」や専門家に手続きの代行を依頼できる「弥生の設立お任せサービス」の活用をご検討ください。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
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