定款の事業目的に違反した場合罰則はある?注意点や変更手続き

2023/12/04更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

会社を設立する際、必要な書類の1つに「定款」(ていかん)があります。定款は会社の概要や事業の目的といった会社の根幹となるルールを記載したものです。会社法によって記載事項が定められており、ルールをあらかじめ決めておくことで事業運営を安定させることにつながります。また、定款は資金調達や取引の際にどのような事業を行う会社なのかを知ってもらう書類のため、過不足なく記載する必要があります。起業後、事業存続が安定して行えるようにするには、定款の記載事項や変更する際の手続きについても知っておきましょう。

ここでは、定款の事業目的以外の事業を行った場合の罰則の有無や、事業目的を記載する際の注意点、変更・追加に伴う手続きを解説します。

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定款の事業目的以外の事業を行うと罰則はないがリスクはある

定款に記載した事業目的に違反して他の事業を行ったとしても罰則はありませんが、いくつかリスクがあります。

事業目的以外の事業を行うリスク

  • 取引先や金融機関からの信用に影響する
  • 業種によっては許認可に影響する

なお、これらはあくまで一例です。罰則がないといっても、定款の事業目的は登記事項証明書(登記簿謄本)にも記載され、手続きを行えば誰でも閲覧することができるものです。事業によってリスクは異なるため、事業目的の記載に悩んでいる人は参考にしてみてください。

取引先や金融機関からの信用に影響する

事業目的以外の事業を行う際のリスクとして、取引先や金融機関からの信用に影響することが挙げられます。事業目的は取引をするか、融資を行うかを判断するために見られる項目の1つです。定款に記載された事業目的が実態と異なる場合、取引先や金融機関から事業内容がわからない会社と判断される可能性があります。会社の信用に影響すると、取引ができなかったり、融資を受けられなかったりして、事業運営自体が難しくなることがありますので気を付けましょう。

金融機関で融資を申し込むときや、法人口座を開設するときには、定款や登記事項証明書の提出を求められます。また、新規の取引先と契約をする際に、信用調査として自社の登記事項証明書を確認されることもあります。罰則がなくても、自社の信用を損なわないようにするには、定款の事業目的を過不足なく記載するようにしてください。

業種によっては許認可に影響する

事業目的以外の事業を行う際のリスクとして、業種によっては許認可に影響することが挙げられます。飲食業や建設業、不動産業といった特定の業種によっては、事業の開始にあたって許認可の申請を行います。その際には、許認可の要件を満たした事業目的が記載された定款や登記事項証明書などが必要です。

また、定款の事業目的は、法律で定められた許認可以外にも影響する場合があります。例えば、保険代理店を始めようと思っても、事業目的に保険の募集に関する内容の記載がなければ、保険会社と代理店契約を結ぶことは難しくなるかもしれません。特定の事業によっては、事業目的に記載していない事業自体が行えないこともありますので、自分の事業にとって必要な記載事項を確認しておきましょう。

事業目的は定款に記載が必要な絶対的記載事項の1つ

定款の事業目的は、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」の1つです。定款の絶対的記載事項の項目が欠けていたり、違法性があったりすると、定款そのものが無効になってしまいます。無効になるとビジネスに支障をきたしてしまうので、以下の項目は記載漏れのないようにしてください。

なお、株式会社と合同会社で絶対的記載事項の内容は異なります。

株式会社の定款の絶対的記載事項

  • 商号(社名)
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
  • 発起人の氏名および住所

合同会社の定款の絶対的記載事項

  • 商号(社名)
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 社員(出資者)の氏名および住所
  • 社員(出資者)を有限責任社員とする旨
  • 社員の出資目的およびその価額(評価の標準)

絶対的記載事項をどのように書けばいいか迷ったときは、同業他社の事業目的を参考にするのも1つの方法です。事業目的には、業種ごとに汎用的な書き方があります。よく見られる例としては、飲食業では「飲食店の経営」、ネットショップなら「インターネットを利用した通信販売」などがあります。これから行う事業と近しい会社の事業目的を確認して、汎用的な書き方を見ておきましょう。

  • 株式会社と合同会社の定款の作成方法については以下の記事を併せてご覧ください

事業目的を書く際の注意点

定款の事業目的はわかりやすく書く以外に、過不足なく書くことや信用を得るのに役立てられるよう注意しましょう。これから事業目的を書く方は、スムースに設立手続きを進められるよう次の注意点を参考にしてみてください。

事業目的を書く際の主な注意点

  • 適法性、営利性、明確性を満たしておく
  • 許認可の要件を満たす
  • 関連する一切の事業と内容に幅を持たせる
  • 将来的に行いたい事業も記載しておく

適法性、営利性、明確性を満たしておく

取引先や金融機関からの信用を得るため、定款に記載する事業目的は「適法性」「営利性」「明確性」を満たしておく必要があります。この3つを満たしておかないと安定した取引ができないとして、定款が認証されないこともあるので、以下のポイントを満たせるようにしましょう。

適法性

適法性とは、事業目的が違法ではないことを指します。例えば、詐欺行為や違法輸入といった法律に違反する内容や公序良俗に反する内容は、事業目的として認められません。また、法律によって特定の業種や資格者の独占業務とされているものを、他業種の会社が事業目的にすることもできません。

営利性

会社の事業目的は、営利性が認められるような利益を生み出す内容であることが前提です。一般的に起業する際の法人形態である株式会社や合同会社といった営利法人は、会社の利益を上げることを目的に事業活動を行います。そのため、営利性に反する、ボランティアや寄附のような非営利活動を事業目的にすることはできません。

明確性

明確性を満たすためには、事業目的を誰が見ても内容が理解できるように記載することが求められます。一般的な認知度の低い業界用語や専門用語、略語、造語などは、明確性に欠けると判断される可能性がありますので、使わないようにしましょう。どうしても使わないといけない場合は補足説明を入れてみてください。

許認可の要件を満たす

許認可が必要な事業を行う場合は、許認可の要件を満たした事業目的を記載しておかなければなりません。許認可の要件を満たした事業目的が記載されていないと、許認可を取得できず、会社を設立しても事業を開始できなくなってしまいます。また、定款の変更登記も必要となり、事業開始までに時間がかかってしまうこともあるでしょう。

許認可が必要な事業の例として、飲食店やリサイクルショップ、美容室、マッサージ店、運送業などが挙げられます。定款を作成する前に、許認可の有無や満たすべき要件を確認しておきましょう。

  • 許認可の手続きが必要な業種や申請先は以下の記事を併せてご覧ください

関連する一切の事業と内容に幅を持たせる

定款の事業目的を書く際に過不足なく書くことは難しいものです。そのため、項目の最後に、「前各号に附帯又は関連する一切の事業」と内容に幅を持たせることで、記載漏れを防ぐことにつながります。また、この一文があることによって、定款に記載された事業目的に関連性のある事業を行えるようになります。

例えば、美容室なら経営や運営について記載をしていても、ヘアケア商品の販売についての記載が漏れることがあるかもしれません。こうしたときにも「前各号に附帯又は関連する一切の事業」と記載しておくことでカバーできるでしょう。また、会社の事業成長に伴い、設立当初には想定していなかった事業を行うケースも少なくありません。将来の事業拡大を考えるうえでも、忘れずに記載してください。

将来的に行いたい事業も記載しておく

定款の事業目的には、会社設立後すぐに行うメイン事業の他、将来的に行いたいと考えている事業も併せて記載しておくことも可能です。事業目的の記載数に制限はなく、定款に記載したからといって、必ずその事業を行わなければいけないわけでもありません。

事業目的を変更・追加するには、定款と登記の変更手続きが必要になるため、起業後10年以内くらいを目安に予定している事業があれば記載しておくといいでしょう。

ただし、あまりにも事業目的の項目数が多いと何の会社かわからず、取引先や金融機関から不信感を抱かれる可能性があります。会社設立時の事業目的は、今後展開する予定の事業も含め、多くても10個程度までを目安にしてみてください。

事業目的の変更や追加は株主総会での決議後に変更登記が必要

定款に記載された事業目的は、会社設立後に変更することが可能です。ただし、変更や追加をするには、株主総会による決議や変更登記といった手続きを行う必要があり、手続きに伴う費用もかかります。定められた手続きを行わないと罰金が科せられることもあるので、注意してください。

定款の変更は株主総会による決議が必要

株式会社の定款を変更するには、原則として、株主総会での特別決議が必要です。特別決議とは、発行済株式総数の過半数を保有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成によって決議するものです。決議を行った後には、定款の事業目的を変更すると同時に、決議内容を記載した議事録を作成し、保存しなければなりません。
なお、合同会社の場合は、定款に記載した事項を変更するには、原則として全社員による決議と承認が必要になります。

定款の追加・変更後は2週間以内に変更登記の手続きが必要

定款の事業目的を変更した場合は、法務局での変更登記の手続きが必要です。事業目的の変更手続きには、登録免許税3万円がかかります。
なお、会社法では、登記事項に変更が生じた場合は、2週間以内に変更登記を行わなければならないと定められています。期限を過ぎても変更登記の申請は受理されますが、期限内に手続きを行わないと、変更登記を怠ったとして、会社の代表者個人に対して1期(1年)につきおよそ3万円といった、100万円以下の過料(罰金)が科せられることがありますので、手続きを忘れないようにしてください。

  • 事業目的の書き方については以下の記事を併せてご覧ください

定款の作成を手軽に行う方法

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定款の事業目的は条件を満たして過不足なく記載しよう

定款の事業目的は、必ず記載しなくてはいけない絶対的記載事項の1つです。また、取引先や金融機関がその会社と取引をするか、融資を行うかを判断するために見られる項目に含まれます。定款の事業目的に記載されていない事業を行っても、法律上の罰則はありませんが、場合によっては取引ができなかったり、融資を受けられなかったりするリスクがあります。

事業目的は後から変更や追加もできますが、株主総会の決議や登録免許税が必要な他、変更登記も行わなくてはいけません。事業開始に時間がかかることもありますので、定款の事業目的は条件を満たして過不足なく記載するようにしましょう。
定款を手軽に作成したい場合は、「弥生のかんたん会社設立」や「弥生の設立お任せサービス」の活用もご検討ください。

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この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

URL:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_mori/新規タブで開く

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