定款の書き方は?記載事項ごとの書き方のポイントや注意点も解説

2023/12/04更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

会社設立時に必ず作成しなければいけない重要な書類に「定款」があります。定款とは、会社を経営していくためのルールをまとめたもので、すべての会社が作成しなければなりません。

定款に記載する内容は、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」、記載がないとその事項については効力が生じない「相対的記載事項」、会社が任意で記載できる「任意的記載事項」の大きく3つに分類され、それぞれ書き方にポイントがあります。

ここでは、定款の絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項に該当する各項目の書き方のポイントの他、株式会社と合同会社の定款の書き方の違いや、作成時に注意したい点についても解説します。

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絶対的記載事項の書き方のポイント

絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項です。絶対的記載事項に記載漏れがあったり違法行為を事業目的としていたりすると、定款そのものが無効になってしまうため気をつけましょう。

株式会社の場合、下記の項目が絶対的記載事項です。

絶対的記載事項

  • 商号
  • 目的
  • 本店所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額または最低額
  • 発起人の氏名または名称および住所
  • 発行可能な株式総数

商号は同一の住所に同一の社名がないか注意する

商号は基本的には自由につけることができますが、同一の住所にすでに同一名の会社が存在する場合には、登記できない点に注意が必要です。商号とは社名のことで、「株式会社◯◯」「◯◯株式会社」のように、前後どちらかに会社の種類を入れなければなりません。

その他、近隣の会社と同じであったり、銀行・学校といった特定の団体や有名企業を連想させたりするような社名をつけると、不正競争防止法により損害賠償や商号使用の差し止めを請求される可能性があるため、注意が必要です。

また、他社が商標登録している会社名やブランド名、商品名などを社名にすると、商標権侵害のおそれがあるので避けましょう。

すでに登記されている商号は法務省のWebサイト「オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について新規タブで開く」や国税庁のWebサイト「法人番号公表サイト新規タブで開く」で、商標登録については独立行政法人工業所有権情報・研修館のWebサイト「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)新規タブで開く」で調べることができます。

  • 商号については以下の記事を併せてご覧ください

目的には将来的に予定している事業も記載しておく

目的(事業目的)は会社がどのような事業を行うのかを明示するもので、設立後すぐに行うメイン事業の他、将来的に予定している事業があれば、併せて記載しておきます。

加えて、将来的な事業拡大を考慮し、項目の最後に「前各号に附帯又は関連する一切の事業」と記載しておくといいでしょう。会社の設立後に事業目的の変更や追加をすると、定款や登記の変更手続きが必要になるうえ、一律3万円の登録免許税もかかってしまいます。

定款に記載する目的は営利性を満たす必要があり、ボランティアや寄附のような利益を上げない活動を事業目的とすることはできません。また、飲食業や労働者派遣業などの許認可が必要な業種の場合、定款の目的と許認可申請の対象となる事業内容が食い違っていると、許認可が下りない可能性もあるので注意が必要です。

事業目的の記載数に制限はないものの、あまりに多すぎると取引先や金融機関から不信感を持たれる可能性があるため、多くても10個くらいまでが目安になります。

なお、定款の目的が「金融業」「遊興娯楽事業」「風俗営業業種」などの場合、金融機関からの融資を受けにくくなる可能性があります。

  • 事業目的については以下の記事を併せてご覧ください

本店所在地は最小行政区画までの記載でもよい

本店所在地とは事業所の住所のことで、定款に記載する本店所在地は、最小行政区画(東京23区内なら区、郡なら町・村、それ以外は市)までの記載とすることも可能です。設立後に事業所を移転すると、定款や登記の変更手続きと登録免許税が必要ですが、最小行政区画までの記載にしておけば、同一区画内での移転なら定款や登記の変更が不要になります。

自宅やレンタルオフィス、バーチャルオフィスの住所でも登記できますが、同一の住所に同一の商号を持つ会社は登記ができません。バーチャルオフィスを本店所在地とする場合には、特に類似商号がないか確認しておきましょう。

記載する資本金の額が少なすぎると、会社の信用度が低下する可能性がある

会社法上は資本金1円でも会社設立は可能ですが、資本金が極端に少ないと会社を運営していく体力がないとみなされ、取引先や金融機関からの信用度が低下する可能性があります。設立に際して出資される財産が会社設立後の資本金にあたり、「◯◯万円以上」と最低額の記載にしておくことも可能です。

一般的には、初期費用に半年分の運転資金を足した金額程度を資本金として用意しておくと安心といわれています。資本金は会社が納める税金にも影響するため、金額設定に迷った場合は税理士に相談するといいでしょう。

  • 資本金については以下の記事を併せてご覧ください

発起人が複数いる場合には、発起人全員の氏名や住所を記載する

発起人が複数いる場合には、発起人全員の氏名や住所の記載が必要です。発起人とは、会社設立の際に定款の作成や資本金の出資などを行う人のことです。会社設立後は、資本金の金額に応じて株式が発行されて株主となり、会社の意思決定に関わります。もし1人で会社を作るなら、自分が発起人ということになります。

  • 発起人については以下の記事を併せてご覧ください

発行可能な株式総数は記載しておくことが一般的

発行可能な株式総数は、会社法上の絶対的記載事項ではありませんが、設立登記申請までに定款に定めて記載しておくことが一般的です。もし発行可能な株式総数について記載しないまま定款を作成し、認証を受けてしまうと、設立登記までの間に定款を変更しなければならなくなるためです。

発行可能株式総数とは、会社が新たに発行できる株式の上限のことを指します。将来、増資や株式分割によって株式数が増えることも考え、設立時の発行株式数よりも相当程度多い数を設定しましょう。発行可能株主総数を超えて株式を発行する場合には、定款と登記の変更手続きが必要になります。

相対的記載事項の書き方のポイント

相対的記載事項とは、定款に記載しないと効力が生じない事項のことです。相対的記載事項については、社内で決めただけでは有効にはならないため、定款に記載しなければいけません。

例えば、株式会社の場合、下記のような事項が具体例として挙げられます。記載しなくても定款が無効になることはありませんが、自社に該当する事項があれば記載しておく方がいいでしょう。

相対的記載事項

  • 取締役会、監査役などの機関設計
  • 株式の譲渡制限に関する規定
  • 変態設立事項
  • 役員の任期の伸長

取締役会を設置する場合には、定款への記載が必要

取締役会を設置する場合は、定款で定めて記載しておかなければなりません。なお、非公開会社(株式譲渡制限会社)では、取締役会の設置は任意です。取締役会を設置する場合には、最低でも取締役3名、監査役1名が必要となります。

株式の譲渡制限に関して規定を定めて記載しておく

相対的記載事項には、株式の譲渡制限に関して記載しておくといいでしょう。株主が頻繁に変わると安定した会社運営の妨げになることがあるため、「株式を譲渡するには株主総会の承認を受けなければならない」と定款に記載します。

このように株式の譲渡制限に関する規定を定めておくことで、勝手に株式が譲渡され、経営に関係のない人が株主になってしまうことを防げます。

定款に変態設立事項を記載すると、検査役の調査を受ける必要がある

変態設立事項とは、金銭以外の現物出資や特定の財産を譲り受ける財産引受などを指し、定款に記載する際には、原則として検査役の調査を受けなくてはなりません。しかし、定款に記載された価額の総額が500万円を超えない場合は、現物出資と財産引受について検査役の調査は不要です。

役員の任期の伸長を定めて記載しておくと、任期を伸長できる

会社法では取締役の任期は2年、監査役は4年ですが、定款に記載しておくことで、最長10年まで任期の伸長ができます。ただし、非公開会社である場合に限ります。

任意的記載事項の書き方のポイント

任意的記載事項は、定款に記載しなくても社内規定などでも規定できる事項です。法律や公序良俗に反しなければ、会社が任意で決めた事項を定款に記載できます。ただし、定款に記載したら、内容を変更するときには定款変更の手続きが必要です。

株式会社の任意的記載事項には、下記のような項目が挙げられます。

任意的記載事項

  • 事業年度
  • 株主総会の議長
  • 定時株主総会の招集

事業年度は記載しておくことが多い

事業年度は任意的記載事項であるものの、株主の利益配当の時期を明確にするために、定款に記載することが一般的です。事業年度とは、会社が決算書を作成するために区切る年度のことで、最終日が決算日になります。事業年度を定めるには、決算月を決めなければなりません。事業年度が1年を超えなければ、決算月は自由に決められます。

株主総会の議長を記載しておくと、株主総会をスムースに運営できる

株主総会ごとに議長を選任することも可能ですが、選任の手間を省きスムースな運営を目指すためには、定款に株主総会の議長を記載しておくことがおすすめです。通常は、株主総会の議長は代表取締役が務めます。

定時株主総会の招集についても、複数の取締役がいる場合には記載しておく

取締役が複数いる場合には、「株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除き、代表取締役が招集する」などと、定款に記載しておくといいでしょう。株式会社は、決算から一定の時期に定時株主総会を開かなければなりません。取締役会非設置会社では、取締役によって株主総会の日時や場所などが決定されます。

  • 定款や定款の記載例、定款の目的については、以下の記事を併せてご覧ください

合同会社における株式会社の定款との書き方の違い

合同会社の場合は、定款の記載内容が株式会社とは異なります。

出資者(株主)と経営者の役割が切り離されている株式会社とは違い、合同会社には「出資者(社員)=会社の経営者」という特徴があります。組織構成や利益配分なども自由に定められるため、株式会社よりも合同会社の方が、定款は比較的作成しやすいといえるでしょう。

合同会社の定款は、株式会社と比べて、書き方に下記のような違いがあります。

合同会社における株式会社との定款の書き方の違い

  • 社員(出資者)の情報を記載する必要がある
  • 社員を有限責任社員とする旨を記載する必要がある
  • 社員の出資の目的とその価額などを記載する必要がある
  • 株主構成や株式の譲渡制限、発行可能株式総数などの記載が不要
  • 機関設計の定めについての記載内容が異なる

社員(出資者)の情報を記載する必要がある

株式会社の定款には発起人の氏名および住所を記載する必要がありましたが、合同会社の定款では社員(出資者)の氏名および住所を記載しなければならない点が異なります。また、社員が複数人いる場合には、全員分の氏名と住所を記載しなければなりません。

社員を有限責任社員とする旨を記載する必要がある

社員全員の有限責任を必ず明記することも、合同会社と株式会社の定款との違いです。合同会社の社員は全員、会社の債務に対して出資額の範囲においてのみ責任を負う「有限責任社員」にあたります。

社員の出資の目的とその価額を記載する必要がある

株式会社の定款では、設立に際して出資される財産の価額または最低額を記載する必要があるのに対し、合同会社の定款では社員の出資の目的とその価額を記載する必要がある点も異なります。

合同会社の定款には、社員の出資の目的と、金銭で出資した場合には金額を、現物を出資した場合には価格または評価基準額を記します。社員の氏名や住所とともに、一人ひとり分けて書き記すのが一般的な書き方です。

株主構成や株式の譲渡制限、発行可能株式総数などの記載が不要

合同会社の定款では株主構成や株式の譲渡制限、発行可能株式総数などの記載が不要である点も、株式会社との定款と異なります。合同会社には、そもそも株式の概念がありません。

機関設計の定めについての記載内容が異なる

株式会社の定款では、取締役会を設置する場合には取締役や監査役といった機関設計の定めも記載しておかなければなりませんが、合同会社の定款では取締役会や監査役などに関する記載は不要である点も異なります。

合同会社は株式会社とは機関設計が異なり、原則としてすべての社員が会社の代表権と業務執行権を持ち、取締役や監査役といった役職は存在しないためです。

合同会社で複数の社員がいる場合には、業務執行権を持つ「業務執行社員」や代表権を行使できる「代表社員」を定款に記載することができます。定款によって業務執行社員と社員を分けている場合は、業務執行社員の中から代表社員を選出します。

なお、定款内に業務執行社員と社員についての記載がなければ、すべての社員が業務執行社員ということになります。

  • 合同会社の定款については以下の記事を併せてご覧ください

定款を書くときに注意したい点

定款を作成する際には、以下のような点に気をつけましょう。株式会社の定款であれ、合同会社の定款であれ、記載する際には注意したい点です。

決まったフォーマットはない

定款の書き方には、決まったフォーマットはありません。しかし、一般的にはA4サイズに横書きで、明朝体またはゴシック体を用いて作成します。文字の大きさは10.5~12ポイント程度を目安に、読みやすさを意識して記載するようにしましょう。

なお、日本公証人連合会のWebサイトにある「定款等記載例新規タブで開く」では、会社の規模に合わせたテンプレートと記載例が確認できます。

正しい住所を記載する

定款に記載する発起人や社員の住所は、ハイフンなどで省略せず、「◯丁目◯番地◯号」などと正しく表記しなければなりません。発起人や社員の氏名や住所を記載するときは、印鑑登録証明書と相違がないかを確認しておきましょう。

また、本店所在地を最小行政区画までとせず、◯丁目◯番地まで記載する場合にも、同様に正式表記での記載が必要です。

「または」や「および」の意味

定款を書くときに、つい多用してしまいがちなのが、「または」や「および」という表現です。「AまたはB」ならAとBのどちらか一方、「AおよびB」ならAとBの両方という意味になります。

「または」は、公告方法などの断言が必要な事項に対しては使えないので注意しましょう。また、「および」は、どちらにも当てはまるものでなければ記載方法として認められません。

書き方に迷ったら専門家へ相談する

定款の作成は、会社設立手続きの中でも時間のかかる作業の1つです。自分だけで作成しようとすると、内容や書き方に迷うことがあるかもしれません。

定款の書き方に不安を感じた場合は、税理士などの専門家に相談するといいでしょう。資本金や決算月の決め方など、定款の記載内容の中には税金に関わる項目もあるため、あらかじめ税理士に相談してアドバイスを受けておくと安心です。

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定款の書き方のポイントを押さえて、会社設立手続きをスムースに進めよう

定款は、会社を設立する際に必ず作成しなければいけない書類です。そのため、定款の書き方がわからないと、会社設立の準備が滞ってしまいます。定款にある絶対的記載事項や相対的記載事項、任意的記載事項では、それぞれ書き方のポイントが異なり、株式会社と合同会社でも定款の書き方には違いがあります

定款の書き方のポイントをしっかりと把握し、スムースな事業開始を目指しましょう。また、定款の作成をはじめ、会社設立にかかる手続きを手軽に行いたい場合は、「弥生のかんたん会社設立」や「弥生の設立お任せサービス」の活用もご検討ください。

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この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

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