法人設立ワンストップサービスとは?電子申請できる手続きや添付書類
監修者: 森 健太郎(税理士)
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会社を設立する際には、法務局への法人設立登記申請をはじめ、さまざまな手続きを行う必要があります。作成する書類も多岐にわたり、それぞれ異なる機関に提出しなければなりません。
このような煩雑な手続きをオンライン上で行う方法の1つが、「法人設立ワンストップサービス」です。会社設立にかかわる手続きをオンラインで済ませたい方や、起業にあたり各機関に別々に書類を提出する手間を省きたい方は、法人設立ワンストップサービスの利用を検討してみるといいでしょう。
ここでは、法人設立ワンストップサービスについて、特徴や申請できる手続き、利用する際の手順の他、利用する際の注意点についても解説します。
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法人設立ワンストップサービスとはオンラインで法人の設立手続きができるサービス
「法人設立ワンストップサービス」とは、マイナポータルを利用して、法人設立に関する手続きをオンラインで一度に行うことができるサービスです。各種手続を行政機関ごとに個別に行うという煩雑さを解消することを目的として2020年より開始されたサービスで、デジタル庁によって運営されています。
開始当初は法人設立後の手続きしか対応していませんでしたが、2021年から、定款認証や設立登記を含め、法人設立にかかわるすべての行政手続きがワンストップで行えるようになりました。法務局への法人登記申請をはじめ、税務署や自治体、年金事務所、労働基準監督署など、異なる機関への手続きを一度に行うことができます。
法人設立ワンストップサービスを利用すると、次のようなことが可能になります。導入を検討する前に確認しておきましょう。
法人設立ワンストップサービスでできること
- 法人の設立手続きにおける手間や時間を削減できる
- 行政窓口の受付時間に関わらず、自分の好きなタイミングで手続きできる
- オンライン上での申請なので印鑑届書が不要になる
法人の設立手続きにおける手間や時間を削減できる
法人設立ワンストップサービスを利用すると法人設立に関する行政手続きをオンライン上で一度に行えるようになり、手間や時間を大幅に削減できます。
法人を設立するためには、さまざまな手続きが必要です。従来は、法人設立届出は税務署に、設立登記の申請は法務局にというように、申請先の行政機関ごとに個別に手続きを行わなければならず、手間がかかりました。
しかし、法人設立ワンストップサービスを利用すれば、必要な手続きを一度にまとめて行うことが可能です。オンラインで手続きができるので、各行政機関へわざわざ出向く手間もかかりません。設立準備期間はやることが多いため、各行政機関に提出しに行く時間を省けると助かる方が多いでしょう。ぜひご利用をご検討ください。
窓口の受付時間に関わらず、自分の好きなタイミングで手続きできる
法人設立ワンストップサービスを利用すると、窓口の受付時間に関わらず、自分の好きなタイミングで手続きができるようになります。法人設立ワンストップサービスは、システムメンテナンスなどにより操作ができない時間を除き、24時間365日利用可能です。
行政機関の窓口では平日の日中しか手続きできませんが、法人設立ワンストップサービスであれば自宅や事務所などから、都合の良いタイミングで手続きができます。日中に手続きを行うのが難しいという方には、利用しやすいサービスといえるでしょう。
オンライン上での申請なので印鑑届書が不要になる
法人設立ワンストップサービスを利用すると、法人登記をする際の印鑑届書の提出が任意となります。
印鑑届書とは、代表者印(会社実印)を登録するための書類です。書面で設立登記申請をする場合は印鑑届書が必要ですが、法人設立ワンストップサービスはオンライン申請なので印鑑届書は不要です。
ただし、印鑑届書の提出が不要だからといって、代表者印を作らなくていいというわけではありません。代表者印は、例えば金融機関に融資の申し込みをするときや取引先との契約を結ぶときなどに必要になります。そのため、会社を設立する際には、オンライン申請かどうかにかかわらず、代表者印を作成することが一般的です。代表印は必要に迫られてから急いで作成するよりも、会社設立時に作成しておくことをおすすめします。
法人設立ワンストップサービスはさまざまな手続きに利用できる
法人ワンストップサービスを利用すると、以下のような法人設立に関するさまざまな手続きがオンラインで行えます。具体的には、会社を設立する手続き、税金に関する手続き、雇用に関する手続きなどに分けられます。以下に、法人設立ワンストップサービスで行える手続き名と申請先を一覧表でまとめたので、自分に必要な手続きがあるかチェックしておきましょう。
会社を設立する手続き
手続き | 申請先 |
---|---|
電磁的記録の認証の嘱託(定款認証) | 公証役場 |
電子署名付委任状の申請 | |
執務の中止の請求(定款認証の取下げ等) | |
設立登記の申請 | 法務局 |
設立登記申請の取下 | |
商業登記電子証明書の発行申請 | |
商業登記電子証明書の発行申請の取下げ |
税金に関する手続き
手続き | 申請先 |
---|---|
法人設立届出 | 税務署 |
給与支払事務所等の開設等届出 | |
消費税の新設法人に該当する旨の届出 | |
棚卸資産の評価方法の届出 | |
減価償却資産の償却方法の届出 | |
有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出 | |
定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請 | |
消費税課税事業者選択届出 | |
消費税課税期間特例選択・変更届出 | |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請 | |
電子申告・納税等開始(変更等)届出 | |
事前確定届出給与に関する届出 | |
消費税申告期限延長届出 | |
消費税の特定新規設立法人に該当する旨の届出 | |
適格請求書発行事業者の登録申請 | |
消費税簡易課税制度選択届出 | |
青色申告の承認申請 | |
事業所等新設・廃止申告 | 地方公共団体 |
法人設立・設置届(都道府県) | |
法人設立・設置届(市町村) | |
申告書の提出期限の延長の処分等の届出・承認申請 |
雇用に関する手続き
手続き | 申請先 |
---|---|
健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 年金事務所 |
保険関係成立届(継続)(一元適用) | 労働基準監督署 |
保険関係成立届(継続)(二元適用労災保険分) | |
保険関係成立届(継続)(二元適用雇用保険分) | 公共職業安定所 |
雇用保険の事業所設置の届出 | |
雇用保険被保険者資格取得届 |
その他の手続き
手続き | 申請先 |
---|---|
GビズIDプライムアカウント発行申請 | デジタル庁 |
- ※出典:マイナポータル「法人設立ワンストップサービス」
法人設立ワンストップサービスをスムーズに進めるための手順
法人設立ワンストップサービスを利用するときは、以下のような手順で行うと、手続きをスムーズに進められます。実際に手続きをする前に、利用時の流れを確認しておきましょう。
マイナポータル「法人設立ワンストップサービス」webページTOP画面

法人設立ワンストップサービスをスムーズに進めるための手順
- 【事前準備】法人設立ワンストップサービスの利用に必要なものを揃える
- 1. 法人設立ワンストップサービスにアクセスし、「かんたん問診」で手続きを選択する
- 2. マイナンバーカードで本人の認証後、申請者情報を入力する
- 3. 添付ファイルを登録し、必要な手続きを申請する
【事前準備】法人設立ワンストップサービスの利用に必要なものを揃える
まずは、必要なものを用意しましょう。以下がないと、法人設立ワンストップサービスを利用できないため、注意が必要です。
法人設立ワンストップサービスの利用に必要なもの
- 法人代表者のマイナンバーカード、またはスマホ用電子証明書を設定済みのスマートフォン
- PC・タブレットで申請する場合は、ICカードリーダライタまたはマイナポータルアプリがインストールされているスマートフォン
- スマートフォンで申請する場合は、マイナポータルアプリがインストールされているスマートフォン
- インターネット環境
なお、PCで申請し、ICカードリーダライタでマイナンバーカードを読み取る場合、スマホ用電子証明書の読み取りはできません。
1. 法人設立ワンストップサービスにアクセスし、「かんたん問診」で手続きを選択する
続いて、法人設立ワンストップサービスのTOPページにある、「かんたん問診・申請」ボタンをクリックします。表示される質問に対して、上から順番に「はい」「いいえ」「わからない」を選択が可能です。質問事項に回答後、「問診結果へ」ボタンをクリックすると、問診結果画面に必要な申請手続きが表示されます。リストアップされた結果から申請する手続きを選択し、「申請する」ボタンをクリックしましょう。
なお、申請が必要と判定されなかった手続きを選択することも可能です。
2. マイナンバーカードで本人の認証後、申請者情報を入力する
「かんたん問診」で必要な手続きを申請した後は、利用規約に同意後、マイナンバーカードを利用して申請者の本人認証を行います。その後、画面の指示に従い、申請者情報を入力します。
3. 添付ファイルを登録し、必要な手続きを申請する
申請手続きに必要となる添付ファイルを登録します。添付書類は手続きによって異なるため、必要書類を確認のうえ、「ファイルを選択」ボタンをクリックしてファイルをアップロードしましょう。登録(アップロード)した添付ファイルが正しいかどうか確認したら、電子署名の付与後、各申請先機関に一括送信して申請します。
法人設立ワンストップサービスを利用する際は注意点がある
法人設立ワンストップサービスの利用にあたっては、知っておきたいいくつかの注意点があります。手続きし直しといった余計な手間をかけないために、以下の注意点を確認しておきましょう。
法人設立ワンストップサービスを利用する際の注意点
- このサービスを利用するだけでは完結できない手続きがある
- 手続きが本当に必要なのかあらかじめよく検討しておく
- 法人代表者のマイナンバーカードが必要になる
- 自分で定款などの書類を準備しなければならない
このサービスを利用するだけでは完結できない手続きがある
法人設立ワンストップサービスを利用する際の注意点として、このサービスを利用するだけでは完結できない手続きもあることがあげられます。法人設立ワンストップサービスでは、会社設立にかかわる行政手続きが網羅されていますが、会社設立に伴うすべての手続きができるわけではありません。
例えば、事業に必要な法人口座を開設したい場合には、金融機関で手続きを行う必要があります。また、業種によっては、事業を始めるにあたって許認可が必要となる場合もあります。起業にあたり、国や自治体の補助金・助成金を申請する場合もあるでしょう。
これらの手続きは、法人設立ワンストップサービスでは対応していないため、個別に申請や申し込みを行う必要があります。
手続きが本当に必要なのかあらかじめ検討しておく
法人設立ワンストップサービスを利用する際の注意点として、手続きが本当に必要なのかあらかじめ検討しておくことがあげられます。さまざまな手続きに利用できますが、このサービスでどの手続きを行うのかは会社によって異なるでしょう。
法人設立ワンストップサービスの「かんたん問診」を利用すると、質問に答えていくだけで必要な手続きが判定されます。しかし、それぞれの質問事項は専門用語も多いため、税や社会保険などの知識がないと、意味を理解できないことがあるかもしれません。場合によっては、自社に必要のない手続きを選択してしまったり、逆に必要な申請が漏れてしまったりする可能性もあります。
起業時の手続きには、必ず行うものと、必要な場合のみ行うものがあります。それぞれの手続きの内容を確認し、自社に必要かどうかを検討するようにしてください。
法人の代表者となる方のマイナンバーカードが必要になる
法人設立ワンストップサービスを利用する際の注意点として、法人の代表者となる方のマイナンバーカードが必要になることがあげられます。例えば、代表者以外のマイナンバーを使用することはできません。そのため、もしマイナンバーカードを持っていない場合には、早めに取得しておきましょう。
マイナンバーカードの発行には申請から1か月ほどかかり、さらに市区町村の交付窓口へ受け取りに行く必要があります。マイナンバーカードがなくて法人設立ワンストップサービスを利用できないということにならないように、時間に余裕を持って準備しておきましょう。
自分で定款などの書類を準備しなければならない
法人設立ワンストップサービスを利用する際の注意点として、自分で定款などの書類を準備しなければならないことがあげられます。法人設立ワンストップサービスは、手続きごとに必要な書類をアップロードし、各申請先機関に一括送信するしくみです。申請自体は1回で完了するものの、提出する書類はすべて自分で準備しなければなりません。
会社設立時には作成が容易な書類ばかりではなく、例えば、設立登記申請書や定款といった、専門的な知識を必要とされる書類も作成しなければなりません。すべての書類を自分で作成しようとすると、かなり手間がかかるうえ、ミスや漏れの可能性も高くなってしまうでしょう。
法人の設立に必要な手続きを手軽に行う方法
法人の設立に必要な手続きについて、専門的な知識が不足しつつも自分1人で行わなければならない場合や、専門家の力を借りて時間や手間をかけずに手軽に進めたい場合におすすめなのが、「弥生のかんたん会社設立」や「弥生の設立お任せサービス」です。
「弥生のかんたん会社設立」は、画面の案内に沿って必要事項を入力するだけで、定款をはじめとする会社設立時に必要な書類を自動生成できます。また、今回ご紹介した「法人ワンストップサービス」と連携しているため、各官公庁への提出をオンラインで行うことができます。
「弥生の設立お任せサービス」は、弥生の提携先である起業に強い専門家に、会社設立手続きを丸ごと代行してもらえるサービスです。専門家を探す手間を省けるほか、電子定款や設立登記書類の作成、公証役場への定款認証などの各種手続きを依頼でき、確実かつスピーディーな会社設立が可能です。
会社設立後、専門家とご相談のうえ、会計事務所と税務顧問契約を結ぶと割引が受けられ、サービス利用料金は実質0円になります。ただし、定款の認証手数料や登録免許税など、行政機関への支払いは別途必要です。
法人登記のオンライン申請は便利なサービスを活用しよう
法人設立ワンストップサービスを利用すると、会社の設立にかかわるさまざまな行政手続きを一括で行うことができます。しかし、法人設立ワンストップサービスは、提出書類の作成をサポートしてくれるわけではありません。自社に必要な手続きを調べたり、書類を準備したりしなければならず、かえって時間がかかってしまう可能性もあります。
そこで、会社設立の手間を軽減するなら、「弥生のかんたん会社設立」や「弥生の設立お任せサービス」の活用もおすすめです。便利なサービスを利用して、設立手続きを手間なくスムーズに行うことができるでしょう。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。