株式会社とは?仕組みや設立するメリット・デメリット
監修者: 森 健太郎(税理士)
更新

会社と聞いて、多くの方がイメージするのは株式会社ではないでしょうか。株式会社は法人を設立する際に多く選ばれる会社形態です。しかし、株式会社の仕組みや設立の手順については、よくわからないという方はいるかもしれません。
ここでは、株式会社の仕組みや合同会社との違いの他、メリット、設立の方法などについて解説します。
【利用料0円】はじめてでもカンタン・安心な「会社設立」の書類作成はこちらをクリック
【紹介完全無料】創業時のお悩みを相談できる税理士をお探しの方はこちら
株式会社の仕組み
株式会社は、株主に株式を買ってもらうことで資金を集め、その資金を用いて事業を行う会社です。まずは、株式会社がどのような仕組みの会社形態なのかを確認していきましょう。
株式で資金調達を行う会社
株式とは、株式会社が出資者である株主に発行する証券のことです。株式会社は、事業を始めたり拡大したりする目的で株式を発行し、事業に必要な資金を集めます。株式による資金調達は、株式会社以外ではできません。ただし、近年は株券そのものを発行せず、名簿で株主を管理することが主流です。
株式によって調達した資金は、融資などと違って返済の義務はありません。株主は、保有する株式の割合に応じて経営に参加できたり、利益が出た際に配当がもらえたりします。また、株式は売却することもできます。
株式会社は所有と経営が分離している
株式会社は、出資者である株主と会社を経営する取締役の役割が切り離された会社形態です。これを「所有と経営の分離」といいます。会社経営を行う取締役は、株主による集会である「株主総会」で選出されます。
なお、株主と取締役は同一でも問題ありません。特に小規模な会社の場合は、創業メンバーが出資者となり、そのまま会社経営を行うこともよくあります。
株式上場ができる
株式上場とは、株式会社が発行する株式を、証券取引所で自由に売買できるようにすることです。
上場するには、証券取引所に申請を行い、証券取引所が定める基準に応じた審査をクリアしなければなりません。株式が上場すると、資金はより集めやすくなり、信用度や知名度も向上します。一方で、法律や証券取引所のルールにもとづく情報開示の義務などが生じ、社会的な責任も重くなります。
株式会社と合同会社の違いは?
現在、日本で新しく設立できる会社の形態は、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4種類です。株式会社か合同会社のいずれかを選んで設立するケースがほとんどです。
合同会社は、会社法が施行された2006年5月に新しく設けられた会社形態で、日本版LCCとも呼ばれます。株式会社と合同会社の主な違いは下記のとおりです。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
意思決定 | 株主総会 | 社員総会(※1) |
会社の所有者 | 株主 | 各社員 |
会社の経営者 (業務執行者) |
取締役 | 社員(出資した方全員のこと。1人を選任することも可能) |
所有者と経営者の関係 | 所有と経営は分離 | 所有と経営は一致 |
役員の任期 | 通常2年、最長10年 | 任期なし |
監査役の人数 | 1人以上(※2) | 不要 |
会社の代表者 | 代表取締役 | 社員(明示的な代表者として代表社員を定めることも可能) |
決算公告 | 必要 | 不要 |
定款 | 認証が必要 | 作成は必要だが、認証は不要 |
利益配分 | 出資割合に応じる | 出資割合に関係なく、定款で自由に規定できる |
設立手続きの費用 | 約17万円~ | 約6万円~ |
資金調達 | 株式など資金調達方法の幅が広い | 株式発行ができない |
- ※1株式会社における役員に相当する者を合同会社では社員と呼びます。
- ※2取締役会を設置していない場合は不要です。
株式会社の場合は、出資者である株主と会社を経営する取締役の役割が切り離されています。株主(出資者)と経営者は、同じ方でも構いません。
株式会社と合同会社の違いについては、こちらの記事も併せてご覧ください
個人事業主と比較した場合の株式会社のメリット
会社を設立すると、個人事業主にはないさまざまなメリットを得られます。ここからは、個人事業主と比較した株式会社のメリットを見ていきましょう。
社会的な信用が得やすい
会社を設立する場合は、商号(社名)や住所、資本金などの情報を法務局に提出して登記しなければなりません。登記した内容は誰でも閲覧でき、法人としての責任も発生するため、社会的な信用力もアップします。取引先や仕入れ先には、法人でなければ契約を結ばない企業や、個人事業主相手には大規模な取引を行わない企業もあるでしょう。
税金面でメリットがある
個人事業主と法人では課税される税金の種類が異なり、個人事業主は所得税、法人は法人税がかかります。個人事業主の所得税は累進課税となるため、所得が増えると税率が段階的に上がり、最大の税率は45%になります。
対して法人税は、資本金1億円以下の法人で所得(儲け)が800万円を超える場合の税率は23.2%、800万円以下なら税率は15%で一定です。所得が増えれば増えるほど、会社設立による税金面でのメリットは高くなるでしょう。

- ※所得とは合計所得金額のことを指します。
- ※上図は所得税と法人税に絞った比較をしています。個人事業主と法人で支払う総合的な税金額を比較する場合は、税理士へご相談ください。
また、会社を設立すると、経営者は役員報酬として給料を受け取ります。法人では、役員報酬は定期同額給与などの要件を満たすことで経費とみなされるため、その分所得が減少し、結果的に法人税が減少することになります。その他、法人では経費の幅が広いことや、青色申告書を提出すれば欠損金(赤字)の10年間繰り越しができる点もメリットです。
決算月を自由に設定できる
個人事業主の場合、法律によって事業年度は1月~12月と決められているため、決算月は12月です。一方、法人の場合は、事業年度の決算月を自由に設定できるメリットがあります。会社の繁忙期と決算月が重ならないようにするなど、調整することが可能です。
有限責任になる
個人事業主の場合は、事業上の責任はすべて事業主が負わなければなりません。経営が悪化した際の仕入れ先への未払い金や、金融機関からの借入金、滞納した税金なども、個人の負債として負担することになります。これを「無限責任」といいます。
一方、法人の場合は限られた範囲の「有限責任」となり、代表者個人がすべての責任を負う必要はありません。個人保証による借り入れを除き、責任の上限は出資金の範囲内になるのです。つまり、出資額以上の支払い義務が発生せず、個人の資産は守られます。万一の際、個人のリスクを最小限にとどめられる点は、大きなメリットといえます。
個人事業主と法人の違いについては、こちらの記事も併せてご覧ください
資金調達の方法が幅広い
法人化して、社会的な信用を得やすい状態になると、資金調達を行いやすくなります。個人事業主が資金調達をしにくいわけではありませんが、事業拡大などでまとまった額の融資が必要になる場合は、法人の方が資金調達の選択肢は広がるでしょう。特に株式会社は、株式を使ってさまざまな資金調達が可能になる点が大きなメリットです。例えば、株式を発行して出資を募ることは、株式会社にしかできません。出資者側には、出資金額を超えて損失を負うことがないため、投資しやすいといった利点もあります。
なお、株式会社のメリット・デメリットについてはこちらの動画でも解説しているため、株式会社の設立を検討している人は参考にしてみてください。
株式会社はどう設立する?
株式会社は、定められた書類の届出や申請を行えば設立できます。下記に、株式会社設立の大まかな流れをご紹介します。
株式会社設立の手順
-
STEP1.会社の概要を決める
-
STEP2.法人用の実印を作成する
-
STEP3.定款を作成し、認証を受ける
-
STEP4.出資金(資本金)を払い込む
-
STEP5.登記申請書類を作成し、法務局で申請する
STEP1. 会社の概要を決める
会社を設立するにあたっては、まず会社の基本事項を決めなければなりません。会社の概要として主に必要な項目は、下記のとおりです。この後、作成する定款(ていかん)にも記載する内容なので、しっかり確認しておきましょう。
定款に記載が必要な会社の概要の項目
- 社名
- 所在地
- 資本金
- 設立日
- 会計年度
- 事業目的
- 株主の構成
- 役員の構成
STEP2. 法人用の実印を作成する
法務局に書面で設立登記の申請をするときには、会社の実印が必要になります。社名が決まったらまず実印を作り、印鑑届書の申請も忘れないようにしましょう。印鑑届書とは、会社が法務局で実印を登録するために必要な書類で、個人の印鑑登録と同じ意味合いを持ちます。
STEP3. 定款を作成し、認証を受ける
定款とは、会社を運営するうえでのルールをまとめたもので、「会社の憲法」ともいえるものです。定款には、STEP1で決めた会社概要の内容を記載しますが、中でも必ず記載しなければならないと法律で決められている「絶対的記載事項」があるので注意しましょう。
作成した定款は公証役場に提出し、認証の手続きを行います。
STEP4. 出資金(資本金)を払い込む
資本金の払い込みは、STEP3で申請した定款が認証された後で行います。この時点では、STEP5の会社設立登記が完了していないため、会社の銀行口座はまだ作れません。そのため、資本金の振り込み先は、発起人の個人口座になります。
会社法では資本金の下限がないので1円から申請可能ですが、最低限の資本金として、初期費用に運転資金3か月分を足した金額程度は用意しておくのがおすすめです。
STEP5. 登記申請書類を作成し、法務局で申請する
登記申請に向けて、「株式会社設立登記申請書」をはじめとする申請書類の準備を行います。登記申請は原則として代表者が行いますが、司法書士などの代理人によって行うことも認められています。代理人が行う場合は、上記の書類に加え、委任状が必要です。
登記申請後、不備がなければ1週間~10日程度で登記が完了し、無事に会社設立が完了となります。
なお、会社を設立した後には、いくつかの必要な手続きがあります。税務署などで税金関係、年金事務所で社会保険関係の手続きが必要です。従業員を雇う場合は、労働基準監督署で労災保険、ハローワークで雇用保険の手続きを行います。
株式会社の設立方法は、こちらの記事も併せてご覧ください
株式会社設立の手続きを手軽にする方法
会社設立までの一連の流れを把握しても、実際に手続きを進めると不安になったり、つまずいたりすることがあるでしょう。特に、初めて申請書類を作成する場合は、手間や時間がかかり、戸惑うことも多いかもしれません。そんなときにおすすめなのが、無料のクラウドサービス「弥生のかんたん会社設立」です。
手軽に申請書が作れる「弥生のかんたん会社設立」とは?
「弥生のかんたん会社設立」は、画面の案内に沿って必要事項を入力するだけで、株式会社や合同会社の設立時に必要な書類を自動生成できるクラウドサービスです。各官公庁への提出もしっかりガイドしますので、事前知識は不要。さらに、パソコンでもスマートフォンでも書類作成ができます。
サービス利用料金は無料。会社設立に必要な書類の作成はもちろん、専門家による電子定款作成/電子署名費用もすべて0円です。
また、「弥生のかんたん会社設立」をご利用の方限定で、創業に必要な実印を特別価格でご案内しています。
会社設立直後に必要なツールや環境が揃えられるパッケージ「起業・開業応援パック」も活用すれば、事業開始がさらにスムースに行えるでしょう。
「弥生のかんたん会社設立」はこんな方におすすめ
「弥生のかんたん会社設立」は、特に下記のような方におすすめです。
初めて会社を設立する方
「弥生のかんたん会社設立」は、画面の案内に従って入力を進めるだけなので、専門知識がなくても手軽に利用できます。初めて起業する方や、個人事業主から法人成りを予定している方にもピッタリです。
手続きの手間や時間を省きたい方
「弥生のかんたん会社設立」は、必要情報を入力すると必要書類が自動で作成できるので、忙しい創業期に、書類作成のためにまとまった時間が割けない方でも安心です。ステップごとに入力情報がクラウド上に保存されるため、隙間時間に少しずつ入力作業ができます。また、同一アカウントでログインすれば、パソコン、スマートフォンを切り替えて使うこともできます。
会社設立にかかる費用を抑えたい方
「弥生のかんたん会社設立」は、サービス利用料金も電子定款作成もすべて無料なので、実費(公証人手数料等)以外の費用負担なく会社設立手続きが可能です。紙の定款で必要になる収入印紙代(4万円)もかかりません。また、電子定款作成のために本来必要となる、ICカードリーダー/ライターやソフトウェアなどを買い揃える費用も一切かからないので、トータルで考えるとかなりお得です。
会社設立の手続き含め、創業のことも専門家に相談したい場合
「法人と個人事業主のどちらで起業するか悩む」「経理の立ち上げを支援してもらいたい」といった方には、弥生株式会社の「税理士紹介ナビ 」がおすすめです。
業界最大規模の全国のパートナー会計事務所から、会社所在地や業種に合わせて最適な税理士をご紹介します。紹介料は、一切かかりません。
株式会社のメリットを活かした設立準備を進めよう
株式会社には、合同会社や個人事業主にはない多くのメリットがあります。株式会社のメリットが活かせるように、決算や事業開始後の会計や税務については、専門家の力を借りたり、書類作成ではクラウドサービスを活用したりして、設立準備を進めていきましょう。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。