LLC(合同会社)とは?意味や株式会社との違い、選ばれる理由を解説
監修者: 森 健太郎(税理士)
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LLC(合同会社)は、現在設立できる会社形態のひとつです。株式会社や合資会社、合名会社も設立できますが、LLC(合同会社)はその中でも設立の手続きが早く、費用も抑えられる傾向があります。会社形態ごとに設立条件や手続きが異なりますので、自分の事業に合う会社形態の設立手続きや条件、費用を知っておきましょう。
ここでは、LLC(合同会社)の特徴や株式会社との違い、設立が向いている事業者について解説します。
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LLCとは合同会社という会社形態を指す英語の略
LLCは「Limited Liability Company」の略で、日本では合同会社と呼ばれる会社形態を指します。LLC(合同会社)は主にアメリカで使用されている会社形態で、日本では2006年5月の会社法施行によって設立できるようになりました。
現在、日本で新しく設立できる会社形態は、LLC(合同会社)の他、株式会社、合資会社、合名会社がありますが、このうちLLC(合同会社)の設立件数は株式会社に次いで多くなっています。
法務省「登記統計 商業・法人 会社及び登記の種類別 会社の登記の件数」(2023年5月)によると、合同会社の設立件数は年々増加しており、2022年には3万7,127件となっています。過去5年間でみると、会社形態別に設立された本店の件数は以下のとおりです。これから会社設立を行う人は法人形態を選ぶ際の参考にしてください。
合同会社 | 株式会社 | 合名会社 | 合資会社 | |
---|---|---|---|---|
2022年 | 37,127 | 92,371 | 20 | 30 |
2021年 | 37,072 | 95,222 | 16 | 33 |
2020年 | 33,236 | 85,698 | 34 | 41 |
2019年 | 30,566 | 87,871 | 48 | 47 |
2018年 | 29,076 | 86,993 | 87 | 52 |
- ※政府の統計窓口「登記統計 商業・法人 会社及び登記の種類別 会社の登記の件数」
※合同会社については以下の記事を併せてご覧ください
株式会社との違い
LLC(合同会社)と株式会社の違いはいくつかあります。会社設立を検討している人は、それぞれの違いを参考にしてください。
なお、以下に挙げた違いは一部です。定款の記載事項といった違いもあるため、会社設立時には法人形態に合った手続きを行うようにしましょう。
LLC(合同会社)と株式会社の主な違い
- 所有と経営の在り方
- 設立時の定款の認証の有無
- 登録免許税の金額
- 決算公告の有無
- 役員の任期の有無
所有と経営の在り方
LLC(合同会社)と株式会社の違いは、所有と経営が分離しているかどうかです。株式会社は、株式を発行して集めた資金をもとに経営する会社形態で、出資者である株主と会社を経営する経営者の役割が分離されています。
一方、LLC(合同会社)は出資者が経営を行うため、所有と経営が一致しています。また、LLC(合同会社)では出資者のことを社員といい、原則として全ての社員に代表権と業務執行権があることも違いのひとつです。なお、業務執行権を持つ「業務執行社員」や会社の代表者となる「代表社員」を定款で定めることによって、特定の社員に権限を限定することも可能です。
LLC(合同会社)は所有と経営が一致しているので、株式会社に比べて経営者が事業について迅速な意思決定をできるのが特徴といえるでしょう。
設立時の定款の認証の有無
会社を設立するには、会社のルールをまとめた定款の作成が必要です。株式会社を設立するには定款の作成後、公証役場で認証を受けなくてはいけませんが、LLC(合同会社)の場合は作成のみで認証は不要です。公証役場での認証手続きに必要な1.5万~5万円程度の費用がかからず、認証手続きも不要なので、株式会社よりも費用を抑えて短い期間で設立できます。
登録免許税の金額
株式会社を設立する際の登録免許税は15万円程度かかるのに対して、合同会社は6万円程度です。前述の定款の認証費用を含めると、株式会社では最低でも17万円程度かかる設立費用が、合同会社の場合は6万円程度で済むということになります。支出が多くなりやすい創業時に設立費用を抑えられるのは、LLC(合同会社)のメリットといえるでしょう。
決算公告の有無
株式会社は毎年決算公告を行う義務がありますが、LLC(合同会社)には決算公告の義務がないことも違いのひとつです。決算公告とは、会社の決算を公に告知することで、会社の成績や財務状況を出資者(株主)や債権者に明らかし、取引の安全性を保つために行うものです。決算公告は、官報に掲載するなら7万円程度、電子公告なら1万円程度の費用がかかります。
なお、合同会社でも資本金の減少や吸収合併といった組織再編、解散の際には公告が必要です。
役員の任期の有無
株式会社の役員の任期は通常2年、最長10年と定められていますが、LLC(合同会社)には役員の任期はありません。役員の任期満了のたびに発生する重任登記、その手続きに伴う登録免許税1万円または3万円がかからないことも違いとして挙げられます。
株式会社では役員の任期が満了したときには、たとえ再任であっても登記手続きが必要になり、忘れたまま放置していると過料が科せられる可能性もあります。一方、合同会社は役員の任期がないため、再任の登記を放置することによって過料を課せられることがありません。
※合同会社と株式会社の違いについては以下の記事を併せてご覧ください
LLP(有限責任事業組合)との違い
LLCと混同されやすいLLP(有限責任事業組合)との違いは法人格があるかどうかで、LLC(合同会社)は会社法上の会社形態で法人格があります。
一方、「Limited Liability Partnership」を略したLLPは、共同事業を行うための組織形態で法人格はありません。LLPは民法組合の特例の組織形態になるため、法人格のある株式会社といった会社形態への組織変更はできなくなっています。また、法人格がなければ、法人としての許認可が必要な建設業をはじめとする特定の事業を行うことができません。
なお、LLPの組合員は会社の債務に対して出資額の範囲でのみ責任を負う有限責任で、出資比率にかかわらず自由に利益配分できる点はLLC(合同会社)と同様です。
LLPは個人や会社が協同して事業を行えるため、県と電力会社で再生可能エネルギー普及のためにLLPを作ったり、JR東日本グループではサービスロボットの研究開発のためのLLPを作ったり、さまざまな分野で活用されています。そのため、協同で事業を行う際には活用を検討してください。
LLC(合同会社)に向いている事業者
LLC(合同会社)の設立件数は近年増加傾向にあるとはいえ、株式会社の方が設立件数は多く知名度もあります。逆にいえば、株式上場を目指さず、知名度を必要としない場合はLLC(合同会社)に向いているかもしれません。LLC(合同会社)に向いているかどうかは、以下のような点を参考にしてみてください。
LLC(合同会社)に向いている事業者
- 設立費用を抑えたい小規模事業
- 一般消費者向けの事業者
- できるだけ早く法人格がほしい事業者
- 利益配分を自由に決めたい事業者
設立費用を抑えたい小規模事業
LLC(合同会社)は株式会社に比べて少ない費用で設立することができるため、会社設立にかかる費用を抑えたい場合はLLC(合同会社)が向いているといえるでしょう。
なお、事業が安定し、規模が大きくなる際に変更手続きを行えば株式会社への変更も可能です。
一般消費者向けの事業者
一般消費者向けの事業であれば、事業を運営している会社形態よりも商品やサービスの知名度が求められるため、LLC(合同会社)は向いているといえます。ただし、企業相手にビジネスをする際、LLC(合同会社)は株式会社よりも知名度が低いため、資金があまりない会社なのではと取引先に予期せぬ誤解を持たれてしまう可能性があります。
できるだけ早く法人格がほしい事業者
LLC(合同会社)は、公証役場で定款の認証を受ける必要がないため、株式会社よりも設立にかかる時間を短くすることができます。「取引先から法人でなければ契約できないと言われている」「許認可申請のためにできるだけ早く法人格がほしい」といった理由で会社設立を急ぐ場合は、株式会社よりもLLC(合同会社)のほうが早いかもしれません。
ただし、会社形態は手続きを行えば後から変更できますが、すぐに変更するなら二度手間になってしまいます。設立を急ぐときも設立条件が合うかを確認しておきましょう。
利益配分を自由に決めたい事業者
LLC(合同会社)は出資比率にかかわらず、定款によって利益配分を自由に決めることができます。一方、株式会社は、出資比率に応じて出資者(株主)への利益配分が決まります。出資額だけではない技術力や業績といった要素で利益配分を決めたい方は、LLC(合同会社)が向いているかもしれません。
なお、LLC(合同会社)は、複数人で出資して設立することもできますが、出資者同士が対立すると意思決定ができずに経営や業務に悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。複数人で設立する場合は、権限を分けて定款に定めておきましょう。
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LCC(合同会社)の特徴を知って、自社に合った会社形態を選ぼう
日本では株式会社の設立件数の方がまだまだ多いですが、LLC(合同会社)の設立件数は年々増加傾向にあります。LLC(合同会社)は出資している社員が会社の経営を行うため、迅速な意思決定ができたり、株式会社よりも費用をかけずに短い時間で設立できたりする特徴があります。
会社を設立するときには、LLC(合同会社)と株式会社の違いを把握したうえで、自社に合った会社形態を選んで設立手続きを進めましょう。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。