法人の登記簿謄本とは?登記事項証明書との違いや取得方法を解説
監修者:森 健太郎(税理士)
2023/12/04更新
会社を経営していると、さまざまな手続きの際に「登記簿謄本」の提示や提出を求められることがあります。登記簿謄本にはいくつか種類があり、正しく理解していないと、必要になったときに戸惑ってしまうかもしれません。また、取得方法によって手数料が異なりますので、書類の種類と併せて、取得方法も知っておくことが大切です。
ここでは、法人の登記簿謄本の種類や登記事項証明書との違い、必要なタイミングの他、取得方法について解説します。
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登記簿謄本とは法人の登記情報を証明する書類
法人の登記簿謄本(とうきぼとうほん)とは、法人の登記情報が記載されている書類のことです。法人の存在を証明する重要な役割があり、法務局で取得できます。
※法人登記(会社設立登記)については以下の記事を併せてご覧ください
登記簿謄本と登記事項証明書の違い
登記簿謄本と登記事項証明書の違いは、紙か電子データかという点で、実質的には同じ書類を指します。
電子データ化が進む前は、会社の登記情報は「登記簿」という紙で管理されており、その用紙を複写して登記事項を証明したものを「登記簿謄本」と呼んでいました。電子データで保存されるようになった現在では、「登記事項証明書」と呼ぶことが一般的です。
慣習的に登記簿謄本という名称が使われることはよくありますが、登記事項証明書のことだと理解しておきましょう。
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登記簿謄本の種類
登記簿謄本は、法務局に登記されている事項を証明した書類の総称です。記載される情報によって、「現在事項全部証明書」「履歴事項全部証明書」「閉鎖事項証明書」「代表者事項証明書」の4種類に分けられるため、登記簿謄本を取得予定の方は参考にしてみてください。
現在事項証明書
現在事項証明書は、請求日現在の会社の登記情報を記載した書類です。現在有効ではない、抹消・変更された事業目的や資本金、役員といった登記情報は原則として記載されません。ただし、商号(社名)と本店所在地については、現在から1つ前の変更点が記載されています。
提出書類の指定がなく、履歴事項全部証明書を出したくない場合は、現在事項証明書を提出します。
履歴事項全部証明書
履歴事項全部証明書には、現在の会社の情報に加えて、請求日の3年前の日が属する年の1月1日以降に抹消・変更された情報の履歴も記載されています。約3年分の記録を確認できることから、許認可の申請や融資を申し込む際などに使用される書類です。
登記簿謄本の提出を求められたときに、相手先からの指定がない場合は、履歴事項証明書を提出しておくといいでしょう。
なお、管轄外へ本店を移転された場合、移転前の情報は履歴事項全部証明書には記載されないため注意が必要です。移転前の登記情報も必要な場合は、閉鎖事項証明書を取得します。
※履歴事項全部証明書の必要な場面については以下の記事を併せてご覧ください
閉鎖事項証明書
閉鎖事項証明書は、過去に抹消、または閉鎖された登記情報が記載されている書類です。履歴事項全部証明書に記載される以前に抹消された登記情報だけでなく、吸収合併により、会社が解散や消滅をして閉じられた登記情報などが記載されています。歴史が長い法人や変更が多い法人などの情報を確認する際に使用します。
代表者事項証明書
代表者事項証明書は、会社の代表者の情報に特化した書類で、代表者の氏名や住所、社名(商号)、法人番号などが記載されています。契約や手続きの際に、代表者の資格証明書を求められた場合に代表者事項証明書を使用します。
登記簿謄本が必要になるタイミング
法人名義の各種契約や登記申請などの手続きを行う際に、登記簿謄本が必要になるタイミングがあります。主なタイミングは以下の5つです。
登記簿謄本が必要なタイミング
- 金融機関で法人口座を開設するときや融資を申し込むとき
- 法人名義で保険や許認可の手続きをするとき
- 新規の取引先や競合他社の調査をするとき
- 初めて決算申告を税理士に依頼するとき
- 法人の登記内容を変更するとき
金融機関で法人口座を開設するときや融資を申し込むとき
金融機関で法人口座を開設するときや融資を申し込むときには、登記簿謄本の提出が必要です。また、補助金・助成金の申請も同様で、一般的に書面での提出が求められます。
法人名義で保険や許認可の手続きをするとき
会社を設立したときには、健康保険や厚生年金保険の他、従業員を雇った場合は労災保険、雇用保険の加入手続きが必要です。また、飲食業や建設業、宿泊業といった業種によっては、許認可申請も行わなければなりません。社会保険や労働保険、許認可申請といった法人名義で手続きをする際には、登記簿謄本の提出を求められます。
新規の取引先や競合他社の調査をするとき
登記簿謄本は、新規の取引先や競合他社の調査をするときに用いることが多くあります。また、大手企業と新しく取引を始める場合は、与信チェックのために登記簿謄本の提出を求められることもあるでしょう。
初めて決算申告を税理士に依頼するとき
法人の決算申告は、税理士に依頼することが一般的です。初めて決算申告を税理士に依頼する際は、株式数や資本金といったお金にまつわる情報を正確に把握するため、税理士から登記簿謄本の提出を求められることがあります。
法人の登記内容を変更するとき
社名や本店所在地、役員、発行可能株式数、事業目的の変更などがあった場合は、法務局で登記内容を変更する手続き(変更登記)を行わなければなりません。変更登記の申請中は、過去の登記簿謄本を確認することができないため、必要な場合は、変更登記の申請前に取得しておきましょう。
登記簿謄本の取得方法と手数料
登記簿謄本の取得方法には、「法務局の窓口」「郵送」「オンライン」の3つがあります。いずれも、申請手続きを行って、所定の手数料を支払えば、法人の関係者でなくても取得することができます。申請の際に委任状や実印、身分証明証なども不要です。ここでは、登記簿謄本の取得方法と手数料をご紹介します。
法務局の窓口、郵送で申請する
法務局の窓口、郵送で申請する場合は、「登記事項証明書交付申請書」に申請者名や商号(社名)、本店所在地、法人番号といった必要事項を記載して法務局に提出します。以前は法人の住所地を管轄する法務局への申請が必要でしたが、現在は全国どこの法務局でも提出が可能です。
申請書類は法務局の窓口で受け取れる他、法務局のWebサイト「登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式 」からもダウンロードできます。記載例は以下のとおりです。
登記事項証明書交付申請書の記載例
オンラインで申請する
オンラインで申請する場合は、「登記・供託オンライン申請システム 」から行い、受け取り方法を法務局の窓口、または指定した住所への郵送のいずれかを選択できます。
なお、登記・供託オンライン申請システムを使用するには、事前に申請者情報登録が必要ですので、詳しくは法務局のWebサイト「オンラインによる登記事項証明書及び印鑑証明書の交付請求について(商業・法人関係) 」でご確認ください。
取得にかかる手数料
登記簿謄本の取得方法ごとの手数料は以下のとおりです。なお、オンライン申請の場合、登記簿謄本の受け取り方によっても手数料は異なりますのでご注意ください。
取得方法ごとの手数料
- 法務局の窓口:50枚まで1通につき手数料600円
- 郵送:50枚まで1通につき手数料600円
- オンライン(法務局の窓口での受け取り)送付:50枚まで1通につき手数料480円
- オンライン(郵送での受け取り):50枚まで1通につき手数料500円
登記簿謄本の有効期限と必要最低枚数
登記簿謄本には有効期限の規定はありません。ただし、提出先から取得後3か月以内のものなどと、一定の期間内に発行されたものを求められることが一般的です。
銀行口座を1つ開設するたびに1通の登記簿謄本が必要になるなど、創業期は特に登記簿謄本を使用することが多くなります。創業期など登記簿謄本を多く使用することが予想される時期はまとめて申請しておくと手間を省けますが、通常は自社保存用が1部あれば十分といえます。
なお、登記簿謄本の原本が必要なければコピーで提出し、原本は手元に残しておくといいでしょう。
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登記簿謄本の役割と取得方法を知ってスムースに手続きを行おう
法人の登記簿謄本は、正式には登記事項証明書といい、会社の登記情報を証明する重要な書類です。会社設立後の社会保険や労働保険の加入手続きだけでなく、融資や補助金・助成金などの申請、新規取引の際の与信チェックなど、さまざまな場面で登記簿謄本は必要になります。いざというときに慌てないよう、登記簿謄本の役割や取得方法などをしっかりと確認しておくことが大切です。
また、法人の設立タイミングは手続きが多く、慣れない作業に時間や手間がかかってしまいます。会社設立の手続きはクラウドサービスの「弥生の設立お任せサービス」や「弥生のかんたん会社設立」などを上手に活用してスムースに進めましょう。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
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