株式会社設立時の資本金は最低いくら?決め方や注意点を解説

2023/12/27更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

2006年に施行された会社法によって資本金の下限規定がなくなり、資本金が1円でも会社を設立できるようになりました。株式会社設立のハードルが下がった一方で、検討できる金額の幅が広がり、会社設立時に資本金がいくら必要かと頭を悩ませる方もいるのではないでしょうか?

資本金は事業運営の資金だけでなく、税金や会社の信用度にもかかわるため、自社に合った金額を設定していくことが欠かせません。

ここでは、株式会社設立時の資本金を決める際の5つのポイントや払込方法の他、設定する際の注意点を解説します。

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資本金とは、事業を行うための元手となる資金

資本金とは、会社設立の際に必要な資金で、事業を行うための元手です。事業を行う体力があるのかを示すことから、資本金の金額が会社の信用度に影響する場合があります。

なお、資本金は、出資者によって払い込まれたお金のことを指しますが、株式会社なら、株主や投資家から調達した資金も該当します。ただし、一般的には、創業時に第三者から出資を受けられるケースはあまりなく、ほとんどの場合は、経営者が貯えた自己資金を資本金にあてることになるでしょう。

資本金は1円でもいい?金額が低い場合のリスク

2006年の会社法が施行されるまで、株式会社を設立する際には、1,000万円以上の資本金が必要でしたが、現在は資本金1円でも会社の設立が可能です。
しかし、あまりに低い金額を資本金に設定してしまうとさまざまなリスクがあります。考えられる主なリスクは、以下のとおりです。

資本金が低い場合のリスク

  • 資金がショートする
  • 金融機関から希望どおりの融資を受けられない
  • 取引ができなくなる

資本金は低すぎると、経費の支払いなどによって売上が立つ前に、資金がショートしてしまう可能性があります。また、金融機関から融資を受ける場合、会社の体力を示す目安としてチェックされるのが資本金です。あまりに資本金が低すぎると返済能力が低いとみなされ、希望どおりの融資を受けられないことにもなりかねません。

また、資本金は与信チェックの際に確認されます。あまりに低すぎると事業を行う資金がないと判断されて、取引を断られる可能性があるため、資本金は適正な金額にすることが大切です。

なお、金融機関からの借入金の他、家族や親族、友人などから借りたお金を資本金にすることはできません。手元の資金が足りないからと借り入れにより調達した資金を資本金として計上すると、場合によっては詐欺とみなされることがありますので注意しましょう。

資本金を決める際に確認しておくこと

ここでは、株式会社設立時の資本金を決める際に確認しておくことを紹介します。以下はあくまで一例となりますので、決める際に参考にしてみてください。

資本金を決める際に確認しておくこと

  • 初期費用と運転資金を計算する
  • 許認可の要件を確認する
  • 融資額の要件を確認する
  • 税金のことを考慮する
  • 取引先のことを考慮する

初期費用と運転資金を計算する

資本金を決める際のポイントの1つに、会社設立にかかる初期費用と運転資金を計算することが挙げられます。会社設立に伴う手続き費用、店舗やオフィスの契約費用、設備の購入費用の他、事業を始めてからの仕入費用やオフィスの賃料、従業員の給与など、設立前後に必要になる費用は資本金からまかなうことになるからです。

業種や事業規模によって初期費用や運転資金は異なりますので、自社の業種や規模に合わせた金額を決めることが大切です。また、創業期は思うように売上が上がらないことも多く、売上がない間も経費はかかりますので、資本金が低ければ、すぐに運転資金が足りなくなってしまいます。

そのような事態を防ぐためには、会社設立にかかる初期費用と運転資金を計算し、最低限の資本金として初期費用に半年分の運転資金を足した金額を設定しておくといいでしょう。

許認可の要件を確認する

事業を行う前に、許認可が必要な業種があります。許認可の要件の中には、資本金の金額が含まれていることがあり、要件を満たさないと許認可が受けられないので注意が必要です。

せっかく会社を設立しても、許認可がなければ事業を行えなくなりますので、資本金を決める前に許認可の要件を確認しておきましょう。許認可の中に資本金の要件が含まれる主な業種は以下のとおりです。

資本金が許認可の要件に含まれる主な業種と最低資本金額
業種 最低資本金
貨物利用運送業 300万円以上
一般建設業 500万円以上
特定建設業 2,000万円以上
有料職業紹介業 500万円以上(×事業所数)
労働者派遣業 2,000万円以上(×事業所数)
第1種旅行業 3,000万円
第2種旅行業 700万円
第3種旅行業 300万円
地域限定旅行業 100万円

融資額の要件を確認する

会社設立後に融資を受けたいと考えている場合は、融資の条件も考慮して資本金を決めましょう。資本金があまりにも低いと、希望する額の融資が受けられず、必要な資金を集められなくなってしまうかもしれません。例えば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度 新規タブで開く」では、融資の要件として、創業に必要な資金の10分の1以上の自己資金が必要とされています。

※新創業融資制度については以下の記事を併せてご覧ください

税金のことを考慮する

資本金の金額は、消費税や法人住民税、法人税といった税の納税義務の有無や納める税金の計算方法に影響します。資本金を設定する前に、その金額がそれぞれの納税義務や税額計算にどのように影響するのかを確認しておき、許認可の要件や運転資金などとのバランスを取ることが大切です。

資本金の額から影響を受ける税として、消費税、法人住民税および法人税を挙げ、それぞれについてどのように影響を受けるのか解説します。

消費税

資本金が1,000万円以下で設立された会社は、原則として設立1期目と2期目の消費税の納税義務が免除されます。ただし、2期目に関しては、1期目の前半6か月の売上が1,000万円を超え、かつ人件費(役員報酬含む)が1,000万円を超えた場合は、消費税の課税対象となります。

法人住民税

法人住民税には、赤字でも必ず納めなければならない「均等割」があり、その課税額は資本金などの額によって変わります。例えば、東京都23区で従業員数が50人以下の法人の場合、資本金が1,000万円以下なら均等割の年額は7万円ですが、資本金が1,000万円を超えると均等割の年額は18万円になります。

法人税

法人税の税率は、資本金が1億円を超えるかどうかで変わります。資本金1億円以下の法人で所得が800万円を超える場合、所得800万円超の部分の税率は23.2%、800万円以下の部分は税率が15%となります。一方、所得が800万円以下なら税率は15%で一定です。

資本金が高いと、それだけ納める税金も高くなります。なお、課税される税金の額を知りたい場合は、事業の売上や経費、希望年収などを入力するだけで概算の税金額がわかる「かんたん税金シミュレーション」をご活用ください。

取引先のことを考慮する

多くの会社では、初めて取引する会社には与信チェックを行いますが、その際に資本金を確認することが一般的です。特に、創業間もない場合や取引先が大手企業の場合などは、資本金が会社の信用度を判断する指標の1つとなります。資本金をあまりに低くしてしまうと、取引を断られる場合がありますので注意が必要です。

※資本金の平均額については以下の記事を併せてご覧ください

なお、株式会社を設立する際の資本金はこちらの動画でも解説しているため、会社設立の資本金で悩んでいる人は参考にしてみてください。

資本金の払込方法

株式会社の設立手続きにおいて、資本金の払い込みは、公証役場で定款の認証を受けた後に行います。しかし、この時点では法人登記前になるため、資本金の払い込み先としての会社名義の銀行口座はまだ作れません。そのため、資本金は発起人の個人口座に振り込みます。

なお、法務局に登記申請をする際には、資本金の振り込みを証明する書類が必要です。資本金を振り込んだ通帳の表紙と1ページ目の他、振り込み内容が記載されているページをコピーしておきましょう。

※株式会社の設立手続きについては以下の記事を併せてご覧ください

資本金の金額を変更するには税金がかかる

資本金を設定する際の注意点として、増資について述べておきます。増資とは資本金を後から増加させることで、増資をするには、株主総会の決議や法務局への登記申請などの手続きが必要になるうえ、増資額の0.7%(最低3万円)の登録免許税がかかります。

また、第三者に新株の購入権利を付与して増資を行うと、経営者の持株比率が下がり、経営の意思決定に影響を及ぼす可能性があることも注意しましょう。

特に中小企業は、許認可の関係で資本金の要件を満たさなければならない場合を除けば、資本金を段階的に増やす必要性は高くありません。「資本金が足りなくなったら増資すればいい」と安易に考えるのではなく、会社設立の段階から慎重に資本金の金額を設定することが大切です。資本金は税金にも関わりますので、迷ったときには税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

資本金を相談する税理士を探す方法

資本金は、会社設立後の資金繰りや税金にも大きく影響します。特に税金については、税務の専門家である税理士に相談すると安心です。起業にあたって専門家に相談したいと思っても、自力で税理士を探そうとすると、手間や時間がかかります。そのような場合は、弥生株式会社の「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」がおすすめです。

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※税理士に相談する内容については以下の記事を併せてご覧ください

会社設立時の手続きを手軽に行いたい場合

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資本金は会社の信用度に直結するため適切に設定しよう

現在、資本金は1円でも株式会社を設立できるようになりました。しかし、あまりに資本金が低いと、事業を行う体力がないとみなされ、融資を受けられなかったり、取引ができなかったりするので注意が必要です。また、会社設立時の資本金は、税金にも影響しますので、自社に合った適切な金額を設定するようにしましょう。

もし、資本金の設定に悩んだ場合は、税理士などの専門家に相談してアドバイスを受けるのがおすすめです。「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」なら紹介料がかからず、お困りごとに合わせて最適な税理士を紹介しますので、会社設立の際はぜひご相談ください。

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この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

URL:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_mori/新規タブで開く

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